ゲートの世界 エルハザード   作:大体三恵

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ゲートを読み直してたら、帝国のワイバーンはブレス吐かないことが判明。
そーいえば撃ってなかったなぁ…。
なんかと混同してました。すみません。


光と乱の収束

「なんなんだよ! 蛮族の亜神か?」

「近寄るな! 距離を保て!」

「槍を投げたら重歩兵はさがれ、さがれ! 亜人どもをぶつけろ!」

 

 銀座東方面で略奪を行なっていた一団の横っ腹に、ボクは突風の痛打を浴びせた。

 

 上空という優位を持つボクは敵の背後をつけたけど、後ろから打つとどちらに逃げるかわからない。

 散ってしまったり被害が拡散する恐れがある。かといって真正面では効果が薄い。

 横を突くと人間の兵隊たちに被害があり、撤退すれば先鋒を務めているゴブリンとかトロルをぶつけてくる。

 

 ベストではないがベターだ。

 全滅させる気でやるなら、ちょっと本気だす必要があるのでビルが10も20も吹き飛んでしまう。

 

 指揮官っぽい偉いおじさんを、()()()おかげで敵の言葉がわかるようになった。

 おかげで敵の命令が聞こえるようになった。

 

 無軌道に行動するゴブリンとか、トロル? なんだかわかんないでっかいのとかを、ボクにぶつけてくれる。

 

 亜人は野放しすると、兵隊のやつらより意味わかんない殺戮するから、なるべくボクが始末したほうがいい。

 混乱させるため、初期に投入させてるんだろうけど、戦法が外道というより雑って感じする。

 

 あれだね。被害を減らしたいから、やられても痛くない先兵を投入してるってだけなんだろう。

 

 ボクはこうして何度も亜人の部隊を殲滅。

 なるべく敵部隊は損害を与えて、撤退させるように促していると……。

 

 ──流れが変わった?

 

 陣内のハラスメント攻撃とは別に、東銀座付近の偵察と市民救援に向かったボクは、銀座に流れる空気が変わったことに気が付いた。

 

 侵略軍の動きが変わった。

 見えないが確実に今までと違う。

 イフリータに改造されたボクは、肌の感覚でこういったことを感知できるようになってるんだけど……。

 

「感じるだけで、分かるまでならないんだよなぁ。あーあ、陛下なら理由を推測できるのになー……。あー、こういう時のため、スマホとか拾って陛下に渡して置けばよかった~」

 

 陣内は携帯がまだ普及してないころの人だ。

 ボクが気が付いて、渡しておくべきだった。失敗したなぁ。

 回線がパンクしてても、SNSかSMSならなんとか届いたかもしれない。

 

 たぶん陣内が、敵の横っ腹を突きながら銀座4丁目へジワリジワリと近づいたから、敵が対策してきたんだと思うけど……。

 

「お姉様ぁ~!」

 

 上空で待機しつつ周囲の流れを確認していたら、妹のイフリーナがボクを呼びながら飛んできた。

 イフリーナはすごい勢いでボクに抱き着くと、泣きながら不平を訴える。

 

「ひどいです~。こんなどこかわからないところで、ご主人様ったら私に働け―って怒鳴るんですよ、お姉様~」

 

「うんうん、がんばったがんばった。えらいえらい」

 

 手間のかかる妹だが、同時に可愛い妹でもある。

 ボクと違い心優しい彼女にとって、侵略軍という敵とはいえ戦場で人を殺めることは大きなストレスだったろう。

 ま、記憶を取り戻して地が出ると、イフリーナはイフリータより怖いんだけど。

 

 そうだ。

 ボクたちイフリータのなかで、一番感覚の鋭いイフリーナなら何か気が付いたかな?

 

「ねえねえ、イフリーナ」

「なんですか? お姉様」

 

「なにか気が付いたこととか、ない?」

 

 尋ねるとイフリーナは可愛らしく上を見あげて考え始める。

 

「えーと、ワンワンとかいました。頭が二つあるんですよ、ワンワン」

 

「へえ。ガルム? かな?」

 

「それとあそこにいっぱい、兵隊さんがいる感じしますね。いっぱい」

 

 イフリーナが銀座よりちょっと東……線路が多く集まる場所を指差す。

 

「ああ、そうか。東京駅に取りついたから、進軍ではなく陣を構築し始めたのか」

 

 空気が変わった理由。

 それは東京駅に兵を配置し、皇居を睨む砦へと変えようとしているのか?

