とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】   作:一般通過炎竜

16 / 26
第16章『今回の被害者は木』

 

ムコーダ一行が東へ進み始めてから、約一ヶ月が経過した。オルトロスのナワバリを抜け、温泉を満喫し、ドラゴンを討伐し、グリフォンのナワバリに入ったなど。

 

そしてグリフォンのナワバリに入ってから三日後、ついにムコーダ一行はグリフォンと遭遇したのだ。

 

ムコーダ一行の前にいるグリフォンは、その猛禽類特有の眼光をギラつかせ、目の前にいる伝説を見据え続けている。

 

「あ、あれがグリフォン…!」

「気付いてると思うけど一応忠告、周りに結構な数のグリフォンが息を潜めてる」

「分かっておる、貴様はそやつの傍から…」

 

フェルが続け様に言おうとした時、グリフォンはその頭を垂れた。

 

「む?」

「フェンリルサマ、オネガイ、アリマス」

 

「しゃべった!?」

「グリフォン…あのドラゴンよりレベルは低いけど、知能は彼の方が上みたいだね」

 

グリフォンが言うには、彼は次代の群れ長、その筆頭候補でありその最終判断材料が伝説に挑むことらしい。

 

「それ、フェルがこの森に来なかったらどうしてたの?」

「ダイブマエカラ、フェンリルサマガコノモリニイルコトハ、ホカノナカマカラツタエラレテイタ」

「やはりあの妙な視線は貴様らだったか」

 

「……カエデくん、気づいてた?」

「流石にグリフォンだとは思わなかったけどね、ちょいちょい見られてるな〜程度には。てっきりボクはニンリル様かなにかかと思ってた」

『なんの話し〜?』

「カエデくんとフェルは凄いなぁって話し」

『すご〜い』

 

「オネガイ、シマス。ソノムネ、カリサセテイタダキタイ」

「よかろう。だが手加減はせぬぞ」

 

そうは言いつつも、ムコーダに殺すなと小声で言われたフェル。そんなムコーダにカエデも小声で話しかける。

 

「なんで?挑んでる以上死ぬ覚悟くらい出来てるハズだよ」

「俺は甘いからさ、同じ言葉を発してコミュニケーションをとってくる相手は出来れば殺したくないんだ。…ダメかな?」

「へぇ……まぁ、このパーティのリーダーはムコーダさんだし、別に文句がある訳でもないし……別にいいんじゃない?」

 

え、俺リーダーなの?そう思ったムコーダだったが、フェル達の戦闘が始まってしまった。

 

カエデはその戦闘を鑑定をしながら真剣に見定めた。それは苛烈極まる戦いだが、それはグリフォンにとってのみ。フェルからすれば全力の三割も出していないことがカエデには分かっていた。

 

「すげ……グリフォンって羽根をあんな弾丸みたいに発射出来るんだ」

「あの感じ、羽根に魔力を帯びさせてるね。加速に硬化もつけてる、かなり器用だよあのグリフォン」

 

カエデが解説したその次の瞬間、戦闘を繰り広げている二匹の場所から突如として竜巻が発生。カエデが先日行った斬撃を含んだ暴風域である。

 

その斬撃にグリフォンは為す術なく鮮血と悲鳴を出し続ける。

 

「フェル!やりすぎだ!」

 

ムコーダのストップが入り、竜巻は収束。竜巻から出てきたグリフォンは先程までの強者特有のオーラは無く、ただ倒れ伏していた。

 

「ムコーダさん、コレ」

「うん。ほら、ポーションだ」

 

ムコーダはカエデから受け取ったスイお手製のポーションをふりかけていく。回復魔法も扱えるカエデがわざわざポーションを出したのは、ひとえにそのポーションの効果を確かめる為である。

 

(ま、伝説相手に命が助かったお代ということで)

 

「ナニモデキズ、マケタ……」

「そんなことはないんじゃないの?ねぇ、フェル?」

「ぐっ……」

「?」

 

グリフォンが見たフェルへ対してカエデが指さす場所には、確かに自分で付けた傷があった。

 

「いやぁまさか伝説の魔獣様がねぇ?」

「貴様分かっていて言っておるのだろうな…!」

 

もちろんフェルは手加減していたが、それはそれである。グリフォンは雄叫びを上げ仲間に知らせる。あの伝説に傷を付けた、と。

 

その咆哮に隠れていたグリフォン達が次々と現れる。その圧巻な光景にムコーダは絶句し、カエデは口笛を吹いた。

 

「オレ、オサ、ミトメラレタ」

 

