とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】   作:一般通過炎竜

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第3章『魔力とメシに誘われた者』

 

異世界生活二日目、昼。

 

ボク達は何度か休憩を繰り返しながら街道を進んでいった。道中、何度か街道に獲物を探しにやってきたゴブリン達を斥候であるリタさんが発見。

 

「ゴブリン程度、避けていくまでも無い」

 

リーダーであるヴェルナーさんの判断でゴブリン達を討伐。その際、ボクは魔法使いであるラモンさんの魔法に魅入られていた。

 

火の魔法による熱と陽炎の揺らめき。水の魔法による衝撃と水飛沫。どれもこれも、ボクの心を掴んで離さなかった。

 

元々の性分なのか、それとも無限魔力なんてとんでもないスキルを得たせいなのか、ボクは魔法に対して人一倍興味があるようになってしまったのかもしれない。

 

そして今、休憩の合間にボクはラモンさんに魔法を教授してもらっている。

 

「つまり魔法とは、大気に存在している魔素を操り、発動させる。そして魔法は基本属性による火、水、風、土。この4つの元が存在している。私が扱えるのはこの4つだ」

 

「しかし中にはこの4属性から逸脱した者を扱う者もいる。それがこのパーティにいるフランカだ。彼女は回復魔法を扱える」

 

基本である4属性、それに属さない魔法を特殊魔法と呼ぶ。氷、雷、回復、神聖である。これらを習得するのは至難の業であり、かなり生まれや才能に左右されるらしい。

 

「私もまだまだ修行の最中ですわ。お陰で、回復魔法以外ほとんど使えませんもの」

「このように、1つの魔法に特化した者もいる」

「回復魔法はいいとして、基本属性…例えば火に特化した人は、火属性無効のモンスターとかはどうするの?」

「その為のパーティだ。1人は所詮1人。個の力など結局のところ数には勝てん」

「そっか…」

 

ボクはラモンさんから貰った簡単な魔法が書かれている魔導書を開いてみた。そこには『ファイヤーボール』や『ストーンバレット』などが書かれていた。

 

「これ、初心者にも扱えるんだよね?」

「魔素を術式に置き換え、発動させる事が出来ればな。術式も書いてあるからそれを完璧にイメージし、組み込む事が重要だ」

 

ボクは早速、自分の右手に炎をイメージする。そして魔素を込め………………ん?

 

「……あれ?」

「はっはっは!まぁ最初はそんなものだ」

「私も、まず魔素を集めるのに苦労しましたわ」

 

手のひらに集まった魔素はあっという間に霧散した。

 

(いや、今のは霧散したというより……拒否(・・)した?)

 

上手く言えないが、違和感しか感じなかった。まるで、魔素からこのやり方は違うと言われたような(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

(……そうか。今、ボクは自分の魔力を使わなかった。ラモンさんやフランカさんの様に、普通のやり方じゃないのかもしれない)

 

普通の魔法使いはそのほとんどが大気や万物に宿る魔素を使うらしい。自分の魔力だけでは魔法を発動させる魔力量に追いつけないからだ。魔素を使い、自分の魔力も使って練り上げ、術式を構築してそれを発動させる。

 

対して、ボクが持つ固有スキルは『無限魔力』。そもそも魔素は必要無いのかもしれない。だから魔素は集まってくれなかったんだ。集まる必要がないからだ。

 

「む、どうしたのだ?」

 

ボクは皆から少し離れ、誰もいない方向へ片手を前に構えた。そして、火をイメージし、魔力を込め、術式を構築。

 

とてつもない熱を感じる。しかしその熱にボク自身焼かれる気配は無く、完全に我がものにしている感覚だ。

 

「お、おいおいおい!」

 

見張り番をしていたヴィンセントさんの焦った声も、今のボクには聞こえなかった。

 

魔法を発動させる準備は整った、最後の発動させる条件は、魔法の名前!それを口に出す事だ!

 

「『ファイヤーボール』!」

 

瞬間、ボクの手のひらから、運動会の大玉転がしで使った様なサイズの大火球が放たれた。轟音と共に木々は薙ぎ倒され、山火事待ったなしの勢いで轟々と火が燃え盛っている。

 

……………いやダメでしょ山火事は!

