TSしたセフレとドロドロでぐちゃぐちゃな関係になっていくお話   作:きむちーず

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 本編開始前のお話です




番外編
あの日、あの頃


 

 俺はお尻より胸派だ。だけど、初めからではない。

 

 中学時代、俺は尻派と豪語していた。どこか通ぶった感じを出したかったんだろう。

 

 高校に入って初めて彼女ができた。バスケ部の結構活発な子。どこかガキっぽくて、でもそこが魅力で、面白い子だった。

 童貞を卒業したのは付き合い始めてから3ヶ月後。俺は彼女のことを胸がないと、どこかでフィルターがかかっていた。でも尻派だから全然良いと思ってた。やっぱ運動部の女子は下半身が発達してるから尻も綺麗だった。

 だけど、お互い裸になってわかった。彼女は実は隠れ巨乳だった。そして俺は気づいた、お尻派を自称していたはずの自分が、大きな胸を見た瞬間に明らかに喜んでいたことに。

 

 とまあ、それ以来巨乳好きになったのだ。その彼女は大学生に寝取られたんだけどね。

 

 そこそこイケメンで、スポーツができた俺は結構モテた。女を知ってからは特にね。女を取っ替え引っ替えして遊んだ。我ながらクズだなと思った。

 

 大学に進学してからも変わらなかった。

 サークルの飲み会、友達の紹介、アプリ。

 気づけば、名前すらろくに覚えてない女と同じベッドにいる。

 

 終わったあと、静まり返った部屋の中で、いつも天井を見つめながら思う。

 ――俺、何やってんだろ。

 

 賢者タイムである。

 

 相手のぬくもりが残るシーツの上で、冷めた自分の心だけが妙に浮いていた。

 なんだかんだ言って初めてのあの子が好きだった。あの時の初々しい気持ちはもう味わうことはできない。

 だから、誰かを本気で好きになることが怖かった。

 だから、軽く笑って、適当に優しくして、深入りせずに関係を終わらせた。

 

 

 

 「もう帰ってよくね?」

 グラスの氷を指で転がしながら、俺はため息をついた。

 店内は薄暗くて、安い照明の下で笑い声と香水の匂いが入り混じっている。

 高校時代の友達に人数合わせで呼ばれた合コン。

 来る前から興味はなかった。

 

 向かいには、金髪に近い茶髪の女がスマホをいじっていた。

 どこか冷めた表情。誰とも目を合わせようとしない。

 それが、麗奈だった。

 

 「……楽しそうだな、お互い」

 気づけば、俺がそう声をかけていた。

 

 彼女はちらりと視線だけ向けて、笑った。

 その笑みは、場のノリとは正反対の、静かなものだった。

 周りはまだ盛り上がってる。けど、俺たちだけ別の空気にいた。

 

 「こういうの、よく来るの?」

 「いや。今日が初めて。友達に押し切られて」

 「俺も。──暇つぶしのつもりだったんだけどな」

 

 麗奈はグラスを口元に運びながら、ゆっくりと笑う。

 「暇つぶしにしては退屈すぎない?」

 「ほんとにな」

 

 その会話が妙に心地よかった。

 お互い何かを求めていない。

 ただ、そこに“理解してくれる誰か”がいた。

 

 「ねえ、抜け出さない?」

 突然、麗奈がそう言った。

 その声は驚くほど冷静で、でもどこか挑発的だった。

 

 俺は一瞬だけ周囲を見回してから、笑った。

 「……いいね。つまらないのは嫌いだし」

 

 二人で席を立った瞬間、周りの喧騒が遠のく。

 外に出ると、夜風が少し冷たかった。

 街灯の光に照らされた麗奈の横顔は、思ったよりも静かで綺麗だった。

 

 

 

 夜風が少し冷たかった。

 ビルの隙間を抜ける風が髪を揺らし、街灯のオレンジ色がアスファルトに滲む。

 麗奈は手に持った小さなバッグを軽く揺らしながら、歩幅を合わせて隣にいた。

 

 「ねえ、ああいう場所好き?」

 ふいに彼女が呟く。

 

 「好きではない、騒ぐだけで、何も残らないよな」

 「うん、私も同じ。みーんな見栄ばっかり。疲れちゃう」

 

 その言葉に、俺は少し笑った。

 「それを気づいてる時点で、あの場の人間とは合わないんだろうな」

 「一応友達ではあるんだけどなぁ」

 

 麗奈も同じように微笑んで、前を向いた。

 「じゃあ、律くんは? 本音で話せる人、いるの?」

 

 問いかけられて、少し考える。

 「……いたことはある。でも、長続きはしなかった」

 「なんで?」

 「大学生に寝取られた」

「それ、笑っていいやつ?」

「どーぞ」

 

 その言葉に、彼女は立ち止まった。

 振り返って、静かに俺を見る。

 その瞳には、妙な優しさがあった。

 

 「律君と話すの、私結構好き」

 

 どういう意味かは、聞かなくても分かった。

 俺たちは似ていた。

 どこか、寂しさでできている。

 

 「ねえ、歩き疲れた。ちょっと休まない?」

 そう言って彼女が指さしたのは、駅前から少し外れたラブホテル。

 冗談みたいに自然な言い方だった。

 

 「……いいのか?」

 俺がそう尋ねると、彼女は目を細めて笑った。

 「別に。嫌なら帰ってもいいよ」

 

 挑発のようでもあり、救いのようでもあった。

 俺はポケットの中のスマホを一度握り、深く息をついた。

 「……いや。行こう」

 

 自動ドアが静かに開く。

 ロビーの明かりが、彼女の髪を淡く照らす。

 

 その瞬間、なぜか胸の奥で小さな音がした。

 ──後戻りできない音。

 

 エレベーターの中、反射する鏡の中で視線が交わる。

 言葉はいらなかった。

 互いの虚しさを、埋め合うように。

 

 

 

 

 カーテンの隙間から、朝の光が差し込んでいた。

 白いシーツの上、麗奈はうつ伏せのまま、静かに寝息を立てている。

 

 俺は枕元に座り、ぼんやりとその背中を見ていた。

 肌の色、髪の乱れ、呼吸のリズム──全部が現実味を帯びているのに、どこか夢の中のようだった。

 

 昨夜、互いに何を話したのかも、もうよく覚えていない。

 ただ、あの瞬間だけは確かだった。

 彼女と繋がった。ひたすらに気持ちよく、腰を振った。

 

 麗奈が寝返りを打ち、少しだけ目を開ける。

 「……おはよう」

 「おはよう」

 短い挨拶。

 それだけで十分だった。

 

 「もう帰る?」と彼女が言う。

 俺は少し考えてから、苦笑いした。

 「一応、大学あるし。午後からだけど」

 「そっか……じゃあもう一回シよ?」

 「それは無理。昨日出しすぎた」

 「それは残念」

 

 

 着替えを済ませてドアを開ける。

 「また、会う?」と、何気なく聞いてみた。

 

 麗奈は少しだけ考えて、視線を落としたまま答える。

 「……会ってもいいよ」

 

 それは恋人の約束じゃなかった。

 必要なときだけ、互いを満たすための言葉。

 

 その日から、俺たちは何度も会った。

 誰にも見せられない関係。

 

 セフレになった。

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