なろう系と呼ぶには、冒涜的すぎる   作:おさわHSM

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今回急ぎ足過ぎたので最終回です


十八話・原作ブレイクは死ゾ

夕陽が落ちかけていた。

キヴォトスの空は、どこか人工的な赤さをしている。ネオンの粒子が漂って、街全体がほんの少し夢を見ているようだった。

 

「そういやさ」

 

俺は、ベンチの上で足をぶらつかせながら口を開く。

 

「俺、この後どうしよ」

 

戦闘が終わり、アリスはスーパーノヴァを手に入れた。ユウカが部員審査をしに来て、ユズとの会合も済んだ。

――気づけば、あたりはもう夕闇だった。

 

先生は少しだけ首を傾げて、空を見上げた。

 

“あ、そっか。アインは帰る場所、無いんだね”

 

「まぁ、そうなんだよねぇ……。学校も無いし、暫くはただの無職。この歳でニートだよ」

 

苦笑いで誤魔化す。冗談っぽく言ったつもりなのに、声の奥に自分でも聞きたくないほどの“空白”が滲んだ。

 

“私の権限で、どこかの学園に編入させることもできるけど……”

 

「女子校で男ひとりとか無理でしょ。死ぬ。色んな意味で」

 

先生は「ふふっ」と笑った。

風が髪を揺らし、オレンジ色の光が横顔を照らす。その穏やかさが、どうしようもなく眩しかった。

 

“うーん……どうしようか”

 

「どうしようかねぇ」

 

言葉が途切れ、二人のあいだに静寂が落ちる。

その沈黙を破るように、アインは小さく息を吸った。

 

「あ、そうだ。先生のとこで面倒見てくれない?」

 

“……え? 私のところ?”

 

「うん。連邦捜査部《シャーレ》。あそこって部活扱いでしょ? 学生の俺が入っても不自然じゃないし」

 

 

 

 

先生は少しだけ考えるように視線を伏せた。

 

 

 

 

“……できなくはないけど、オススメはできないかな”

 

「やっぱ、印象悪い?」

 

“ううん。そうじゃないよ。ただね――私は、アインに“学生時代”をちゃんと生きてほしいの”

 

 

 

 

俺は眉を上げた。

 

“同年代の子と話したり、バカやったり、勉強したり。そういう“今しかない時間”を、ちゃんと感じてほしいの。

私のもとにいると、そういうのがちょっと難しくなると思うんだ”

 

 

 

 

 

 

 

 

……あぁ、この人は本当に“先生”なんだな。

面倒見が良くて、優しくて、だけど少しだけ距離を保つ。

だからこそ、ちょっとズルい手を使いたくなる。

 

「……俺さ、女の子にいい思い出ないんだよ。あ、別に恐怖症とかじゃないけど」

 

“うん”

 

「昔ちょっと無視されたことがあってさ。そのせいで苦手意識あるんだ」

 

 

 

先生の顔から、すっと笑みが消える。

何か言いたげな目。でも、言葉にはしない。ただ頷く。

 

 

 

「それに、あー……失礼になるけど」

少し間を置いて、俺は笑う。

「ここの女子、生身じゃ勝てない。戦闘力、物理的にヤバいもん」

 

 

“……まぁ、確かに。皆にはヘイローがあるからね”

 

 

「魔術ってこう見えても使い勝手が悪くてさ、自衛のためにかわいい女の子を傷つけるのは嫌なんだよね。だから──シャーレなら安心出来るかなって」

 

(悪いな、先生。【魔術:力の言葉】)

 

ふと、風が止む。

先生は目を細めて、穏やかに言った。

 

“……分かった。それじゃあ、アインをシャーレに登録しておくね。

それと――もしよかったら、部活をやってみない?”

 

「部活?」

 

“うん。実はシャーレには『連邦捜査部』って部活があってね。私が顧問なんだ”

 

「……もしかして、そこに入れてくれるとか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

“違うよ。アインには――部長になってほしいの”

 

 

 

 

 

 

 

「………………え、は?」

 

冗談だろ、と思って見た先生の顔は、冗談じゃなかった。

 

 

 

 

“お願いできる?”

 

 

 

「……俺でいいの?」

 

 

 

“うん。むしろ、アインにお願いしたいんだ”

 

理由を聞くより先に、先生の目がやけに真剣だった。

その目を見た瞬間、俺はもう断れなくなっていた。

 

「……分かった。やってみるよ」

 

“ありがとう。これから、よろしくね”

 

「……あぁ。よろしく」

 

小さく笑い返した。

――あぁ、やっと少し、息ができる場所を見つけた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────────────────────

 

「……はぁ。先生、マジで良い人だなぁ」

 

夜のシャーレは思ってたより静かだった。

外の街灯がガラス窓を照らして、白い光が部屋の床を斜めに切る。

広い。静か。快適。

――なのに、胸の奥がちょっとだけチクッとする。

 

(あの人を少し騙したみたいで、悪いな)

 

最初は口八丁で“保護してもらった”つもりだったのに、気づけば本気で心配されてた。

あの優しい笑顔を思い出すたびに、ちょっと罪悪感が疼く。

 

「……ま、でもだ」

 

アインはベッドの上で伸びをして、手のひらを叩いた。

 

「それはそれ、これはこれ。レッツ改造タイム」

 

