とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】 作:一般通過炎竜
「ようこそ、カレーリナの街へ!」
ランベルトの商隊を救ってから二日後、ムコーダ一行は無事カレーリナへ辿り着いた。ランベルト曰く、カレーリナはレオンハルト王国で五番目に大きい街であり、山岳地帯に囲まれいるため鉱物や魔物の素材の取り引きが盛んなんだとか。
「我が家は代々商人をやっておりまして、生まれ育ったこの街が大好きですなんです」
「今はどんな商売をされているんですか?」
「革製品です。このコートもうちの職人か手がけたものでして…」
カエデはランベルトとムコーダの会話を聞きながら、街に行き交う人々の様子を見ていた。誰も彼も商売で忙しないが、それでも笑顔が絶えない。子供達も遊びに夢中で、それだけで良い街だと理解出来る。
「革製品かぁ、ボクもそろそろローブとかブーツ替えたいと思ってたし、ランベルトさんのお店に行こうかな」
「ええ、是非お越しください!」
そこで、カエデは気になったことをランベルトに聞くことにした。
「ランベルトさん、ボクってこう見えて冒険者なんだけどさ、肉とか素材の解体はギルドでやってもらうんだ」
「はい、殆どの冒険者はギルドへ卸していますね」
「解体してもらった皮とかをさ、ランベルトさんに直接渡せば仲介が発生しないから早く作ってもらえたりするの?」
「よろしいのですか?そうすると私達の資金から素材を購入することになるので、ギルドの様に高額で買い取ることが出来なくなってしまいますが…」
「別にいいよ、今すぐお金が欲しい訳じゃないし…それに、ランベルトさんに渡す素材以外にも換金用に確保しているのはあるしね」
「ありがとうございます。ところで、渡す素材というのは…?」
カエデはアイテムボックスからとあるものを取り出した。それはムコーダのアイテムボックスで買ったメモ帳であり、アイテムボックスに仕舞ったものを書き込むものである。
アイテムボックスは触れただけでその中の貯蔵量は把握出来るが、こうして他人に知らせる際には直接話すよりこうした方が早い時がある。と思ったカエデは事前に購入していたのだ。
「拝見致します。ふむふむ……………む?」
ランベルトは目を擦ってもう一度メモ帳を見る。だんだん汗を垂らしながら緊迫した表情になるのを心配したラーシュが声をかける。
「お、おいランベルトさん?どうしたんだ?」
ランベルトは無言でメモ帳をラーシュへ渡し、ラーシュはそれを見た。するとだんだんラーシュもランベルトと同じ表情になっていく。
「な、なぁカエデ殿よ、この……俺達が挑んだところで一生勝てやしなさそうな魔物達は、アンタひとりで討伐したのか?」
「フェルが倒したのも含まれてるよ。それはメモ帳にも書いてあると思うけど、ボクが倒したのとフェルが倒したのは別で書かれてるハズだよ」
「じゃあ、アンタは単騎でサーペント種のレッド、ブラック。コカトリス、ジャイアントディアー、ロックバードにオーク、そのキングに……あ、あと、この……オルムルって、まさか……」
「あのデッカイ竜種のこと?そうだけど」
カエデがあっけからんと言い放つと、不死鳥のメンバー、ランベルトは大声で驚愕し、それにびっくりしたカエデは思わず耳を塞いだ。
「オルムルといやぁあの水竜伝説の湖竜だぞ!?特異な霧を発生させ見る者の正気を奪い、その大顎であらゆる生き物を湖底に引きずりこむという…!」
「特異な霧?……そんなんあった?」
「いや、我も何度かオルムルと戦ったことはあるが、そんな特性があるのは見たことがない」
「人を寄せ付けない予防策に作った誇張した伝説だったんじゃない?」
「それでも大型の水竜であることには変わりはないだろう!?」
「さ、さすがに嘘なんじゃ…」
そう不死鳥のメンバーのひとりが疑うと、カエデはアイテムボックスを展開した。虚空からオルムルの顔面がヌッと出てくる。
「失礼な、ほらこの通り…」
「「「出すなだすなこんな人の往来で!!??」」」
言われた通りオルムルを仕舞うと、露骨に安心する面々。
「死体って分かってるのに寒気が止まらなかったぜ……」
「は、はやくギルドに行こう。野盗共引き渡して、護衛代もらってはやく酒が呑みたい…」
反応が面白かったカエデは、ニヤニヤしながらこっそりオルムルを再び展開。眼前にオルムルを出されたラーシュは速やかに意識を手放した。
「「「悪魔かテメェは!!??」」」
ケラケラ笑うカエデを見て総ツッコミするしかなかった不死鳥。それをフェルは呆れた表情で見て、ムコーダは両手で顔を覆い、スイはぷよぷよした。
◻︎
その後、カエデの回復魔法で無事意識を取り戻したラーシュは野盗達を騎士団へ引き渡し、せっかくということなので素材解体の現場へ同行。ランベルトも是非サーペントの素材を拝見したいと同行することに。
「すまんな、メンバーがどうしても現物を見たいと喧しくて…」
「ありがとうございます、まさかレッドサーペントを拝見する日が来るとは…」
「別にいいよ、見られて困るもんでもないし」
そこで冒険者ギルドの受付にて解体を申請するが、ここでカエデは冒険者ギルドで再登録を済ませる。
カエデはすっかり忘れていたが、冒険者ランク保持にはクエストを期間内に熟さないと冒険者登録は抹消されてしまう。
そのせいでこのカレーリナに入る際にも税金がかかってしまった。
「再登録お願いしまーす」
