とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】   作:一般通過炎竜

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第7章『親切心は人を救う』

 

昼食後、ボク達はクエストの完了報告と狩りに狩りまくった魔物を買い取ってもらうために冒険者ギルドへ訪れていた。

 

「はいこれ、証拠のオーク」

 

ボクはダウナーお姉さんの目の前にアイテムボックスからオークの顔だけ覗かせた。引き攣った顔を隠そうともせずお姉さんは依頼書に判子を押してくれた。

 

「受け付けました、こちらが報酬の銀貨5枚です」

「はーい。あ、あと解体の受付ってどこ?」

「おう!こっちだぞ!」

 

違うカウンターからおじさんの声が聞こえた。なんてダンディな声なんだろうか、隠密が得意だったりしない?

 

「結構数あるんだけど、大丈夫?」

「そんなか?お前さんGランクだろう?」

「後ろのもあるからさ」

 

そう言って、ボクはフェルに指をさす。おじさんは納得したのか、あー…と声を漏らした。フェルの扱いに少し笑える。

 

「あの噂のフェンリルか。よし、裏に来な」

 

ボク達はおじさんの案内でギルド裏にある解体場に向かう。肉を吊るす為のフックや、皮を鞣す道具などいかにも工房らしい道具が揃っていた。

 

「じゃあまずボクが取ってきた分からで」

「おう」

 

ボクは大きな机の上にドボドボ魔物達の死骸を載せていく。うーん、乗り切るかなコレ。

 

「お、お前さん、これ全部自分で狩ったのか?流石にフェンリルの力を借りたんだろう?」

「失礼な、借りてないよ。ああいや、森の中まで乗せてもらったけど…戦闘には関わってないよ」

「カエデくんこんなに捕ってたの…?」

 

「ロックバード、レッドボア、マーダーグリズリー、ブラックサーペント、ジャイアントディアー……どれもこれもBからAランクの魔物ばっかりじゃねぇか。お前さん、一度冒険者登録抹消されたクチか?」

「初めて取ったけど………あっ」

 

「またボクなにかやっちゃ「さっさと我の分も出さんか。腹が減ったぞ」

「フェルさぁ……人のセリフ遮るとかマナーが無いよねマナーが」

「人間の尺度なぞ知ったことか」

「その程度知らないとか伝説が聞いて呆れるなぁ」

「はいはい喧嘩しないの」

 

ボクはぶつくさ文句を言いながらもフェルが狩った分を出していく。案の定スペースが足りなかったので外に敷物を引いてそこにも適当に出しといた。

 

「と、とにかくこの量だと明日の昼くらいまではかかっちまうかもな。構わねぇか?」

「あ、食べられる肉だけ先にお願いできますか?」

「おお、今日の分か。よし待っとけ」

 

おじさんは解体用の短剣を持ち出し見事な手際でレッドボアを解体をしていく。鉄の意思達も綺麗な解体だったと思うが、さすがは本職。ボクとムコーダさんは思わず魅入ってしまっていた。

 

「ほれ持ってけ」

 

ムコーダさんはおじさんからお肉を受け取り、ボク達は冒険者ギルドを後にした。そこで、ボクはムコーダさんに提案を持ちかける。

 

「ムコーダさん、明日にお金入ると思うしさ、魔導具店行ってもいいかな?」

「ん?ああ、いいよ。お昼までには帰っておいで」

「やった」

 

ボクはムコーダさんからお金を受け取り魔導具店へ。中に入ると、お爺さんが空の棚に向かって立っていた。

 

「こんにちは、どうかしたの?」

「おお君、格好からして冒険者かね?」

「うん、そうだけど」

「実はね……」

 

お爺さんが言うには、入荷予定の本や魔導具が規定の日時を過ぎても来ないらしい。その商人さん達も専属の護衛が沢山いて下手な魔物程度なら返り討ちに出来るらしく、遅れる事自体今回が初めてなんだとか。

 

「どこかで足止めをくらっておるのかの」

「どこから入荷する本なの?」

「レイセヘル王国だ、国境封鎖の噂は本当だったか…」

「国境までで良いなら見てこようか?」

「良いのか?」

 

「次の買い物、サービスしてよね」

「ははは、お安い御用だ。気を付け給えよ」

 

ボクは魔導具店から出て街の入口へ。街道を通れば1時間もかからず国境へ辿り着ける。あ、ムコーダさんに連絡した方がいいかな?

 

「まぁ、いいか」

 

すぐに戻ってこれるでしょ、ひとまず街道へ行こう。暫く歩き続け、街道に出てしまっている小物を片付けながら遠くの方で止まっている馬車を発見した。

 

(なんであんなところで……?)

