白兎が黄金裔とともに英雄になるのは間違っているだろうか? 作:猪のような
ベル・クラネル
Lv.1
力: I 0
耐久: I 0
器用: I 0
敏捷: I 0
魔力: I 0
《魔法》
《スキル》
「……普通だね!」
「ふ、普通…」
晴れてヘスティア・ファミリアの一員となったベル。ヘスティアに恩恵を授けられ、自分のステイタスを確認していたが、あまりに普通だったのでちょっとしょんぼりしていた。
「まぁ最初はこんなのが当たり前だぜ、ベルくん!というか恩恵を刻まれた時からなんかスキルだの魔法だの持ってる子達の方が逆に異常というか…」
「そういう人って、ヘスティア・ファミリアには沢山いるんですか?」
「そうだね〜…結構いるよ。けど当然最初はベルくんみたいな子が殆どだよ。ファイノンくんだってそうだったんだぜ?」
「そうなんですか?意外です…ファイノンさんってレベル6って聞いたから、最初から凄い力でも持っているのかと…」
「えっ、いや、まぁ……確かによく考えたら最初からなんか強かったような気は…」
「神様?」
「な、なんでも無いよ!それより、ファミリアについて何か聞いておきたいことはないかい?ボクで良ければ出来る限りの事は教えるけど…」
「あ、それなら神様、一つ聞いておきたいことがあるんですけど…!」
「何かな?」
ベルは上半身の服を着てヘスティアに向き直り、ある質問をする。
「ギルドでちょっとだけ聞いたんですけど、ヘスティア・ファミリアってタイタン達の火種を集める『火追いの旅』…をしてるんですよね?僕、火追いの旅の事はなんとなくしか知らなくて…」
「あ〜…そうだね。ボク達は確かにタイタン…古代から君臨する、人々が神と呼ぶ存在の火種を集めているんだ。ベルくんはタイタンについてどれだけ知っているんだい?」
「えっと…古代、始まりの英雄が現れた少し後から下界に降り立った12柱の神々で、世界の理を作った『運命の三タイタン』空と海、大地を生み出した『支柱の三タイタン』人類などの生命を作った『創生の三タイタン』世界に死や病を齎した『災厄の三タイタン』…ですよね?」
「その通りだよ。古代ではタイタン達が下界のあらゆる物や概念を生み出した存在だと信じられていた…ボク達が下界に降りてくるまではね」
「神様達は、タイタンがなんなのか知っているんですか?」
「それがさっぱり分からないんだ!タイタンは正しく下界の未知。一体どこから産まれたのか、誰が産み出したのか色々疑問が尽きないんだけど……タイタンは確かに、ボク達と同じ神の力を一部行使出来る…と言ってもボク達が下界で使えるほんの少しの力に比べれば、あれは正しく反則級の力だ。それに…」
「それに……?」
「…うーん…タイタンに関する事は僕より、ファイノンくんやトリビーくんに聞いた方が良いかもね。で、火追いの旅なんだけど、ボク達は今『門と道』『法』『海洋』『大地』『浪漫』『詭術』…六つの火種を受け継いだんだ」
「それじゃあ、このファミリアには6人の半神がいるって事ですか?」
「そうだよ。六人いる半神の内、四人は君ももう会ってるよ」
「えっ四人も!?えっと、アグライアさんが『浪漫』の半神で…!?」
「トリビーくんは『門と道』の半神。ケリュドラくんは『法』の半神。そしてセイレンスくんは『海洋』の半神だ」
「と、トリビーさんもなんですか!?」
「なんだいベルくん。見た目に騙されちゃいけないよ?トリビーくんって凄い小さい子供に見えるけど、あれでも眷属の中じゃ1、2を争う年長者なんだぜ?」
「ええっ!?ぜ、全然そうには見えませんでしたっ…!」
「ま、複雑な事情があるんだけど…接してればその内分かると思うよ!最初はビックリすることばっかりだと思うけど…」
