なろう系と呼ぶには、冒涜的すぎる   作:おさわHSM

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タイトルがどうでもいいので最終回です


五話・暗いところが怖いのって、ちゃんと暗所恐怖症って名前があるんだって

家の扉を押し開けると、ギシギシと古い木の軋む音が響いた。

湿った空気が鼻腔をくすぐる。カビと埃、古い木材の匂いが混ざった不快な匂いだ。

光はほとんど届かず、懐中電灯の光だけが、壁に貼られた剥がれかけの壁紙や、倒れた家具の影を照らす。

 

俺はゆっくり足を踏み入れる。

――PLだった記憶があるから、この館がどれだけ危険か、何が起こる可能性があるかは想像できる。

でも想像できるだけじゃ、生き残れる保証はない。普通の人間なら、ここに入った瞬間に心が折れるだろう。

 

廊下の奥から、床に散らばったガラスの破片がきらりと光る。

踏めば音が響くことを知っていても、慎重に足を進める。

壁の隙間からは、微かに冷たい風が漏れてきて、鳥肌が立つ。

「……いや普通に怖いわ。お化けとか出てきそう」

俺は心の中で呟く。神話生物の特徴は知っている。でも、知っている。それだけじゃ意味はない。

 

階段を上ると、上の階はさらに暗い。

床板は抜けそうで、踏むたびにぎしぎしと音が鳴る。

壁の壁紙は剥がれ、湿ったカビが浮いている。

――ここに人が住めるわけがない。ここに入った人間は、精神も体もすぐに追い詰められるだろう。

 

懐中電灯の光に、倒れた椅子の影が伸びる。

俺はそれを避け、ゆっくり進む。

人間なら、暗闇でこうして影を見るだけで恐怖に囚われる。

何が現れるかわからない恐怖。足音、匂い、微かな動き。

――それだけで、脆弱な人間は容易にパニックに陥るんだ。

 

館の奥、窓の割れた部屋に差し込む月光が、埃を舞い上げて幻想的な光のカーテンを作っていた。

俺は懐中電灯を消して、その光に目を慣らす。

――PLの記憶がある俺は知っている。ここで何かが動き出すかもしれない。

でも、今はまだ影だけだ。人間の脆さを実感するには、十分すぎるほどの空間だ。

静寂の中、微かに風が吹き、古い扉が軋む。

 

リビングと思われる部屋、埃まみれの机の上に、折れたノートが一冊置かれていた。

ページをめくると、古びた文字でびっしりと書き込まれている。

 

「……なんじゃこりゃ」

懐中電灯の光を当てながら、俺はつぶやく。

紙には、ここで起こった不可解な現象の記録が並んでいた。

 

【人が消える。夜ごと奇怪な声が響く。影が人の形をして動いた。見たこともない生物を目撃した】

 

一つ一つの文章が、肌をざわつかせる。

──普通の人間なら、これをどう感じるだろう。

でも俺は知っている。PLとしての記憶があるから、これらの現象が神話生物によって発狂ないし影響された人間かま残した手記だと

 

紙の端には小さな走り書きもあった。

「助けを求めるな。ここに踏み入った者は、運命に従うしかない」

 

──ふう、これは読む価値無さすぎるな

心の中で小さく笑いながら、俺は手記を懐にしまう。

──これで分かるだろう? ここはシナリオの中なんだ。俺が知っていることと、普通の人間が知っていることの差が、どれだけあるか

 

こちとらTRPG歴10年じゃ。舐めんな

 

懐中電灯を握り直し、館の2階足を進める。

階段はギシギシと不気味に軋み、踏み外せば転げ落ちそうだ。

埃の匂いと、微かに血の匂いが混ざる。

 

 

 

──うわ……

 

 

 

廊下の片隅に、倒れた人の死体が横たわっていた。

古い制服に血が乾き、硬直した体が不自然に曲がっている。

目は開いたまま、虚ろな視線が俺を見返す。

──普通の人間なら、ここで立ち止まってしまうだろう。

でも俺は知っている。これはシナリオの布石に過ぎない。

 

(不意打ち過ぎんだろ...今のでSAN値幾つ減ったよ)

 

さらに進むと、床や壁には奇怪な足跡がついていた。

人間のものではない、異様に長く、爪のような先が鋭い形。

壁の一部には、粘液のようなものが飛び散って乾いている。

──これは……神話生物の痕跡だ。

 

 

(冷静に考えて死体があるのに警察とか気づかないのヤバいな...流石【TRPGの警察は無能】なだけはある)

 

 

窓から差し込む月光に照らされて、廊下の奥の影がゆらりと揺れた。

──...来たか

 

俺は拳を握り直す。

「さて…尋問ができるタイプの神話生物かな」

心の中で、準備をする。

殺す為では無く、殺し過ぎないようにする為の

 

静寂の中、何かが床の奥で動いた。

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