 

ボクは街道から少し離れ草むらに入った。そして、昨日狩りをしている最中に気が付いた『鑑定』の便利な使い方を試す事にする。

 

指でフレームを作る様に形を作り、そのフレームと瞳に魔力を集中させる。すると遠方にいる対象にすら『鑑定』が発動する。

 

鑑定には43歳の男、19歳の女と出た。2人とも職業には商人と出てレベルは1。しかし馬車の中には3人分の別反応が出た。

 

レベル26と25、24の男達、職業は無し。しかしスキル欄には隠密や鍵開け等のスキルがある、おそらく山賊や盗賊の類いと思われる。他の2人も同様だ。しかも1人は魔法も使える様だ。

 

「脅されているのか、それともグルなのか……」

 

ボクはいつでも魔法を撃てる様に準備し、馬車へ近付いていく。馬の手綱を握っているおじさんはボクを見てひどく驚いた。

 

「こんにちは、立ち往生して…どうかしたの?」

 

女性は怯えきって目でボクを見る。脅されているとみて間違いなさそうだ。

 

「に、逃げて……」

 

その言葉にボクも驚いた、この女性は自分の身よりボクを案じた。どうにかしてボクもそれに報いたい、そう思えた。

 

「おいおい、なに勝手なことしてやがるんだ?」

 

馬車の荷台から男達が出てくる、鑑定に映った盗賊の男達だ。1人は短剣と短い杖の様な物も持っている。鑑定で見た魔法使いまがいの男か。

 

「ガキ、見逃してやるからとっとと失せな」

「痛い目見たくねぇだろう?」

「へへへ…」

 

ボクはその3人を見て、思わず吹き出した。男達の表情が歪み、馬車の2人は呆然としている。だってさぁ……

 

「ああ、ごめん。あんまりにも想定通りのセリフ過ぎて……つい面白くなっちゃった。おじさん達、演劇に向いてるんじゃない?もちろん見世物小屋のね」

 

ボクの挑発に、男達は表情を消して襲いかかってくる。コイツらただの盗賊じゃなさそうだ。まぁでもね、

 

「フェルに比べたら欠伸が出るほど遅いけどさ!!」

 

ボクは杖の先端を地面に叩き付け、魔法を発動させる。発動させた魔法は氷、それも強度に特化した拘束魔法──!

 

「『アイスバインド』!」

 

逆さの氷柱が次々と男達に向かっていく。魔法使いの男は反撃の魔法を唱えた。

 

「『ファイヤーボール』!」

 

火球が氷柱に当たるも、その火球ごと男達の身体は氷に覆われていき、魔法を使える男は頭部だけ凍らせなかった。横の2人は完璧に氷で覆っているので心配は無い。

 

「さて、このまま氷ごとコナゴナに砕くのもいいけど。聞きたい事がある」

 

ボクは魔法を使える男に杖を向けて脅す。男は怯えきった表情で杖の先端を見続けるしかない。

 

「なんでわざわざ馬車を乗っ取った?アンタら3人、金品目当てなら簡単にあの2人を殺せたと思うんだけど」

「ぐ、み、密入国の為だ……あいつらは商人ランクがシルバー、その信用を使えば街へ簡単に入れる…」

「密入国……もしかしてアンタら指名手配?手配額は?」

「き、金貨15枚……」

 

「わざわざ覚えてるあたり自慢に思ってそうだね」

 

ボクはその言葉を皮切りに氷を再展開。最後に残した男も完璧に氷で覆った。死にはしない……って魔導書には書いてあったけど、これ流石に死んでない?呼吸出来ないでしょ。

 

「もういいよ、片付けたから」

 

ボクは運転席の方へ向かい終わった事を告げる。安心しきった表情で抱きしめ合う2人。なにやら胸にチクリとくるものがあったが、気の所為と吐き捨てた。

 

「おお女神様、感謝致します……!」

「感謝するならボクにして欲しいけど……まぁいっか」

 

拘束した男達を縄で縛ってもらい馬車へ繋いで引き摺る様にする。しょうがないよね、こんな重くて冷たいの馬車に載せられないし。

 

ボクは街へ向かいながら商人達から事情を聞いた。なんでもレイセヘル王国から来る途中にコイツらに襲われ、護衛も殺されて娘さんを人質にされてやむ無く従っていたらしい。

 

そんなガタガタの状態では満足に進行も出来ず、かなり遅れてしまったんだとか。

 

「え、もしかしてファリエール魔導具店に卸しに行く商人さん?」

「は、はい」

 

ラッキー。日頃の行いってこういうところで出るよね。

 

「それなら良かった、ファリエール魔導具店のお爺さんから貴方達の様子を見てきて欲しいって頼まれてさ。国境まで行く予定だったんだよ」

「そうでしたか……ありがとうございます。貴方様が来てくれたのも、全ては【女神ニンリル】様の思し召し……」

 

