とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】 作:一般通過炎竜
「『ストーンバレット』ッ!」
女神ニンリルから加護を授かって数日、ムコーダは土魔法である『ストーンバレット』を習得。見事五つ程の小石を飛ばし、木に傷を付けた。
「よっし!」
ムコーダが喜んでいる様子をその後ろでカエデは胡座をかきながら頬杖を付き、魔導書を読んでいる。膝上ではスイがぷるぷる震えている、なにやら興奮しているようだ。
(女神様から大いなる加護とやらを授けて貰ってから、魔法の発動が容易になった。それで試しにカエデくんから教わった風魔法を使ってみたんだけど…)
『あ、あれ?』
『oh......』
(まさか大いなる加護があってもつむじ風程度しか起こせないとは思わなかった。加護が不良品の可能性があったからカエデくんにやってもらったら…)
『…ちょっとこれ以上はやめておこっか』
『そ、そうだね…』
(まさか刃みたいに鋭い風が竜巻になって山を禿げさせるとは…フェルもあの程度我にも出来るとか言ってたし)
ムコーダは魔法を発動させていた右手を見る。手には魔力が纏っており、これでも前と比べたら遥かに上達はしているのだ。
(やっぱり俺、才能無いんだなぁ…)
そう再認識し、とほほ、と涙目で項垂れていると、背後にいたカエデから声がかかる。
「ムコーダさーん、そろそろ休憩したら?ボクが言うと嫌味に聞こえるかもだけどさ、無理は禁物だよ。魔力枯渇しかけてるし」
「そ、そうだな…」
ムコーダはカエデの前に座り込み、ネットスーパーを開く。なんだなんだとスイがムコーダの膝上に移動して画面を凝視している。
「疲れた時こそ甘いものってな」
ムコーダは板チョコと缶コーヒーを購入。ミルクチョコレートの甘く濃厚な味を苦いコーヒーで中和する。
「ボクはシュークリームがいいな〜」
「はいはい。……ん?なんだ、スイも食べたいのか?」
二人と一匹で甘いものを食べてほっこりしていると、急に頭に声が響き出す。
『そなた達、聞こえておるか……?我は女神ニンリル、これは神託であるぞ』
「はっ!?えっ!?」
「神託ってこんな簡単に送れるもんなの?」
あまりに急すぎる神託に驚く二人。そんな二人は意に介さず女神は神託を続ける。
『よく聞くのじゃ、今すぐそのチョコレートとシュークリームとやらを供えて祈るのじゃ。あ、ついでにいちごオレも』
私利私欲が過ぎる催促に、二人揃って腰に手を付け、もう片方の手で顔を覆った。そこでカエデが口を開く。
「えっと、ニンリル様?昨日供え物したばっかじゃん。ホイップパンケーキじゃ物足りなかった?」
『いや、あれはあれでちゃんと味わったぞ?確かにあのふわふわしっとりな生地に濃厚な甘さのホイップとこれまた素晴らしい……なんじゃったっけ、あの蜂蜜みたいな…』
「メープルシロップのこと?」
『それじゃ!あれは本当に素晴らしかったが、でもあるじゃろ?さっきまでその気分じゃなかったのに誰かが食べてると途端にそれが美味しそうに見えるやつ。それじゃよそれ』
ダメだこの女神…。そう思った二人だったが、加護の件もあるので渋々供えて祈りを捧げる。要望されたものだけではまた神託が来る可能性があったので、カエデはついでにHA〇IBOも入れた。
『ぐっじょぶなのじゃ!』
その発言を最後に、神託は終わった。
「異世界の女神様がグッジョブはどうなの」
「まぁ満足したみたいだし…」
「お祈りか?関心だな」
そこで、朝からどこかへ出掛けていたフェルが戻ってくる。フェルからすれば二人は信心深い信者に見えることだろう。
「祈りが終わったのであれば早く出発するぞ。さぁ乗れ、早く乗れ」
