とある宇宙要塞ガンダムSEEDに出張中   作:兵器工房

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リメイク2話

ヘリオポリス。

 宇宙に点在する居住区、コロニーの1つ。

 主に資源衛星の開発を目的とした拠点として作られることが多いが、貿易拠点としても機能しており、広大な宇宙を活動圏内とする人類にとって、無くてはならない存在である。

 

 ヘリオポリスはその中でもオーブが建造、所有する中立コロニーであり、住んでいるのは当然ながらオーブの国民だ。人工的ではあるがある程度の自然も再現され、住民たちは長閑(のどか)な生活を送っていた。

 

 彼、キラ・ヤマトもそんなヘリオポリスで暮らす国民の一人であった。

 

「(うぅ、気まずい……)」

 

 沈黙が部屋を支配していた。

現在彼がいる場所は、ヘリオポリスのカレッジスクールにある研究室の一室だ。

担当教授が受け持つ研究室なのだが、そこにはムスッとした顔で佇む来客が、所在なさげに教授を待っていた。友人たちはそれぞれ自分の作業に入るべく部屋を出てしまい、教授に提出する資料があったキラだけが、来客である“彼”と共に沈黙の研究室に取り残されてしまったのだ。

 

「あの、教授への伝言とかでしたら……伝えておきますけど?」

 

元来引っ込み思案なキラではあるが、この重苦しい沈黙には耐えきれなかったのか、勇気を出して声をかけてみる。

しかし、帽子を目深に被った男は、目を合わせることもなくそっ気なく言った。

 

「いや、いい。気にしないでくれ」

「あ……そう、ですか」

 

 再び、重い沈黙が支配する。

 これは教授が戻ってくるまで状況が変わらないだろうと踏んだキラは、自分のPC端末を立ち上げると、この場でできる課題に手を付け始めた。

 キラは非常に優秀なプログラミング技術を持っており、教授からはその腕を買われて、次々と難解な機械のプログラム構築を任されている。

 

 最近はもっぱら……兵器関連の仕事だった。

 仕方ない、そういう時代なんだろう――キラは深く考えないようにしていた。ただ、課せられた課題をこなすだけ。

 

 そうして作業に集中していくキラは、いつの間にやら沈黙の緊張感も忘れ、プログラミングの世界へと没頭していくのだった。

 

 

 

クラップ級宇宙巡洋艦の広いブリッジで、私は計器のチェックを終えてシートに深く背を預けた。

 窓の外には、資源衛星ヘリオポリスの巨大なシリンダーが、暗黒の宇宙空間にぽつんと浮かんでいる。

 これから始まる世界の狂気、そしてブルーコスモスの恐怖にプルプルと身を震わせながら、私はふと、その名前に妙な既視感を覚えて首を傾げた。

 

「ヘリオポリスってさ……」

 

 コンソールのモニターを見つめたまま、私は誰に言うでもなくポツリと呟く。

 宇宙世紀のオタクとしての知識が、脳の引き出しをパチパチとひっくり返し始めた。ガンダムSEEDの最初の舞台。それは間違いない。でも、それだけじゃなくて、私の大好きな宇宙世紀(UC)の、あの『ユニコーン』の作品群でもどこかで聞いたことがあるような……。

 

「あ――」

 

 思考の糸がパチンと繋がった瞬間、私は思わず声を上げていた。

 

「インダストリアル7だ……!」

 

  バナージたちの旅の始まりの地であり、ビスト財団の巨大建造物でもある『インダストリアル7』。

 

「なるほどねぇ……。合点がいったわ」

 

   私は一人、深く納得して小さく頷いた。

 神様が言っていた「時空の歪み」とやらの正体が、なんとなく見えてきた気がする。

 共通しているのは、あの剥き出しの資源衛星のような無骨な見た目だけじゃない。

 

 「『軍事機密の新型ガンダム』が隠されていて、それを狙った軍隊に『不意の急襲』を受け、多くの『民間人が犠牲になる地獄絵図』と化す……。まったく同じ歴史の運命を辿る場所なんだ」 

 

 世界の壁を越えてユニコーンがこの場所に引き寄せられたのは、決して偶然じゃない。あの白い一角獣を呼び寄せたのは、見た目も辿る悲劇もインダストリアル7に瓜二つな、このコロニーが持つ『因果の引力』そのものだったのだ。