女神……この世界では女神信仰がある。フェルもその女神ニンリルとやらの加護を受けているし、多分ガチで存在しているんだろうな。

 

ボク達はファリエールに戻り、再び魔導具店へ。そこで商人さんがボクの活躍を語ってくれた。自分がやった事なのにどこかむず痒いものがあるねこれ。

 

「そうだったのか、ありがとう小さな魔法使い」

「小さなは余計でしょ」

「はっはっは!これは失礼を、偉大なる魔法使い」

 

ならばよし。という訳で早速サービスで魔導書を安く購入出来た。ボクがホクホク顔で魔導書を抱き締めていると、商人のお姉さんが近付いてくる。

 

「改めて、ありがとうございました。お礼と言ってはなんですが、馬車にある魔導具をご自由にお受け取りください。支払いはもちろん結構ですので」

「え、いいの?ボクそういうの遠慮しないよ?」

「はい、構いません。どの道貴方様がいなければ潰えていた命。安いくらいですわ」

 

へっへっへ。そういうことなら遠慮無く。ボクは凍ってる盗賊共を足でどかして馬車の中へ。そこで鑑定を行う。なにか良いのは入って無いかなぁ〜。

 

「火炎魔導書、疾風魔導書、氷結魔導書……うーん、どれにしようか……な?」

 

荷物の中にボロっちい革で出来た魔導書を見付ける。これ、魔法で封印されてるからか鑑定も効かないし開けもしないんだけど。

 

「お姉さん、これなに?」

「ああ、そちらは王都にいた時にローブのお爺様から支払い代わりに貰った物ですわ。本の中身は分かりませんが、装飾に使われている金属は高価なものでしたので……」

「へぇー……じゃあ、これと……これでいいや」

 

隣に置いてあった銀の懐中時計とボロっちい本を取り馬車から飛び降りると、お姉さんは引き止めてくる。

 

「ほ、他にも貴重な魔導具はございますよ?魔石や装飾も…。その懐中時計も大したものではございませんし」

「別にいいよ、報酬目当てで助けた訳じゃないし……は、ちょっとキザ過ぎるかな」

 

「では、せめてこの盗賊共をギルドへ運ぶのに馬車をお使いください」

 

そう言っておじさんは馬車へ乗り込んだ。そういうことなら遠慮せずご好意に甘えるとしよう。

 

冒険者ギルドへ辿り着き、受付のお姉さんを外へ呼び顔を確認してもらう。すると、少し驚いた表情をしてくれた。

 

「彼らは、Bランクの賞金首です。本当に貴方が…?」

「なんでそこで疑うのさ。まぁそれはいいや、懸賞金ちょうだい?」

「少々お待ちください」

 

受付のお姉さんはパタパタ小走りで裏まで行った。

 

「それじゃあここまでって事で。これからも頑張ってね」

「はい、本当にありがとうございました」

 

商人の2人に別れを告げると、丁度受付のお姉さんが戻ってきた。手には報酬が入った袋を持って。

 

「こちらが彼らの懸賞金です。お疲れ様でした」

「どうも。あ、この拘束あと1時間くらいで溶けると思うからよろしく」

 

冒険者ギルドを後に、ボクはムコーダさんのところはもど……あっ、やべ。急いで懐中時計で時間を確認すると、とっくにお昼は過ぎていた。

 

「やっちった……フェルに全部食われてないといいけど」

 

ボクは急いで宿へ戻ると、ムコーダさんが心配そうに駆け付けてくれた。ついでにフェルも歩いてくる。

 

「カエデくん!無事!?」

「えっ、うん。別になんもないけど」

「だから言ったであろう。小僧なら心配はいらぬと」

「それでも万が一があるだろ!」

 

「……ムコーダさん、なんで心配なんて」

 

ボクがそう聞くと、ボクに目線を合わせてムコーダさんは真剣な表情になる。

 

「カエデくん、俺なんて頼り無いかも知れないけどさ、元の世界だろうと異世界だろうとキミは子供なんだ。心配くらいさせてくれよ」

 

「俺達、仲間だろ?」

 

そう言って、ムコーダさんは笑顔に戻った。

 

「…………ごめん、ムコーダさん」

「うん、もういいよ。それよりお昼ご飯出来てるからさ、食べようよ。フェルも待っててくれたからさ」

「余計な事は言わんでいい!」

「はいはい」

 

ムコーダさんとフェルは獣舎へ向かっていった。ボクはそれを呆然と見詰めていた。仲間、仲間──。

 

『心配くらいさせてくれよ』

 

「……誰かにそんなこと言われたの、初めてだよ…」

 

ボクは慌てて2人の方へ走って向かう。その大きな背中を追いかけて。





良ければ感想、よろしくお願いします。



自分は闇を抱えている少年少女が好きです(突然の性癖開示)
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