とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】   作:一般通過炎竜

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第6章『吹き荒ぶ春の嵐とミートソース』

 

翌日の朝、ボク達は朝イチで商人ギルドへやってきていた。受付にて美人なお姉さんにムコーダさんはなにやら持ち込んだ商品を買い取って欲しいらしい。

 

「拝見いたします」

 

お姉さんは麻袋に入っている中身を見ると、顔色を変えた。なに見せたんだろう?

 

「失礼、少々お待ちください」

 

血相を変えたお姉さんは奥の部屋へと入っていった。

 

「あ、あれ?やっちまった?」

「お、ムコーダさんもノルマ達成したね」

 

少し待つと、受付のお姉さんは戻ってきた。

 

「ムコーダ様、奥へご案内いたします。どうぞこちらへ」

 

……ムコーダさんの事だし、別にやらかしてはいないだろうから実力行使に出られることは多分無いと思うけど、一応いつでも魔法を撃つ覚悟はしておこうかな。

 

ボクはローブの裾で隠れた魔導篭手で拳を握り締め、奥の部屋へ入る。その部屋には、ちょっと太り気味のおじさんが座っていた。商人って絶対お腹出てないといけない決まりでもあるんだろうか。

 

「私は当ギルドのギルドマスターを務めておりますロベールと申します、どうぞお見知りおきを。ささ、どうぞお座りください」

 

どう見てもブロンズランク商人とお子様冒険者に対する態度では無いのは置いといて、ギルドマスターが出てきちゃったかぁ……ムコーダさんホントになに渡したの?

 

ギルドマスターさんはムコーダさんが渡した商品を念入りに吟味し、一息付いた。アレ、もしかして……塩と胡椒?

 

「私も長年この業界に携わってきましたが、これほど高品質な塩と胡椒は初めてです。濁りのない真っ白な雑味の無い塩、鮮烈な香りと味の胡椒……本当に素晴らしい」

 

……ムコーダさん、もしかしてネットスーパーで買った塩と胡椒を売りに来たのか。転売と言われればそれまでだが、まぁ誰かが困る訳でもましてや異世界だし?問題無かろうて。あ、転売ヤーは見かけ次第燃やさなきゃ…。

 

「それでこちらの買取金額についてなのですが、塩が金貨4枚、胡椒は金貨10枚でどうでしょうか?」

(すっご⋯⋯あ、いやいや、顔に出さんとこ。もっと吹っかけられる気がする)

 

塩もそうだけど、胡椒は凄い金額だ。胡椒はボクらが生まれるずっと昔から【黒の金】と呼ばれるヘタな宝石より価値があったものだ。

 

インド辺りで本格的な栽培が始まって、ギリシャとかその辺で取引が始まったんじゃなかったかな。当時はそれはもう超高級品で、権威の象徴となったことすらある筈だ。

 

確かどっかの王様の身代金にすら使われたんじゃなかったっけ?

 

(ムコーダさん大丈夫かな、汗ダラダラだけど)

 

ボクは内心大金にビビり散らかしてるのを隠しながら壁に寄りかかって腕を組んでふんぞり返ってる。それを見たからかは定かでは無いが、ギルドマスターさんは交渉に入る。

 

「ううむ、やはり低すぎますか…」

「えっ」

 

ムコーダさん、声に出さないの。

 

「では2つ合わせて金貨15枚ではいかがでしょう!」

 

ムコーダさんは慌てて金額を修正しようとするも、ギルドマスターさんは既に熱が入ってしまっている。

 

「な、ならば金貨16枚!どうです?」

「えっあのいや」

 

「くっ……ならば金貨17枚!!」

 

そこで、ボクはおもむろに魔導篭手が付いた手で指先を軽く擦る。金属質な音が部屋に響き、ギルドマスターさんは立ち上がって宣言する。

 

「それでは金貨20枚!!これ以上は上げられませんぞ!!」

「は、はいっ!それでいいです!」

 

2人して肩で息をするくらい白熱した交渉だった。まぁ、ムコーダさんは慌てっぱなしだったけど。

 

ふふ、高額転売が可愛く見えるくらいの超高額転売だ。多分あの2つ両方合わせても銀貨1、2枚が精々だろうし。

 

少しして、先程の受付のお姉さんが金貨を持ってきた。丁寧に仕舞われた金貨をムコーダさんは受け取り、その重さを改めて実感している。

 

やってくれたねぇムコーダさん、こりゃボクも頑張んないとな。

 

ボク達は商人ギルドを後にし、フェルが待つ噴水広場へと戻った。そこで、ムコーダさんはようやく口を開いた。

 

「ぶはーっ!緊張した!!」

「まさか調味料の転売とはねぇ、ネットスーパーマジで強いね」

「というかカエデくん、さり気なくギルドマスターさんに圧かけたでしょ!」

「あ、バレた?」

「ダメだよそういうのは、このパーティの商人として以後あの様な行為は禁止します!」

「はーい」

 

