なろう系と呼ぶには、冒涜的すぎる 作:おさわHSM
「くっ、悔しい……ですが、これも結果ですね!」
コトリが少し悔しそうに声を漏らす。
最後の一機――訓練用のロボットが煙を上げて倒れた。火花が散り、焦げた匂いが立ちこめる。
アリスの光の剣贈与テストが、原作通りキチンと終わった
俺は腕を組んで、思わず口元が緩んだ。
「……こう見ると数百kgあるレールガンをこんな振り回せる凄いな。」
ミドリが感心したように頷く。
「ふぅ、とりあえず良かった」
ヒビキは肩をすくめながら笑っていた。
「それを使いこなすなんて、本当に凄いね・・・・・・。」
(……ほんと、見てるだけで楽しいな)
あの時の“戦場”とは違う。血も、悲鳴も、狂気もない。
ただ目の前で、青春の一ページを刻む――それが、なんか心地良かった。
「で、実は君にも協力願いたいのだが」
声の方を向くと、紫色の作業着の女の子。髪は短くまとめられ、目の奥が妙に光っている。
この人は――エンジニア部のウタハだ。原作でも割と危険人物枠。
「え、俺?」
「そう。アリスが実戦テストを終えた以上、次は"魔術"による戦闘データが欲しい」
「なるほどね。で、つまり俺がやるのは――」
「戦って欲しい。うちの最新型ロボットと」
「それは良いけど、魔術の話は誰から聞いたのかな〜?」
ユウゴが後ろで肩をすくめる。
「違うんです。ちょっと魔術に関係するAFを作成する過程でウタハさんと意気投合して漏らしちゃったとかじゃありませんから」
「家帰ったらPCぶっ壊す」
「それアイン様にもダメージ入りますよね!?」
「はぁ...ま、良いぜウタハ。手加減はしてくれよ?」
「勿論。では、位置に付いてくれ」
床に描かれた円の中心へ歩く。
視界の端で、金属光沢のロボが脚部を展開した。関節音が空気を震わせ、油の焼ける匂いが鼻を突く。
「ねぇ、ユウゴさん。アインが魔術使えるのって本当なの?」
「あ、私も気になります」
「本当ですよ。アイン様は現存する"全ての魔術"を使用します」
"全ての魔術?魔術ってそんなに多いんだ"
「じゃあファイナルファンタジアとかドラゴンテストの魔法も!?」
「火球とか電気も出せるの!?」
「あはは、そうですね。一つ言えるのは」
「"神話の魔術"はそんな見栄えがいい物では無いですね」
俺は一度、軽くジャンプした。重心を確かめ、手首を回す。
骨の軋みと共に、体内の魔力が循環する。
「ルールは20機の撃墜。ドローン7、人形10、ゴリアテタイプが3機。危険だと思ったら直ぐに止めるよ」
「OK。始めよう」
「戦闘開始!」
銃口が一斉に火を噴いた。
耳を裂くような轟音と閃光が視界を白く染める。
ロボットのセンサーが俺を完全にロックオンしていた。
「いきなり殺意高くね?!」
瞬間、俺は指を鳴らした。
「被害を逸らす」
空気が歪んだ。弾丸の軌道が、ありえない角度で“逸れる”。
床を擦り、壁にめり込み、何発かは真横を通過して――なぜか後方の鉄柵を貫いた。
ギャラリーの空気が変わった。
「な、なに今の?!」
「軌道が……曲がりました!」
「せ、説明を!説明をお願いします!」
「はぇ〜……ロマンだねぇ」
"……あれが、魔術"
リロードの機械音が耳に届く。弾倉がごとんと下りる瞬間を見て、俺は笑った。
「これは、攻めないとヤバい...な!」
手のひらに魔力が蠢くのを感じながら、俺は呟いてから動いた。
「縮地!」
足元の世界が一瞬引きちぎられ、次の瞬間にはロボの懐――その芯に立っていた。
金属の塗膜が指先に擦れる音がする。相手はまだリロード中、視界を戻す間もない。
ここで、体をさらに捻じ込む。
「ゴルゴロスの肉体湾曲」