「は、はぁ……えっとじゃあ『詭術』と『大地』の半神は…?」
「『詭術』の半神…サフェルくんって子なんだけど、彼女はいつも外にいてね、帰ってくる事が少ないんだ。『大地』は…荒笛くんっていう大地獣さ」
荒笛、その名をヘスティアが口にした瞬間。ベルは驚きつつも目をキラキラとさせる。
「!あ、荒笛って、もしかして竜騎士ジオクロスの相棒の、あの荒笛ですかっ!?」
「よく知ってるねベルくん!」
「山を拓いた者…伝説的な山の民ジオクロスと荒笛が率いた竜騎士団の物語、昔何回か読んだ事あるんです…!凄い、ジョーリアの眷属が長生きなのは知っていたけれど、大昔の英雄が今も実在するなんて…!」
「ボクもケリュドラくんが荒笛をファミリアに引き入れた時は凄く驚いたよ〜…しかも彼を大地の半神にする〜とか言って、それありなのかいっ!?って頭を抱えたなぁ…」
「凄いなぁ…!も、もしかして、英雄譚にある話を本人…いや、本大地獣から聞けたり…!」
「ふふっ…荒笛は今はファミリアの領内…広い庭の一角にある専用の住処に居るから。気になるなら会いに行くといいよ…あ、けど今荒笛は殆ど寝たきりの生活をしているんだ」
「え?それって……」
「もうかなり長生きしたし、昔ベヒーモスと戦った時に負った傷と毒で、今はもう、生きてるのがやっとの状態なんだ」
「っ…す、すみません!そうとは知らず、僕勝手に舞いあがっちゃって…!」
「いいんだよ。あの子はもう自分の役目をやり通したのさ、だからそんなに気に病む事も無いんだ。ボクはただ、荒笛の状態を伝えたかっただけだからね。それにきっとベルくんが色々話してくれたら、あの子もきっと喜ぶから!」
そう言うと部屋がノックされて、ヘスティアは「入っていいよ〜」と返事をすると、トリビーとそっくりな目隠しをした少女が入って来る。
「ヘスティア様、恩恵を刻むのは終わりましたか?」
「トリノンくん、今終わったところだよ。何か用かい?」
「新しい団員のプライベートルトロが用意出来たので、案内するようにカイザーから言われて来ました」
「そっか。じゃあベルくん、この子が君の住む部屋に案内してくれるから付いて行くんだ」
「分かりました!」
「あなたがベルですね、あたし達はトリノンと言います。これからよろしくお願いしますね」
「よ、よろしくお願いします。トリノンさん!」
ベルはトリノンについて行き、ヘスティアの部屋から出る。てくてくと歩くトリノンの後ろを歩いていると、ベルはある質問をする。
「えっと、トリノンさんはトリビーさんの姉妹なんですよね?」
「…よく間違われますが、そうではありませんね」
「えっ…じゃあ一体…!?」
「あたし達が『門と道』の半神…というのは知っていますか?」
「その、神様からトリビーさんが『門と道』の半神って聞いたんですけど…達って言うのは…?」
「そのまま意味ですよ。あたし達は半神になる前は、トリスビアスという名前で、見た目ももっと大人びていました。ですが、半神になった際に、身体が三つに分裂して子供の姿になってしまったんです」
「って事は、トリビーさん達は、同一人物って事ですか…!?」
「そうですよ。まぁあなたが会ってないトリアンも含めて、三人とも性格はバラバラなので、確かに姉妹というのが客観的なあたし達の関係性に見えると思いますが。あ、ここがあなたのプライベートルトロです。どうぞ入ってください」
ベルが扉を開けて中に入ると、一人で過ごすには十分すぎる部屋が視界に広がる。
「わぁ…!い、いいんですかね。こんな立派な部屋を頂いちゃって…!」
「いいんですよ。元々余っていた部屋ですから、有効活用した方がこの部屋も浮かばれます。それと、こちらも受け取ってください」
「これは…?」
