なろう系と呼ぶには、冒涜的すぎる 作:おさわHSM
八話・主人公が一章で自己紹介しないってマ?
高校は休みになったけど……これからどうしよー、なんて考えながら、窓の外を眺める。
街は……まあ、言っちゃえばヤバい。瓦礫と焼けた建物だらけで、歩いても面白くない。いや、正確には「歩いたら死ぬかも」レベルだ。
でも、俺にはありがたいことに政府から特別手当が出てる。ウーバーみたいなサービスもあって、食料や日用品は勝手に家まで届く。マジ便利。ありがとうね、誰だか知らんけど。
……いや、別に責任とか背負う気はないけど。高校生だし、そんなの面倒だもん。
家の中には、契約してる奉仕種族たちがちょろちょろしてる。元の姿はぶっちゃけ俺が見たら殺意しか湧くけど、家では人型でおとなしくしてる。正直、こういう連中と過ごす日常も悪くないな、なんて思ったり。
そう言えば、自己紹介をしてなかった気がする。これを見てるお前ら向けだ。喜べ
俺、アイン。高校生……だった男。いや、今は色々事情があって高校生とは言えないけど、まあ気にすんな。元PLだったから、こういう世界のことはちょっとだけわかる。LobotomyCorporationとかブルーアーカイブが好きだったオタクだね。
ちなまに心残りは部活ね。ラグビーやってたんだけど大事な時期だった気がする。先輩ごめんね、許して許して。
元の世界に帰りたいかって?んー帰りたいっちゃ帰りたいけど元の世界の親覚えてないんだよね。居た気がするけど、ごめんねパッパとマッマ。代わりにこっちの世界にはそもそも親が居ない?記憶があるのが高校の時からスタートしたから分かんね。
「アイン様ー!ご飯出来ましたよー!」
...そういやコイツらの詳しい紹介してなかったな。
今回は紹介パートにしよう。一話ぐらいそんな導入が会ってもいいだろ
【シャン】(シャッガイ由来の昆虫)
名前はベルゼブブ。見た目は……ハエのコスプレしてる中学生みたいな感じで、ぶりっ子全開。
──家事もやってくれるし、俺に好意抱いてるようにも見えるだろ?でもな、これ全部打算。男子高校生としてはちょっとドキッとするけど、まあ見透かされてるってことだ。本当に性格悪いなコイツら
「お前朝から元気だな」
──そう心の中で呟きつつ、ベッドから無理やり体を起こす。
居間に下りると、早速問題児共の行動が目に飛び込んでくる。
「おはようございます!アイン様ってこう言うのが好きなんですね!」
ミ=ゴが画面を指さしながらニヤリ。耳の触手がピクピク動いている。そこには俺の大事な思春期達のお友達(意味深)が
「ぶっ殺すぞクソガキ」
【ミ=ゴ】
名前はユウゴ。全体が赤くて、耳あたりには触手、生えてる尻尾もデカい。AF制作や魔術開拓の相棒だ。
俺のパソコン、基本的に占領されてるんだよな。コイツの発明品便利すぎて、脳幹的にも助けられてる。
「アイン様、紅茶はいかがですか?」
星の精が丁寧に差し出す。手つきは流石に安定していて、朝から落ち着く。
(……いや、でも改めてなんでコイツこんな丁寧なんだ?)
後今は落ち着けない。人間相手じゃ無いとはいえ俺の癖が晒されている。あれ?もしかしてあんまダメージ無い?