筋肉が内側から膨れ上がる感触。血管が皮膚の下で浮き出し、肩と前腕に鉄のような張りが走る。普段の俺の体じゃない、改造と魔術が混ざった“戦闘体”だ。
握力が、文字通り腕の血管を浮き上がらせるほど強くなる。
片手を伸ばして、ロボの肩部を鷲掴みにした。
金属の冷たさが直に伝わる。だが、その冷たさを霧散させるほど、俺の掌は熱かった。
一気に体重を乗せ、腰を落とす。油圧のうなりが唸る中、俺はロボを振り上げ――
豪速で叩きつけた。
衝撃が床を伝い、周囲のモニターが一瞬歪む。金属が悲鳴を上げ、関節が砕け、コアが露出して白い火花が迸った。装甲板が千切れ、爆音とともに内蔵の燃料ラインが弾ける。熱が顔を撫で、鉄屑とオイルの匂いが鼻腔を満たす。
「1...」
次、まだリロードは完了してない。射程距離内に居るのは2機——そのまま腰を落として踏み込み、ロボットの中心に拳を打ち込む。
「2…」
破壊したロボの上で引きちぎり次に近いロボの後頭部に叩きつける。人外の余力で振り下ろされた一撃で油を垂らしながら崩れ落ちる
「3...」
リロードが終わり再び降り注ぐ。弾丸がこちらへ向かってくるのを、指先で軽く撫でるようにして魔術を差し向ける。
「被害を逸らす!」
弾道が曲がり、空間が狂ったように捻れる。弾が互いをかすめ合い、三体の機体が弾丸と接触し合って互いに自壊しあう。
「4、5、6…」
残骸を飛び越えながら、俺は次の瞬間には素手で飛び込んでいた。コルヴァスは無し。精神に害を及ぼすかも知れないからね。魔術は流石に使わせて貰うけど
ドローンを指さし、魔力を込める
「破壊!」
金属が軋み、ひび割れが走る。装甲が剥がれ、内部の配線が露出する。相手の可動部が一瞬止まり――俺はそのまま黒い触手を生やすように床から伸ばした。
「ニョグタの鷲掴み!」
空間から伸びた黒い腕がドローンを同時に掴む。金属と油の匂い、モーターの悲鳴。掴んだまま振り回し、破壊を喰らったドローンに叩きつける。
「6、7……」
だが、砲塔を備えたゴリアテ級が、怒涛の砲撃を始めた。装甲板が反射する閃光。鋼鉄の咆哮が耳を裂く。砲弾の列が一直線に形成され、こっちへ向かってくる。
「ヤバ!?」
「アインさん!」
"アイン!"
掌に冷たい力を集中させ、頭の中で古い呪文を書き換える。
「クトゥルフの鷲掴み!」
名を呼び、指を裂くように振るうと、見えない巨大な圧力が空中に生まれた。空間をねじ曲げ、砲弾の前でふと向きを変える。俺の意思のままに、弾丸の流れを掴み直す。
その圧力が、反転した弾道を連鎖的に叩き込み始めた。弾が弾に当たり、連鎖的に反動を返し、ゴリアテの側面を直撃する。砲塔が吹き飛び、人形ロボットとドローンユニットが粉砕される。爆炎の波が七機をまとめて吞み込み、鉄片と火花が空中に舞った。
「8、9、10、11、12、13、14!」
数を呟きながら、俺は胸の奥で熱を感じる。肉体が魔術で膨張し、骨が浮き立つ感覚。素手で殴り、素手で叩き、素手で受け流す――拳の一発一発が世界を刻んでいく。
狙いを定める。相手の装甲に触れた魔力を、俺は一気に収縮させるように捻る
「萎縮」
言葉と同時に、掌から黒い糸のような魔力が走り、触れた部分の物質を内側から収縮させた。金属の表面が瞬時にひび割れ、炭のように焼け落ちる。装甲の継ぎ目がキシリ、崩れ、可動部が一瞬で脆くなる。
その“軋み”の隙を見逃さない。砲撃が届く――当たる。合図のように空気が裂ける音がした瞬間、俺はそこには居ない。
「比叡山炎上:神速!」
縮地とは違う。これは体ごと一瞬で加速し、存在を押し込む“踏み込み”だ。地面を蹴ったときの衝撃で床がひびを走らせ、周囲のコンクリが粉を吹いた。衝撃波が波紋のように広がる。
目の前にいた三体が、同時に吹き飛ぶ軌道に乗る。俺は足を一瞬で沈め、腰を捻じ込み、掌を振るう。
