とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】   作:一般通過炎竜

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試験的に多少慣れている三人称視点で書いてみました、一人称って凄い難しいですね。


第8章『迸る肉に荒ぶる化身』

 

カエデのプチ失踪事件の翌日。ムコーダは解体されたフェルとカエデが捕ってきた大量の肉の前に呆然と佇んでいた。

 

「こ、こんなに…」

「すげぇ量だったぞ。久々に徹夜したわ」

 

ガッハッハ!と快活に笑う職人にムコーダは苦笑いを返すしかなかった。そして職人は近くにあった大量に金貨が詰まった袋を2つムコーダに手渡す。

 

「そんで、買取の精算額はこれだ。今回は高ランクの魔物ばかりだったからな…。解体費用を少し引いて、金貨8枚と銀貨9枚」

 

「それを差し引いても、全額で金貨395枚だ」

「さ、さんびゃくきゅうじゅうご!?」

「なんだ相場も知らねぇのか?」

 

田舎出か?と職人はからかい気味に笑う。

 

「例えばオークの睾丸は精力剤、レッドボアは牙が装飾品、ロックバードは風属性の矢になったり……お前さんとこのフェンリルは肉にしか興味無いだろうが、こういう素材達は冒険者や市民に重宝されるもんだ」

「な、なるほど…」

 

と、そこで職人はフェルはともかくカエデが来ていないことに気が付いた。

 

「ん?そういやあの坊主はどうした?解体あんなに楽しそうに見てたのに……」

「なんでも、とても面白い魔導書を見つけたとかで…」

「ははぁ、あの坊主魔法使いの血が入ってたか。そりゃしょうがねぇ、魔法使いってのはそういうもんだ」

 

快活に笑う職人にムコーダは再び苦笑いした。受け取るものを全て受け取り、ムコーダは冒険者ギルドを後にした。そして入口前で待っていたフェルに話し掛ける。

 

「フェル、カエデくんどうだった?」

「相変わらずあの魔導書に夢中だ。我が封印を解いてやったが…あの魔導書、魅了等の呪いの類いは無かったと思うんだがな」

「ひとまず宿に戻るか」

 

2人は宿へ戻り、部屋の扉を開ける。そこには相変わらず机の上にある魔導書に釘付けになっているカエデの姿があった。

 

「カエデくん、もう昼だよ。眠くないの?」

 

なんとカエデは昨晩からずっとこの調子だ。とても真剣な表情で魔導書を見つめ続けているその様子は、傍から見たら狂気的にも思える。

 

「うん、別にそれは平気。……そんなことより、これ凄いよムコーダさん」

「そうなの?」

「うん、『飛行魔法』に『身体強化魔法』、色んな便利過ぎる魔法があるんだけど……それらが全部こんな簡単な術式で……一体これを書いた人は…………」

 

説明の途中で再び魔導書に夢中になってしまった。フェルは呆れた顔で座り込み、大きく欠伸をした。

 

「どうするのだ。速やかにレイセヘルとやらから離れたいのだろう?この調子では魔導書を読み切るまでテコでも動かんぞ」

「うーん…可哀想だけど、フェル、なんとかならないか?」

「簡単だ」

 

フェルは服越しにカエデの首根っこを咥えて机から無理矢理引き剥がした。当然、カエデはじたばたと暴れ出す。

 

「フェル!?なにすんだよ!」

「いい加減にせんか馬鹿者が!」

 

フェルはカエデを咥えたままぶんぶん首を振り回す、元々の寝不足とあまりのスピードにカエデは速やかに意識を手放した。

 

「これで良し」

「だ、大丈夫なのか?」

「安心しろ気絶しただけだ。今のうちに魔導書をお主のアイテムボックスに仕舞っておけ」

 

ムコーダは机の上にある魔導書を手に取る。魔導書に書かれた複雑怪奇で摩訶不思議な文字や紋様を見て頭が痛くなり、素早く魔導書を閉じた。

 

「では往くぞ」

「ああ」

 

ムコーダとフェルは気絶したカエデを背中に乗せたまま国境の街ファリエールを後にし、暫く歩き続けた。道に迷うまでは…

 

「まいったなぁ…地図を買っておくべきだった…」

「行くところが決まっておるのか?」

「そういう訳じゃないけど…あ、フェルはどこかに行きたいか?」

「そういうことならば西だな。西にある深遠の森には美味い魔物が多い」

 

などと2人で話し合っていると、カエデが目を覚ます。寝惚けた表情のまま欠伸をする、まだボーッとしているようだ。

 