「おめでとう、あの伝説をボロクソに叩きのめしたって広めていいよ」

「貴様にはそろそろ我の威光を示さねばならんな」

 

「ニンゲン、ツギココトオッテモ、タベナイ。マタキテクレ」

 

「あっ、やっぱりグリフォンって人間食べるんだ……」

「そりゃ、見るからに肉食だし?」

 

二度と来るか!!そうリーダーは言い残しムコーダ一行は再び東へ歩みを進めるのであった……。

 

 

◻︎

 

 

それからすぐのお昼、ムコーダの調理を待っている間にカエデは女神ニンリルへお供えと祈りを捧げていた。

 

『今回のは……随分柔らかいのぉ。これはなんじゃ?』

『ロールケーキだよ、フルーツたっぷりのね』

 

事前にお供えもののスイーツはムコーダが作り置きしている為、カエデひとりでもお祈りを捧げることは可能なのである。

 

『あむ。……うぅん!ふわっふわの生地に生クリームが合わない訳が無い、その生クリームにこれでもかと詰め込まれている果物達のなんと好相性か!噛む度に幸せが満ちていく気分じゃ!』

『それは良かった、あとでムコーダさんにも伝えとくよ。……ところでさ、ニンリル様』

『あむんむ……なんじゃ?』

『これ、なんだか知ってる?』

 

カエデが取り出したのは、例の魔導書。相変わらず陰湿なオーラを漂わせたそれは、女神の瞼をわずかに動かした。

 

『──知らんの』

『ちょっと間があったね。神様が隠すくらいの代物ってことなんだ』

『性格悪い小僧っ子じゃのお主……まぁ、そうじゃ』

 

あっさり認めてた女神ニンリルは一緒に供えられた紅茶を一口飲み、念話越しでも分かる程に真剣な声色でカエデに話しかける。

 

『悪いことは言わん、それからは手を引け』

『まさか神様からの忠告とはね。まさに神託って訳だ』

『冗談を言っておる場合では無いぞ、こうして妾に甘味を供えてくれる其方達だから言ってやっておるのだ』

 

『お主は絶対、後悔するぞ』

 

その発言に、流石のカエデも額に冷や汗をかいた。先程まで甘味を楽しんでいた親しみやすい女神はいない。カエデからすれば永劫とも言える時を重ねた神の威光がそこにはあった。

 

しかし、カエデは───

 

『上等だね、こちとら後悔なんて飽きる程したんだ』

 

女神に対して大胆極まる発言、もちろん不敵な笑みを忘れない。

 

『……妾ってば変な小僧っ子に加護与えちゃったのぉ』

『……取り消す?』

『阿呆、そうすれば甘味が食えなくなるじゃろが』

 

やっぱりいつもの女神様だ。そう思ったカエデはちょっと安心したのだった。

 

 

◻︎

 

 

グリフォンの襲撃から更に数日、ムコーダ一行はついに森を抜け、草原へと躍り出た。遥か果てまで続いていると思わせてくれる青い空に、爽やかな風が髪を撫でる。

 

「やっと森からおさらばだー!」

「長かったねぇ、ベッドが恋しいや」

 

カエデは伸びをしながら地図を取り出す。杖に乗ったままフェルに乗っているムコーダに近付き、一緒に地図を見る。

 

「レオンハルト王国は、この森からどれくらいなんだろうね?」

「せめて街道とか分かればなぁ、そろそろ肉も無くなりそうだし」

「なにっ、それは一大事ではないか!人の道だな、こっちだ!」

 

何を根拠にと二人は思ったが、フェルは恐ろしく鼻が利く。恐らく人間の匂いを探り当てたのだと思った。

 

フェルについて行くと、急にフェルはその足を止めた。

 

「人だな、襲われておるぞ。おそらく野盗の類いだ」

「マジか……!カエデくん!フェル!助けてやってくれ!」

 

「殺して良いのか」

「無しで!今日の晩飯豪華にするから!」

 

「オーライ、楽しみにしてるよ」

「その言葉、忘れるでないぞ」

 

ムコーダ一行は野盗達へ急接近、近付いたところでフェルが雄叫びを上げる。聞いた者全てに死を覚悟させる警鐘だ。

 

「な、なんだぁっ!?」

「グレートウルフ!?」

 

野盗達と交戦していた馬車の護衛達も驚愕し、その圧倒的オーラに萎縮してしまう。

 

『戦うのー?』

「スイ、ムコーダさんを守っててくれる?」

『わかったー』

 

カエデは杖から降り、無防備に野盗達へ近付いていった。その姿と背後にいるフェルを見てヤケを起こした野盗は、カエデに向かって斬りかかった。

 