【星の精】
名前はブレージュ。西洋の吸血鬼みたいな服で、常に敬語。丁寧で話しやすい、奉仕種族の中では一番気楽。
対価は、殺した神話生物の血。たまに俺の血も欲しがるんだよな……美味いのか?謎だ。
「おはようございます?美味しいです?」
飛行するポリプがパンを口にくわえながら首をかしげる。背中の羽がふわふわ揺れて、謎の可愛さ。
(……もう食ってんなコイツ)
【飛行するポリプ】
名前はロイノス。背中にコウモリみたいな羽、白くて細い尻尾。服もフリフリ。口調に?が付く。
好きなゲームにこんなキャラいたなぁ。生活の保証と引き換えで契約してるんだけど、話し方が楽すぎて、ぶっちゃけ他は家にいなくてもいいんじゃね?って思っちゃう。
「よぉ、お前もお盛んだな?」
ショゴスが背後から覆いかぶさってきて、緑色の体が揺れる。
「やっぱ今殺すか」
【ショゴス】
名前はロウド。緑の服、紙から触手が生えて目も付いてる、体もちょっと溶けてる。
マイペースでゆったりしてるけど、力を借りると楽すぎて逆に怖い。裏切られないか心配になるくらい。
「あー!アイン君のえっち!」
「首へし切るぞ」
最後に、知らない人間の体でテレビを見ていたイスの偉大なる種族が、指摘されてすぐ元の姿に戻る。
「アインは冗談が通じないのだ!つまらないのだ!」
「男の性癖は冗談じゃねぇ!!」ドンッ!
「真顔で言うことじゃないのだ」
(毎回これだから油断できねぇ……)
【偉大なるイス人】
名前はグロス。出会うたび姿が変わるから、基本は高校生女子の姿にしてもらってる。
契約の目的は情報収集だけど、正直役に立った試しはほぼない。でも、いつか役に立つ……はず。
俺は深いため息をつきながら、椅子に座る。
「……さて、今日も平和に……なるのか?」
みんな自由すぎるけど、何だかんだ上手くやれてる...ハズだ
一応、対価もまとめておくか。
•ミ=ゴ:今の人間社会の情報
•星の精:殺した神話生物の血
•シャッガイ由来の昆虫:人間の体(主に犯罪者)
•飛行するポリプ:生活の保証(食事・住居・日用品)
•ショゴス:体の触診、魔力の提供
•イスの偉大なる種族:定期的に体を貸す
俺の一言コメントも付けとく。
•ミ=ゴ:「コイツの発明品便利すぎ。脳幹には助けられてる」
•星の精:「正直なんでこれが対価になるのか分らん。偶にに俺の血欲しがるけど、人間の血って美味いのかね」
•シャン:「いや、ほんと効率いいわ。悪い奴ら限定だし。門の創造で誘拐すれば完全犯罪」
•ポリプ:「話し方が本当に楽。つかコイツ以外家に居る必要なくね?」
•ショゴス:「頼りすぎて悪いけど、力借りると楽すぎる。裏切られそうで怖い」
•イス:「役に立った試しは無いけど、いつかは役に立つ……はず」
「そういえばアイン。ハスター戦で心臓と脳を狙われたのだとか?」
「脳幹はどうでした?」
ユウゴがパソコンに向かいながら、不意に訊いてくる。眉を上げてる。
「完璧。ただ痛覚は遮断して欲しかったなぁ」
心臓と脳が潰されそうになった瞬間のことを思い返す。今思えば普通じゃない。
まず、前提として……俺の体、半分人間じゃないんだよな。
脳は脳幹、心臓はカーの崇拝って魔術で別の場所にあるし、前回のハスター戦の前にゴルゴロスの肉体湾曲やら治療やらで、部位を生やしたり増やしたりしまくってる。
……これ、本当に人間なのか、俺自身もちょっと怪しい。
でも、でもだよ?俺は人間だもん!
某少佐も言ってた。「精神が人間なら人間だ」って。
……まあ、ちょっと?大分?ズルしてるけどね。男子高校生だし、多少のズルは多めに見て欲しい。相手はもっとずるいからね。
ロウドが、ニヤニヤしながらこちらを見る
「それ本当に人間なのかぁ?」
(お前が人間を語るのは違くない?)