「おはよう、カエデくん」

「おはよう……あれ?ファリエール出たの?」

「貴様が寝こけている間にな」

 

カエデは水魔法で顔を洗った後、火魔法で速やかに乾かした。その素早く精密な魔法の熟練度に、フェルは瞳を細めた。

 

「どこに行くの?」

「フェルが西にある深遠の森に行きたいんだとさ」

「へー、どうせ美味い魔物が多いからとかでしょ」

「やかましい」

 

ひとまず街道沿いに進むことにした一行。気付けば辺りはすっかり暮れ、今日は野宿をする事となった。

 

「そういえばカエデくん、昨日の魔物凄い値段で売れたよ」

 

そう言って、ムコーダは金貨が入った袋を取り出した。

 

「うわ、こんなに?クエストとか賞金首がバカらしくなるくらいにあるね」

「そこで、こんなに稼いでくれた2人に今日はご馳走を用意しようかと思ってね」

「肉か」

「フェル顔じゃま」

 

カエデの頭頂部からヌッと顔を出したフェル。その期待の眼差しにムコーダは笑う。

 

「ああ、肉でもなんでもいいよ」

「ふむ……どんなものがあるのだ?」

 

フェルはムコーダが開いたネットスーパーを吟味していく。鶏肉の唐揚げ、肉団子、竜田揚げ、油淋鶏、焼き鳥、手羽先、コロッケ……全てが肉だ。

 

「ううむ、辛抱堪らん。早く出してくれ!」

「わかったわかった、カエデくんはどうする?」

「最近お肉ばっかりだし…魚とかにしようか。お寿司で!」

「変わったヤツめ」

「肉ばかりは肥るよフェル」

 

カエデはネットスーパーで魚の項目を見ていき、ムコーダから許可を取り高めの寿司を購入していく。フェルは出てきた惣菜に夢中にかぶりついている。

 

カエデは寿司のネタに醤油が付くようにして1口。口に入れた途端とろける脂身に舌鼓を打った。

 

「あむ。うん、やっぱり大トロって良いよね。ぶっちゃけ好みは赤身なんだけどたまに食べたくなるというか」

「大トロ?」

「マグロだよ。食べたことない?」

「無いな。クラーケンなどの海鮮はたまに食うが……」

「美味しいよ」

 

あーん、フェルの口を開けさせ、箸で掴んだ大トロ寿司をフェルの口に入れた。フェルは満足そうに目を閉じ味を楽しんでいる。

 

「うむうむ、中々イけるなこれは。前に食べた穀物が油を程よくほぐしてくれる」

「お刺身もいいけどやっぱりボクは寿司がいいなぁ」

 

色々あるよ、とフェルにヒラメやタイ、いくらやサーモンなどを食べさせていく。白身や赤身、卵など様々な海鮮を堪能した。

 

「うむ美味い、久々に腹いっぱいクラーケンが食いたくなった」

「大きいイカなんでしょ?美味いの?」

「美味いぞ」

「ボクがいた世界にはダイオウイカっていう超巨大なイカがいたけど、美味しくないらしくてさ」

 

そこで、なにやら良い香りが2人の鼻腔を刺激する。振り向けばムコーダがなにやら料理をしているようだ。じゅうじゅうと油滴る肉に、程よく焦げ付いたタレ。全てが鼻と腹に響き、食欲が増していく。

 

「ふふふ、2人とも流石にこの肉には反応するね」

「ムコーダさん、それもしかして…」

 

ムコーダは出来上がったステーキを皿に移し、2人に手渡す。

 

「お肉に飽きてるカエデくんも、この国産黒毛和牛ステーキは別腹でイけるでしょ!」

「やっぱり!太っ腹じゃんムコーダさん!」

「黒毛和牛?」

 

フェルはすんすん鼻を鳴らして肉を観察する。

 

「この小さいのがか?確かに美味そうな匂いだが…」

「ボク達の世界…というより住んでた国はさ、凄い食にこだわりがある国だったんだよ。値段によってマチマチだけど、高いものとなれば妥協無し、こだわりとプライド、そして人生を賭けて料理をする人もいたくらいにはね」

「ほう……そしてこれが肉というジャンルの最高峰に位置するもの、ということだな?」

「限りなくな。ネットスーパーだから限度はあるけど」

 

では早速、とフェルは黒毛和牛を1口。

 

「なんと!?なんと柔らかくて芳醇な香りと味なのだ!」

 