 

「と、なると陛下がやってることが効果下がり始めるかなぁ~」

 

 陣内のやっていることは足止めと、門へのちょっかいだ。

 腰を据えようとしている相手には効果が薄い。

 陣が完成してしまえば、相手は出現地点である門を一時放棄、という手もできる。

 

「ふむ。威力偵察といくか。いこう、イフリーナ」

「え~。いやですー」

 

 ゼンマイを抱き寄せ、ごねるイフリーナ。

 

「一緒に行くだけだよ。状況を見たら、イフリーナは陣内に報告して、築地市場駅……えっと、こっちの世界に来た時のところを守るため戻すから」

 

「そうなんですか? それならいいです」 

 

 流れが変わった以上、ボクたちが帰るための通路の確保が大切だ。

 万が一、築地市場へ移動できなくなった場合、ボクたちは取り残される。

 いくら敵の進軍方向を真反対でも、そこを封鎖される可能性は充分にある。

 封鎖するのは侵略してきている敵だけじゃない。自衛隊や警察の可能性もある。

 

 敵を殺すことに抵抗があるイフリーナなら、自衛隊や警察相手に間違いを犯すことは絶対にない。

 そして泣きそうになるイフリーナ相手に、自衛隊や警察が無体をする可能性は低い。まあ、この異常事態で、やりすぎる人もいるかもしれないけど……。

 

「あー、あとご主人様がそこに戻りました。なんかこの国の軍隊が動きは始めたからって」

 

 いまさらイフリーナが重要情報を思い出した。

 これを聞いてボクが合点がいった。

 

「あ、あー! そっちか!」

 

 空気が変わった理由。

 それは自衛隊の介入だ。

 

 この自衛隊の投入を先んじて察知した陣内は、バグロム兵を連れてすでに築地市場跡地まで後退しているようだ。

 これによってボクたちが通ってきた門が、封鎖される心配はなくなった。

 陛下はボクの心配をちゃんと潰してくれている。

 

 じゃあ、ボクもそろそろ最後の一仕事くらいしてくるか。

 

「イフリーナは陛下と合流して。ボクは陛下が期待してることであろう最後の仕事をしてくるから」

 

「わかりました。お姉様も気をつけてー」

 

「うん、まったねー!」

 

 もうそろそろ終わりだとイフリーナもわかったのだろう。

 晴れ晴れし笑顔でボクを送り出してくれた。

 

 さて、もう一仕事頑張ろう。

 

 + + + + + + + + +

 

 銀座4丁目の交差点にそれはあった。

 エルハザードの世界にも現れた真っ黒な門と、色こそ違うがそっくりだ。

 そこから敵兵が続々と姿を現してくる。

 

 ボクは近くのビル屋上から、しばらく様子を探る。

 ワイバーンが警戒にあたってるけど、それは軍勢へのそれに対してであって、ボクみたいな個人が給水塔の下に隠れて望遠鏡を覗いているくらいは考慮していない。

 たぶん、ボクが今使ってる10倍クラスどころか望遠鏡とかない世界なんだろうな。

 警戒網がとても狭い。

 

 てか、まだワイバーンって何十もいたんだ。あれってボクだけでも15ちょっと落として、イフリーナも8体くらい落としてるはずはんだけど?

 100くらいいたのかな?

 

 この望遠鏡は、銀座にはたくさんあるカメラ店の一つから拝借した。

 

「うーん。あの門は、あっちの国、世界に繋がっていて、ボクたちが使ってる門と同じで、自由に行き来できるんだろうけど……」

 

 フィルタリングして、出入りを制限している気配がないけど、門の中に飛び込むのは危険だ。

 

 だけど、ボクたちはそれと同質のものを行き来して、危険がないことを知っている。相手だってこっちにきて、そのまま帰るつもりがないわけじゃないだろう。

 事実、戻っていく伝令らしき人の姿も見えた。

 

 出入りの人を選別するフィルタリング的なものもないだろう。

 ボクの世界と繋がった門に、出入りに問題はなかった。

 

 もし、見知らぬ土地から戻れなくなったら?

 食事と睡眠の必要もなく、数万年単位で活動できるボクにそういった不安はない。

 いざとなれば「神の目」でかつて(人間だったころ)のボクを拉致したように、再度エルハザードの世界に呼んで貰えばいい。

 まあ水原誠の協力がいるから、陣内が頭を下げない可能性がある。

 でも、イフリータ経由で頼めるだろうから、これは問題ない。 

 

 つまりほぼほぼ問題はない。

 

「よし、いくか」

 

 飛龍が警戒しないほど、高高度へと舞い上がる。

 そして高高度から銀座の街へ急降下。

 

 ボクの体は自由落下で時速200km超える。むしろ遅いくらいだ。

 ここに加速を加えて……時速いくつになっただろうか?

