とんでもスキルで異世界放浪メシ【イレギュラーな少年を添えて】   作:一般通過炎竜

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(一度投稿したあと事情があって削除しました、ごめんネ)
(加筆もしました)


第9章『魔法を扱う方法について』

 

ムコーダが知らぬ合間に起きた天変地異の翌朝。旅を始める前の休憩時間でカエデは例の魔導書を読みながら魔法の練習をしていた。

 

「えーっと……あ、なるほどね。こっちの方へ流せばいいのかな」

 

ブツブツと独り言を放っているカエデを他所に、ムコーダはフェルと話していた。なにやら相談事の様だが。

 

「やっぱり俺も魔法とか使えた方がいいのかなぁ」

「無理に覚えんでも我も小僧もいるが」

「でもやっぱり使ってみたいじゃん?」

「そんなものは好きにしろ」

 

呆れた顔から欠伸をするフェルにイラッとくるものがあったムコーダだが、冷静に自分のステータス画面を見る。

 

「俺にも魔力があるし、使い方さえ覚えれば出来るよな」

「なになに魔法の話し?」

「うわぁ!?」

 

少し離れた場所で練習していたカエデがいつの間にかムコーダの背後にまで接近していた。

 

「あービックリした…」

「ごめんごめん。それで、ムコーダさん魔法使いたいの?」

「あ、ああ。火の魔法とか便利そうだし…」

 

カエデは明るい顔で説明しようとした瞬間、ハッとなり何やら考え込んでしまった。

 

「どうかした?」

「いや、ボクが教えようと思ったんだけど、ボクって他の人と魔法の使い方が違うからさ……詳しい話しは面倒だから省略するけど、普通のやり方はフェルに習った方がいいかも」

「む?」

 

名前を呼ばれたフェルが座ったまま2人の方を見る。カエデはフェルにムコーダの魔法の指南を頼んだが……。

 

「魔力があれば出来る」

「使いたい魔法は念じれば出来る」

「使えない?センスが無いな」

 

取り付く島もなかった。そこでカエデは、ラモンに貰った初心者向けの魔導書がある事を思い出した。ページを開き、指南していく。

 

「ボクもまだまだ修行中だから教える立場じゃないけど……要するに、魔法ってのはイメージが大切なんだ。想像力、発想力をフルに活用して自分が描く絵画をそのまま現実に再現させるっていうか…」

 

カエデは杖で地面をガリガリ削って不可思議な紋様を描いていく。ムコーダはそれが前に見たカエデが持ってる魔導書に書かれているものと似ている事に気が付いた。

 

「これは魔法の術式なんだけど、早い話しがそういう想像力が無い人向けにあるパソコンとかのソースコードみたいなものでさ。この通りに魔力を流したり色々すると魔法は使えるよ」

「うーん…どっちがいいんだ?」

「とりあえずイメージの方をやってみたら?そっちの方が簡単だし」

 

言われるがままにイメージするムコーダ。まず最初に火を想像する。火、火へ続いて焚き火などの火、焚き火からコンロの火、ライター、マッチ、バーナー、色々と火に関係するものをイメージし、最後に魔法を発動させる為に魔法の名前を叫ぶ。

 

「ファイヤーボール!」

 

しかし なにも おこらなかった !

 

「何をしているのだ。いくらイメージ出来ても身体に魔力を巡らせないと出来るものも出来んぞ」

 

フェルのあまりに冷静なツッコミに顔が真っ赤になるムコーダ。

 

「そっか…ボクは無限魔力が身体を常に廻ってるからやったこと無かったけど、そういうのが最初に必要なんだっけ」

「仕方の無い連中だ……」

 

フェルは自分の身体に魔力を巡らせ、それをムコーダに触れさせる。そしてムコーダは見事にフェルの膨大な魔力の流れを感じることに成功。

 

「よ、よし…この感覚を忘れないウチに……『ファイヤーボール』!」

「おおっ!」

 

魔法は成功した、確かに成功はした。しかしその火はライターの火よりか弱く、脆い。風が吹けば跡形も無く消え去る程だった。ムコーダは表情を暗くした。

 

「ま、まぁ最初はそんなもんなんじゃない?落ち込む必要無いって!」

「フェルとカエデくんは最初どうだった?」

「岩を風で引き裂いたが」

「……山火事起こすところでした」

 

「この天才肌共めっ!!」

 

泣きながらどこかへと去っていくムコーダと慌てて追いかけるカエデとそれを呆れ顔で見るフェルであった。

 

 

◻︎

 

 

それから数日、ムコーダはひたすら魔力を身体に巡らせる訓練をしていた。カエデ曰く、ムコーダは想像力はあるので魔力さえなんとか出来れば十全に魔法を行使する事が出来るとの事。しかし、それでもやりたい事があるらしい。

 

「ボクの魔法が見たい?」

「うん。やっぱり物を見た方が想像力も増すかなって」

「そういうことなら」

 

カエデは右手にバスケットボール程の火球を生成、それを手のひらに留める。あまりの熱にムコーダは少し怯んだ。

 