 

「ごめんラモンさんさっきの水魔法で消火して!」

「全くとんでもない弟子を持ったものだ!」

 

ラモンさんによる決死の消火活動のお陰で、なんとか山火事にならずに済んだ。

 

「ご、ごめんなさいラモンさん…まさかあんなに大きいのが出るなんて」

「いや、私も予想していたことだ。それを思考の隅に追いやり好奇心を優先させ忠告しなかった私にも責がある」

「?……なにを予想してたの?」

 

ラモンさんは冷や汗をかきながら顎髭を撫でる。

 

「うむ、カエデ殿の魔力は、なんというか…そうだな。我々の魔力が白だとしたら、カエデ殿の魔力は黒だ」

「……どゆこと?」

 

「私も長いこと生きてきた。故に長いこと色々な魔法使いの魔力の波長を見てきたが、そのどれにも属さない。初めてみた魔力の揺らぎだったのだよ」

(それってもしかして、無限魔力が関係しているのかな)

 

無限魔力について、ラモンさんに話すべきだとは思う。でも、ムコーダさん的には多分NOだ。極力固有スキルについて話すべきじゃないと事前に話し合ったし、ラモンさんには悪いけど黙っておこう。

 

「今の凄かったなカエデくん!?なんだったんだ!?」

 

今日の晩御飯を作っていたムコーダさんが慌てて様子を見てきた。リタさんとヴェルナーさんも一緒だ。

 

「えっと、初めて使った魔法が暴発というか…誤算というか」

「怪我は無いのか?」

「うん、平気だよ。……森以外は」

「うん、森……凄いことになったね」

 

消火されたとは言え、焼け焦げた木々や草原は凄惨という言葉を表しているようだった。ほんとごめん。これからは考えて撃ちます…。

 

「まぁ、怪我が無いならなによりだよ。こっちも準備出来たし、お昼にしようか」

「さんせーい!」

 

リタさんの元気が良い返事で場も切り替わり、皆でムコーダさんからスープとパンを受け取った。

 

「あ、ポトフだ。野菜たっぷりだしソーセージも良い焼き加減だね」

「へへ、まぁ食べてから褒めてよ」

 

ムコーダさんは料理自体は嫌いじゃないらしい。…でもさっき支度を手伝おうとしたところ断られたので、結構好きなんだと思う。こだわりがあるタイプとみた。

 

早速スープを1口。口中に広がるコンソメスープは、胡椒を少し多めに入れているお陰かピリッと辛く、しかし心地よい辛さだ。

 

パリッと噛み心地が良いソーセージに、野菜もスープの旨みを吸っているのにシャキシャキで口と耳が楽しい。

 

あれ、ボクこんなに食レポするタイプだったっけ。あれかな、大自然の中で食べる食事だからかな。

 

……それとも、久しぶりだからかな。こんなに大人数で食べる食事が。

 

「これ凄く美味しいよムコーダさん!料理、やっぱり好きでしょ?」

「いやぁそれほどでもあるというか……ん?」

 

ムコーダさんはなにかに気付いたのか、ボクの隣にいるフランカさんやラモンさんを見ている。ボクも気になったので様子を伺うと、そこには一心不乱に食事している鉄の意志のメンバー達がいた。

 

「これ、うま、止まんない!」

「なんだこれ美味すぎだろ!」

「このパン、どうなっているんだ…?柔らかすぎる、こんなに柔らかいパン、食べたこともない!」

 

「…ムコーダさん、なんか入れた?」

「え、ただのコンソメ入れただけのスープだし、パンもそんなに高くないやつなんだけど……具体的に言うと4枚切り160円くらいのやつ」

 

……いや、多分それでも、だ。

 

この世界の文化水準は、魔法という特殊な分野を除けばボク達がいた世界より遥かに低い。

 

例えば、ムコーダさんが出したコンソメ。起源は確か……フランスだったかな?それ自体、当時の料理人達が肉や魚を使って長時間煮込んだ凄い手の込んだスープだって、豆知識を纏めた動画で見た事ある。

 

そしてムコーダさんがスープに入れたのは、そんなフランスが誇るコンソメを日本が固形コンソメという商品にしたものだ。ブイヨンキューブとも言うんだっけ?

