とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】   作:一般通過炎竜

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第11章『スライムってザコキャラのイメージだけど最近は強キャラだよね』

 

「うげぇ……は、吐きそう」

「全くだらしのない…」

「ほらムコーダさん、湖キレイだよ」

 

ムコーダを乗せたフェルによる疾走は、搭乗者であるムコーダの三半規管を狂わせるのには十分すぎた様だ。

 

「魚かぁ、湖…淡水魚だし生はマズイし、焼きとか?」

「というか、どうやって釣る気だ?釣竿とか無いぞ」

「こうすればよい」

 

フェルは雷魔法を展開。魚を仕留めるには過剰なフェルのあまりある電撃だが、その威力は完全に殺され魚を仮死状態に留めた。

 

「──……」

 

カエデは改めてフェルの魔法をじっくりと観察していた。自分には出来ない魔法の応用。ただヘタに魔法を撃つのではなく、こういう応用こそ重要だと再認識した。

 

「風魔法で岸まで寄せる。好きなものを獲れ」

「魔法ってやっぱり便利だなぁ」

「あ、ボクも手伝うよ」

 

魚を次々と回収していくカエデとムコーダ。時折魚の鱗やヒレで手を怪我するも、カエデは回復魔法の練習の良い機会と思うことにした。

 

「うおっでかっ!」

「こっちのはニジマスみたいだ」

 

ムコーダが拾い上げた魚はキングトラウトと呼ばれるこの世界における鮭科の王様だ。大きくなりやすく、味も美味い。

 

一方カエデが拾い上げたのはバイオレットトラウト。この世界で最もポピュラーな淡水魚。焼きが美味い。

 

「でも釣りもちょっと楽しそうだったね」

「海に着いたらやってみようか」

 

次なる目的地の遊びを話し合いながら魚を回収していき、十分な量が集まった。2人は陸に上がりカエデの火魔法で濡れた靴を乾かした。

 

「じゃあ火を付け……ムコーダさんやってみる?」

「よ、よし、任せて」

 

石を円形状に敷いて集めた枯れ木を入れ、ムコーダは火魔法を使って火を付ける。しかし手加減し過ぎた火力は枯れ木に火を灯すまでに至らなかった。

 

「あれ、おかしいな…」

「もうちょっと魔力込めても平気だよ、これくらい」

 

カエデは人差し指の先端からライター程の火を作って見せてみる。その魔力の流れを理解したムコーダはアドバイス通りに火魔法を発動、今度はちゃんと火が付いた。

 

「よっしゃ!」

「うまいうまい」

 

ぱちぱち拍手するカエデに照れるムコーダ。フェルはそれをふんぞり返ってみていた。

 

「おい、材料を買うのではないのか」

「あっそうだネットスーパー、ネットスーパー…」

 

ムコーダはネットスーパーを開き、調味料や小麦粉などを購入していく。

 

「小麦粉…ムニエルでも作るの?」

「ああ、それとホイル焼きとか…定番の塩焼きもね」

 

そこでカエデは閃いた。魔法を応用すれば魚をもっと美味しく食べる事に気が付いたのだ。

 

「ムコーダさん、キングトラウト少し貰っても良い?」

「え?別にいいけど」

 

ムコーダはキングトラウトを捌いていく。ウロコ取りは包丁の背で、次に頭を落としてからカエデの水魔法で内臓を取りながら洗っていく。そして尾びれのところまで腹を捌き、中骨から半身をおろしていく。

 

「おぉー…実際に魚捌いてるところ初めて見た」

「結構楽しいよ」

 

ムコーダはカエデにキングトラウトの切り身を渡す。渡された切り身を持ったまま、カエデは魔力を練る。発動する魔法は氷結魔法、それの出力をかなり抑えたものだった。

 

「寒っ……。それ、もしかしてルイベ?」

「正解、でも凍らせ過ぎに注意かなこれ……加減が難しいや」

 

ルイベとは、北海道に古くから存在したアイヌ民族と呼ばれる先住民族の郷土料理である。アイヌ達は氷の大地である北海道の厳しい寒さを利用した独自の魚の保存方法からこの調理法を編み出したという。

 

鮭はアイヌ語でカムイチェプ(神の魚)、もしくはシペ(本物の魚)と呼ばれ、アイヌ達にとって最重要ともいえる魚である。自分達で食べるのはもちろん、皮を使った衣服や交易品としても重宝したという。

 

「詳しいねカエデくん」

「好きな漫画でそういうのがあってさ」

 