ベルはトリノンから見た事も無い薄い板のような物を受け取る。
「これは『伝言の石板』と言って、ファミリアの団員に配っているマジックアイテムです。ライアちゃんの金糸が届くファミリアの領内なら伝言の石板を介ちて遠くに居る人でも会話が出来るので活用してください」
「ええっ!?す、凄い…!そんな物まであるなんて…!」
ベルはトリノンに教えてもらいながら伝言の石板を操作してくると、ケリュドラからメッセージが届いている事に気付く。『伝えることがあるので既読したら返事するように』と画面には表示されており、ベルは返事をする。
『ベル・クラネルです。伝えたいことってなんですか?』
『ああ、今日はお前の紹介も兼ねて歓迎の宴を開く事にしたから、離愁の刻の第二針頃に宴会場に来い』
「宴…」
「カイザーは事あるごとに宴会を開くので、いつもの事です。時間とファミリア領内の地図は伝言の石板に載ってるので、それを見てください。じゃあ、あたし達はもう行きますね」
「あ、はい!ありがとうございました!」
トリノンが部屋から出て行き、ベルは一人きりになる。僅かな荷物を整理して、ふと窓の外を見ると庭でのんびり過ごす大地獣達の姿が見える。
(大地獣…故郷の村にいた頃は数えるくらいしか見たことなかったけと、久しぶりに見るとやっぱり大きいな……荒笛はもっと大きかったらしいけど、どんな見た目なんだろう…)
そんな事を考えていると、いきなり扉がバンッ!と開きベルはビクッと震えながら咄嗟に振り向く。
「ベル!ギルド行こ、冒険者登録しないと!」
「星さんっ!?」
「ちょ、ちょっと!ノックもせずに入らないでよ、失礼でしょ!?」
「三月に同感だ。彼も驚いている」
突然部屋に入って来たのは星に加えて、知らないピンク髪の少女と黒髪の青年だった。
「さっさと行かないと、カイザーが宴を開くって言ってたからもたもたしてると明日に持ち越しになっちゃうよ」
「それはそうだけど…!あ、ごめんね、ウチは三月なのか!この子の同期のファミリアの一員!」
「丹恒だ。同じく二人とは同期の冒険者だ、よろしく頼む」
「あ、べル・クラネルです、よろしくお願いします!」
「よろしく〜!いきなりごめんね、この子ったら初めての後輩が出来て張り切っちゃってるの」
「そういう三月も、星から話を聞いた時はかなりはしゃいでいたと思うが」
「こ、こら丹恒っ!そういうのは言わなくていいから!…こ、こほん!それより、アンタって冒険者登録まだなんでしょ?暇ならこの子が言ってた通り今から行かない?明日から忙しくなると思うし…」
「えっ、それってどういう…?」
「善は急げ!早く行くよベル!」
「えっ、ちょっ、あ゛ーーーーっ!?」
星はベルを無理矢理引き連れて行く。なのかは「ちょ、ちょっと〜!?」と慌てながら追いかけ、丹恒はやれやれ…といった感じでついて行った。
「も〜…アンタは張り切り過ぎ!少しは落ち着いてよ!」
「えへへ」
「褒めてないからね!?」
ギルドに向かう道すがら、四人は並んで歩きながら話す。
「そういえば、ベルは星達が連れて来たみたいだが、一体どういう経緯で出会ったんだ?」
「えっと…僕、ヘスティア・ファミリアに来る前に色んなファミリアから門前払いされちゃって…路地裏で途方に暮れてたら、星さんが話しかけてくれたんです」
「そうそう、私は変わったゴミを探してただけなんだけどね。あ、ベルってロキ・ファミリアにも門前払いされたらしいよ」
「えっ嘘?ロキ・ファミリアってそういうのするイメージ無かったんだけど…」
「ふむ…ロキ・ファミリアは今は遠征中だからな、拠点が手薄になっている分、警戒心が出て気が立っていたのかもしれない」