 

つまり、コンソメは先人達の知恵と努力の結晶なのだ。……って豆知識系動画で言ってた、気がする。味〇素って超凄いのだ。

 

パンだってそうだ。食パンなんて今では日本じゃ安価で手に入るけど、この世界のパン、いわゆる黒パンなんだけど、すっげぇ固くてマズくて食えたもんじゃなかったんだ。

 

それが急にカリカリふわふわの現代のパンを食べれば、こうなるのも無理は無いかもしれない。

 

どう誤魔化したものかと考えていると、ヴェルナーさんがムコーダさんに質問していた。

 

「ムコーダさん、貴方はもしや高名な王宮料理人なのか…?」

「え、あ、いや!えっとぉ……」

「……いや、詮索は無用か。誰しも何かしらの理由がある。使われている食材も、俺達では到底買えない様な代物ばかりだろう」

「こんなに美味しいもの食べてるのに疑っちゃバチが当たるよねー!」

 

なにやら勝手に納得してくれたのか、それ以上ヴェルナーさん達がムコーダさんに質問することは無かった。

 

「ま、まぁ…とりあえず、美味しいよ、ムコーダさん」

「あ、ありがとう……」

 

ヴェルナーさん達から見たボク達、どう見えているんだろうか。

 

 

◻︎

 

 

それから五日、ボク達は移動を繰り返していた。

 

その間、ボクはラモンさんから教えを受けていた。なにやらスイッチが入ってしまったらしく、とても熱のこもった教えだった。

 

それでもそのお陰で、ボクは結構魔法が使えるようになった。

 

ラモンさん曰く、こんなに速く魔法を習得出来た人は見た事ないんだとか。ふっふっふ、ボクって結構凄いのかもしれない。

 

まぁ無限魔力なんてズルいものは使ってるけどネ。それでもボクが多分ランダムで貰える固有スキルの中で手に入れたものだし、運も実力の内ということで。

 

そしてもう1つ、ボクには回復魔法も扱える事が分かった。ものの試しに短剣で手のひらを傷付けて唱えてみたらなんか出来たのだ。

 

フランカさんとムコーダさんには死ぬほど怒られたけど…別にいいじゃん治るんだから。でも普段怒らなさそうな人が怒るのと、美人は怒るとすっごい怖い。

 

「おーい!ヴェルナー!」

「どうした」

 

斥候していたリタさんが、どうやら『レッドボア』という魔物を見つけたらしい。赤毛でイノシシの魔物なのだが、イノシシと違うのはそのサイズ。なんと牛より遥かに大きいんだとか。

 

「そんな大きいイノシシ、勝てるの?」

「レッドボアはDランクの魔物だし、俺達なら余裕っすよ!」

 

実際、瞬殺だった。

 

最初こそそのサイズにボクもムコーダさんも面食らったが、リタさんの陽動、ラモンさんの魔法による足止め、ヴェルナーさんとヴィンセントさんの剣による攻撃でレッドボアはあっという間に討伐された。

 

ボクはレッドボアの死骸に『鑑定』を行った。

 

確かに攻撃力はそこそこだけど瞬発力と防御力がイマイチだ。大きい分余計な肉が付いちゃって当たり判定がデカイだけのノロマな魔物なのか。

 

「じゃあ解体しよっか」

「食べれるの?」

「肉は美味しいし、牙とかそこそこで売れるよ!」

 

ボクとムコーダさんは解体の現場を見学させてもらった。

 

ラモンさんの水魔法で血を洗い流しながら、ヴェルナーさんとヴィンセントさんは素人目から見ても見事な手際で解体していく。

 

血の匂いが辺りを覆う。結構グロテスクだけど、この世界にいる以上早く慣れておかないと……。

 

内臓は美味しくないらしく、売れもしないので放置。牙は薬に使うらしく、細かく砕いて皮袋にしまった。

 

肝心のお肉も、どうやら持ちきれないので半分ぐらい置いていってしまうらしい。

 

「あ、じゃあ残りは俺のアイテムボックスにいれていきませんか?」

 

ムコーダさんがアイテムボックス持ちなのは鉄の意志には既知の情報だ。まぁ料理の食材出し入れしてるし小さめのサイズってムコーダさんは誤魔化している。

 

そして今晩、そのレッドボアの肉を使った料理を作ってくれるらしい。

 