 

「理屈は分かった。分かったけどさぁ……!」

 

 納得したと同時に、頭痛が一段と激しくなる。

 理由がどうあれ、あの『可能性の獣』がヘリオポリスのどこかに眠っている、あるいは引き寄せられつつある事実に変わりはない。ザフトのクルーゼ隊がG兵器を奪いに迫る中、私はガンダムSEEDの歴史を変えるだけでなく、宇宙世紀の超危険物まで秘密裏に回収しなければならなくなったのだ。

 

「任務がハードモードすぎるだろ神様……」

 

 

「――って、待てよ!?」

 

 ユニコーンの考察で一人納得しかけたその時、私の脳裏にさらなる激震が走った。

 背筋に冷たい汗が伝うのを感じながら、私は大急ぎで通信回線を開く。

 

「おい、誰か! 至急確認してくれ!」

 

 呼び出しに応じたのは、旗艦クラップ級のブリッジに控える、冷静沈着な表情をした自立型のアンドロイドの部下だった。

 

『はっ、いかがいたしましたか、閣下』

「そういえば、私たちの艦隊やモビルスーツのIFF(敵味方識別信号)って、今どういう設定になってる!?」

 

 私は焦りを隠せないまま、まくし立てるように尋ねた。

 IFF。それは戦場で味方を誤射しないための命綱だ。しかし今の私たちは、宇宙世紀の技術で作られた、この世界において文字通りの「完全なイレギュラー」である。

 

「これから戦場になるヘリオポリスに、宇宙世紀仕様のIFFのまま突っ込んだらどうなる!? 地球軍からもザフトからも、画面真っ赤の『所属不明の正体不明機(未確認機)』として一斉にロックオンされるんじゃ……!」

 

 ただでさえクラップ級やサラミス改級、ジムⅢといった大艦隊なのだ。そんな不審すぎる大集団が、いきなり戦場に乱入すれば、両陣営が一時休戦してこちらに総攻撃を仕掛けてきてもおかしくない。

 恐怖で再びプルプルと震えだす私に対し、画面の向こうのアンドロイドは、パチパチと手際よくコンソールを叩き、表情一つ変えずに答えた。

 

「ないですな」

 

 焦る私の通信画面に割り込んできたのは、見慣れたアンドロイドの顔ではなかった。

 画面に映し出されたのは、仕立ての良い地球連邦軍の将官服に身を包んだ、いかにも頑固そうな初老の男。その威厳に満ちた佇まいは、宇宙世紀の歴史に名を残すあの名将、レビル将軍を彷彿とさせた。

 

「な、誰だお前!?」

 

 私が思わず叫ぶと、その『レビル似の男』は、ふさふさの髭を蓄えた口元をピクリとも動かさず、重厚で落ち着いた声で告げた。

 

「当艦隊の総括AIを務める者だ。閣下、ご安心を。我が方のIFF信号が、この世界の有象無象のレーダーに引っかかるような無様な真似は、断じてないですな」

「あ、そうなの……?(ないですなって口癖なのか……?)」

 

 外見だけでなく、口調の重みまでレビル将軍そっくりなAIの登場に、私の脳は一瞬フリーズする。

 そんな私の困惑を余所に、レビル風AIは厳かに腕を組み、画面越しに眼光を鋭く光らせた。

 

「神の配慮か、はたまた技術の粋か。我が艦隊の識別信号は、地球連合軍のシステムには『大西洋連邦の極秘増援』、ザフトのシステムには『プラント本国からの特務部隊』と、双方の都合の良いように誤認させるステルス偽装が施されております。彼らの貧弱な情報網では、我々を敵と認識することなど、できはしないのですな」

「えっ、じゃあ両方から味方だと思われるってこと!?」

「左様。我々が攻撃行動を起こさぬ限り、双方のレーダー上で我々は『頼もしい味方』として緑色に点灯し続ける仕様にございますな」

 

 信じられないほどの超有能チート機能だった。

 つまり、戦場に乱入しても、地球軍とザフトは「あ、味方が助けに来てくれた!」と勝手に勘違いして、こちらを撃ってこないということだ。

 

「最高かよ……! サンキュー神様! そしてありがとう、レビル(仮)!」

 

しかし、私に残るこのざわついた感覚がいまだに治らない。

 

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