ゴトン…ゴトン…
そんな音と共に青年の身体が揺れ、小さく唸り声を上げる。
「うぁ…?」
目を開くと、日が沈む光景が窓から見える列車の車内だった。
青年は困惑しながら、周囲を見渡す。
「列車…いや、電車か?」
枯れた声から戻り、何時もの調子で疑問を零す。
「だが、そんな事より……」
服装や自身の身体をあちこち触り、確認する。
「なんで、血や肉片が無いんだ」
先程青年は
ポケットにあるタバコやライター、腰のホルスターに収まっているWB1911を確認する。
「自殺した後と変わらない…のか」
青年は頭を抱えた。
そこにある感情は、困惑や疑問、怒りでもない。
絶望だった。
「私は…また死ねなかったのか」
青年の中にある絶望は、彼の全ての意志をへし折るものだった。
生きる意志は遠い場所に置いてきてしまったが、自殺する意志も今、手放してしまった。
「嗚呼…どうすればいいんだ、私は何をすればいい」
今の青年は見た目相応に、誰かに助けを求めている。
だが、誰も応えることは無い。
青年は項垂れ、完全に目から光が消える。
キィー…と、音を立てて列車が減速し始め、進行方向への横Gが身体へと負担を掛ける。
列車が完全に停車し、僅かに掠れる音を立てながら扉が開き、ピーン と、いう音を立てた。
青年は音に反応し、扉の方へと視線を向ける。
「なっ?!」
瞬間、開いた扉の奥からの光が強くなり、視界が白に包まれる。
青年が瞼をあげると、また景色が変わっていた。
「…ビル街?」
現代社会の都会にはよくあるビル達が並び、街を形成していた。
青年は目の前の光景に理解が出来なかった…いや、理解しなかった。
彼が理解しようとも、意味は無いのだから。
想いとは反対に、脳は目の前の光景を処理し始める。
だが結局は、理解不能ということだけ。
「…歩くか」
小さくため息をつきながら、歩を進める。
靴底が木で出来たアンティークな革ブーツが歩く度に コツン…コツン… と、少し心地のいい音を立てる。
脚を進める度に横を通り過ぎていく人…では無く、二足歩行の犬や猫、完全に自立している
表情には出ていないが、青年の空っぽの心が驚愕に染まる。
(急に場所が変わったり…明らかな人外が居たり…なんなんだここは)
まるでファンタジー…いや、最近のゲームにある現代ファンタジーな場所に青年は困惑しながら進んで行く。
奥へと進んで行くと、少しづつ周りのオートマタや犬猫の数が減っていく。
周りのビル街も何処か哀愁を漂わせ、寂れた様子が見て取れる。
時間という無慈悲な攻撃がここの場所を廃れさせたのだろう。
そんな場所に青年は少し、心地良さを覚えていた。
(静かだ…とてもいい)
劣化し、時間を感じさせるビルは未だに形を保ち、まだここに残ってやるとでもいう様な意志を感じさせる。
そんなビルの間から、声が聞こえてくる。
耳を澄ますが、内容までは聴き取れなかった。
だが、怒号のような声が聞こえてくるのが分かる。
声が聞こえたビルの間に顔を覗かせると、今時見ることの無いスケバンが銀髪の少女に絡んでいた。
(時代は今時らしいが…治安は昭和辺りか?)
そんな事を考えながら少女達を見る青年。
スケバンが怒りながら何かを構える。
「……は」
青年の口から思わず言葉が漏れる。
スケバンが構えたのは、現代社会では見ることの無い物。
AR―――アサルトライフル―――という名の銃。
拳銃よりも大きい口径を使用し、耐久性・装填数・威力・扱いやすさが揃った銃。
そんなARを持ったスケバンの指先は、引き金に掛けられていた。
ダァンッ
2重の炸裂音。
既に青年の手に握られたWB1911の銃口から放たれた2つの弾丸は、真っ直ぐに飛んでスケバンの頭に当たった。
青年が考える暇もなく、身体で反応し、WB1911を腰に装着したホルスターから引き抜き、撃ち抜いた。
スケバンは弾丸を受けた衝撃で倒れ込んだ。
「…あ」
青年の口から、小さな掠れる音が漏れる。
瞳孔が縮瞳し、瞳とWB1911を持つ手が震える。
青年の脳内にフラッシュバックする。
『い、嫌だ。死にたくなダァンッ
目の前に広がる惨劇を
『化け物がァ…ダァンッ』
自分自身の復讐の為に行った
『お前は人殺しだ。お前は』
「はァッ…はァッ…はァッ」
青年は震える手を抑えながら、ゆっくりと自分の頭へと銃口を向け「イッテェ…!」
「……は?」
青年は酷く驚いた。
先程頭を撃ち抜いたスケバンが当たり前かの様に起き上がった。
スケバンを撃ち抜いた場所を見れば、弾痕どころか切り傷も無く、痛々しく腫れているだけであった。
「チッ、覚えてろよ〜!」
スケバンは悪態をつきながら奥へと駆け抜けて行った。
「え……いや、は?」
驚愕、困惑、意☆味☆不☆明*1。
青年のからっぼの心に様々な感情が流れ込んで来る。
追い付かない情報の処理と感情の処理。
「あの、助けてくれてありがとうございました!」
その処理はスケバンに絡まれていた銀髪の少女に話しかけられた事で、処理が一時的に止まる。
「あ、いや……そちらこそ大丈夫でしたか?」
「撃たれる前に撃退してくれたの大丈夫です」
「あ、それは良かったです」
2人の間に少し気まずい雰囲気が流れる。
そんな雰囲気の中、声を上げたのは銀髪の少女だった。
「あ、あの…近くにカフェがあるのでそこでお礼をさせてください!」
思わず青年は断ろうとしたが、この場所について知れるのではと思い、大人しくお礼を受け取った。
あの子からお礼としてこの場所――ギヴォトスについて教えて貰った。
学園都市ギヴォトス……その名の通り、様々な学園が集められ、1つの都市としてなりなっている事。
ギヴォトスの地に産まれ、存在する人々をギヴォトス人と言う。
……そこは北米人とか日本人とか、地域や場所で呼び方が変わるような感じだと聞いた。
ギヴォトス人は女性しか存在せず、ヘイローという頭の上に浮かぶ円状に光る物た…存在である。
ヘイローがしっかり見えるのはギヴォトスの中ではオートマタや獣達、または外の世界から来た人にしか見えないとの事。
その外の世界とは、自分が知る地球と全く違いはなかった。
広大な海のど真ん中に大きく存在する島国の様なもの。
それが学園都市ギヴォトスであった。
基本的に銃撃で死ぬ事が無いが故に、引き金が軽いギヴォトスは治安がとても悪い。
今も遠くから爆発音が聞こえてくる。
何とも……すごい場所に来てしまったものだ。
遅くなって申し訳ないです。
どうしても見切り発車だったものでなかなか筆が進みませんでした。
以下言い訳の為省略
…今後も見ていって貰えると有難いです