探偵助手の事件簿   作:時雨 照

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執筆協力:くらげ。


メモ欄:事務所の日常

  16:00 P.M. 某市 蘇芳探偵事務所にて

 僕は蘇芳探偵事務所で働く優先生の助手だ。今は依頼も入っていないので事務所にはゆったりとした空気が流れているのだが…

「ちょっと先生!いくら休みだからって何もせず1日が終わるのはまずいんじゃないですか?」

「助手君、今は書類仕事のことなんて考えたくありません。ゆっくりさせてくださいよぉ あ、一服失礼しますね?」

先生はそう言うとパイプを取り出し、数瞬躊躇った後にデスクに置いた。

先生禁煙中ですからね。偉いです 本当は喫煙器具そのものを手放してくれたら良いんですけどね

 おっと、話がそれたが、今事務所内は先生とどこかに行きたい僕vsとにかくゆっくりしたい先生という何とも平和な対立が起きているわけだが、それには理由がある。

なんと今日は優先生の誕生日なのだ。こんな日に僕が何も仕掛けていないわけがない。あらゆる可能性を考慮し、先生の誕生日を祝う計画を立てた。

事件の時はこんなに回らないのに、なんて都合のいい頭なんだろうか。

そんなこんなで外に連れ出したい僕だが、先生が室内に残ることを全く考えていなかった…

ということであの手この手を試すことにした。

 

その1 運動を装ってみる

「先生、運動しましょ運動!」

「さっき言いましたよね、今日はもう動く気はないと。今の私はてこでも動きませんよ〜!」

というわけでこれは失敗に終わった。

その2 モノで釣ってみる

「先生、ちょっと吸いに行きません?」

「む……そうしたいのは山々ですが、君も知っての通り私は禁煙中です」

「誕生日くらいいいんじゃないですか?(一度外に出して仕舞えば勝ちです!そのためなら今日くらいは吸わせていいでしょう)」

「…………いえ!ダメです 私は意志が弱いので一度吸ったら明日も吸いそうですし」

先生は一度始めると無駄に凝るとこがある。今回ばかりはそれが裏目に出たようだ。

 

その3 もう正直に伝えてしまう

 もう何もできなくなるよりは良いのではないかと考え、正直に言うことにした。

「先生。」

「……」

とてもうざったそうな顔をしているが、続ける。

「先生今日誕生日でしょう?」

「……それがどうしたんですか?だからこうしてのびのびと怠惰を貪っているんですよ。」

「僕が先生をおいしい飲食店に連れて行ってあげます!しかも今日は僕の奢りですよ〜!」

そう言い終わるやいなや、先生はすっくと立ち上がった。

「よっし、出かける準備でもしましょうか!事務所から出ないまま一日を終えるのは寂しいですし!」

…………先生は本当に現金な人だ。こんな台詞が本心な訳ない。現金な人だ。

まぁでも、良い笑顔をしている。

普段様々な事件でムズカシイ顔をしているからこそ、今日くらいはこの良い笑顔を見せてほしい。

そう感慨に浸っていると、「早くしないと置いていきますよ〜!楽しみだなぁ〜」と元気な先生の声が響いてくる。

僕はそんな先生の背中を慌てて追った。

 

 18:00P.M. 某市 街中

少しの冷気と静寂が包む街路樹のある道を二人歩いていると、先生が口を開いた。

「ところで、助手君はどこに連れて行ってくれるんでしょう」

…………

……

あろうことかこれを僕は想定していなかった…

「その様子は……」

「だって仕方ないじゃないですか!大体、先生がもっと早く動いてくれれば完璧なプランがあったんです…!」

鏡がここにあったなら、きっと涙目で先生の肩をゆらす僕の姿が映るだろう。情けない限りだ。

「まぁまぁ、私が悪かったですからそうゆらさないでくださいね?あっ、あそこに良さそうなバーがありますよ。あそこにしましょう」

 その後先生の機転でお店の問題は解決し、僕らはバーで過ごした。もちろんバーなのでお酒をメインに提供しており、支払いは馬鹿にならないほど高くなったが……

すっかり酔って眠ってしまった先生を、運ぶ背中で感じるとそれでも安かったなと思える気がする。

先生はここ連日様々な現場を見てきてすっかり消耗していたようで、事務所のベッドに寝かせるまでの間で起きることはなかった。

眠っていてもう言葉は届かないはずなのに、僕はこの言葉を口にする。

「お誕生日おめでとうござます、先生」




時雨照です!
新しいシリーズのプロローグということで、事務所の日常を書いてみました!
このお話は探偵……ではなく、その助手が主人公な物語です。
助手くんは体力も頭脳も人並みですが、人格を買われて雇われたそうです。でも、他にも理由があるとかないとか…
次の話からは事件パートに入っていきますので、乞うご期待!
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