DOG DAYS 土地神軍師奔走譚 ※凍結   作:天御柱

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EPISODE:07

午前中に行われた御前試合から少し時間が経過して、今は午後。

 

「なんで皆して付いてきてるかな?」

 

今日から生活を始める為、我が家へと向かっている道中。

 

「オウカのお家に興味があります!」

 

「姫様に同じく!ダルキアン卿の家も気になるし!」

 

「自分も興味津々なのであります!」

 

「私は姫様の親衛隊長としてだな……」

 

「拙者の住む風月庵の近所と聞いて」

 

「今日からお兄ちゃんと一緒に住むから!」

 

俺達は総勢7名のパーティーで行動していた。

 

「っていうか、姫ちゃん。君はここにいてもいいのかい?」

 

「大丈夫です!今日は急ぎのお仕事はないと聞いていましたので!」

 

「……親衛隊長?」

 

「アメリタ女史にお任せしてきた」

 

「~~♪」

 

「「ハァ……」」

 

上機嫌で歌を口ずさんでいる姫ちゃんを尻目に、エクレールと溜息を吐く。

 

本当にこの娘が領主でよかったんだろうか?

 

 

 

 

 

 

城下町を抜けてしばらく進むと、

 

「見えてきたでござるよ」

 

竹林の中にひっそりと佇む小さな家屋が見えてきた。

 

「変わらないな、ここは」

 

最後に訪れたのはだいぶ前の話になるが、当時と変わらぬ光景がそこにはあった。

 

「はぁ~、ここが『風月庵』か……」

 

シンクは家屋の周囲を歩きながら、何やらしきりに感心していた。

 

「それで、オウカのお家はどちらですか?」

 

「早く見たいであります!」

 

『『『ワクワク』』』

 

風月庵のことを既に知っている連中が催促するかのように期待の眼差しを向けてくる。

 

「こっちだ。付いて来てくれ」

 

俺は彼らを先導して風月庵の裏手から少し進んだところで立ち止まると、

 

「結界術式、解除」

 

目の前に広がる竹林に向かって呟いた。

 

 

――パァァァ

 

 

そうして視界を覆う白い光が治まった後には、

 

「わぁ……」

 

「へぇ……」

 

「なんと……」

 

先程まで竹林だった空間に、風月庵とよく似た外観の家屋が出現していた。

 

「ここが俺の家、『雪花亭(ゆきはなてい)』だ」

 

『『『おおー!』』』

 

俺が紹介すると、一同から感嘆の声が上がる。

 

「ついでに掃除も済ませるか。炎符『清浄火炎』」

 

 

――ボッ

 

 

『『『っ!?』』』

 

「ちょっ、オウカ、燃えてる!めっちゃ燃えてるんだけど!」

 

「お前、バカじゃないか!?」

 

「落ち着け。汚れや穢れを払ってるだけで、家そのものは燃えてないから」

 

自分の家に自分で放火とか、誰がするか。

 

 

――フッ

 

 

しばらくして、我が家を包んでいた炎が消える。

 

「ほら見ろ。ちゃんと残ってるだろう?」

 

『『『ホッ……』』』

 

そこには新居と変わらない―『清浄火炎』によって綺麗になった―雪花亭が佇んでいた。

 

「それじゃ、改めて。皆、『雪花亭』にようこそ」

 

『『『お邪魔しまーす!』』』

 

そういえば、何か大事なことを忘れているような……気のせいか。

 

「おおっ、中の作りも風月庵そっくりでござるなぁ」

 

「ここが今日から私の家かぁ」

 

「何だか落ち着きます」

 

「あ、凄い!囲炉裏がある!」

 

「おい勇者!勝手に上がるな!」

 

「ハハハッ、別に構わないよ」

 

皆それぞれに楽しんでくれているようで何より――

 

「皆さん、こちらの部屋に何か置いてあるでありますよー!」

 

「どうしました、リコ?……あら?この袋の山は何でしょうか?」

 

……ハッ!?