「だとしても、門前払いはやり過ぎでしょ!ま、なんにせよ、ウチらのファミリアに入れたんだから気にしなくていいよ!」
「あはは、そうですね…えっと、皆さんは同期って言うだけあって、凄く仲が良いんですね?」
「もっちろん!昔からずっとこの三人で組んでダンジョンに何度も潜って色んな冒険をしたんだから!」
「ランクアップもいつも同じタイミングだったよね。オラリオ中から『冒険トリオ』なんて渾名も付けられるし…」
「連携も取れるしバランスも良いから、カイザーもいつの間にか俺達はセットで運用するのを当たり前にしている」
「カイザー言ってたよ『何か遠征中に予測困難な状況に陥ったら取り敢えず開拓卿達を先行させるのが手っ取り早い』って」
「何それ、ウチそんなの初めて聞いたよ!?あ、だから前の遠征の時も、その前もウチら前線に揃って置かれてたの!?」
「逆に気付かなかったのか、三月…?」
そうこうしている内にギルドに到着し、中に入って受付の方を見渡すとハーフエルフのメガネを掛けたギルド職員を見つける。
「いたいた。エイナ〜!ちょっといい〜?」
「星さん?それに三月さんと丹恒さんまで…本日はどういったご用件で…?」
「突然すまない、チュールさん。今日、ファミリアに新しい団員が入って来たから、彼の冒険者登録に来たんだ」
「!なるほど、少し待っててください。今必要な書類を持ってきますから!」
エイナはそう言って一旦奥に行ってしまう。周囲の冒険者達はヘスティア・ファミリアの新しい団員と聞いて少しざわついていた。
「あんなガキがヘスティア・ファミリアに…」
「いや、見た目に騙されるな。黄金裔にそんな常識は通用しねぇ」
と色々と小声で話し合っている。
「アンタって黄金裔なの?」
「えっ、いや、違います!血の色普通に赤ですし…!」
「だよね〜!安心して、ウチらも同じだから!」
「そ、そうなんですか?星さんも違うって言ってましたし…」
「ああ、勘違いされがちだが、ヘスティア・ファミリアは決して黄金裔のみを受け入れている訳では無い。火を追う旅を先導している都合上、自然と黄金裔が集っているだけだ」
「そういう事!だからそんな身構えなくていいよ、ウチらが先輩としてちゃんとついててあげるから!」
「は、はあ…」
するとエイナが戻ってくる
「お待たせしました!ではこちらの書類に必要な情報を記入してください」
ベルがペンと書類を受け取り、記入している間、エイナは三人に話しかける。
「この後、通常なら簡単な講習を受けてもらうんですけど…どうします?」
「そうだな……一応まだ時間はあるが…」
「別にいいんじゃない?どうせアナイクスの授業を受けるんだし」
「…いや、チュールさん。悪いが基礎的な講習だけ受けさせてくれ。この後彼の歓迎会もあるんだ、手短に頼む」
「えっ、何で?」
「二人とも思い出せ、俺たちが冒険者登録をした次の日、結局講義を受ける羽目になった理由を」
「そんなの、アナイクスがウチらに授業する直前にいきなり高笑いしながら研究室に籠り出したからで…あ…」
「そういう訳だ同じ事が無いとも限らない」
「確かに…という訳だからエイナ、お願いできる?」
「分かりました。じゃあこの後ちょっとだけ彼をお借りしますね」
そう言ってベルが書類を記入し終えると、エイナはそれを受け取ってベルを連れて行った。
少しすると、エイナは少し険しい表情でベルを連れて戻って来た。
「おかえり〜……どうしたのエイナ?そんな表情して」
「三人とも…私、これからはこの子の専属アドバイザーも務めます」
「え、あ、うん…そ、そうなんだ…?」
「で・す・の・で!三人も先輩として、この子の指導、しっかりしてくださいねっ!あと、アナクサゴラス氏の授業が無かったら私に言ってください!徹底的にダンジョンについて教えますのでっ!!」
