とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】   作:一般通過炎竜

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第18章『伝説とか言う割に意外とエンカウント率高くない?』

 

「さーて、どの依頼を受けようかな」

『スイ、たくさんビュッビュッした〜い』

『いいね〜、たくさんクエスト受けちゃおうか』

 

カレーリナに着いた翌日、カエデとスイは冒険者ギルドへ赴いていた。どうやらフェルとムコーダの姿が無いようだが、その経緯を話すには朝食の時まで遡らなければならない。

 

朝食にてサンドイッチを食べていた時、カエデはある提案をする。

 

「せっかく大きい街に着いたんだし、ここで多めにクエスト受けてランクをパパっと上げたいんだよね。そうすれば期間内クエストなんて面倒臭いものやらずに済むしさ」

「そうなの? じゃあ支度を…」

「いや、いいよ。ボクだけでササッと行ってきちゃうから」

「え?」

 

ごちそーさま、とカエデが皿などを纏めると、いつものローブを羽織った。ムコーダは心配そうな表情でカエデを引き止める。

 

「でも、ひとりは危なくない?その…帰って来ない的な意味で」

「信用無いなぁ、ボクってそんなに単独行動してる?」

「割と」

「そうだな」

『いつもひとりでたのしそ〜』

「まさかの全員一致か……」

 

実際、カエデは休憩時などでは魔導書の解読や魔法の練習をひとりでよくやっている。ムコーダは気を遣い、フェルは傍観し、スイはカエデがひとりでいたい時があるとなんとなく理解していた。

 

「あー…じゃあ、スイも行く?」

『いきたーい!』

「フェルでも良くない?」

「やだよフェルのお守りなんて」

「刻むぞ貴様」

 

カエデはスイをフードに入れて、杖を持って軽々と振り回す。

 

「まぁ、お昼には戻ってくるよ」

「スイ、大丈夫かな……」

「大丈夫、ボクが守るし。それにスイはそんじょそこらの魔物に負けないよ」

 

カエデはフェルとムコーダにウィンクし、話を続ける。

 

「ムコーダさんのこと頼んだよ」

「言われずとも」

「ムコーダさんはフェルのお守りお願いね」

「おう、任せて」

「おい」

 

……という経緯で、今日はカエデとスイで行動することに。カエデはクエスト表が貼られた掲示板の前にて判断を下す。

 

「よし、こうするか」

 

カエデは目に付いたかたっぱしからクエスト表をひっぺがし、受付へ持っていく。その数なんと十件。ポイントにしてDランクまで上がることが可能な数だ。

 

「えっと…カエデ様は今Gランクなのですが…この数、本当に大丈夫ですか?」

 

当然のように受付で止められ、カエデは面倒くさそうな顔で対応する。

 

「問題無いよ、受注お願いね」

 

受付のお姉さんは訝しげな表情でカエデのクエストを通し、頭を下げる。

 

「行ってらっしゃいませ」

「まかせてー」

『まかせて〜』

 

スイはフードの中から受付のお姉さんに手を振り、カエデはさっさと冒険者ギルドから出ていってしまう。

 

カレーリナから出たカエデは杖に跨り、飛びながら最初のクエストを再確認する。そこには『ゴブリン討伐。街から東の森にて出没。五匹討伐で依頼達成』と書かれていた。

 

「他のは鉱石採取に薬草採取、あとはゴブリン討伐と似た討伐依頼が七件……まぁ、お昼までには終わりそうだね」

『おにいちゃん、飛ぶのってきもちーねー』

「でしょ?スピードはフェルに負けるけど、この飛行能力はボクの特権だからね。……まぁフェルの事だし跳躍を繰り返して実質飛行なんてやってきそうだけど」

 

そういえば、お気づきだろうか。スイとカエデが会話していることに。

 

今までもしていたろという声が聞こえるが、今までのカエデとスイの会話はあくまでスイからムコーダへの念話を盗聴したもの。しかしカエデはそれだと今回の様にスイとふたりで行動する時に不便だと思ったのだ。

 

結果、念話を盗聴するのではなくスイから発せられる魔力を読み取り、それを声として変換する魔法を開発。そのお陰でカエデはスイの声無き声を聞くことに成功したのだ。

 

