なろう系と呼ぶには、冒涜的すぎる 作:おさわHSM
家に帰ると、そこはもう俺の居場所というより、小さな異界のリビングになっていた。
玄関を開けた瞬間、視線を感じる。――人型の星の精がソファで新聞を広げ、時折頭を傾げてページをめくる音。
「お帰りなさい、アイン様」
小さな声で言うのは、星の精。西洋執事風の服装を身にまとい、世の女性が黄色い声援を飛ばしそうな容姿で、こちらに微笑みかけている。
「ご飯はまだですか?お腹が空きました?」
飛行するポリプは空中をふわふわと漂いながら言う。
小さな羽のような触手が、微かに光を反射させて、部屋の天井に揺れる影を作っている。
キッチンでは、シャッガイ由来の昆虫が人型で包丁を握っている。
「今日アイン様の大好きなハンバーグですよ〜♡」
醜い本性の蟲が、笑顔を作ろうと努力しているのがわかる。
見た目は人間だけど、体の隅々に昆虫の特性が残っているせいか、手先が無駄に器用だ。
そして、蛇人間。人型だが腰のあたりにうっすら鱗の感触が伝わる。
「また宿題の山?手伝いましょうか?」
舌打ちの代わりに、笑顔の裏で舌がチラリと見えた瞬間、俺は思わず顔をしかめる。
いや、正確には「元の姿だったら即殺」だ。今は人型で本当に助かってる。
ショゴスは、部屋の隅でモコモコした存在感を放っている。
人型の姿をしていても、体がら粘液が漏れ出でて、どこか不安定そう。
でも存在感は強く、椅子を支えるのも、重い荷物を持つのも、何でもやってくれる。
力は間違いなくこの中で一番強い。扱いやすくしてくれてるだけで感謝しかない。
俺は靴を脱ぎ、適当に背伸びをする。
――契約の対価? もちろんある。
だが、生活にまで入り浸ってるこの面々を見てると、俺は時々思う。
「本当に契約なの?」
いや、拒否する気なんて全然ないし、むしろ楽しい。
だって、帰るとみんながいて、家が賑やかになる。日常の些細な動作すら、楽しみに変わる。
「如何なさいましたか??」
星の精が新聞を置く。
「お前さっきまで隣に居なかった?」
「奉仕種族足るもの、ご主人様より早く帰るのは当たり前です」
「新聞読んでるだけじゃねぇか」
俺は肩をすくめる。今日も平和だ。契約というより、もう家族みたいな感覚だ。
人型でいる面々の影に、元の姿を想像すると少しぞっとするけど、家にいる時はそれを忘れて笑える。
――殺意を抑える必要があるせいで、人型で生活してくれてるんだろうな。
まあ、俺としては全然構わない。面倒だけど、可愛い奴らだ。
部屋に沈む夕陽の光に、影がゆらゆら揺れる。
俺はコタツに腰掛け、軽くため息をつく。
明日も学校だ。でも、家に帰ればこの面々が待ってる。
契約? 対価? そんなことはどうでもいい――と、少なくとも今は思える。
今日も、家は少しだけ異界で、でも――居心地は悪くない。