そう言ってエイナは離れて行き、一瞬しーん…となる四人。
「ベル、アンタ何やったの…?あんなエイナを見たの、ウチ久しぶりなんだけど…」
「えっと……ダンジョンの事舐め過ぎ、冒険者がどれだけ危険な職業か全く分かってない…って怒られちゃいました…」
「………なるほどな、取り敢えず帰るか」
「だね、宴に遅れたらカイザーに怒られちゃうし」
そうして四人はファミリアのホームへの帰路に着いたのだった……
「聞いてよミィシャ!さっき星さん達がファミリアの新しい団員を連れて来たんだけど」
エイナはベルの事を同じギルドの同僚であるミィシャ・フロットに話していた。
「えっ、新しい団員?珍しいね〜最近は無かったじゃん。それで、何かあったの?」
「丹恒さんに頼まれて簡単な講習をしたんだけど、その子ったらダンジョンについて何も知らないし、冒険者がどれほど危険な職業なのかまるで分かって無いのよ!?冒険者成り立ての星さん達そっくり!」
「あ〜なるほど〜…」
「まだ丹恒さんは良かったけど、三月さんなんて教えたことはすぐ忘れちゃうし、星さんなんて…!」
「確かに…あの三人って冒険するのは当たり前、みたいな感じだもんね〜」
「そうなの!私がいくら『冒険者は冒険をしてはいけない』って言っても次の日にはすーぐ無茶な事してるんだから!あの子もそうならないといいけれど…」
「いや〜難しいと思うけどな〜ヘスティア・ファミリアだし…」
「うっ、確かに…!」
「けどきっと大丈夫だよ。星さん達も今は元気に冒険トリオなんて呼ばれて活躍してるんだし、その新人くんの事もしっかり守ってくれるって」
「だといいんだけどなぁ…」
そして、ヘスティア・ファミリアの宴会場。長い机には豪華な食事や飲み物が並び多くの団員が集っている。そしてその全てを見渡せる場所にカイザー…ケリュドラがマイクを持って立つ。
「皆、急な催しにも関わらずよく集まってくれた。と言っても、このような機会はこのファミリアではよくある事だから、とっくに慣れている事だろう。遠征前に宴を開き、帰還すればまた宴を開くのは恒例行事だからな。しかし今日の急な開催はそのような理由で行ったものでは無い!本日、新たにこのカイザーの栄えあるファミリアに入団する者がいる!その者は烈日卿、開拓卿、語部卿が見出し、金織卿が見定めた新たな英雄候補だ!」
すると滅茶苦茶緊張した『本日の主役』と書かれたタスキを身につけたベルをヘスティアが背中を押してカイザーの横に立たせる。
「彼の名はベル・クラネル!黄金裔では無いが、いずれは開拓卿らのようにこのファミリアに相応しい英雄となると僕は判断した。では、早速、何か一言言ってもらおうか」
「えっ!?」
突然の振りにベルは困惑しながらマイクを受け取ると、こちらに注目するファミリアの面々を見て顔を引き攣らせ、震えながら口を開く。
「えっ…えっと、ベル・クラネルです…!僕、火追いの旅について殆ど知らなくて…皆さんのような凄い方々とこれから同じファミリアの一員としてやっていけるのか、不安な気持ちで一杯ですけど…入団したからには、足を引っ張らないよう精一杯頑張るので、よろしくお願いします!」
拍手が沸き起こり、ケリュドラが再びマイクを取ると高らかに宣言する。
「では、この未来の英雄の入団を祝い、今宵は盛大に飲み明かそうではないか。そして明日からまた、それぞれが救世への偉業の為に邁進してくれる事を願っている。乾杯っ!!」
「「「「乾杯ッ!!」」」」
団員達は一斉に手に持つ杯を掲げ、宴が始まる。ベルも何か食べようと机に近付くと、アグライアが操る人形…ラフトラが給仕をしており、ベルに料理が乗った皿を差し出す。