「従魔契約が複数出来れば話は早かったんだけどねぇ」

『おにいちゃん、どうしたの?』

「なんでもないよ〜」

 

カエデは風を切りながら飛行し、カレーリナから東の森上空に到着。そこで、以前に盗賊を遠隔で鑑定した時と同じような遠距離鑑定を行う。

 

「対象を一定以上の魔力を持った魔物に絞って……お、見つけた」

 

標的を発見したカエデはその対象の上空に移動。鑑定通りゴブリンの集落を発見。簡素な柵や小さい藁で出来た家、はてには焚き火など、どうやら知能が高い個体がボスらしい。

 

「んじゃ、そういうことで」

 

カエデは上空から集落に向かって雷魔法を展開。とある目標のため出力は抑えたものの、その雷撃の雨はゴブリン達の生命を刈り取るには十分過ぎた。

 

生体反応が無くなったのを確認してから、カエデは集落に着陸。集落はまさに死屍累々といった光景で、先程まで命を持った生物達が住まう土地とは到底思えない。

 

「うわグロ」

 

自分でやっておいてこの言い草である。すると、遠くの方からゴブリン達の鳴き声がどんどん近付いているのが分かる。

 

「集落から大きい音がしたらそりゃあ戻ってくるか。一方的に魔法を落とすのも考えものだね」

『おにいちゃん、あれスイがやっていい?』

「いいよ。あ、酸弾使うなら胴体狙ってね」

『わかった〜』

 

集落へ戻ってきたゴブリン達は、自分達の住処を荒し家族や仲間を殺した外敵の姿を確認すると一斉に怒り狂い始める。

 

『いっくぞ〜!』

 

スイは飛びかかってきた数体のゴブリン達に酸弾を扇状に展開。酸をモロに受けたゴブリン達は皮膚から肉、骨から内蔵に至るまでを損傷し絶命。それにたじろむことなく突進してくるゴブリンに、今度は通常の酸弾を連射。

 

酸弾を防御する手段を持たないゴブリン達は、スイによってあっという間に全滅した。辺りにはなんとも言えない腐臭が漂い始める。

 

「ナーイス、スイ」

『やったぁ』

 

カエデはスイに拳を突き出し、スイはそれに触手でハイタッチする。そして、カエデはクエスト表を再確認する。

 

「討伐の証拠としてゴブリンの右耳を持参すること。……これがめんどくさいなぁ」

 

そこで良いことを思いついたカエデはスイに提案する。

 

「ねぇスイ、ゴブリン達の右耳以外を溶かすって出来る?ほら、スイってムコーダさんのお手伝いで皿洗いに酸を使ったりするでしょ?」

『やってみる〜』

 

すると、スイはブルブルと震えだした。カエデはなんだなんだと見ていると、スイがどんどん巨大化していくではないか。

 

「また進化?鑑定は……『ビッグスライム』か。おめでとうスイ!」

『えへへ〜』

「……ところで、もしかしてずっと大きいまま?」

『なんかね、大きくなれるし小さくなれるよ』

「へぇ、そりゃ便利だね」

 

カエデは話を続けながら鑑定も忘れない。そしてスイのスキル欄に新たに『増殖』というスキルがあることに気付く。

 

「スイ、この増殖って?」

『なんかねー、こうやるの』

 

巨大化したスイから次々と小さいスイが飛び出していく。小さいスイ達はカエデに言われた通りにゴブリン達の死体を右耳以外どんどん溶かしていく。

 

「おー、すごい光景だ。……あれ、スイってもしかしてかなり強いんじゃない?」

 

分裂増殖、巨大化、酸弾発射、回復薬生成。贔屓目に見ても上位級の魔物であることは確かである。

 

『スイ、すごい?』

「うん、凄いよスイは。応用力があるなんてもんじゃないよ」

 

カエデは分裂して少し小さくなったしたスイを撫でる。カエデの優しい手つきにほっこりするスイであった。

 

「おっと、スイが頑張ってくれてるんだからボクもやることやらなきゃね」

 