「クソッタレ!」

 

カエデは杖を槍の様に構え、その先端で野盗の腹を突き、怯んだところで杖を大振りして的確に顎に命中させた。揺れに揺れた脳は野盗の意識をいとも簡単に刈り取った。

 

「テメェ!」

 

背後から襲いかかる野盗に、カエデは回し蹴りで仕留める。もちろん意識のみ、だ。勢い余って野盗の顎は砕けたし歯は飛んでいったが関係ない。

 

もちろん一連の動きは身体強化魔法が活躍したお陰の動きであり、本来であればカエデは目の前で気絶している野盗には力では敵わない。

 

「攻撃魔法となると手加減がね…氷の拘束魔法は溶かすのが面倒だし、近接の方がまだやり易いや」

「ほう、天才魔法使いでも手加減は難しいか」

「手加減してもグリフォンをズタボロにした犬っころに言われたくないかな」

 

「「ところで(さ)」」

 

「「まだやるか?」」

 

その威圧がトドメとなり、野盗達は完全に降伏した。

 

 

◻︎

 

 

「一件落着だね」

「だな」

 

カエデとムコーダが拳を突き合わせていると、馬車から大慌てで出てくる人物が。少々太り気味の男性だ。カエデはその風貌から彼がこの馬車の持ち主である商人だと確信した。

 

「そこの方々!!助けていただいて本当にありがとうございます!!お陰様で人も荷物も無事です!!」

 

商人なのに荷物より先に人を心配した辺り良い人なのだろう。そう思ったカエデは掴まれた手を振りほどく事なく笑顔で対応する。

 

「ま、怪我が無くてなによりだよ」

 

見れば馬車には女性や子供の姿もあった。あのまま野盗の好きにさせていればどうなっていたかなど誰でも予想出来る。

 

「俺からも礼を言わせてくれ、お嬢さん。不意の大規模襲撃とは言え不覚をとった、依頼主殿には詫びることしかできねぇ…」

「いえいえ、こうして無事なのですから大丈夫ですよ」

 

「アハハ、次にボクを女の子と間違えたら怒るよ」

 

えっ!?と目の前の男性は商人に下げていた頭を思わず向けた。そこには笑顔のカエデがいたが、目は笑っていなかった。商人は、言わなくて良かった…と思いながら額の汗を拭った。

 

「す、すまん。俺はてっきり……ごほん!改めてだが、自己紹介をさせてくれ。俺は冒険者パーティ『不死鳥(フェニックス)』のリーダーの『ラーシュ』だ」

「私はその依頼主である商隊長の『ランベルト』と申します」

「カエデだよ。こっちはリーダーの…」

「ムコーダです」

 

カエデとムコーダは二人と握手を交わす。そしてついにその存在に触れた。

 

「して……そちらはカエデさんの従魔で…?」

「あ?」

「ヒィっ!?」

「凄むなバカタレ、ランベルトさんが可哀想だろ」

「あ、これは私の従魔でして…大丈夫です!決して貴方達に危害はくわえないので…」

 

ムコーダの言葉に露骨にホッとする面々。カエデはフェルの下顎辺りの毛を引っ張りながらランベルトに質問する。

 

「ところでさ、ランベルトさん商隊なんでしょ?どこ行く予定だったの?」

「カレーリナに戻る途中でございました」

「カレーリナ、ですか?」

「はい。ここから二日程で着く街でして」

 

ムコーダとカエデは地図を確認すると、そこは確かにレオンハルト王国の領内にある街であると確認出来た。

 

「私達、実はこの国に来たばかりでして…よければご一緒させてもらえませんか?」

「もちろんですとも!皆さんがいらっしゃるなら心強い!」

 

「じゃあ、出発しよっか」

 

ムコーダ一行はランベルト商隊と共にカレーリラへ。カエデは商隊の子供達に花火などの綺麗な魔法で遊びつつ、道中を楽しんだ。

 

そして辺りはすっかり暗くなり、夕方辺りには野営の支度を済ませた一行はそれぞれ食事の支度を始めることとした。

 

「ご一緒でなくてよろしいので?」

「大食らいがいるので……」

 

さすがにフェルが食べる量を用意してもらうのは心苦しいと、ムコーダは自分で調理することに。商隊から少し離れたところで一行は集まった。

 

「今日はどうするの?」

「昼間の約束、忘れておらんだろうな」

「分かってるよ…そうだなぁ、スイはなに食べたい?」

『から揚げが食べたいなぁ』

「お、それは良い考えだ。あれは美味い、我もから揚げにしよう」

「カエデくんは?」

「ボクもから揚げがいいかな。というか作ってもらうのにそんな複数要求しないって」

「別にいいのに」

「じゃあデザートにチュロスが食べたいなぁ」

「オッケー」

 