ビシッと指を指されてしまいボクはお手上げと言わんばかりに両手を軽く上げた。

 

「おい、昼飯は肉がいいぞ」

 

ようやく口を開いたと思ったらウチのはらぺこおおかみはメシの話しを持ちかけてきた。

 

「肉もう無いぞ、昨日全部ステーキにして食べただろ」

「お主のスキルで召喚できぬのか」

「俺のは召喚じゃなくて買い物なの」

 

「んじゃあさ、狩りのついでに冒険者ギルドでクエストしようよ。お金も稼げて一石二鳥でしょ?」

 

ボクの提案に2人は快く承諾してくれた。ボク達は噴水広場を後にし、冒険者ギルドへと足を運ぶ。ムコーダさんとフェルは外で待っているらしい。中に入ると、ギルド内にいる全冒険者がボクを見てくる。

 

「うわ、むさくるしっ」

 

ボクは堂々と真ん中を通り、クエストが貼られている掲示板の前に辿り着く。道中クスクスと笑われたりしたが別にどうでもよかった。

 

「えーっと、ボクが出来るクエストは……」

 

薬草採取、キノコ採取、鉱物採取…………あれ。

 

「採取クエストしか無いじゃん」

 

1番下のランクだから簡単なやつしかないのかな。えー、凄い拍子抜けなんですけど。……ん?

 

「あれ、このクエスト重なってる…」

 

ボクは掲示板に釘で打ち込まれている数ある紙の中から、端っこにある隠れた紙を見つける。それはFランクの討伐依頼。

 

「オークの討伐依頼だ」

 

オーク。ファンタジー定番モンスターの一角、1部界隈では引っ張りだこの超人気モンスターだ。内容を見るに、田畑を荒らす群れからあぶれた単独のオークを討伐するものらしい。

 

目標のオークの似顔絵が書いてあった。右目に傷があり、小さい髑髏のネックレスをしているらしい。

 

ボクはクエストの紙を取り、受付へ向かう。そこにはダウナーなお姉さんが爪を弄りながら座っていた。

 

「これお願いしまーす」

「……ハァ、どうぞ」

 

あ、これダウナーじゃねぇわ、ただの不真面目だ。でも顔が良いから許されていると見た。実際凄い美人だし。

 

「え?……貴方がこれをやる気ですか?」

「そうだけど」

 

お姉さんはボクをジロジロ怪訝そうな顔で見る。まぁ、そりゃナメられるよね。いやホントに美人だなこの人……。これで性格が良ければ完璧なのに。

 

「まぁ、精々死なない様に」

「ありがと」

 

ボクはギルドから出て2人と合流する。そして街から出てだだっ広い草原に辿り着いた。

 

「じゃあムコーダさん、お昼ごはんの用意お願いね」

「任された。フェル、見張り頼むぞ」

「む?我も狩りに行くが」

 

えっ、とムコーダさんは固まった。いやいや、そしたら誰がムコーダさんを守るのよ。

 

「心配せずとも結界ぐらいは張ってやる」

「え、なにそれどうやんの」

 

フェルはムコーダさんに結界を張った。それも魔法を口にすらせずに。

 

「…フェル、あの岩に結界張ってみてくれる?」

「構わんが、なんの意味がある?」

 

ボクはフェルが結界を張った岩に向かって杖を構える。思いっっっきり魔力を込めて、今ボクが出せる最高火力を叩き出す。

 

「『スプリングテンペスト』!!」

 

風の斬撃を含んだ大嵐。ラモンさんに教わった中ではこれが1番火力があった。しかし、結界には傷1つすら付いていない。

 

「ふはは、まだまだよ」

「ぜってぇ粉々に砕いてやるからな…」

 

ボクは改めて決意し、結界の安全性を確認したムコーダさんは上機嫌に料理の支度を始めた。

 

「フェル、ボクのクエスト終わったらフェルの狩り見てもいい?」

「構わん」

 

ボクはフェルの背中に乗り森へ入っていく。目標のオークはどうやら田畑を襲っては律儀に巣へ戻る几帳面なやつらしい。知能もそれ相応にあるとも書いてあった。

 

少しして、川に拠点を構えているオークの群れを発見。関係ないオークかと思ったけど、どうやらそんなことはないらしい。

 

「あの1番偉そうにしてるオーク、目標のやつだ…」

「自分で群れを作る程強くなったということだろうな」

「罠クエストじゃん。……フェル、オークって食べれるの?」

「人間も食用にしておるし、我も良く食うぞ」

 

二足歩行の豚かぁ……ま、まぁ捌いた後はただのお肉だろうし、気にしない方向でいこう。となると、焼き過ぎて焦がすのはマズイし、氷付けも味に影響しそうだし、ここは風属性でいっか。

 