ひとまずルイベは完成した。次にカエデが切り身に施すのは、電撃魔法だった。微量の電気を流し、あることを試していた。

 

「焼いてるの?」

「ううん、寄生虫を殺してるんだ。死んでるかどうかは鑑定で分かるし、せっかくの鮭だし刺身も食べたいじゃん?」

 

鮭に、というより淡水魚には基本的に寄生虫が住み着いている。人間に感染する寄生虫は有棘顎口虫と呼ばれる寄生虫で、主に皮膚や胃壁に寄生する寄生虫である。しかし生物は生物、稀に肺などの臓器、酷ければ眼球や脳にまで寄生する事がある。

 

そうなれば視力低下、失明、麻痺や吐き気などの重篤な症状を引き起こしてしまう。淡水魚は生食を決してしてはいけない。

 

「あれ、でもサーモンって生で食べてるよな?」

「サーモンは鮭の養殖だから寄生虫の心配が無いだけだよ」

「あ、そっか」

 

カエデは電撃魔法を止め、切り身に対して鑑定を行う。すると寄生虫は完全に焼け死んでいるのが確認出来た。

 

「試しに味見を」

 

カエデは醤油を付けて1口。一噛み二噛みした後、笑顔を浮かべる。

 

「うん、意外と美味しい!」

「野生の鮭って生は美味しくないらしいけど、異世界産だしなにかあるんだろうね」

 

生の鮭、というよりトラウトサーモンが美味しい理由は養殖で人の手で餌を与えられストレスが無い環境で脂肪を蓄えているからである。交配種による品種改良と場を整えることこそ美味しさの秘訣なのだ。

 

「ルイベも期待出来るね」

「そうだね」

 

ムコーダの調理も終わり、レジャーシートの上に皿に乗った魚料理と焼き魚を並べていく。バイオレットトラウトの塩焼き、キングトラウトのホイル焼きにムニエル、ルイベ、刺身である。

 

「「いただきまーす」」

 

カエデは焼き魚の串を両手で持ち、身にかぶりつく。香ばしい皮から熱々の身に流れる油が口いっぱいに広がる。

 

「「うまーい!」」

「うむ、うまい!」

 

ムコーダはいつの間にか購入していたプレミアムな缶ビールを開け、その炭酸に耐えられなくなるまでグビグビ飲んでいく。

 

「っかー!最高!!」

「うわぁおじさんだぁ」

「今だけはおじさんの特権をフルで活用するよ!」

 

ビール、魚、ビール、魚。止まらないループに酔いしれるムコーダ。それを見たカエデがこっそりビールを拝借しようとするも、ムコーダにはバレた。

 

「あ、ダメだよカエデくん!お酒はハタチになってから!」

「えー、別にいいじゃんここ日本じゃないんだから」

「日本で生まれたんだから日本の法律を守りなさい!ほら、コーラとか炭酸水とかもあるよ」

「じゃあ〇ツ矢サイダーで」

 

渋々サイダーで我慢するカエデ。それを見たムコーダは空を見上げ、その無限に広がる青を堪能した。

 

「カエデくんがハタチになったら、一緒に呑もうか」

「ふふ、楽しみにしとくよ」

 

「おい、おかわりだ」

 

それまで無言で貪っていたフェルが、皿を咥えて催促する。それを見た2人は揃って笑った。何がなにやら分からないフェルは困惑していたが。

 

 

◻︎

 

 

その日は湖近くで野営することとなり、就寝の時間までカエデは例の魔導書を読み進めていた。その中に、身体強化魔法と呼ばれる魔法がある。

 

「これはスキルとして我も持っている、だが加護を持たぬ貴様は魔法の方は気を付けろ」

「なんで?」

「加減を間違えると身体が傷付き、挙句の果てには爆散する」

「こわっ」

 

それでもカエデは躊躇なく魔法を発動させる。すると身体は驚く程軽くなり、ただの蹴りが木を薙ぎ倒す程にまで強化された。

 

「なんだ貴様、近接でもやるのか?」

「悩み中なんだよねぇ、結界を張って数撃ちゃ当たるの固定砲台を貫くか、身体を強化して魔法を直に当てに行くか」

 

「簡単な悩みではないか。結界を張って身体を強化し魔法を直に当てに行けば良い。我と同じようにな」

「フェルってもしかして天才?」

「誰にものを言っている」

 

カエデの戦闘スタイルが完成した瞬間であった。しかしその為にはまず結界の習得に身体強化魔法の練度を上げることが最低条件である。

 

「頑張るぞー!」

「張り切ってるなぁ」

 

