とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】   作:一般通過炎竜

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第1章『勇者召喚に巻き込まれたけど面倒臭いのですぐに出奔した』

 

ボクの名前は篠澤楓(しのさわかえで)

 

16歳で、日本の東京に住んでいた、ただの学生。

 

…………だった。

 

それが気が付くと、剣と魔法のファンタジー世界にいた。

 

趣味のネット小説漁りでその手の話は嫌という程読んだけど、まさか自分がその立場の人間になるなんてね……。

 

最初こそ動揺したものの、人間って案外こういう状況にも適応出来るもんなんだね。直ぐに慣れちゃった。

 

「勇者様!」

 

「【勇者召喚】の儀に応えし3人の選ばれし者達よ!どうかこのレイセヘル王国をお救いください!」

 

「3人の……あらっ?ご、5人いますよ?」

「な、なぜ……?」

 

期待の心があるかと言われれば、そりゃあもちろんある。なんせ異世界召喚だ。ボクみたいにネット小説にハマってる人間以外でも少しでもアニメやら漫画を見たことがある奴なら一度はこう思うはずだ。

 

アニメや漫画の世界に行ってみたい、って。

 

そんな事を思っていると、ボク達はお姫様っぽい人に案内されて別室に集められ、今の状況を軽く説明された。

 

ボク達は異世界から召喚された勇者で、ボク達は【アイテムボックス】と【鑑定】というスキルを持ち、更に固有の特別なスキルを持っているんだとか。

 

ものの試しに、ボクはボク自身を鑑定してみる。

 

【レベル】1

【職業】巻き込まれた少年

【体力】100

【魔力】ーーー

【攻撃力】100

【防御力】100

【俊敏性】100

 

【スキル】

・鑑定

・アイテムボックス

・固有スキル【無限魔力】

 

ふむふむ、固有スキルは無限魔力……無限……無限?

 

……………………え、つよ。

 

動画サイトのサムネで最強ぶっ壊れチートスキルとか書かれるやつじゃん。なろう系スレで強すぎてつまらないとか書かれもするでしょこれ。

 

えぇー…こんなに強いとは思わなかった。え、もしかしてボクがリーダーになって彼らを導いたりしないといけない感じ?

 

え、マジでだるいんだけど。というか嫌だ。

 

……なんか対策出来ないかな。

 

あ、……なるほどね。こうすればワンチャンあるな。

 

などと思案していると、ローブを着込んだ人が入室してきてデカイ鏡みたいなのを取り出した。ローブのおじさん達はこの魔導具がいかに凄いものでどれほどの心血を注いできたのかと熱を込めて語り始めた。ボクはその鏡を鑑定した。すると、【鑑定魔導具】と表示された。なるほどね、魔導具でも鑑定は出来るんだ。

 

ローブのおじさんは魔導具でボクの前に座っている高校生達を鑑定していく。

 

「おお!まさに勇者様と言った固有スキルの数々…!素晴らしい!」

 

とのこと。対してボクのとなりにいる……言っちゃあなんだけど、冴えないサラリーマンのお兄さんは……。

 

「ネ、ネットスーパー?」

「ネットスーパーって、あの?」

「ネットスーパー!?マジかよウケる!」

 

ネットスーパーが分からず困惑する鑑定する人。それを嘲笑する人達。それはどうでもいいとして、具体的にどういうスキルなんだろうネットスーパーって……。

 

んで、いよいよボクの番になった。

 

「えー、貴方は……あ、あれ?」

「どうかされたんですか?」

「こ、固有スキルが……無い」

 

「「えぇ!?」」

 

お姫様と役人っぽい人達は驚愕し、前にいた高校生は驚く子もいればゲラゲラ笑うやつもいた。

 

「スキル無し!?ハハハ!ハズレ過ぎじゃん何しに来たの!?」

 

来たくて来たワケちゃうわボケ。

 

そんでもって流れでこのレインセル王国とやらの王様と会うことに。

 

王様は……いかにも『王様』!って感じの王様。太っててヒゲがあって豪華そうなマントやらローブで王冠や宝飾品バチバチの。

 

そんな王様曰く、

 

・魔王がレイセヘル王国を攻めてきている。

・今はなんとか食い止めているが時間の問題。

・危機的状況に民草は苦しむ一方。

・すがる思いで古の儀式に頼った。

・この国救ってちょ。

 

……らしい。

 

………………うっっっさんくさぁ……。

 

いや、言い分は分かるよ?分かるけどさぁ……。

 

なんというか、勝手に人様、要は別の世界から頼れる勇者サマを呼んでる割には王様側の態度がデカすぎるし、民草とやらが困窮してる割には高そうな指輪やらネックレスやら芸術品やらなにやら……。本当に困窮してんの?