「な、なんだよ。やけに急かすな」
「便秘?」
「たわけが」
ムコーダはフェルの背に、カエデは杖に、スイの今日の気分はカエデのローブのフードの中だったらしく、そこに入った。
移動中、フェルがムコーダに対し口を開いた。
「そういえばお主、土魔法はどうなのだ?練習の成果は出たか?」
その時点でなんとなく違和感を覚えたカエデだったが、なにやらフェルには計画があるなと察し、黙った。
「え、あぁうん。小石五個ほどは出るようになったぜ」
「……そうか。やはり連れていくべきだな」
「え、なんか言った?風で聞こえないんだけど」
「なんでもない」
そこで、なにやらニヤついているカエデがムコーダのすぐ隣まで移動し、話し掛ける。
「ムコーダさん、魔法の練習もいいけどそろそろアレやった方がいいと思うよ」
「アレ?」
「レベル上げ」
不敵な笑みでそう言い放つカエデに、嫌な予感しかしないムコーダだった。
◻︎
しばらく移動し、着いた場所はとある洞穴の前。しかしただの洞穴では無い。魔法を覚え、その手の気配に多少敏感になったムコーダにはそれが理解出来た。
「な、なにこれ」
「「ダンジョンだ(だね)」」
ダンジョン。時々強い魔物の死体や魔力の溜まりやすい場所に自然と生成されるものの総称。今回は洞穴だが、場所や条件次第でその在り方を変える。
フェル曰く、火魔法を実戦で形にしたムコーダにはやはり実戦しか無いと、土魔法の鍛錬に連れてきたのだそうな。
「いやいやいや無理むりムリ!?前のゴブリンだって最近ようやく夢に出てこなくなったんだぞ!?」
「無理ではない、中は調べたが大した魔物はいなかったぞ」
「俺からしたら大したことあんの!!」
騒ぎ立てるムコーダを他所に、カエデは洞穴の入口で膝を付き、なにやら手を付いている。
「……うん、マジで大した事ないよ。数はまぁまぁいるけど、烏合だね」
「だから俺からしたら大したことあるんだって…」
「ムコーダさん、魔法についてなんだけどさ。熟練度も勿論そうだけど、レベルも大いに関わってくるんだ」
現にムコーダは火魔法の熟練度はそこそこあるが、レベルに関しては未だに一桁だった。なんならスイの方が上まである。
「練習あるのみだけど、実践あるのみでもあるのが厄介なところだよねぇ」
「だよねぇ、じゃないよ!」
「まぁまぁまぁまぁ、ダイジョブだいじょぶ、フェルの結界もあるし万が一にも怪我はしないからサ」
「うおぉっ!?力強っ!?え、なんで俺抱えられるのカエデくん!?」
「これも魔法」
カエデはムコーダを脇に抱えてダンジョンに入ろうとするも、ムコーダの説得は続いた。
「わ、分かった!分かったから降ろして!」
「それを聞きたかった」
「で、でも条件がある。ダンジョンに入るなら…」
「入るなら?」
「準備が必要だ」
ムコーダはネットスーパーを開き、色々なお惣菜を購入していく。コロッケ、酢豚、唐揚げ、焼き鳥、ポテトサラダ、わかめサラダetc.....。
「戦う前の腹ごしらえか?」
「こんなに食べて平気?吐くよ?」
「そんなに食べないから平気だし、腹ごしらえってのもあるけどさ。バフでも付けてから行こうかなって」
「あー、そういえばそうだったね」
既にネットスーパーによる食事バフはカエデ達に共有していたが、すっかり失念していたカエデ。
「でもなんのメシでどのステータスが上がるか分かんないから、試しに色々買ったけど…全部は食べきれないし、カエデくんにフェルとスイに頼みたいんだけど」
「任せろ、大得意だ」
「いいよ〜」
スイも肯定しているのか、跳ねてアピールする。
そしてお昼ご飯。カエデはムコーダが半分食べた麻婆豆腐を食べつつ、スイに空いた容器を食べさせる。
