おもいだす
長い様な眠りから目覚めると雪国であった。……なんて、パチモン感が凄い文を脳内で作りながらも雪の上でぼんやりとしてしまう。
人間、訳のわからない状況に陥ると、全く関係のない思考をしてしまう物だと身を持って知りながら、とりあえず思った事を叫んだ。
「頭打って前世の記憶取り戻すとか、物理的におかしいだろーが!」
俺の声に驚いたのか、少し離れた茂みにいた
俺の名前はペルネ。シンジュ団の団員であると同時に、たった今前世の記憶を取り戻した男である。
とは言っても、自分の名前も家族構成も覚えておらず、また変な記憶が点在している始末だ。……例えば、一目惚れで告白した初恋の相手が女装趣味の友達の兄ちゃん(既婚者)だった事とか。
そんな俺だが、前世ではポケットモンスターというゲームにハマっていたようで、そのお陰と言うべきか所為と言うべきか、この先起こるであろう事件に関わる知識を持つことに気がついた。
俺の所属するシンジュ団はポケットモンスターのゲームシリーズの一つ、『Pokémon LEGENDS アルセウス』に登場する集団と同じ名前なのである。
ただ名前が一緒なだけなら気のせいかもしれないが、ポケモンが存在するで1アウト、土地の名前がヒスイ地方で2アウト、崇めているのがシンオウ様で3アウト。さらに、仲の悪いコンゴウ団と言う集団だとか、集落の近くにキッサキ神殿とかエイチ湖が有るとか、記憶の中との共通点ばかりが見つかっていく。
極め付けは、つい先日就任した長がカイという名前のゲームイラストの面影がある少女な点でもう否定出来なくなっていた。
「好きなゲーム世界に転生したのは良い。けど、レジェアルは過酷すぎるじゃんか……」
雪降る中でさめざめと泣いていると、膝下にふわりと柔らかい感触を感じた。視線を向けると、そこには俺を心配そうに見上げてくるイーブイが居た。
このイーブイは母さんの相棒のグレイシアと父さんの相棒のブースターの間に生まれた子で、俺とは兄妹の様に育った。名前はヴィー(俺命名)。愛称はブイの字である。
「ぶい?」
「ああ、心配かけてごめんな。ブイの字。特に問題はないから安心しろ」
「ブイブーイ!」
笑いかければ、一転して明るい鳴き声を上げながら跳ね回るブイの字。うん。可愛い。
「テンガン山の天辺には時空の裂け目が出来てるし……。いつ本編が始まってもおかしくねぇな。これ」
「ぶいぃ?」
ブイの字を抱え上げ、集落へと戻る道を歩きながら、俺はこれからどうすべきかを考える。
まず、この世界……というか時代は過酷である為、自衛の手段が必要となる。この点に関しては、ブイの字と今以上に仲良くなって守ってもらうことになる。……後でブイの字を撫で回してあげよう。うん。
そして次にこの先どうするかだ。何の因果かポケモン世界に転生したんだし、折角なら色々と世界を見て回りたいと思う自分も居る。しかし、それ以前にこれから何が起きるか知っているし、その中で傷付く人がいる事も知っている。知ってて見て見ぬ振りをしたら気分が悪くなるが、それ以上に俺なんかが関わっても何ができるのか、俺が介入した結果、俺の知る未来が変わるんじゃないか。という恐怖もある。
「ぶい?」
「ああ、何でもないから」
思わず漏れ出たため息が頭の毛を揺らしたからか、不思議そうに俺の顔を見るブイの字に笑いかけつつも、思考だけがぐるぐると巡った。