 

「この袋、穴から中が見え――」

 

「おっとぉっ!」

 

 

――シュバッ

 

 

ふぅ……危ない危な――

 

 

――チャリン、チャリン

 

 

「ん?これは……金貨じゃないか!?」

 

「こっちは銀貨であります!」

 

『『『ジー』』』

 

エクレールとリコちゃんの言葉を聞いていた全員の目が俺に集まる。

 

「ア、アハハハ……」

 

万事休す、か。

 

「お兄ちゃん、これは何?」

 

「各地の戦に参加して回ってたときの報奨金。総額【自主規制】」

 

『『『なっ!?』』』

 

「えっ?それって凄いの?」

 

俺の答えを聞いて、シンクを除く全員が驚く。

 

「小国の国家予算の3年分くらい、と言って伝わるでありますか?」

 

「えぇっ!?それってつまり、オウカはお金持ちってこと!?」

 

「『お金持ち』どころではない。間違いなく、コイツは大陸一の『大富豪』だ」

 

「これから一生遊んで暮らしても、充分お釣りが来るでござるよ」

 

「凄いね、お兄ちゃん」

 

皆が色々と話している中、姫ちゃんが手を挙げた。

 

「はい、姫ちゃん」

 

「オウカ、流石にこのままでは無用心過ぎると思うのですが……」

 

「確かにそうだね。……そうだ。フィリアンノ城の金庫室を一部間借りさせてくれないかな?」

 

「はい、それは構いませんが……」

 

「ありがとう。それじゃあ、当面の生活に必要な分以外は移動させちゃうよ。皆、ちょっと退いてくれ」

 

俺は全員に声を掛けて移動させると、一部を除いた残りの袋に護符を貼り付けていった。

 

「オウカ、それは?」

 

「説明するより実際に見せたほうが早い。ちょっと待ってろ……よし」

 

護符を貼り終えた俺は、皆のところまで下がると、袋の山の方へ手を翳し、

 

「紋章発動、レベル1。転移術式起動。目標、フィリアンノ城金庫室」

 

輝力を練って紋章術を発動した。

 

「転送!」

 

 

――パシュン

 

 

『『『消えた!?』』』

 

一瞬の閃光の後には、護符を付けなかった袋だけがその場に残っていた。

 

「今のも紋章術でござるか?」

 

「一応な。正確にはちょっと違うんだが、説明してもわからないだろ?」

 

「うむ。そうでござるな」

 

「お兄ちゃん、今のって……」

 

「ああ。『あの時』ユキに使った術の完成形だな」

 

「やっぱり……」

 

「オウカ、先程の護符はこの間の……?」

 

「うん、そうだよ」

 

「あれ以来いただいたままなのですが、よろしいのですか?」

 

「構わないよ。今みたいな感じで使ってくれればいいから」

 

「はい。わかりました」

 

最初にヒナ、次いでユキ、更に姫ちゃんから質問を受ける。

 

「オウカ。今のヤツ、僕にも出来ないかな?」

 

「あー、止めとけ。術式がとんでもなく複雑だから、多分俺にしか使えない」

 

「えー、そんなぁ」

 

「オウカ様!その術式、ぜひ自分に研究させてほしいであります!」

 

「うーん、ごめん。これに関しては門外不出ってことで」

 

「あうー、残念であります」

 

シンクとリコちゃんは興味津々という様子だったが、申し出についてはお断りした。

 

「相変わらず、非常識が服を着たようなヤツだな」

 

「エクレール、その言い方はちとひどくないかい?」

 

「自業自得だ」

 

エクレールは相変わらず対応が素っ気ないなぁ。

 

「で、この後はどうするんだ?」

 

「そうですね……どうしましょう?」

 

「何も考えてなかったのか……」

 

俺の質問に対して、首を傾げる姫ちゃん。

 

「私は引越しの作業があるけど……」

 

「そうだったな。なら、とりあえずそれを片付けよう。全員、風月庵に移動!」

 

『『『はーい!』』』

 

ユキの呟きを拾って、一先ず風月庵へ。

 

ここにいる全員でやれば、引越し自体はすぐ終わるだろう。

 

その移動の最中、ヒナが俺の傍に寄ってきた。

 

「ところで、オウカの転移式を使えば良かったのではござらんか?」

 

「徒歩3分の距離だぞ?それで楽をしようなんざ、この俺が許さん」

 

「なるほど。確かに便利に慣れてしまうのはよくないでござるな」

 

「そういうこと。……っと、着いたな」

 

「うむ。やはり近いでござる」

 

風月庵に着いたところで、俺達は会話を切り上げた。

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