「なんでスイって異世界ゴミ食べてステータスアップじゃなくてレベルアップなんだろうね」
「分からん。捕食し、学習するを根底に備えているスライムだからこそか…」
「学習?」
「スライムはその土地の食性によって姿を変える。鉄であればメタルスライム、岩であればロックスライムといった風にな」
「へー…経験値おいしそう」
「?」
雑談も交えた食事会はフェルによってあっという間に終わり、いつ効果時間が切れるかも分からないので一行は足早に洞穴の中へ。
「え、フェルとカエデくん戦ってくれないの!?」
「ボク達が手を出したらものの数秒で洞穴崩落させて終わりだけど」
「というかお主の鍛錬で我らが手を出したら意味が無いだろう」
「……ガンバリマス」
暗い洞穴へ入るも、実は僅かに発光しているフェルのお陰で難なく行進出来る。少しして、最初の敵が現れた。
「ス、スライム!」
「レベル3、固有スキル無し。いたって普通のスライムだね」
「スイを可愛がってる身としては、ちょっとやり辛いな…」
などと躊躇っていると、ムコーダの足元にいたスイがスライムに圧縮した高濃度の酸液を噴出。一瞬にして弾き飛んだスライムを見てドン引きするムコーダであった。
「ナイス、スイ!…普通のスライムも酸液発射すんの?」
「いや、普通の連中は自分の水分を飛ばす。スイは特殊な個体なのかもしれんな」
「へ、へー…」
「よし、次はお主がやってみろ」
「頑張れ〜」
「気軽に言っちゃってくれてさぁ…!」
ムコーダは神経を集中させ、魔法を唱える。
「『ストーンバレット』!」
発射された石礫は見事スライムに命中、貫通しスライムは弾き飛んだ。
「おお!貫通した!」
「木の表面に傷を付けるで精一杯だったのに、やっぱり食事効果は大事だね」
「そうだな。……ん?」
そこでムコーダは違和感を覚える。先程まで倒していたスライム達の死骸が一切無いということに気が付いた。
「本で読んだけどさ、ダンジョンって生き物みたいな性質を持ってるんだって。ダンジョン内で死んだら人間だろうと魔物だろうとダンジョンに喰われて、それを糧にダンジョンとして質、要はレベルを高める……だっけ?」
「合っている」
「つまり、もしフェルがダンジョンに喰われたら伝説級のダンジョンが出来上がるってことだね」
「縁起でもないことを…」
「更に付け加えるのなら、ダンジョンに住まう魔物共はダンジョンと共生関係にあり、自分達の身の安全を保証してくれる代わりに我らの様な侵入者を撃退する。ダンジョン内では例えスライムであろうと遥か格上である我に刃向かってくるということだ」
「こんな感じにね」
「え?」
カエデが指さした方向から、スライムにゴブリン、一角兎や蝙蝠の魔物などが一斉に襲いかかってきていた。
「ギャーッ!?」
「ほれ、狼狽えている暇があるのなら魔法を撃たんか」
「ファイト〜」
「このスパルタ共めっ!!」
一所懸命に魔物を撃退するムコーダを他所に、カエデは例の魔導書を開きながらダンジョンを観察していた。
(やっぱり、魔導書に書いてある術式とダンジョンに刻まれてる生成跡はほぼ同一だ)
やろうと思えば、自分の浪漫を詰め込んだダンジョンが作れるということだ。カエデはいつの日か自分の為の要塞を作ろうと夢見た。
「そろそろ最下層だ。ここにはコボルトがいる」
「コボルトって?」
「二足歩行し、武器を振るってくる狼の魔物だ」
「フェルの親戚か…」
「愚かさでは貴様と良い勝負だ」
「は?」
「あ?」
「やってる場合じゃないからコボルト来てるから!!」
最下層へ降りる階段から次々と鬼の形相でコボルト達が登ってくる。必死に撃退するムコーダとスイとそれを尻目に睨み合う2人。
「二人ともダンジョン内で喧嘩禁止ね?」
