なろう系と呼ぶには、冒涜的すぎる   作:おさわHSM

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生徒が可愛いので最終回です


十五話・内心ウッキウキなオタク君

うーわ。第一印象終わってる。

(冷静に考えたら魔力残量は理解してたし、先に蜂蜜酒飲んどけば良かった……)

めっちゃアホやん俺。

 

ゆっくりと目を開けると、白く光る天井が目に入った。

眩しい。けど、どこか見覚えのある“雰囲気”がある。

 

(……ん? この無機質な金属の壁、ベッド横にある透明な機械。これ、なんかSFチックだな)

 

視線を少しずらすと、丸いパネルが静かに光を放っている。

何かのデータをモニタリングしてるっぽい。

その隣には試験管とか、冷却装置みたいなのもある。

 

(……これ、病院……ではないな。機械がハイテクすぎる)

 

薄いブランケットをどけて起き上がると、目の前のパネルに英語と数字がびっしり並んでいるのが見えた。

“L.D.S. Medical Bay”

(LDS……ライフ・データ・システム? あー、多分ここミレニアムか。ここ以外でこんな機械管理してる場所、キヴォトスじゃ無いもんな)

 

そう思った瞬間、思わず苦笑いがこぼれた。

 

(マジかよ……ミレニアムの医務室、初めて見た……)

(原作だとイベントとかで医療シーン一切無かったから、実際こういう施設あるのか分かんなかったんだよな……)

 

現実味のあるベッドの硬さ。

規則的に点滅するモニターの光。

 

白衣を掛けてある棚の隅には、ミレニアムのロゴ――校章はミレニアムの頭文字である「M」の意匠化、更には「7」と数式では自然数を意味する「N」を組み合わせた物と星のマークが刻まれている。

 

(うわ……ファン的にテンション上がるなこれ。いや、感動してる場合じゃねぇな。死にかけだったんだし)

 

(死にかけ...そう言えばエイは……?)

ま、どうでもいいか

 

そう思った瞬間、ドアの向こうから足音が近づいてくる。

白衣を着た青年――見覚えがある。

あぁ、やっぱり“先生”だ

 

 

“起きたんだね。大丈夫?”

 

目の前の男――白衣の裾を揺らす青年が、穏やかな声でそう言った。

首にぶら下げた連邦捜査部S.C.H.A.L.Eのカード。

手に持つシッテムの箱。

少し寝不足気味の目元。柔らかい笑み。

あぁ、やっぱりこの雰囲気。

間違いない、“先生”だ。

 

「……大丈夫。初めまして、“神野先生”」

 

“あれ、名前……誰かから聞いたの?”

 

「……あっ」

 

(やべぇ!? 素で言っちまった!!)

 

慌てて視線を泳がせた俺は、すぐ近くの白衣を指差す。

「あ、えーっと……名札、名札に書いてあるじゃん。神野、って」

 

神野先生は一瞬“あれ?”って顔をしたけど、すぐに笑って頷いた。

“あぁ、そっか。気づいたんだね。よく見てるなぁ”

 

(セーフ!ギリセーフ!! 危ねぇ!この人、鋭いからマジでバレたかと思った)

 

「まぁ……観察力だけは自信あるから」

 

神野先生は小さく笑い、俺のベッド横のモニターに視線をやった。

その動作の一つひとつが、なんか落ち着く。

“人を疑う”ってことを知らない手つきだ。

流石生徒タラシ。さっさと喰われてしまえ。

 

“体の調子はどう? 頭痛とか、吐き気はない?”

 

「んー……ダルいくらいかな。たぶん魔力切れ」

 

“魔力切れ?”

 

「あ、えっと……説明すると長くなるんだけど。俺、普通の人間じゃなくて、魔道士ってやつなんだ」

 

“魔道士、ね……すごいね。魔法使えるの?”

 

「まぁ……魔法って言うより、“魔術”だけどね。“理屈で動く奇跡”って感じ。ほら、そういう世界観あるでしょ?」

 

“あるある。ミレニアムの子たちも似たような言葉、使うときあるよ”

 

(おお……これが原作じゃ見れなかった、“会話のラグ”か。

NPCじゃなくてちゃんと“人間”として返してくるんだな……)

 

神野先生は少し考えて、柔らかく笑った。

“……君の言うこと、全部信じられるわけじゃないけど、嘘を言ってる感じでもないね”

 

「まぁ、俺嘘つくの下手だしね」

 

“ふふ、じゃあ安心した。……そうだ、もう一人の子のこと、覚えてる?一緒にいた女の子。青髪の」

 

(青髪の……あぁ、エイのことか)

 

「うん、覚えてる。生きてる?」

 

“大丈夫、保護してあるよ。……すごく怯えてたけどね”

 

(ま、体ボロボロだしな...俺みたいに殺し合いして来た訳でもないし)

 

神野先生は静かに息を吐いた。

“あの子のこと、君が守ってくれたんだね。ありがとう”

 

「いや……そんなんじゃねぇよ」

 

“優しいね”

 

「……俺は、そう見えるだけだよ」

 

少しだけ、間が空いた。

神野先生はベッド脇の椅子に腰掛け、穏やかに続けた。

 

“なら、優しく見えることも、悪いことじゃないと思うよ。

ここではね、君のそういうところ、きっと大事になる”

 

(……マジで、プレイヤー時代と同じセリフ回しするんだな)

(なんだろう、なんか……救われるわ)

 

“……それでさ、アインくん”

 

「はい?」

 

“あの時、君と一緒にいたロングヘアーの女の子――彼女のこと、知ってる?”