夢中で貪るフェルを見たカエデは流石に喉を鳴らした。そして自分も1口食べ、口いっぱいに広がる高純度の味を堪能する。

 

「ウマっ!久しぶりに食べたけどやっぱり美味しいなぁ……因みになんだけど、ご飯ある?」

「抜かりなく」

 

キリッとした表情でお米を差し出すムコーダの手を思わず掴んで握手するカエデ。やはり異世界まで来ても彼らは日本人らしい。

 

全て食べ終わり料理を堪能した3人。ムコーダは片付けをしていると、2人の様子が変なことに気が付いた。

 

「2人とも、どうかした?」

「それがさ…なんというか、とっても昂ってるというか…」

「うむ。前々から思ってはいたがお主の料理は食うと活力がみなぎる。今日は特にだ」

 

2人は腕を振り回したり鼻をフンフン鳴らしている。どうやら相当興奮しているらしい。そこで、ムコーダはある事を思い出した。

 

それは、ネットスーパーの食材を食べると強化効果が付与されるというものだ。初めて気が付いたのは鉄の意思達と行動を共にしていた時。そのあとフェルとの遭遇などでカエデとも情報共有するのをすっかり忘れていた。

 

「ふ、2人とも?ちょっと鑑定するね?」

 

【名前】カエデ

【年齢】16

【種族】人間

【レベル】49

【職業】魔法使い

【体力】150(+5110)

【魔力】∞

【攻撃力】580(+6580)

【防御力】100(+4100)

【俊敏性】450(+4580)

 

 

【名前】フェル

【年齢】1014

【種族】フェンリル

【レベル】906

【体力】9843(+5118)

【魔力】9471(+4550)

【攻撃力】9036(+4518)

【防御力】9765(+4394)

【俊敏性】9684(+9684)

 

そのバグの様な圧倒的数値に、ムコーダは天を仰いだ。

 

(アホみたいにステータス跳ね上がってるし…でも確か効果時間はあるんだよな、そのうち元に戻るとは思うけど……)

 

そこで、カエデは魔導篭手を身に付け杖を軽々振り回し戦闘準備。フェルも首を鳴らし足に力を込めて戦闘準備。鼻息荒い2人にムコーダは恐る恐る話し掛けた。

 

「ふ、2人とも?どうかしたの?」

「力が漲ってジッとしているのが惜しい。狩りに行ってくる」

「ボクも。なんか今ならなんでも出来そうなんだ」

「も、もう夜だぞ!?というかフェルまで行ったら魔物が出たら俺死んじゃうぞ!?」

 

フェルはムコーダに結界を施した。とても高純度の結界であり、フェル曰くドラゴンブレスすら余裕で弾き返すとのこと。

 

「じゃあ行ってくるね!」

「朝までには戻る」

 

カエデは杖に乗り飛行して(・・・・・・・・)森の中へ、それに続く様にフェルも高速で森の中へ消えていった。

 

「……よし、寝よう!」

 

ムコーダは現実逃避して寝床へ着いた。一方、ムコーダがいる場所からかなり離れたとある山中……。

 

「ガオォォォ──ンッッ!!」

「アッハハハハハハハハ!!!」

 

吹きすさぶ万物を切り裂く突風、五体が焼け爛れる熱、大気すら凍り付く冷気、天変地異の様な大地の流動、この世の終わりを連想させる稲妻の雨。

 

その荒神が如く暴れる強者共に、森の魔物達は挑み続けた。己のナワバリを守る為、番を守る為、力を示す為、鎮める為。

 

しかし抵抗虚しくその尽くが滅び、虚しく散っていった。もはやこれまで。そう悟った魔物達は最後の抵抗と言わんばかりにその身に宿る力を出し尽くす。それが逆に強者共の心を躍らせ、更に勢いは増していく。

 

たまたま現場近くにいた冒険者の証言がある。

 

『あれは神の怒りだ』

 

そう言い残し、彼は冒険者を引退。後に農家として大成功を収める。

 

 

◻︎

 

 

「ふわぁあ……あれ、2人ともいつの間に」

 

翌朝、起きたムコーダは寝ているフェルの上で寝ているカエデに思わず和やかな気持ちになる。そして朝食を作る準備を始めた。

 

遊び疲れた、2人の為に。





【総合日刊ランキング10位】

( ゚д゚)

【二次日刊ランキング6位】

( ゚д゚ )

期待半分でランキング覗いたら思っていた以上でビビり散らかしました。本当にありがとうございます。

やっぱりみんなとんスキ好きなんですねぇ。
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