なろう系と呼ぶには、冒涜的すぎる   作:おさわHSM

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主人公のテンションがジェットコースターなので最終回です


十話・お前本当に主人公か?

俺たちは相変わらずこの魚臭い牢屋に閉じ込められたままだ。インスマス連中は、俺の力を警戒し、遠巻きに最低限の食事だけを差し入れてくる。魚と、妙に湿っぽいパン。食えたもんじゃねぇ。

 

「ほら、食え」

俺は、自分の分の食事を、エイに押し付けた。

 

「俺は要らん」

実際、半分は嘘だ。腹は減る。だが、俺の体はチート構造のおかげで、魔力さえあればある程度空腹は濁せる。と言うかこんな人間が食う用なのかすら分からんものを食いたくない。この魚とか寄生虫居そうだし

 

「……わたし、いらない」

エイは目を伏せたまま、ぼそりと呟いた。

 

「あっそ。好きにしろ」

食わないならそれでいい。ぶっちゃけ俺はコイツが餓死しようがどうでもいい。寧ろお前食う必要あんの?そっちの方が気になるよ俺

 

やがて、空腹になったのかこのインスマスはパンと魚を食べ始める。食う必要あるんだ。俺はそう思った

 

夜になると、俺は小声でユウゴに話しかけ、計画を進める。

「おいユウゴ、この施設の周りには本当に他の人間が居ないんだな?」

普通の質問だ。だけど大事。外に人がいるかいないかで、俺らの選択肢はぜんぜん違う。

 

ユウゴは画面の情報をちょっとなぞってから、答えた。

「監視網は薄いです。外の生存者カウントはほぼゼロ、ってかここ海上ですね。たまに発狂者が出歩いてるけど、恐らくインスマス達に壊されちゃった人間ですね」

言い方が淡々としてて無感情だけど、まぁ今は情報が知れればそれでいい。寧ろ被害とか人間らしさとか求めた所で無駄だし

 

「よし、じゃあ計画立てるか」

俺のテンションは妙に上がる。なんでだろうな。多分、天啓に似た悪巧みの匂いがするからだ。健全な男子高校生ってのは、そういうのに弱いんだよ。

 

ユウゴはひと息ついて囁くように続ける。

「物理的な警備は薄いです。でも魔術的な結界と異常反応は残ってますね。多分認識阻害系の結界ですかね?直裁に力技やっちゃうと余波でここが海の藻屑になりますね」

フム。つまり派手に爆発させるのはヤバい、ってことだな。俺はちょっとがっかりした顔をするが、すぐに笑う。

 

「じゃあさ、爆発とか大仰なことはやめて、エンタメ系で行こうぜ。俺が無双するとか、インスマス相手なら行けるだろ」

言葉は軽いが、頭の中では細かいイメージが動く。戦闘→混乱→隙を突く。シンプルで、やりがいがある。カッコイイし。

 

ロウドが小さく笑う。

「お前なぁ。流石にインスマスの上位個体とかいるだろ。それにダゴンが招来する可能性も頭に入れとけよぉ?」

 

「えー」

ちょっと残念。男児たるもの、無双と言うのは憧れるのだ。ゼ〇ダ無双とか戦〇無双とかみんな好きでしょ?

 

ユウゴが続ける。

「あと無双も下手したら建物事崩壊しますからね?門の創造間に合わなかったら水圧でプチッですよ」

 

「やっぱり結局、破壊規模を制御して暗殺かぁ」

俺はちょっとだけ得意げに笑う。高校生らしいノリだ。だが心のどこかで、これが簡単じゃないってこともわかってる。でも、やっぱりこう言う計画を考えるの楽しいものだ。魔力を使えば疲労もは大きい。回復も遅い。だが、その分楽しさもある

 

「段取りはこうですかね」ユウゴが声を出す。

「私とロイノス、ブレージュとベルゼブブで魔力を込めたら即時起動するタイプの印を貼っておきます。で、恐らくアイン様がダゴンの生贄にされそうになると思うので、そのタイミングでアイン様が起動してください。残りがいたら私達で掃除します」

 