「あ、ありがとうございます…!」
ラフトラは軽くお辞儀をして離れると、入れ替わるように星、なのか、丹恒が近寄ってくる。
「お疲れ、ベル」
「皆さん…!僕、ちゃんと出来てましたか…?」
「ああ、カイザーも満足そうにしていたし、問題は無かっただろう」
「けどちょっと印象薄かったんじゃない?私の時はもっと…」
「ちょっとやめてよ!アンタの時は確かに印象に残ってるけど、悪い意味ででしょ!?」
「そうだっけ?」
「そうだよ!アンタったらいきなりあんな事して…あの時のカイザーとアグライアの表情を思い出すだけで、ウチ、ゾッとするんだから!」
(な、何をやったんだろう…)
そんな風に四人で話しながら料理を堪能していると、ピンク髪のツインテールの少女が近付く。
「ふふっ、ベルたんったら、もうすっかりグレーたん達と仲が良いんですね?」
「あ、貴女は…って、ベルたん…!?」
「初めましてベルたん。私、ヘスティア・ファミリアの医療を担当している『昏光の庭』の指揮をしているヒアンシーと言います。長い付き合いになると思いますから、よろしくお願いしますね」
「あ、はい!よろしくお願いします…!で、あの…ベルたんって言うのは…?」
「ヒアンシーはよく人に愛称を付けて呼ぶんだよ。ウチらの時もそうだったし、ね?」
「はい、仲良くなる為の私なりのコミュニケーションだと思ってください」
「プルルッ!」
「な、なるほど…って、うぇ!?この子は一体!?」
ベルはヒアンシーの後ろから現れた小さな空を飛ぶ生物にビックリする。
「ベル、驚き過ぎ」
「ふふ、ベルたんって本当に素直なんですね。この子は翼獣、ペーガソスのイカルンって言います。私の手伝いをしてくれる良い子ですから、安心してください!あ、良ければ揉んでみますか?この子もみもみされるの好きなんです」
「そ、そうなんですね…!えっと、じゃあ折角なので…!」
ベルは恐る恐るイカルンの身体に触れてもみもみする。
「わぁ…!」
「プルッ、プルルッ!」
「イカルンとっても気持ち良さそうですね〜」
「次ウチ!ウチにもみもみさせて!」
暫くイカルンを揉んで堪能してからなのかに渡すと…
「あ、そうだベルたん。紹介したい人がいるので着いてきてくれますか?」
「分かりました!」
ヒアンシーに言われたままついて行くと、隅っこの方で黙々と一人で料理を食べてる少女が目に入る。
「キャスたん!」
「!ひ、ヒアンシー様…」
「ベルたんを連れて来ましたよ。さ、二人とも自己紹介をどうぞ!」
「は、初めまして、ベル・クラネルです…!」
「お会い出来て光栄です。キャストリスと申します…えっと、
「?は、はい…」
「私は、生まれつき死の呪いが付き纏っていまして…あまり不用意に近づかないようにしてください」
「えっ、死の呪い…?」
「はい…
「そ、それは勿論!是非!」
話し合う二人を見てヒアンシーは満足そうにうんうんと頷くと「後はアナイクス先生とモーディス様ですかね〜…」と呟いて周囲を見渡すと…
「おーいヒアンシーちゃん。言われた通りモスちゃんとアナちゃんを連れて来たぞ!」
片目が隠れた赤髪の少女が金髪の、身体に赤い模様がある男性と緑色の髪で眼帯をした男性を連れてくる。
「トリアン様!ありがとうございます!」
「…いきなり何かと思えば、貴女の差し金でしたか、ヒアンシー」
「トリスビアスがついて来いと言うから何かと思えば、新人と顔合わせでもさせるつもりか?」
「そうですよ〜。お二人とも早めに知り合っていた方がいいと思ったんです!ベルたん、こちらは錬金術に精通したファミリアの賢者、アナイクス先生と、幹部のモーディス様です!」
「は、初めまして、ベル・クラネルです!」(モーディスさん、凄く強そうでカッコいいな…!