ムコーダは早速アイテムボックスから必要なものを取り出し準備を進める。

 

「キッチンパックにタレと肉を入れて……振る!」

 

シャカシャカしたムコーダの動きを見たスイは、楽しそうに見えたのかキッチンパックを真似して振るう。

 

「なら材料も入れちゃおっか」

 

カエデがスイのキッチンパックに材料を入れる。袋を二人でシャカシャカしているのを見て思わず笑ってしまうカエデだった。

 

タレが染み込んだ肉をムコーダは次々に揚げていき、ものの試しにカエデが揚げるのを手伝ったら揚げたものを箸で取った瞬間何故か暗黒物質が出来上がるという怪奇現象を起こしたが、唐揚げは無事完成した。

 

「完成!色んなお肉のから揚げ!」

「いや把握してないんかい」

「食べられるやつなのは確かだから…」

 

カエデ、フェル、スイの三人でから揚げを頬張る。衣はカリッカリで中の肉は肉汁が溢れ出る程ジューシーであり、気を付けないと火傷してしまう程だ。

 

『こっちはしょっぱくて、こっちはあっさりしてる〜』

「さすがムコーダさん、飽きさせない工夫に事欠かないね」

 

フェルに至っては無言で食い続けている。それだけでどれほど美味かったのか物語っている。

 

そしてその美味い匂いは商隊の方まで届き、なんだなんだとムコーダ一行の方へ集まっていく。

 

「はい、第二陣上がった…よ!?」

 

物陰から商隊全員で見ていればさすがのムコーダも気が付く。

 

「ムコーダさん、それは一体…?」

「美味しそうな匂い……」

「なんだあれ見た事ねぇ……」

 

「よ、よければ皆さんもどうぞ……」

 

その言葉に全員で礼を言いつつから揚げにがっつく面々。生まれて初めて食べた美味い物の前に止まれる人間はおらず、第二陣のから揚げはあっという間に無くなった。

 

「お、俺の分が……」

「そうなるとおもって、はいコレ」

 

カエデがあらかじめ確保していたから揚げをムコーダに差し出すと、思わず涙を流したムコーダであった。

 

その後、チュロスを焼き上げたムコーダは子供達と遊んであげているカエデの元へ向かった。

 

「カエデくん、今日のデザートね」

「お、ありがとう」

 

カエデはチュロスを受け取り、それを三等分にして自分の分と子供達の分で分け、それを子供達に渡した。その光景に何故か涙が出るムコーダだったが、子供からチュロスを一口つまみ食いしようとした冒険者の顔面をカエデがアイアンクローをかましたところで現実へ引き戻された。

 

どたばたと騒がしい夕食だったが、各々が満足した夕食だった。

 

「美味いもの食わせてくれた礼だ、今日の見張りは俺達に任せてくれ」

 

不死鳥のご好意に甘え、寝床を準備するムコーダ。その一方、ラーシュと共にカエデは縛られている野盗達の元へ。

 

「お前らは街の騎士団に引き渡す予定だが、変な真似したら斬り捨てるぞ」

「テメェ……調子に乗りやがって、今に見てやがれ」

 

カエデは凄んでいる野盗には目もくれず、野盗達をグルっと囲む様に杖で何かを書いていた。

 

「カ、カエデ殿?一体何を…」

「んー?面白いものだよ」

 

書き終わったカエデは野盗達の前に行き、上から目線で野盗達を見下した。

 

「その陣から出たら死ぬからね」

「ああっ!?どうせハッタリだろ!」

 

カエデがパチンっ、と指を鳴らすと、カエデの遥か後方にある一本の大きな木に突如として雷が降り注ぐ。夜空が勘違いをして昼間にしてしまう程の眩い閃光は、野盗達の浅ましい戦意を削ぐには十分過ぎた。

 

「カエデお姉ちゃんすごーい!」

「オレ、カエデお姉ちゃんみたいな魔法使いになる!」

 

「アハハ、ありがとう。だけどお姉ちゃんじゃないからね〜」

 

カエデがキャーキャー暴れている子供達をもみくちゃに撫でくりまわしているのを、ラーシュは冷や汗をかきながら見ていた。

 

(全く、おっかねぇお嬢さんだ……)

「ラーシュさん?」

「ヒイッ!?」

 

後に不死鳥リーダー、ラーシュは語る。あの笑顔は二度と見たくない、と。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。