「1番初心者向けのファイヤーボールなんだけど、これって手のひらからすぐ撃つことも出来るしこんな風に留めておけるんだ。これのお陰でファイヤーボールを構えながら別の魔法を使う、要するに牽制として出す事も出来るってワケ。狙いも付け易いしね」

「なんか……綺麗な火だよね。ムラ?が無いって言うか…」

「ちゃんと見た方がいいよ。何度でも言うけど、魔法における想像力は一番大切だから」

 

「因みにそれをそのまま撃ったらどうなるの?」

「こうなるよ」

 

カエデは火球を留めている方の手をクイッと空に向ける。すると火球は上空へ飛んでいき、飛行していた魔物に直撃すると大爆発を引き起こした。魔物は跡形も無く消し飛んだ。爆発地点の分厚い雲が一部晴れ、太陽が顔を出す。

 

「……参考にならないかも」

「……ごめん」

 

改めて、自分は教えるのに向いてないと感じたカエデであった。

 

 

◻︎

 

 

「というかさ」

「うん」

 

ある日の魔法の練習中、ふと疑問に思ったムコーダはカエデに質問する。

 

「カエデくんの無限魔力ならさ、ファイヤーボールを無制限に大きくしたり、回復魔法を一生継続させて実質不死身みたいなこと出来るの?」

「うーん、それはちょっと違うかな」

 

カエデは魔導篭手を付けた手の形を拳銃に見立てる。

 

「例えばさ、拳銃ってあるじゃん?あれは弾丸を発射する武器だけど、弾倉に弾丸が無ければただの鉄の塊」

 

「その鉄の塊に、無限に弾丸を撃てる弾倉を付けれたとする。その拳銃は一生撃てる?」

「え、撃てるんじゃない?」

「ブブー、撃てません。なぜなら拳銃は弾丸を発射する度にその衝撃や熱で部品を摩耗させるからです」

 

「魔法も似たようなもの。魔法が拳銃で魔力が弾丸だとして、魔力が無限だったとしても撃ち続ければ集中力を欠くんだ。そうすれば魔法をイメージ出来なくなってボクはただの子供になる。そうならない為にボクは魔導書を読んで魔法を理解して集中力を高めるんだ」

「え、でもカエデくん沢山魔法撃てるじゃん」

「それはボクが天才だからじゃん?」

 

シレッと言うカエデに苦笑いするしかないムコーダだった。

 

「あ、じゃあなんで前見たカエデくんのファイヤーボールってあんなに大きいし、威力が違うの?」

 

「そうだなぁ…風船かな。同じ風船でも、込める空気の量で大きさは変わるし、込めすぎると破裂するでしょ?威力の上下はあるし、上限もあるよ」

「つまり『今のはメラ〇ーマではない、〇ラだ』ってこと?」

「なにそれ?」

 

ムコーダはジェネレーションギャップで死んだ。

 

 

◻︎

 

 

「よ、よし…今日こそ出来る…俺は出来る…集中しろ…!」

 

そして翌日、ムコーダは魔法の最終調整に入る。集中力を高めているムコーダの邪魔にならないよう、カエデはフェルを連れて少し後ろで見学していた。

 

「『ファイヤーボール』!」

「おっ」

 

ムコーダが魔法を唱えると、手のひらに野球ボール程の大きさの火球が生成される。ムコーダはそれを的である空き缶へ放り投げた。

 

しかし火球は空き缶にすら届かず、手前の地面にへろへろ落下して霧散してしまった。カエデは思わず片手で顔を覆い、流石のフェルも呆れ顔を隠せなかった。

 

「魔法は訓練あるのみだが、ここまで才能が無いとは…」

「俺だって頑張ってんだよ…」

「うーん…どうすればいいんだろ」

 

そこでフェルはある提案を持ちかける。それは実戦で慣らすという方法だ。

 

「現に小僧も実践で魔法を発現したことがある」

「どうやったの?」

「え、フェルに魔法教えてもらって術式作って撃った」

「術式って作るのが難しいからみんな魔導書買うんじゃないの…?」

 

ムコーダは実戦は断固として拒否した。痛そうだの、怖いだの、それを聞いたフェルが痺れを切らしてムコーダをゴブリンの巣へ強制連行した。

 

「無理ムリむり!!あんなにいっぱいいるのにどうすんだよ!」

「逆に考えると、的が沢山あって当てやすいよ?」

「俺がゴブリンの的にならなければね……!」

 

「ワオォ──ンッ!!」

「あ」

「え?」

 

フェルは咆哮し、ゴブリン達を挑発した。当然、ゴブリン達はフェル……ではなく横にいた弱っちそうなムコーダに向かっていく。

 

「ほれ、最早戦う他なしだぞ」

「ムコーダさん頑張って〜」

「このスパルタ共ーッ!」

 

走って逃げていくムコーダを他所に、カエデはフェルと一緒に走り去っていくムコーダとゴブリン達を見ていた。

 

