とあるビル群の中に、薬中ビルと呼ばれる廃ビルがある。
その屋上から、目隠しと轡を嚙まされた女が飛び降り自殺した。ケジメだ。
女は地面に血の池地獄を産みだした。
簡素な一室にデバイスの着信音が鳴り響いた。だがしかし、独身貴族は反応しない。観想をしながら深い呼吸を繰り返している。
直ぐに録音音声が聞こえてくる。
「どーも、13時にお迎えに伺います。長きにわたりご愛顧を頂き心より感謝申し上げます」
独身最後の一日が始まる。明日は結婚式だ。
町内会の計らいで、一流ホテルへ招待された。
「いらっしゃいませ」
「いいえ、面会に来ました」
「王様が最上階でお待ちです。ご案内致します」
ホテルマンに案内され、エレベーターへ乗り込む。
エレベーターはガタツキもなく上昇し始める。駆動音は微かに聞こえるだけだ。
男とホテルマンの間に会話はない。ホテルマンは無料微笑むのみ。
一切のトラブル、違和感がないままエレベーターは最上階に到着した。
「中で王様がお待ちです」
「どうも、有難う」
「お客様をご案内致しました」
男は部屋に入る。ホテルマンは一礼し、退室する。
「初めまして、王様です」
「初めまして、独身貴族です」
挨拶は終えた。ギラついた瞳の男が二人きり。ヤルことは一つだけ……一騎討ち!
男は王へ向かって走り、カーフキック。王はレスリングの深い構えから、片足立ちで回避。
空振りの勢いで回し蹴り、顔面狙い。王は MMAの構えに変更して再度回避。攻守交代。
王は男が踏み込む位置に刹那遅れて踏みつけ。男はバランスを崩して隙を晒す。無様。
ワン・ツーを男の顔面へ叩き込む。男は後ろに倒れながらロングフックを放った。そのおかげで踏みつけられた足の自由を取り戻す。
王はバックステップで距離を、男は後ろに倒れる勢いを殺さずに転がり、立ち上がる。
すぐさま男は王に向かって走りだし、スーパーマン肘打ち。王はガードするが押し込まれて顔面へ自身の腕を打ち据えることになる。
今度は男が隙を衝く番だ。相撲の突っ張りめいた、上に押し上げる掌底の乱打。ガードの上からだろうとお構いなし。
だが王は冷静沈着に男の左掌底を左手で回し受け、左側面へ回り込んだ。すかさず右の肘打ち。
だがしかし、男はダッキングで回避!さらに、しゃがんだ姿勢から飛び上がり、王の下顎に頭突きをかました。決着!
口から砕けた歯と血を吐き出した王様は、備え付けの机の引き出しから拳銃を取り出して、己のこめかみに銃口を突きつける。
「ご結婚おめでとうございます」
「やはりこちらの情報が漏れていましたか」
「奥方は一般の方なのですね」
「人質に取られる前に“青虫”を絶滅させることができて、本当に良かったです」
「一手遅かった……さようなら」
「さようなら」
室内に銃声が鳴り響く。
王は誰にも負けなかった。王は自ら幕を下ろした。
趣味は損害、仕事は実益
乱筆乱文失礼致しました。いや、本当に……(;^_^A