ベルゼブブが横から口を挟む。
「アイン様、人間かどうかなんて細かいこと、どうでもいいんじゃないですか!なんせ池を一個占拠しただけでイキってるクソタ...ハスターに勝てたんですから!」
(もうほぼ言っとる。九割は口に出とるがな)
……まあ、確かに、日常生活的にはどうでもいいことかもな。
俺は肩をすくめ、朝食のパンをかじりながら思う。
ロイノスが首をかしげ、口に残ったパンを噛みながら言う。
「本当に勝てたんですか?あの皇太子にですか?」
──いや、そこは驚くところか?俺死んだら君分かるよね?
「勝てたってか封印だな。この紙破れば今すぐ出てくるよ」
手元にある紙を出す。この2gも無さそうな紙は、今俺がもってる物の中で最も重いものである。
ユウゴはにやりと笑い、指で軽く頬をつつく。
「アイン様ぁ、それ食べてもいいかぁ?」
「ダメに決まってるだろぉ?これ食べようとしたら俺死んじゃう」
イスはゆったりと腕を組み、何事もないように言った。
「それより、朝食もっと食べないと力は出ないのだ」
――確かにその通りだ。一健全な男子高校生としては、まず腹ごしらえだな。
アインは深く息をつき、椅子にもたれながら思う。
──なんでシャンがハスター召喚を手伝ったんだ?
俺の記憶には、シャンがハスターを崇拝するなんて情報は無いぞ?
ラヴ・クラフトにも出てこないし、誰かのオリジナル設定とかならもうお手上げだ。
せめてルルブには書いとけよ……普通、こういう重要な情報は事前に入れるだろ。
ブレージュが紅茶を注ぎながら、「あの虫ですか……まさか、アイン様まで絡むとは」と小声で呟く。
(こいつらにはどうでもいいことかもしれん。いや、俺にとっては超重要なんだが……)
アインは頭を抱え、机の上に肘をつく。
(――ああ、やっぱり俺、頭の中だけでPLしてるな。現実はめちゃくちゃなのに、なんでルールブック片手に考えちゃうんだろ……)
ユウゴがパソコンのキーボードを叩く音が遠くで響く。
「……ま、いいや。次に何をすべきか考えよう」
アインは椅子から立ち上がり、窓の外を眺める。
――よし、ナンパでもすっか……
いや、別に本気じゃない。高校生男子だから、女の子が目に入れば目が行くってだけだ。今日の俺は、街の様子も把握してるし、政府から特別手当も受けてるし、ウーバーで食料も届く。
――助かるね。責任とか背負う気はないけど。
通りを歩きながら、視界に入る人々をチラ見する。
「あ、あの子、結構可愛いな……」
と心の中で呟く。別に話しかけたりはしない。ただ見てるだけで十分だ。
道端で小さなトラブルを見かけると、つい手を差し伸べたくなる衝動も湧く。
──男子って、女の子に優しくしちゃう生き物だよな……
軽く肩をすくめ、思わず笑う。
街の片隅では、まだ建物が崩れたままの場所もある。
──でも俺は大丈夫。今日は普通に、俺の高校生ライフっぽく過ごすだけだ。
歩きながら、思わず勇気を振り絞って声をかける。
「君、可愛いね! この後暇?」
相手の女の子は、少し微笑んだ――と思った瞬間、目の奥がチラリと光る。
次の瞬間、全身がフワッと宙に浮かされたかのような感覚。
「う、うわっ……!」
足がガクガクと崩れ、膝から地面に沈み込む。視界がゆらゆらと揺れ、世界が歪む。
どうやら、見た目に騙されてはいけなかったらしい。――こいつ、魔術師だ。
俺は気絶する直前に必死で思った。
──冷静に考えて、崩壊した街にこんな可愛い子いる訳ないよな。俺以外全員発狂したし……
視界が真っ暗になる直前、頭の中で自分の高校生らしい語彙力が最後の抵抗を試みる。
「お前絶対ぶっ殺」