 

 門が地上の点から、はっきりと門の形に見えてくる。この辺りで、周辺警戒していた飛龍の間を突き抜けた。

 ここで慣性制御。

 

 門から出てきたばかりの一個中隊の頭上を掠め、内部へと飛び込んだ。

 

 一瞬にして景色が変わる。

 思った通り、ボクたちの世界に繋がった門と同じ構造だ。

 

 トンネル内部にはまだ行軍してくる兵たちがいて、ボクを見上げて驚いている。

 ここで一撃加えてもいいけど、それは進軍を一時止める効果しかない。

 大規模破壊をして、このトンネルが崩壊してもそれはそれで危険だ。

 

 当初の予定通り、トンネルを抜けるため空を飛ぶ。

 

「うへ、まだこんなに投入するつもりだったの?」

 

 通路に広がってぎっしりというわけではないが、ところどころ途切れながら兵隊が中退単位で行進している。

 進んでいくと、行列の後方は荷車が多くなってきた。武器や食料だけでなく、衣服日用品も運んでいるようなので、輸送部隊というより、これが輜重部隊ってやつか。

 

 前方に暗がりが途切れる点が見えてきた。

 

 出口だ。あちらの入り口だ。

 

 一気に飛び出すと、そこは視界が抜けるよう草原だった。

 門は丘の上にあり、その前では大部隊…………何万人いるんだ?

 

 ボクは人差し指と親指でL字をつくり、両手で四角を作ってそこから覗き見る。

 こちらを見上げて指を指してくる侵略軍。その指の四角の間に約40人。

 ええっと、ボクの手が小さめだから一辺が12cmの四角の穴だとして、上空20メートルくらいから腕を伸ばしてのぞいているから、この広さからして数は…………。

 

 …………8万人! 多めにみたら10万か! 

 大部隊とかそんな話じゃすまない!

 これがこの門を潜るつもりなのか!

 

 ざわ……っと、ながらく感じていない血潮の流れが、ボクの全身を駆け巡る。

 これは打撃部隊や侵略部隊じゃない。占領部隊だ!

 統治して支配することを想定してる。

 

 だからといって、虐殺はできない……。

 

 高度を上げ、ボクはできるだけ大きな声で叫んだ。

 

「聞け! これは警告である! そして見ろ! これは形として見える、形なすものを滅する天の雷の化身である!」

 

 ボクはあちらの言葉で、指揮官が知り得たる範囲のそれらしい表現で宣言し、飛龍たちが集まる前に──。

 

 1万年ぶりの破壊の力を解放し、ゼンマイをここから離れた場所の丘へ向けた。

 放たれる一条の光。

 

 一閃──

   収束……から静寂……

     >爆縮<

 閃光! 爆炎! 爆音! 衝撃!

 

 ボクを落とそうと寄ってきた飛龍は、爆風でバランスを崩して大きく高度を落とす。

 

 8万人兵のほとんどが、あるものは爆風で、あるものは腰を抜かして、ある者はボクに祈りをあげて、だれもが地に伏す。

 混乱で怪我人も出ているようだ。

 

「この門の先は、平和を愛する徒なる者たちの国である! ボクはその者を慈しむ。ボクはそれを破壊するものを厭う、憎み、唾棄し、罰を下すだろう!」

 

 それっぽいことを宣言し、ボクは悠々と門から帰る。

 

 邪魔するやつくらいはまとめて吹き飛ばそうと思ったけど、手を出してくるようなお馬鹿さんはいなかった。

 




 いったん、ここで銀座事件は収束します。

 原作から乖離するとどうなるか作者がよくわからなくなるので、ゲートゼロとの差異は少なくなってます。

・笹倉首相は怪我をするも程度は低く回復は早い。ただし銀座事件では陣頭指揮は取れず、総理の座も降りる。
・警視総監の乗るヘリも残念ながら原作通り。そのため警察の対応も同じ。
・テレビ旭光関係はなぜか陣内と合流。
・沖田聡子と伊丹が出会う経緯も同じ。

 その代わりといってはなんですが、陣内とイフリーナ、イフリータの遊撃のおかげで、敵が対策するため亜人、雑兵まで投入。ことごとく撃破されます。
 このためゲートゼロで描写されていたような一般家庭の家屋への襲撃など、悲惨で無駄な殺戮は大幅に減っています。
 

 おおざっぱに言うと

・大筋は原作どおり。
・犠牲者はバグロムのおかげで大幅減。
・アルヌスでのイフリーアの脅しの一撃が追加

 こんな感じです。

 
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