ザァァァ…
酷い豪雨が轟音を立てながら古臭いバス停の屋根に突き刺さる。
その屋根の下には、雨に濡れた黒髪に白の…いえ、白髪のメッシュが入った青年が居ました。
光を失った目を下に傾かせながら、ポケットから箱型の何かを取り出す。
白い箱に黒のラインと黒い星が描かれている。
黒文字に少し滑らかなフォント、英文字で
いわゆるタバコです。
ですが、どう見てもその箱を持つ青年は未成年。
そんなの気にしないと、箱から長めの1本のタバコを取り出し、口にくわえる。
箱をポケットに戻すと、またポケットから箱型の何かを取り出す。
カチンッ
妙に響きのいい金属音をさせて、箱の半身が弧を描きながら中身を露出させる。
箱型のそれは、今では中々見ないレトロチックなオイルライターでした。
フリント・ホイールに親指を掛け、勢い良く回す。
カシュッ
回る音と共に芯へと火がつき、目の前の豪雨と合わさって儚い雰囲気を醸し出しだす。
火をくわえたタバコの先端へと近付け、火を灯す。
ライターのリッドを閉じ、ポケットへと戻す。
スゥー…とタバコを吸い、先端が赤く輝くのと同時に先端が黒い炭や白い灰になっていく。
タバコを口から離し、フゥー…と紫煙を肺から吐き出す。
ゆっくりと、味わいながら何度もその動作を繰り返し、最後までタバコを吸いきる。
最後の紫煙を吐き出しながらタバコを足元に投げ捨て、踏み潰す。
目をつぶり、深呼吸をする。
羽織っているロングコートの下に手を突っ込み、腰辺りから何かを取り出す。
銀色に輝く、2つのバレルを持つ拳銃…ダブルバレット1911であった。
モデルガンかと思うだろうが、質感や重量がそれを実銃だという現実を突きつけてくる。
2つのマガジンを挿入し、スライドを手前に引き、ハンマーを倒すと同時に薬室に弾丸が装填される。
バレルを自身の頭の真横に突きつけ、引き金に指を置く。
「おやすみ」
弱々しくて、枯れた声で労いの言葉を掛ける。
そして、引き金が引かれる。
ダァンッ
2重になって響き渡る炸裂音。
見るも無惨な惨状を、誰もが見たくない赤い彼岸花を、青年は頭を吹き飛ばす事で咲かせた。
そのまま青年は横に倒れ、光を映さなかった瞳は瞳孔の色さえ濁らせている。
このまま時間が過ぎ、何時かは誰かに発見される。
本来は
そう、本来だったらそうなるだろう。
カンカンカン と、嫌に甲高い音を鳴り響かせる踏切の音。
だが、このバス停の周りには踏切どころか線路が無い。
未だに踏切の甲高い音が鳴り響き、ゴォアァ…と豪雨が更に強く降り注ぎ、青年の姿は見えなくなる。
ゴトンゴトン と、線路の上を走る列車の音が響く。
踏切の甲高い音が、列車が通過する音が消える。
段々と豪雨が弱まり、視界が晴れてくる。
隠れたバス停は、先程の惨状が無かったかのように青年と共に綺麗さっぱり消えていた。