それをムコーダはファイヤーボールの練習をしながら微笑ましく見ていた。

 

 

◻︎

 

 

そしてその日の晩、昼の残りで晩飯を済ませた3人は寝る準備を進めていた。カエデはブルーシートとマットを引いて自分の寝床を確保。ムコーダは自分のとフェルの分を用意している。

 

「ネットスーパーにベッドとかあれば寝る度にいちいちマットを引かなくて済むんだけどねぇ」

「どのみちフェルサイズはマットだなぁ」

 

話しながら作業していると、ムコーダの足元に何やら蠢く影がひとつ。

 

「ん?ムコーダさん、足元のそれなに?」

「え?……うおぉっ!?なんだぁ!?」

 

ムコーダの足元には、水色のぷよぷよした球体が存在していた。それは胡麻のような小さい目でムコーダをジッと見つめている。

 

「え、もしかしてスライム?」

 

スライム。コアを中心に水分で構成された軟体生物の総称である。ゲームや作品によって強さはマチマチだが、このスライムは見る限りかなり弱っちそうだ。

 

「【ベビースライム】。生後3日だってさ、レベルも1だしホントに生まれたばっかみたい」

 

カエデは鑑定で得た情報をムコーダに伝える。

 

「その程度のスライムはただ捕食するのみ。獲物に飛びつく力すら無いだろう」

「だからフェルの結界にも反応しなかったんだ」

 

ムコーダはつんつんスライムをつつく。ひんやりでプルンとした柔らかい身体に思わず和むムコーダだった。

 

「どうする?魔法は過剰だし、とりあえずその辺に放り投げとく?」

「なんてこというのカエデくん!?」

「いや魔物は魔物だからねそれ」

 

思わずスライムを抱え込んだムコーダに苦笑するカエデだった。

 

「フェル、スライムってなに食べるんだ?」

「餌か?小石でも何でも食うぞ」

「雑食の極みだね」

 

「雑食……あ、あれとかどう?」

 

ムコーダはアイテムボックスからある物を取り出していく。それはペットボトルだったり瓶だったりと、調味料や食材か入っていたゴミだった。

 

「異世界のものその辺に捨てる訳にもいかなかったから、溜め込んでたんだよなぁ」

「こう見ると結構な量だね。誰かさんのお陰で」

「なぜ我を見ながら喋る」

 

どう?とムコーダはスライムにゴミを渡してみる。するとスライムはゴミを伸ばした手?に取り捕食する。スライムの体内に入ったゴミはみるみるウチに消化され跡形も無く消えていく。

 

「おおっすごいなぁ!」

「結構怖くない?人体なんて簡単に溶けるってことだよ?」

「まぁトロっちい動きだし、大丈夫でしょ!」

「そうかなぁ…」

 

ゴミはどんどん消化されていき、大量にあったゴミはあっという間に無くなった。

 

「スライムって胃袋とかじゃないんだ…?」

「おまえすごいぞ!いい仕事するなぁ」

 

ムコーダはスライムを撫でる。するとスライムは跳ねて喜びを表現し、ムコーダの胸元に飛びついた。思わず杖を構えたカエデだったが、フェルに問題無いと止められた。

 

「魔物なのに人懐っこいなぁ」

 

相変わらずスライムを撫でているムコーダに、フェルが話しかける。

 

「む、そいつお主の従魔になっているな」

「えっ!?従魔契約なんて結んでないぞ!?」

「そのスライムがお主の従魔になっても良いと考え、お主がそれを受け入れたのだ。それで契約は成立する」

「前から思ってたけど従魔契約って結構雑じゃない?」

「魔物の方が従魔になると思うこと自体珍しいからな、それくらいにしないといつまで立っても契約は成立せん」

「そういうもんかなぁ…」

 

フェルはムコーダに自分のステータスを見る様に催促する。言われるがままにステータス画面を見ると、契約魔獣一覧にキチンと【ベビースライム】の文字が刻まれていた。

 

「名が無いではないか、なにかつけてやれ」

「え、そんな急に…!?えーっと、うーんと…」

「そんな難しく考えなくても良いんじゃない?」

 

「じゃ、じゃあスライムだから…【スイ】!今日からお前はスイだ!」

「なんと安直な…」

「ムコーダさんぶっちゃけネーミングセンスあんまり無いよね」

「う、うるさいなぁ!分かりやすくていいだろ!?」

 

主であるムコーダに名付けられたスイは、この楽しい時間を堪能していた。これから過ごす日々を想いながら……。





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