「奥義:連撃」
右の正拳から始まり左の掌底でかちあげる。残った2機の片方にひねりを加えて左足の蹴り、もう片方にその勢いで膝をねじ込む
「15...16...17...」
砕け残ったのは、でかいゴリアテ級が三機。砲塔を抱え、装甲を厚く纏った厄介者だ。地を踏むたびに床が唸る。観客席の顔ぶれが一瞬引き締まるのが見える。
「残りはゴリアテ三機。さて、どう突破する?」
「はは、ちょっとカッコイイとこ見せるか」
掌に魔力を集中させる。色が濃く、粘度を持つように感じる。魂の奥を触られるような、違和感と力の高揚。喉元で古い呪文の名が震える。ここで温存していた魔力を全部吐き出す。
「ヨグ=ソトースの拳!」
術名を叫ぶと同時に、俺の周りの空間が歪んだ。見えない力場が拳の形をとり、巨大な球状の圧力が三機を包み込む。触れた瞬間、金属の分子が押し潰されるような音がして、装甲が内側からへしゃげる。轟音と共に、三体が一つの塊となって潰れ落ちた。
衝撃で床が割れ、白煙と火花が吹き上がる。耳鳴りがして、世界が一瞬スローモーションになったように見える。掌の感触は重く、骨の奥まで振動が伝わる。魔力は底を尽きかけ、頭が熱を持つのがわかる。
周囲の声が一斉に上がる。モモイの歓声、ミドリの興奮した声、ユウゴの軽い溜息。コトリの困惑とヒビキの関心。ウタハは驚きと悔しさが混じったような表情で端末を叩いている。
「終わり...だよな?」
俺はゆっくりと息を吐き、肩を回した。全身の筋肉が熱を帯び、膝が微かに震える。ヨグ=ソトースの拳は強引に世界を押し潰す。その代償は――魔力の大幅消費、体の疲労、そしてしばらく動けないこと。
それでも、拳の重みと共に得た確かな手応えが胸を満たしていた。数字を数え終えた後の静寂は、破壊の余韻と共に甘く苦い。
「アインすごい!」
「せ、説明を!説明をお願いします!」
「...戦闘用ロボを一撃。すごい火力だね」
「ははっ……当然だろ。俺を誰だと思ってんだ」
片手を軽く挙げて見せる。
余裕ぶった笑みを浮かべてみせるが、視界の端がぐらぐら揺れる。
(あ、やべ。魔力、ほとんど残ってねぇ……)
「俺は少し席を外す。先生、用があったら呼んでくれ」
"うん"
部室を出てドアが閉まった瞬間、俺は壁に手をついて崩れ落ちた。
「じ、じぬぅ……! 魔力使いすぎたァ……!」
床に倒れ込み、白目を剥きかける。
脳が焼けるように痛い。筋肉は悲鳴を上げ、魔力回路は空っぽ。
――だが、満足だ。
異世界に行って魔術で無双。厨二病なら誰もが憧れる状況を今再現したのだ!
「……ふ、ふはは、これぞ――」
言いかけた瞬間、足音が近づく。
黄金色の蜂蜜酒が軽く揺れる音と共に、聞き慣れた落ち着いた声が響いた。
「カッコつけすぎましたね。死にかけじゃないですか」
見上げると、そこには黄金色の蜂蜜酒の瓶を片手にしたユウゴがいた。
相変わらず表情は穏やかだが、目の奥には呆れと少しの心配が混じっている。
「演出って奴だよ。カッコよかっただろ」
「はいはい、“魔皇様”の演出ですか」
「違ぇよ! 魔導士だっつの!」
ユウゴはため息をついてしゃがみ込み、瓶の栓を抜いた。
蜂蜜酒特有の甘く濃厚な香りが、疲弊した身体にじんわり染み渡る。
「蜂蜜酒もらこの前黄色の印教団を潰した在庫が最後です。そろそろ安定供給も考えた方が良いですよ」
「……あー、嫌な事言うじゃん。後回しにさせてくれよ」
ユウゴが差し出す瓶を受け取り、喉に流し込む。
とろりとした液体が胃を温め、徐々に魔力回路が再接続されていく感覚。
「……生き返る」
「まったく、あなたは異世界に来ても根っこは変わりませんね」
「はっ、褒め言葉として受け取っとくわ」
蜂蜜酒の瓶を傾けながら、俺は天井を見上げた。