 

民草を想う王様には到底見えないんだけど。

 

それに、このオッサンは『ウソをついてる』。

 

これに関しては正直ボクの勘、ニオイってやつだけど。

 

長年のネット小説知識センサーと人間不信センサーがビンビン発揮してる、これダメなタイプの異世界召喚でしょ。王様側が敵で魔王側が味方のタイプのやつ。いや魔王が味方かは知らないけど。

 

「あの!」

 

そこでサラリーマンのお兄さんが手を挙げる。お兄さん曰く、自分は勇者では無いしスキルも役に経たないから適当な職に就くまでのお金を頂ければあとは自分でなんとかするとのこと。

 

なるほど、その手があったか。

 

「あ、ボクもやめときます。スキル無いし役に立たないんじゃないですかねー」

 

凄いやる気無さそうに手を挙げてからそう言った。

 

もちろん、城から追い出された。

 

でもそこそこ金貨貰えたしラッキーかな?これがどれくらいの価値なのかはわかんないけど。

 

「えーっと……」

 

お兄さんがボクの顔を伺いながら話しかけようとする。

 

「あ、ボクは篠澤楓です」

「あ、向田剛志です」

 

「なんか……全体的に胡散臭い感じでしたよね、あの王様」

「そうだね、俺もそう思ったよ」

 

少し話した後、向田さんはお互い敬語無しでいこうと提案してくれた。向田さんが結構フレンドリーな人で助かった。これで会話出来ないタイプだったら目も当てられなかった。

 

なにせこの異世界にいる数少ない同郷だし……仲良くなっておいて損は無いだろう。まあ、様子見しながら、ね。

 

「あ、し、篠澤くん……」

「なに?」

「まわり、まわり」

 

言われるがまま周りをチラりと伺うと、なにやらこちらを見てヒソヒソ話す一般通過民草。ボクと向田さんは顔を近付けてこちらも負けじにヒソヒソ話をする。

 

「多分俺達の格好が珍しいんだと思う」

「あー、確かにスーツと学ランじゃあ目立つよね…」

 

とりあえず服装をどうにかするため、服やら布を取り扱っていそうなお店に移動した。

 

ボクは学ランから銀貨5枚の生地が厚めで頑丈そうな黒色の上着に、下は銀貨4枚の茶色のこれまた頑丈そうなズボンに銀貨8枚の頑丈そうなブーツ。

 

なにが起こるか分かんないし頑丈であるに越したことは無いだろう…。

 

「この珍しそうな服!ありがとうねぇ、これオマケね!」

「ありがとう、お姉さん」

「あらやだお姉さんだなんてね!これもオマケしちゃう!」

「わぁい」

 

服飾屋のオバチャンがオマケに両肩で背負うタイプのリュックと小物を入れられそうな腰に付けるポーチをくれた。ありがてぇ。

 

「武器とか見る?」

「武器屋行こう、武器屋!」

 

武器屋、というより武器防具屋?に辿り着いた。壁に立てかけられている剣や槍、斧や弓。重そうな鉄鎧に革装備など。元いた世界には絶対に無い光景が広がっており、ボクと向田さんのテンションは上がりっぱなしだ。

 

「俺、大剣とかにしようかな…!」

「向田さん、それ持てる?」

「……もうちょっと考えようかな…!」

「そうね」

 

ボクは近くにあった短剣を買い、向田さんは直剣を購入した。

 

向田さんとの買い物を済ませたのち、ボク達は魔法具店を探しつつ情報収集へ。なんでも向田さん曰く、きな臭い国を抜ける前にある程度この世界について情報を集めたいのだとか。

 

「んじゃ、手早く済ませちゃおうか」

「だね」

 

◻︎

 

 

気付けば辺りはすっかり夕暮れ。ボク達はひとまず宿屋で夜を過ごすこととした。

 

「え、同じ部屋なの?」

「?べつにいいでしょ」

 

何故かキョドりだしたムコーダさんはおいといて、部屋に入り片方のベッドに座ると、ムコーダさんが質問を投げかけてくる。

 

「そ、そういえばカエデくん、自分のステータスってどうやって見るの?」

「あれ、ムコーダさんまだステータス見てなかったの?」

「やり方分かんなくて…」

「自分を鑑定すれば分かるよ。ゲーム的には、ステータスオープン?かな」

 

そういえばムコーダさんが得た情報の一つに、この世界では苗字持ちは貴族しかいないらしく、変なトラブルを持ち込まない為にもお互い名前で呼び合う事にした。

 

「そう?えーっと、『ステータスオープン』」

 

そう言うと、ムコーダさんの目の前にさっき見た自分のと同じステータス画面が表示される。

 

「ムコーダさんステータスどんな感じ?」

「こ、こんな感じ……」

 

えーっと、レベルが1で体力が100で……。

 

「ほとんどボクと一緒だね」 

「レベル1だしなぁ」

 

ムコーダさんはステータス画面にあるネットスーパーの項目を見てから、こちらを見る。

 