「はい。代金は銀貨五枚となります」
オッケー、そう言ったカエデは登録料金を支払う。
「Gランクは期間が一ヶ月なので、早めにFランクに上がることをオススメします。それなら期間は三ヶ月に伸びますので」
「は〜い。あ、解体お願いしますね」
「はい、ではあちらの受付へどうぞ」
カエデは買取窓口へ向かい、そこにいる強面の男性へ解体を申し込む。
「お、ラーシュじゃねぇか。この嬢ちゃんはお前のツレか?」
「……おやっさん、早めに訂正しないと痛い目見ちまうぜ」
「?」
その後、怖気と寒気が立った解体職人は速やかに作業へ移る。カエデは職人に言われた通り大きい作業机に解体予定のモンスターを出していく。
先程見せたメモ帳に記載されていた魔物達が次々に作業机に乗っかっていき、不死鳥メンバー達は大盛り上がりだ。
「おぉ……こりゃ壮観だな。レッドサーペントなんて久々に見たぜ」
「あ、サーペント種の素材は買取じゃないからね」
「はいっ!」
「あと肉は全て我らの物だぞ」
「はいっ!」
思わず敬語になった職人にラーシュは同情するしか無かった。
「サーペント種の肉、蛇肉ってどうかと思ったけど美味かったよなぁ」
「オークのトンカツとか、コカトリスの南蛮漬けとか…」
「我はロックバードの照り焼きにあの和牛とやらが…」
「それはスーパーのだし、いつの話してるのさ」
ムコーダ達が今まで食べた料理の話をしていると、だんだん顔色が悪くなってきた不死鳥達。ラーシュはムコーダに質問する。
「ムコーダさん、もしかして……俺達がこの街に戻ってくる最中に食べてたあの料理達ってまさか……」
「?……ええ、今言った魔物達の肉を使った料理ですよ」
それを聞いた不死鳥達とランベルトは凄まじい勢いでムコーダとカエデに頭を下げた。思わず突風が発生したかと錯覚を覚える程に。
「すんませんでしたっ!!そんな高級品とは知らねぇで俺達バクバク食っちまって…!?」
「うちの隊の商人やお手伝い達も、あんなに…!」
「い、いえいえ!どうせこの街に着くまでには使い切りたかったですし、ほら!まだこんなにありますから!」
「美味しかったんだからいーじゃん。というか食べたの殆どフェルだし」
「我が捕ってきたのだから当然であろう」
「節制しろ伝説の魔獣」
カエデがフェルと睨み合いしているの横目に、なんとか落ち着いたラーシュは頭を上げてムコーダに話しかける。
「俺はこう見えてこの街じゃそれなりに名が知られてる。なにかあったら俺の名前を出してくれ」
「この街でリーダーの連れにちょっかい掛ける馬鹿もいないだろうしな」
「それは心強いです!」
「俺達はしばらく別の護衛任務でいないが、なにかあればギルドまで事伝えてくれ」
「それではカエデさん、ムコーダさん、ありがとうございました」
「うん、それじゃあまた」
「お店の方へお伺いしますね」
ギルドにて不死鳥達とランベルトと別れ、辺りも暗くなってきたということで今日の宿へ向かうことに。
「宿、グリフォンの巣……」
「ムコーダさーん、ただの名前だよー」
「わ、分かってるよっ」
なにやらトラウマを突っつかれたムコーダだったが、カエデに背中を押されながら入店。無事に登録を済ませてからフェルの寝床である獣舎の前へ集合。
「今日はどうするの?」
「職人さんに今日の分としてロックバードの肉は貰ったから、そうだなぁ……アレやってみよっかな」
ムコーダが準備しているのを、カエデは浮いた杖を下に寝っ転がりながら魔導書を見る。書かれているのは、属性複合という項目。
「ねぇフェル、属性複合魔法……氷とか雷を組み合わせて、どうメリットがあるの?」
「属性複合だと?………まぁ、単純に威力が上がるのは勿論だが、組み合わさった現象が起こるのが特徴だ」
「現象?」
「氷と雷ならば、雷の速度で氷が生成される……などといったものだ」
「へー、便利そうだね」
「………………」
フェルは敢えて何も言わなかったが、カエデはそれに気付くことは無い。しばらく魔導書を読み進めていると、料理が終わったムコーダが声をかけてくる。
「出来たよ、名付けてロックバードのタンドリーチキン!」
「タンドリーチキンだ!美味しそう!」
「タンドリー?」
タンドリーチキンとは、大昔に今で言うインドで普及した。鶏肉とヨーグルトと各種香辛料で漬け込んだスパイシーな料理で、今では簡易的にタンドリーチキン用のタレが単品で売られる程に人気となった料理である。
なぜタンドリーという名前かと言うと、最初はタンドールと呼ばれる土釜で作られていたからである。
「不思議な味だが、美味いな!」
「スパイスってどこか鼻を抜ける感じがボク好きなんだよねぇ」
『スイもこれ好き〜』
「スパイスってなると、やっぱりカレー食べたくなるよなぁ」
「いいねぇカレー、今度作ってよ」
「ていうか、フェルもスイもスパイス平気なんだね」
「うむ、少し辛味があるがそれがまた美味い」
「スパイスは好み分かれるからなぁ」
『スイ、スパイスだけ食べてみた〜い』
「えぇ?そんなに美味しくないと思うけど……」
「今度スパイスがメインの料理を作るから、それまで我慢出来るか?」
『できる〜』
「スイは可愛いなぁちくしょうめ!!」
「どういう感情なのそれは」
和気あいあいとした食卓を楽しんだ一行であった。
……ご飯描写難しいですね
あとコメントで指摘いただいた街に入る税金云々も修正しました。すっかり忘れてやがんのコレ書いたやつ(自己紹介)