と言っても、耳を拾うだけだけど…。と言いながら麻袋に耳をポイポイ拾っては突っ込んでいく。しばらくして拾い終わったカエデは麻袋をアイテムボックスにしまい込んだ。

 

「討伐より証拠回収の方が時間かかったな…」

『おにいちゃん、次はどうするの〜?』

「うーん、採取クエストの対象を探しつつ適当に魔物狩りかなぁ…」

 

カエデは再びスイをフードに入れて杖で移動を開始。今度は低空飛行で鑑定で薬草を探しながら移動を続ける。

 

「お、あった」

 

移動と採取、そして討伐を繰り返していくウチに、ついには鉱山へとたどり着く。ここにも鉱石採取で用事はある。

 

「ツルハシにランタン…一応、人は入ってたみたいだね」

 

カエデは杖で飛びながら坑道へ入っていく。火魔法で光源を確保しつつ、目的の鉱石を鑑定で探す。

 

しばらくすると拓けた場所へ出た。しかしそこには思いもよらない魔物が住み着いていた。カエデは隠れながらそれに鑑定を行う。黒い尖った鱗に、蜥蜴の様な四足歩行。長いシッポに、最大の特徴は地面を掘りやすい様に特化した爪。

 

「見た目は鱗が生えたでっかいモグラだけど…『グランドラゴン』か。あれ一応ドラゴンなんだな…」

 

カエデは考える。以前オルムルを倒した時はその圧倒的な攻撃力と質量でゴリ押して倒した。しかし今回は鉱山の中。ヘタに巨大な魔法を放った場合、坑道が崩落する危険性がある。

 

「氷魔法を上手く使えば…あるいは…」

 

なぜか倒す気マンマンのカエデ。本来の目的は鉱石採取の筈だが。

 

『おにいちゃん、どうするの?』

「いい考えが浮かんだ」

 

カエデはグランドラゴンに気づかれない様、魔法を溜める。オルムルの時は魔法陣から強固な魔法を展開したが、カエデの魔法はチャージすることでもその効果を跳ね上げることが可能である。

 

「『フリーズプリズン』……からの『ライジングブリザード』!」

 

まずカエデはオルムルの時と同じように氷の檻でグランドラゴンを捕獲。檻の中に氷魔法と雷魔法の複合魔法を展開。これは雷魔法の威力と展開スピードに氷魔法の捕捉力を合わせた魔法である。

 

グランドラゴンに致命的なダメージを与えつつも、それでもやはりドラゴンといったところか。グランドラゴンは溶岩の様な火炎球をカエデに向かって発射する。

 

「うっわ、檻を展開してなかったら骨まで無くなってたな…」

 

溶岩は氷の檻を破壊寸前まで追い詰めた。しかしカエデは檻の展開を止めない。更に強固に、更に狭くしていく。

 

どんどん檻に閉じ込められていくグランドラゴンは、その大きな鉤爪で檻を掘って脱出を試みるも、射出される氷の槍にその身をどんどん傷付けられていく。

 

「悪いけど、格上相手に容赦も油断もしないよ」

 

最終的に、氷の檻はグランドラゴンを完全に凍り付くした。最早ピクリとも動けなくなったドラゴンを、カエデは鑑定する。

 

「……うん、窒息してるし、身体の中まで氷付いてる。完全に死んでるね」

 

氷魔法はグランドラゴンの涎から始まり、体液から血液まで氷尽くした。カエデは檻を解除しグランドラゴンの死体の前に立つ。

 

「うっわ、近くで見るとデカイな……大きさはオルムル程じゃないけど、その分筋肉質というか……」

 

ある程度観察し終わったグランドラゴンをアイテムボックスにしまい込む。そして当初の目的であった鉱石を探し始める。

 

しばらくして、ついに目的の鉱石を発見した。

 

「お、特徴通りの鉱石…。よっし、クエスト終わり!スイ、ムコーダさん達のところに戻ろっか」

『お腹すいたぁ』

「お昼ご飯なんだろうねぇ」

 

ふたりは杖に跨り、鉱山を脱出。昼食を作っているであろうリーダーへ思いを馳せながら帰還するのであった。

 

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