「どうやって使うの?」

「え?んー……あ、【ネットスーパー】の項目にタッチしてみて」

「よし来た」

 

ムコーダさんは【ネットスーパー】の項目を指で恐る恐るちょいっと触れてみる。すると、ステータス画面から別の画面へ切り替わった。

 

「……○EONだよねこれ」

「……AEO○だね、これ」

 

まんまAE○Nのネットスーパー画面が出てきた。え、版権というか権利的なアレ大丈夫なの?これ。

 

「ムコーダさん使ったことある?」

「仕事が忙しくて買い物行ってる暇無いことがしょっちゅうあるから、良く使ってるよ」

「マジか……その辺もなんか関係あるのかな」

 

ムコーダさんは画面を指でスライドしていき、惣菜パンのページを開いた。

 

「使えるなら、とりあえず今日の晩ご飯でも…これ支払いは?」

「ここにお金を入れるんじゃない?」

「あ、ここか」

 

ムコーダさんはさっそく残高不足が表示されている欄に金貨を入れてみる。すると金貨は虚空に…というより画面へと消えていき、残高には1金貨と表示されている。

 

「俺はとりあえずパンにしとこうかな…」

「あ、ボクおにぎり」

 

ムコーダさんにお金を渡そうとするも、子供に払わせるのは忍びないと断られた。負けじとボクもそれは忍びないと小一時間程の問答の末こちらが折れた。現役営業サラリーマンのムコーダさんに口で勝てる筈もなかった。

 

何故かほくほく顔のムコーダさんは決済を済ませると、今度こそ虚空からダンボール箱が出現し、さっそく中身を調べてみる。

 

中には注文通り、飲料水とパンとおにぎりが入っていた。

 

「いただきます」

「いただいて」

 

コンビニで見るタイプではない手作り感があるおにぎりだ。スーパーのお寿司コーナーにある海苔がしっとりしてるタイプの。

 

海苔特有の磯の香りにお米の甘さ、そして具は鮭だ。程よい塩加減で良く炙られているのかとても香ばしい香りが鼻を突き抜けていく。

 

やっぱ日本人は米だよコメ。うまうま。

 

「これ、かなり便利なスキルだよね」

「そうだなぁ。お金さえあれば食うに困らないし、なんならネットスーパーで買ったのをそのまま売って稼ぐ事も出来るだろうし」

「転売……」

「ま、まぁその通りだけど、販売元や消費者に迷惑は掛かって無いし……多分」

「このパンとかおにぎりってどこから来てるんだろう」

「やっぱ現実…前の世界のどこかのスーパーなのかな」

 

考えても分からない事を考えても仕方が無いのでそこまでにしておいた。

 

「あ、そうだ。ムコーダさんには言っておかないとね」

「なにを?」

 

ボクは自分のステータス画面をムコーダさんに向けた。

 

「ボク、固有スキル無いって話ししたじゃん?」

「うん、そうだったな」

 

「このステータス画面ってさ、スマホとかのタッチ画面みたいに指で操作出来るじゃん?現にムコーダさんもさっきやってたし」

「うん」

「更に、スキルが多くなるのが前提で整理するのに使う為なのか、スキル名を長押しすると場所を移動させることが出来る」

「え、あ、ホントだ!」

「更にさらに、スキル一覧のページ、下にスクロールしてみて」

「う、うん」

 

ムコーダさんはなんのこっちゃと言われた通りやってみる。すると、一番下の項目には、ボクの固有スキルがあった。

 

「あれ!?固有スキルあるじゃん!」

「ふふーん、中世イメージのファンタジー世界にスクロールの概念があるとは思えなかったからね、一番下に隠してたんだー」

「しかも無限魔力…!?めちゃくちゃ強そうじゃん!」

「でしょ?でも絶対面倒事にしかならないと思ってさ、試しに隠してみたら誰も気付かないから笑っちゃったよ」

 

ボクはニタニタ笑いながらステータス画面を消した。ムコーダさんは多少呆れ気味に笑う。

 

「まぁ、胡散臭かったしねぇあの王様…」

「胡散臭いという言葉の擬人化みたいな感じだったよね。まぁボクは王様に会う前にスキル隠してたからシンプルにバレるのダルそうだなって思っただけなんだけど」

「なんだそりゃ」

 

ボクとムコーダさんは笑い合い、少ししてお互いのことを話した後、眠りについた。

 

これから先、どうなるんだろうか。

 

不安が無いと言えば嘘になる。でもぶっちゃけ不安よりもワクワク感の方が強い。ボクって案外メンタル強いんだなぁ、新発見だよ。

 

ふと隣を見ると、もう1つのベッドでムコーダさんが寝息を立てている。

 

彼の事を完全に信用しきったワケじゃないけど、しばらく嫌でも行動を共にするんだ。そういうことは考えない様にしよう。

 

もし、もしボクを裏切ったんだとしたら。

 

 

 

その時はその時だ。

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