計画書みたいな口調だけど、ユウゴの説明は論理的だ。俺はそれを聞きながら、頭の中でもっとくだけた言い方を並べる。

 

「要するに、お前達が準備して、俺が全員ぶっ殺す。OK?」

俺は拳をぎゅっと握る。瞳が少し冴える。胸の奥にある刃のざわめきも、やる気に混じってくる。

 

ユウゴが大きく首を振る。

「はい!大体合ってます!」

 

「OK!」

俺は短く答え、次にふざけた声で付け足す。

「帰りにいい飯奢ってくれよ。寿司とか。ユウゴの発明品じゃなくて、ガチの回らない奴な」

 

ユウゴが呆れた顔をするけど、どこかで笑っている。夜の牢屋で俺らは小さい共同体みたいになっていた。計画は子供じみてるけど、実際やるかどうかは別の話だ。――でも、やるのは俺たちだ。

 

星の精が膝の上で小さく光を震わせるのを見て、俺はそっと印をポケットに確かめる。冷たい感触が手に伝わる。最後に俺は小声で言った。

「よし、なら暫くはこの臭い牢屋で待機するわ。そっちは任せたぞ」

 

窓の外の世界は静まり返っているが、俺の胸の中だけは確実に火がついていた。少年っぽいノリと、少しだけ大人びた計算が混じる。これが俺のやり方だ──やるなら派手に、後先は知らん顔で。第一この建物の所有者は人間じゃない。よって器物損壊も住居破壊も適応されない。完璧な理論だね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに、このまま門の創造で逃げるのは無しですか?」

ユウゴの声が、薄暗い牢屋の隅で淡々と響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はは。どうしたんだよ、急に」

俺は軽く笑ってやり過ごすつもりだった。本当に、ただの雑談のノリで返すつもりだったんだ。計画は計画だ。逃げ道を作るのは正解だし、でも今はちゃんと礼を尽くしてやる段取りだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、空気がきしんだ。

肩越しに冷たい金属の感触が首筋に触れる。瞬間、笑いは消え去った。幽体のカミソリ──具現化したナイフが、ユウゴの首元に突きつけられている。刃は光らず、だが確かに冷たく、空気を裂いた。

 

ユウゴの表情は真顔だ。その目の奥にあるものは、単なる疑問。俺の事を心配する目じゃない。ただ、計画の不備と主人の思考に疑問を抱いただけ。俺はその刹那、全ての音が遠ざかるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけた笑いを吐き捨てる。

「こんなゴミ共、生かしておく必要ないでしょ?」

声は平然としていた。けれど、胸の底では何かが音を立てて壊れる。言葉にした瞬間、理性の縁が一枚剥がれるような手応えがあった。

 

思考がギアを変える。普段の理屈めいた計算が、血と刃の短い命令に塗り替わっていく感覚──

相手はクソみたいな宗教で燃えてるだけの連中だ。無垢だの初物だの礼賛だの、全部伝染する病だ。放っておいても世界が蝕まれるなら、俺が掃除してやるのが一番合理的だ。環境美化、だ。笑えるほど現実的な言い訳が、頭の中を冷たく通り過ぎる。

 

ユウゴは何も言わない。問いかけだったのか、確認だったのか――今となってはどうでもいい。刃先が首筋に押し付けられた微かな圧力が、如何にも生物的な危機は目の前の存在にはなんの価値も持たない。殺意は論理になる。論理は行動を呼ぶ。

 

「よし。寝よ」

低く、短く、俺は言った。

テンションは一瞬で降りる。冷静な計算と狂気じみた確信が同居する瞬間。神話が混ざった途端、俺の中の刃だけが澄んでいくのを感じた。

 

感じたから、寝る。

 

こんなクソ深夜に計画とか考えるべきじゃないね。お休み

 

 

 

 

「あぁ、やっぱり最高ですアイン様♡」

「お前もなんか変な方向に目覚めてきたなぁ?」

「準備しますよ。怒られちゃったんですから、せめて計画ぐらいは完璧に遂行しますよ」

「腕がなります?アイン様は喜びます?」

「僕様今回もお休みなのだ?」

「怒られてて草w私はアイン様の為に働きますよー♡」

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