「初めまして。因みに言っておきますが、第一に、私をアナイクスと呼ばないでください。第二に、私の話を遮らないでください」
「えっ?」
「呼ぶ時はしっかりア・ナ・ク・サ・ゴ・ラ・スと呼ぶように。良いですね?」
「わ、分かりました、アナクサゴラスさん…」
「結構。モーディス、あなたの番ですよ」
「ふん…モーディスだ、ファミリアへの入団。歓迎する」
「……あの、モーディス様、それだけですか?」
「何か問題か?」
ヒアンシーがええ…といった表情をしているとファイノンが笑いながら現れる。
「あはは、全く…君は歓迎の言葉すらまともに言えないのかい?それともそれがラキアでの歓迎の仕方なのかな?」
「救世主、一つ教えておくが、ラキアでの本当の歓迎をしていればこの新参者は今頃ヒアンシーの手でベッドの上に運ばれているだろうな」
「あの〜あまり怖い事を言わないでくださいね?」
「…ともかく、救世主。コイツはお前が拾って来たんだろう。ならちゃんと面倒はみておけ」
「言われなくてもそうするつもりさ」
「えっと…?」
ベルが困惑しながら軽く言い合っているモーディスとファイノンを交互に見ていると、ヒアンシーが耳打ちする
「あまり気にしないでください。ファイノン様とモーディス様はいつもこんな感じなので」
「そ、そうなんですね…」
「ここに居たかベル・クラネル!」
ケリュドラがセイレンスを引き連れてベルの近くへやって来る。
「僕とした事が、お前に大切な事を伝えるのを忘れていた」
「大切な事…?」
「お前のファミリア内における称号だ。烈日卿や開拓卿のような、な」
「え、ぼ、僕にもくれるんですか!?」
「当然だ。新入りとはいえ、お前はこのカイザーの臣下。臣下に称号を与えるのは当然だろう?一目見た時からお前にピッタリの称号を思いついていたのだ、心して聞き、魂に刻むといい!お前の称号は──」
ベルはワクワクしながらカイザーの言葉を待つ。どんなカッコいい称号が与えられるのかと期待した次の瞬間、カイザーが口にした称号は…!
「白兎卿だ!」
「……えっ?」
「わ〜ベルたんにピッタリですね!」
「良かったな、白いアイゴ」
「いや、白兎って……?というかセイレンスさん、今僕の事白いアイゴって言いました…?」
「ああ、言ったが」
「何でっ!?」
「私も君を一目見た時、白いアイゴという呼び名がピッタリだと思ったんだ」
「そういう訳だから、これからしっかり頼むぞ白兎卿」
「わ、分かりました……」
「よしベル!今日はパーっと飲むよ!多分明日から地獄を見ることになるから!」
「えっ?星さん、それどういうングっ!?んーー!?ぷはっ、な、何ですかこの味!?」
「ソーダ豆乳だよ。ファミリア内じゃ結構流行ってるんだ」
「そうなんですか!?」
「嘘に決まってるだろう。そんなの飲むの開拓卿くらいだ」
そんなこんなで、ベルは歓迎会でファミリアの皆と親睦を深めつつ、今まで食べた事が無いような料理や飲み物を満喫したのだった……
ベルは自分のプライベートルトロで、寝支度を済ませて横になっていた…
「こ、こんなにお腹いっぱいになったの初めて…ちょっと食べ過ぎちゃったかも……」
そう呟きながら天井をジッと見上げる。
「……まるで、夢みたいだな…自分があの火追いの旅を先導する、ヘスティア・ファミリアの一員になったなんて……まだ実感が湧かないや……けど…うん、お祖父ちゃんや、ファイノンさん達の為にも、明日から頑張るぞ、ベル・クラネル…!」
そう意気込み、明日に備えて眠りに就いたベル・クラネル。そんな彼を待っていたのは…
「では先ず、ダンジョンの基本的な構造と特性について説明します」
「あ、あの…アナイクス先せ「私の話を遮るなと言った筈ですっ!!」す、すみません!!」
ファミリア1の賢者による徹底講習と…
「戦闘面じゃ、僕やモーディスが基本的に見ることになったから、よろしく頼むよ、ベル。相棒も手伝いに来るってさ」
「ふん…」
「よ、よろしくお願いします!ファイノンさん、モーディスさん!先ずは何から」
「走れ」
「え?」
「いいから走れ!ファミリアの庭!先ずは50周だ、さっさと行け!!」
「ええっ!?この広い庭をですか!?大地獣達が伸び伸びとしてるこの庭を!?そ、それに戦闘面の訓練の筈じゃ…」
「碌な戦闘経験の無いお前には戦いの基礎すら早過ぎる!先ずは恩恵を刻んだ身体に慣れろ、この庭を50周で根を上げるようならダンジョンなど夢のまた夢!早く行けぇ!!」
「は、はいぃぃ!!」
ファミリアの救世主と赤き獅子による地獄のブートキャンプだった…
最近作者はダリアさんの胸を見ては(デカ過ぎんだろ…)と思っています。高評価と感想沢山ちょうだい!(厚かましい)