ボクはフェルを置いてオーク達の巣へ近付いた。ボクに気付いたオーク達は咆哮を上げ、こちらに向かって武器を持って走ってくる。

 

「ロックバードの方がもっと早いね」

 

ボクは先程のスプリングテンペストをオーク達に向かって放つ。巨大な大嵐に為す術なくオーク達は傷付き、倒れていった。

 

「うん、やっぱりフェルの結界がおかしいだけだよコレ。どうやって壊そうかな……あれが壊せない限りお話しにならないだろうし」

 

結界破壊特化の魔法を作るとか、結界を解析して結び目を壊すとか……色々出来そうだけど、とりあえずこの惨殺死体と化したオーク達を仕舞っちゃうか。

 

「終わったか」

 

後ろから、フェルがデカイ熊みたいなのを咥えながら歩いてきた。

 

「あ、つまみ食い」

「我が獲った肉だぞ」

「その熊、まだいるの?」

「森の奥に腐るほどいる。他にも様々な種類の魔物がな」

 

その言葉に、ボクは早速フェルの背中に乗って連れて行ってもらう。そして、一旦止まりフェルの背中から降りた。

 

「じゃあとりあえず30分くらい経ったらここに戻ろうか」

「1人で平気か?死なれると困るのだが」

「なに、心配してくれんの?」

「奴が飯を作らなくなるだろうが」

「それはそう」

 

ボクはフェルと離れ、1人で森の奥へ。そこからは怒涛のレベル上げと狩りの連続だ。

 

ボクは鑑定と討伐、回収を繰り返し、魔法にも慣れを覚え始めてきた。魔道具店って魔導書も置いてるんだろうか?あとで見に行かなきゃ。

 

ボクは出会いがしらに魔物に魔法を叩き込み、そのどれもをワンパンで倒していく。もちろんこちらは無傷だ。というか1発でももらったら多分死ぬから先手必勝しかボクに選択肢は無い。

 

30分ぴったりで合流地点へ戻る。そこには死体の山を作って欠伸をしているフェルがいた。うわ、とんでもない匂いだ。

 

フェルの分もアイテムボックスに仕舞い、再びフェルの背中へ。うわ、血なまぐさい。

 

「大漁、大漁。さ、ムコーダさんのとこに戻ろっか」

「うむ」

 

相変わらずとんでもないスピードで走るフェルの背中で、ボクは物思いに耽っていた。

 

(空を飛ぶ魔法とかないのかな。フェルと同じぐらいの機動力も確保したいし、なにより便利そうだ。あ、結界も覚えなきゃな…)

 

あっという間にムコーダさんの元へ戻る事が出来た。ムコーダさんもどうやら調理が終わっていたらしい。

 

「あ、大丈夫だった?」

「よゆー」

 

ボクはVサインをムコーダさんに向けてから鍋の中身を見る。中には良い匂いの挽肉が大量に入っていた。

 

「ミートソース?」

「ああ、スパゲッティでも作ろうかなって」

 

ボクとムコーダさんは皿に盛り付けられたミートソーススパゲッティを持って地面に座る。フェルの分は大きい皿に盛り付けられている。

 

「なんだこれは、ツタか?」

「違う違う、俺達の世界でスパゲッティっていう食べ物だ」

「ふむ……肉は少ないが、まあいいだろう」

 

フェルはガツガツとミートソーススパゲッティを食べ始める。ボクもフォークでくるくるスパゲッティを纏めて1口。

 

「む、ツルツルしていて面白い」

「うーん、外で食べるムコーダさんのご飯やっぱり最高だなぁ」

「帰り方も分からない異世界で、いつもと変わらないメシが食えるってのは贅沢だよなぁ」

 

…………帰り、方。帰り方。帰り方?

 

なんだろう、なんだ?この違和感。今まで気にもとめてなかった、帰り方⋯異世界からの帰還方法。いの一番に考えても不思議じゃないのに、なんで今になって急にそう思った?

 

…昨日の文字の件と言い、勇者召喚の儀にはなにか真っ黒な性質があるに違いない。洗脳とか、思考操作とか、そういう物騒なものがあっても不思議じゃない。

 

「うむ、美味かった。昼はこれくらい軽くでいい」

 

フェルがそう言い、ふとフェルの顔を見ると、そこには顔と胸の毛辺りをミートソースでベッチャベチャに汚した澄まし顔のフェルがいた。

 

「ぶはっ!ちょ、フェルなにその顔!」

「ハッハッハ!食べ方下手すぎるだろフェル!」

「むっ、何がおかしいっ」

 

まぁ、とりあえず今はいいや。こんなにも空が綺麗なんだ、そんなことを気にするのすら野暮に感じるほどに、ね。





誤字報告、毎回感謝しています。一応チェックはしているんですが、どうしても出てきてしまうものですねぇ…。

それと、評価バーが赤くなりました。みなさんのお陰です。

みなさんの感想、お待ちしております。
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