 

ロングヘアー? 一瞬、エイのことを思い浮かべたが、違う。

先生の言い方は、もっと明確に“人間”を指していた。

あの時、座ってた女の子、確か名も無き神々の王女――アリスだ。

 

(あぁ、なるほど……ここで繋がるわけか)

 

「……知ってるかも。顔を見たら分かると思う」

 

神野先生は頷いて、穏やかに微笑む。

“それなら、一緒に来てくれる? 今、彼女はゲーム開発部の部屋にいるんだ”

 

「ゲーム開発部、か……」

(ついに来たな……パヴァーヌ編の現場に!)

 

 

ミレニアムの廊下を歩く。

透明なパネルが床に組み込まれ、足を踏み出すたびに淡く光が走る。

空調の音も、電子音も、どこか心地いい。

それらすべてが、俺が画面越しに見ていた“背景”じゃなくて、

ちゃんとした“空間”として目の前にある。

 

(……やばい、ガチで感動する)

 

壁沿いには、生徒たちが笑いながら端末を覗き込んでいたり、

ロボットを整備していたり、

床に配線を這わせながら叫んでる子もいる。

 

(あの服装……たぶん工学部の子か?

えーっと名札……新素材開発部!?

うわ、原作で名前しか出てこなかった子達が普通に動いてる!)

 

すれ違うたびに、好奇の目が俺に向けられる。

血の跡はもう消えてるけど、まだ包帯が目立つせいだろう。

 

“君、ミレニアムの制服じゃないからね。珍しい格好だし、注目浴びちゃうよ”

 

「まぁ、異世界から来た観光客みたいなもんだからね」

 

神野先生は苦笑した。

“ほんと、どこまでが冗談でどこまでが本気なのか分からないね”

 

「俺も分かんない。割とノリで生きてるからね」

 

(でも――この光景。マジで“ブルーアーカイブの世界”に居るんだなって思う)

(テキストじゃ伝わらなかった、空気の匂いとか、光の揺れとか。全部現実だ)

 

少し進むと、ガラス張りのドアの向こうに“ゲーム開発部”と書かれたプレートが見えた。

見覚えのある場所。

いや、何度も画面で見てた“あの部屋”だ。

 

神野先生がドア横の端末にカードをかざすと、電子音とともにロックが外れる。

 

“ここが、ゲーム開発部の部屋だよ”

 

ドアが開き、中から聞こえてくる声。

元気で、少し賑やかで――とても楽しみ。

 

 

 

 

 

ガチャリ――

 

 

 

 

「先生!……と、廃墟にいた男の子!」

ピンク色の髪が印象的な少女が振り返る。

その表情は警戒よりも驚きに近かった。

モモイ。やっぱり、実物は可愛い。デスモモイとか言う謎の文化を作ったやつを処刑しろ。

 

「神根アイン。よろしく!」

「私はモモイだよ!」

元気な声に思わず苦笑が漏れる。

 

続いて、緑髪の双子の妹が会釈した。

「初めまして。才羽ミドリです」

姉と姿は似ているが姉よりも落ち着いた喋り方。ゲームで聞いたボイスと同じトーンで、現実感がバグる。

 

「やっぱり、“本物”なんだな……」

小さく呟いた俺の声を聞き取ったのか、モモイが首を傾げた。

「え?何か言った?」

「いや、こっちの話」

 

先生が室内を見渡す。

“あれ、あの子は?”

「あれ?アリス?どこいったのー?」

ミドリが不安げに室内を見回す。

「アリスならそこに――」と言いかけた瞬間。

 

 

 

「ッ! アインさん危ない!」

(え、ちょ――)

 

 

 

 

――ぶん、と空気を裂く音。

咄嗟に魔力が体を駆け巡る。

「被害を逸らす!」

視界の端で、青白い光が弾けた。

 

拳が俺の頬のすぐ横を通り抜け、壁にめり込む。

(うぉおい!?俺何かしましたかぁ!?)

 

目の前にいたのは、真顔の少女――アリス。

その目は、機械のように冷たかった。てか機械だし。

 

「コマンド:不意打ちが失敗しました!」

(あ、そういうこと!?)

「ビックリするやろが!」

「次は当てます!」

「待て待て待て待て!!」

 

慌てて手を伸ばす。

「クトゥルフの鷲掴み!」

空間がひしゃげ、蛇のようにアリスの腕を絡め取った。

ガシッ!

 

「えぇ!?アリスが浮いた!」

「ど、どうなってるの?!」

モモイとミドリが揃って叫ぶ。

 

アリスがもがきながら、冷静に分析するような声で言った。

「バインド状態です!でもアリスは解除呪文を覚えていません!」

 

(うん、ゲームのセリフっぽい……STRで突破されないか心配だったけど...魔力込めすぎたかも)

「だから止まれって言ってんだろ!ったく……」

 

先生が一歩前に出て両手を広げた。

“落ち着いて、アリス!彼に敵意はないよ!”

その声に反応したのか、アリスが一瞬動きを止めた。

 

(……やっぱすげぇな、先生。声一つで止められるのか)

 

静まり返った空気の中、アリスが呟く。

「アリスは勇者です。魔皇は倒す存在です」

 

「魔皇じゃねぇ!魔導士だ!」

“いや、魔導士も大概だと思うけど…”

「先生!?味方して!?」

 

ミドリとモモイが顔を見合わせ、同時に吹き出した。

「ふふ……賑やかになってきましたね」

“そうだね、ミドリ”

 

 

 

 

 

 

 

「おいそこ。イチャイチャすんな」

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