「小僧はいかぬのか?」

「フェル、ムコーダさんに結界張ってるでしょ?なら大丈夫だよ。少なくとも怪我しないし」

 

カエデは手慰みに氷魔法と風魔法を組み合わせて冷風を作ったりして遊んでいる。それを見たフェルはカエデに問う。

 

「そういえば小僧、貴様が得意な魔法はなんだ?」

「ボク?まぁ大体使えるけど……強いて言うなら雷と氷かな」

「ほう。因みに我は風だ」

「知ってるよ。女神様の加護もあるんでしょ?」

「そうだ。お陰で我は風魔法をほぼ魔力消費無しで撃てる」

「ボクが言えたクチじゃないけど、結構反則だよね。……あ、魔力消費」

 

そこで何かに気が付いたのか、カエデは立ち上がった。

 

「どうした」

「いや、そろそろムコーダさんの魔力が切れるかなって」

「どうせビビって考え無しに連発しているだろうしな」

「そこまでは言ってないから」

 

魔力はスタミナと同じで消費すると体力を著しく消耗する。残魔力を確認せず連打すればあっという間に倒れてしまう。

 

2人がムコーダが走り去った方向へ向かうと、案の定ムコーダはゴブリンに囲まれ地面に倒れていた。しかし結界のお陰で無傷である。

 

「お疲れ様、ムコーダさん。後は任せて」

「カエデくん、あと、おねがい……」

 

そう言い残し、ムコーダは気絶した。

 

「よっし、んじゃあやりますか」

「ふん、相手にならん」

「そりゃそうだ」

 

そこから先は、ただ蹂躙だった。

 

 

◻︎

 

 

その日の夜、ムコーダは悪夢にうなされて目を覚ます。

 

「ギャーッ!?ゴブリンのっ……あれ?」

「あ、ムコーダさんおはよう」

 

ムコーダが目を覚ますと、そこには焚き火で暖をとっているカエデとフェルの姿があった。

 

「やっと起きたか。実戦は為になったろう?」

「あんな目に合わせておいてよく言えるな!?当分夢に出るっつの!!だいたい初心者だったら1、2匹だろ!?それをいきなり集落に放り込みやがって!!」

「お主があの程度の魔法でモタモタしているのが悪い」

「うぐぐぐぐ……カエデくんも何か言ってよ!」

 

その言葉に、カエデは目を逸らすしか無かった。なにせカエデもフェルと同じことを考えていたからだ。天才は人の心が分からないとはよく言ったものである。

 

「ひでーや2人とも…」

「ご、ごめんごめん。でもあの破壊跡見た感じ使える様にはなったんでしょ?」

「ま、まぁそうだけど……結構理想に近くはなったよ」

「ならやっぱり実戦あるのみだねっ」

「朗らかな笑顔で何言ってんの?」

 

「そんなことより、我はハラが減ったぞ」

 

話をぶった切りフェルがメシを催促。ムコーダはやれやれと言いつつ立ち上がろうとするも、ふらついて地面に倒れ伏してしまった。

 

「あ、まだ立っちゃダメだよ。魔力を消費しきった日は体調グズグズになるってラモンさんも言ってたし…」

「じゃ、じゃあ悪いけど今日は簡単なので済まそうか…」

 

ムコーダはネットスーパーを開き、菓子パンやいちごオレなどの甘い飲み物を購入した。

 

「疲れた時は甘いもの、ってね」

「む?確かに美味そうな匂いだが…肉ではないのか?」

「黙って食え」

 

カエデはフェルの口にあんぱんをねじ込んだ。

 

「なにをすっ……む、美味いな。蜜の様に甘いがここまで甘い蜜は食べた事が無い」

「ボクはメロンパンにしよーっと」

「あ〜糖分が身体に染み渡る……」

 

カエデとムコーダが3つほど菓子パンを食べて満足している横で、フェルは未だに菓子パンを大量に頬張っていた。

 

「お前甘いのもイけるのかよ……」

「甘いの食べ過ぎは糖尿病になるよフェル」

「我が病に罹るものか」

 

その言い切った発言に、カエデは違和感を覚える。強がりではなく、確信めいた言葉だったからだ。

 

「どういうこと?」

「昼間に説明したろう、風の女神ニンリル様の加護だ」

 

神の加護。それは毒や病気、あらやる呪いや状態異常を無効化させるもの。更に女神が司る属性の魔法を上手く扱える様になったり、魔力消費を減らしたりする。

 

「神の加護とはそういうものだ。易易と授かるものでは無いがな」

「なにそれチートやん……」

「へー、神の加護かぁ……」

「というか、フェルは加護無くても十分強いし、俺みたいなのにこそ加護は必要なんじゃない!?」

「ま、まぁ確かに」

 

「神様仏様!!誰でもいいから俺に加護をください──っ!!」

 

「この世界仏様いるかな……」

「そんな雑な願いを聞いてくださる訳がないだろう」

 

「ちくしょー!!」

 

ムコーダの虚しい叫びは森中に響き渡ったという……。

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