ボクは何度かムコーダさんの料理を手伝おうとしたが、やはり手伝わせてくれなかった。意外にも強情だ。

 

仕方ないのでラモンさんとフランカさんのW師匠の元、魔法の鍛錬。ラモン曰くボクは威力よりも魔力の消費を抑える為サイズを小さくする術を覚えた方が良いらしい。

 

まぁ魔力消費はともかく、サイズを小さくするのは賛成。いちいち山火事だったり洪水クラスの魔法を放って環境破壊は気持ち良いZOY☆ごっこしている場合じゃない。普通になにかしらの法に触れそうだ。

 

「完成しました〜!」

「待ってました!」

 

鉄の意志のメンバー達はムコーダさんの料理にあっという間に魅了されたらしく、凄い速さで椅子を並べたり配膳を手伝ったりしている。

 

実際ボクもムコーダさんの料理は好きだ。

 

「今日の晩ごはんは、レッドボアの生姜焼きです!」

「「おぉー!」」

 

皆で手を合わせてご飯を頂く。そういえば手を合わせるという行動も、ボクとムコーダさんが広めたものだ。命をいただくという意味の、いただきます。実は日本特有の文化で、海外では馴染みが無い行動だ。

 

別に海外の人が食事に感謝していないという訳では無い。現に宗教などでは神様に感謝してから食事したりするらしいし。豆知識系動画で見た。

 

ボクは早速生姜焼きを1口。甘じょっぱいタレが口いっぱいに広がり、お肉も柔らかくてあっという間に噛み終わってしまった。

 

惜しむらくはご飯ではなくパンという所だけど……多分ムコーダさん、お米を出したくなかったんだろうな。無さそうだしね、米文化。

 

「んッだコレウンメェーッ!?」

「美味いッ!」

「あたいこんな美味いもの初めて食べたっ!」

 

「リタさんそれ今日のお昼に聞いたよ」

「それぐらい美味しいの連続ってコト!」

「パンとキャベツ…じゃないやキャベットと一緒に食べると美味しいよ」

 

この世界ではキャベツのことをキャベットって言うらしい。理由は知らない、神様にでも聞いてほしい。

 

その時、ボクの背中に冷水でも垂らせたような、嫌な気配を感じとった。

 

「んむ?ほうかひたの?」

「リタさん食べながら喋んないで。……なんか、変な気配を感じたというか」

「んぐっ……別に、なんも感じないよ?」

「……リタさんが言うなら間違いないか」

 

リタさんは斥候として『聞き耳』などの探索スキルを持っている。そんな探索専門職のリタさんが感じないと言うんだ。それなら、今のは気の所為か……。

 

「ふふ、まだ森の夜が怖いの?」

「別にそういうんじゃ……ない……」

 

ボクは隣にいたフランカさんを庇う様に立った。ヴェルナーさんも、ヴィンセントさんも、そのあまりの強大さに思わず立ち上がった。

 

「え、どうしたんですか。カエデくんも……」

「ムコーダさん、ゆっくり、ゆっくり立って、ボクの方に来て」

「え、どうし「いいから早く……っ」わ、分かった」

 

ムコーダさんはボク達の方へ来て、そのまま視線をボク達が注視している方へ向ける。

 

「んなっ……!?」

 

ムコーダさんの、ボク達の前には──!

 

体高だけで2mはありそうな巨体、全身を覆う魔力に包まれている体毛。眼光だけでボク達を殺せそうな瞳。あらゆるものを引き裂けそうな爪、あらゆるものを噛み砕けそうな牙──!

 

「ほう、妙な魔力と美味そうな匂いを辿ってみれば…」

 

「まぁ、魔力の方はまだ良い。それよりも…」

 

目の前にいるやつはムコーダさんを見据える。このままじゃムコーダさんが食べられる。どうする、どうする──!勝てるのか、こんな、存在するだけでボク達を殺せる様な奴に!

 

「人間よ、それを我にも食わせろ」

 

そう言って、目の前のやつはムコーダさん──が持っている生姜焼きに視線を向けた。

 

…………………………え、生姜焼きに?

 

「おい人間、聞こえぬのか?」

 

「それを、我にも、食わせろと言っている」

 

…………こいつ、ただの食いしん坊じゃない?

 





企業名とか商品名ってどこまで出していいんだろう…。
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