「ご、ごめんなさい…」
「ふ、ふん…」
流石のムコーダでも堪忍袋の緒が切れたのか、二人を正座させお説教。なお現在地はダンジョン、いつどこからモンスターが襲ってくるか分からない…が、スイが嬉々としてモンスターを酸液で溶かしていたので、問題は無かった。
それからしばらくして、一行は再びダンジョン奥地へ。
《ワオ゛オ゛オ゛オ゛ッ!》
《ガルルルァッ!》
《バウッ、バゥッ!!》
「…なんか、多くない?」
「多いね」
「確かに多いな」
最下層まで辿り着いた一行だったが、その広間で群れるコボルトの異常な数に隠れて様子見している。
「これは良いレベル上げが出来そうだな」
「正気!?この群れの中に入れって!?」
「あ、あんま大きい声出したら…」
ムコーダの大声に反応したコボルトの群れは、一斉にムコーダを見据える。少し間が空いた後、コボルト達は咆哮を上げ始める。
《ガオオオォッ!!》
《グルァァァッ!》
「いや────ッ!!?」
「こりゃもうやるしか無いよムコーダさん」
カエデはムコーダを担いでコボルトの群れの中心まで移動する。結界にはコボルト達が齧り付き今にも突き破ってきそうな勢いだ。
「まぁフェルの結界がこの程度で破れる訳無いんだけどさ」
「ちょ、ちょっと待って!スイは!?」
「あそこ」
なんとスイは縦横無尽かつ軽やかな動きでコボルト達を次々と酸液で溶かしていく。普段おっとりとしたスイからしたら考えられない動きだ。
「うーん、身体強化かけすぎたかな…」
「いや君の仕業かいっ!!」
「ちゃんとスイ本人に負担はかけない様にしたよ?」
「そういう問題じゃ…ああ、俺の可愛いスイがどんどん戦闘狂になっていく…」
「こりゃムコーダさんも負けてらんないねぇ」
「くそーっ!」
ヤケになったムコーダは次々とコボルト達に石礫を飛ばし、何だかんだ言って的確に頭部を狙い定めて発射する。
「やっぱムコーダさんそういうセンスはあるんだよね、絶望的に魔法センスが無いだけで」
「余計なお世話だよちくしょー!!」
しばらく戦い続け、群れの中から一際大きく、巨大な鉄斧を持ったコボルトが現れた。名称をコボルトキング、同胞を殺された恨みでムコーダを鋭い眼光で睨み付ける。
コボルトキングはムコーダに向かって鉄斧を容赦なく振り下ろす、しかしムコーダはその臆病とまで言える危機察知能力で回避する必要は特に無かったが無事回避することが出来た。
「当たれっ!!」
ストーンバレットは見事コボルトキングの頭部に命中、その衝撃にコボルトキングは一瞬グラつくもすぐに体勢を整える。どうやら威力が足りなかった様だ。
「も、もういっぱ…っ!?」
しかし、そこでムコーダの魔力は切れる。コボルトキングは鉄斧を再びムコーダに振り下ろすも、それはスイの酸液によって阻まれる。
酸液をモロに食らったコボルトキングは地面に倒れ付し、勝ち誇った表情を浮かべているかもしれないスイが死体に乗ってはしゃいでいる。
「やっぱスイ戦闘狂に…」
「あんなナリでもちゃんとモンスターってことだよ」
その言葉を最後に、ムコーダは意識を手放した。
◻︎
「あ、あれ……?」
「目が覚めた?」
ムコーダは目を覚ますと、そこはダンジョンの入口。ムコーダは腹の上に乗ってるスイを抱えながらゆっくりと上体を起こす。
「なんだかんだ言ってフェルが運んでくれたよ」
「そ、そっか…フェルは?」
『そっちでねてるよー』
「そっちで寝てるよ」
「ああ、寝てるのね………ん?」
ムコーダは二重に聞こえた声に違和感を覚えた。
「カエデくん、今なんて…?」
「え?だからフェルならそこで寝てるって」
『あるじ、どうかしたー?』
「………………もしかして、スイか!?」
『スイだよー』