(やるしかねぇ。だって死にたく無いのはマジなんだもん)

 

そう呟き、手のひらを掲げる。

指先から魔力が滲み、空気がわずかに歪んだ。

 

【箱の創造】

 

床の上に光の円が浮かび上がり、ゆっくりと何かがせり上がってくる。

最初に現れたのは、「キモいタコ」の像――八本の脚を組み、顔のような部位には無数の目が彫られている。

金属とも肉ともつかないその質感が、月明かりに照らされてぬめぬめと光った。

 

「うん、いい出来だ。生徒が見たら発狂するだろうな」

 

次に出てきたのは炎の塊のような銅像。

赤銅色の金属の中で、ほんのりと火が灯っているように見える。

そして、その隣には黒猫の像――尾が二つに分かれ、瞳の中に星が瞬き、二足歩行。

 

「うん、これで“キモい・危ない・可愛い”の三点セットだな」

 

机の上には、厚い魔導書をいくつも並べた。

表紙には触手のような文様が這い、時折ページが勝手にめくれる。

窓際には、大陸から持ってきた夜にだけ咲く花と、

透明な鉢の中でじっと動かない羽のある虫を置く。

 

「ふっ……完璧だ。これで“異世界転移系男子の部屋”の完成だな!」

 

魔導書を閉じて背もたれに寄りかかる。

異世界の神話と科学都市――まるで相容れない二つの世界が、この部屋では不思議と調和していた。

 

(……あー、でも先生が見たら絶対怒るな)

 

そう思いながら、アインはにやりと笑った。

満足げに手を叩き、魔力の流れを止めると、部屋の空気がほんのりと温かくなった。

 

 

 

 

俺は――三柱の神格と契約している。

 

普通なら即座に正気を失って、人格ごと宇宙の塵になる類いの行為だ。

でも、俺はそれをやった。必要だったから。

そして今も、生きている。

 

一柱目はクトゥルフ。

眠れる深淵の王。

海の底から夢を通して人に囁き、世界の形をゆっくりと歪めていく存在。神話生物の中じゃ雑魚だが人間程度なら数時間で全滅させられる。人嫌いで有名なクトゥルフと契約を結べたのは幸運だったな。なんで結べたんだろ。

 

契約の代償は「安定した魔力の供給」

定期的に象に魔力を与えてクトゥルフ復活の手助けをする。危なく見えるけど、俺程度の魔力量じゃ糠に釘。生きてる間にせいぜいアイツの右手分の魔力を渡せるかどうかだ

 

 

 

二柱目はクトゥグア。

燃え盛る炎の王。

燃焼と破壊、憎悪の象徴。俺が使ってる"コルヴァスの剣"やとある魔術は、全部コイツの祝福による。

 

代償は「ナイアルラトホテップの消滅」

千の無貌を消滅させる事が条件の契約。俺にとっては神話生物は皆殺しにする予定だから実質デメリット0。それにこの前みたいに"ヤマンソ爆弾"が出来る。ミスったら三次元が逝くけどね

 

 

 

そして三柱目――バースト(バステト)。

古代エジプトの太陽神ラーの娘にして、愛と戦い、そして再生の女神。

クトゥルフやクトゥグアが“破壊”の神なら、こいつは“再生”の側。何よりあのラヴ・クラフトお気に入りの猫の神格。

人を癒し、時に牙を剥く、柔と剛を併せ持つ存在だ。強い!絶対に強い!契約内容が役に立った事はないけど!

 

契約の代償は「飯の供給」。

たまに家に来て勝手に甘いものを持っていく。キャットフードを与えようとしたら半殺しにされた。その為俺が買ったショートケーキを俺が食べられる確率は3割ぐらいだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、なんでここで契約した神の話を唐突にしたか分かるか?

――感じるんだわ。気配を、キヴォトスから。

 

ただの気のせいならいい。

でもこの“学園都市”ではありえない量の神性と魔力を感じる。

しかもバーストに関してはなんか市街地地からするし。

どこの世界も神の手が入るとロクなことにならねぇ。

 

(クトゥルフ、バースト……お前ら、また何かやってねぇだろうな)

 

胃が痛い。マジで。

俺がこの世界に来てから、胃薬の消費量がエグいんだわ。

キヴォトスって女の子しかいない学園都市だろ?

つまり、全員がヒロインポジなんだよ。

その中に神話汚染を感じるとか……どんな地獄のバグ混入だよ。

 

いやほんと、こっちは平和に暮らしたいの。

日常系をやりたいの。

朝起きて、授業受けて、女の子とキャッキャうふふして、

仲良くなった子に「アインさ〜ん!」とか言われる青春を送りたいの。

 

なのに現実はどうだ?

初日で死にかけるわ、

奉仕種族が「アイン様ー!」って騒ぐわ、

カッコつけすぎて死にかけるわ

 

 

「胃が、痛ぇ……」

 

思わず腹を押さえながら、天井を仰ぐ。

夜の光が彼の顔に斜めの影を落とす。

 

(ま、いいや。とりあえず、神話臭が強くなる前に手を打つか)

 

俺は立ち上がり、部屋の中心に描いた魔法陣の上に立つ。

指先に光が灯る。

空気が、ぴんと張り詰めた。

 

「よし……取り敢えず“異常”を探すぞ。頼むぜ、俺の胃袋」

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