「え、もしかしてスイ喋ってる?」
なんとスイが人語を話したのだ。しかしそれは念話に近く、契約魔獣の主であるムコーダにしか聞こえていないようだ。
『あのおっきいやつたおしたら、はなせるようになったよー』
「うわぁますます可愛いなぁ!あれだけ戦えばそりゃレベルも上がるよな!」
「レベル=知能なのかな…?」
考察しているカエデを尻目に、ムコーダは自分とスイのステータスを確認する。そこには、ムコーダのレベル7、スイのレベル7とベビースライムからスライムに進化していることが書かれていた。
「生まれて14日のスイと同レベ……」
カエデは無言でムコーダの肩に手を置いた。
「なにをしょげておる。腹が減ったのでなにか作れ」
「うわ起きてたの」
いつの間にか起きたフェルがムコーダに飯を催促する。涙目なムコーダはぶつぶつ文句を言いながらも食事の支度を始めた。
「ボクもスイの声聞いてみたいなぁ」
「魔獣契約はそのモンスターにつき主は一人。諦めろ」
「うーん……(女神様の神託に、念話……やれないこともなさそうだけど)」
『くすぐったーい』
スイをタプタプして遊びながら支度が終わるのを待っていると、どうやら終わった様だ。テーブルにはどんぶりに乗った艶やかな白米と、白いとろとろした物が置かれていた。
「あ、とろろご飯?」
「魔力使いすぎたから、滋養が付きそうなものと思ってね」
「おい、肉は?」
「そういうと思ったよ、ほら」
ムコーダは別で用意していたロックバードの照り焼きをテーブルに乗せた。
「題してロックバード照り焼きとろろ定食!」
「そのまんまやないかーい」
ツッコミを入れられて嬉しそうなムコーダを差し置いて、フェルは早速とろろご飯にがっついた。
「うむ、とろろとやらの旨みに醤油という調味料は実に合うな!何杯でもおかわり出来そうだ」
「ホントにしそうだからやめてね⋯」
「照り焼きは前にも食べたけど、やっぱり美味しいね。ロックバードは唐揚げか照り焼きが好きだなボクは」
『あるじー、おいしぃよー』
「そっかー、そりゃ良かった」
しばらく食べ進め、すっかり空っぽになってしまった皿をムコーダに差し出すフェル。
「おい、おかわりだ」
「早すぎだろ…」
『フェルおじちゃん、はやーい』
スイのその発言を聞いたムコーダは思わず吹き出した。なにがなにやら分からないカエデはビクッと身体を震わせた。
「お、おじ、おじちゃん…ぷぷっ、まぁスイからしたらフェルはおじちゃんだよな。どっちかと言うとおじいちゃんかもだけど」
「笑うな貴様ッ!おいスイ、我をおじちゃんと呼ぶな!」
そこでハッとなったフェルは、ぎこちない動きでカエデを見た。そこには全力で腹を抱えて地面に転げ笑っているカエデがいた。
「アッハハハハハ!!お、おじ!おじちゃん!フェルおじちゃん!!ヒィーヒヒヒ!」
「咬み殺すぞ貴様ァ!我はおじちゃんなどではない!!」
『フェルおじちゃんはフェルおじちゃんだもん…』
ぷるぷると涙目?になって震えるスイを、ムコーダは優しく抱き抱えた。
「ほら泣くな泣くな、スイは強い子だろ?」
『スイつよいこ……』
「うわー、伝説の魔獣様がスライム泣かしてるよ信じらんなーい」
「貴様ァ……」
「フェル、呼び名程度で子供に怒るなよ」
「ぐぬぬぬぬ……!……よい、分かった。スイにだけその名で呼ぶことを許そう」
その言葉を聞き、パァッと明るくなったスイは、フェルに飛びついた。
『フェルおじちゃん、ありがとー』
「はぁ……」
「大変だねぇ、フェルおじちゃ…ブフッ!お、おじ、アハハッ!」
「やはり貴様はここで咬み殺す」
「あんま喧嘩すんなよー」
そんな穏やかな昼下がりであった。
みなさんの感想、お待ちしております。