TSしたセフレとドロドロでぐちゃぐちゃな関係になっていくお話   作:きむちーず

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陽だまりの距離

 

 午後の陽射しが、街のアスファルトを柔らかく照らしていた。

 美咲ちゃんと歩く商店街は、人の声と焼き菓子の甘い匂いで満ちている。

 

「ね、あそこ寄ってみましょーよ!プリンが美味しいって有名らしいですよ」

 美咲が指さしたのは、古いレンガ造りのカフェだった。

 半開きのドアの隙間から、やわらかな音楽が流れてくる。

 

「いいね」

 美咲ちゃんといると不思議と笑顔になれる、そんな気がした。

 

 

 

———

 テーブルに並んだのは、昔ながらのプリンとホットコーヒー。

 カラメルの香ばしい香りが、静かな店内に広がる。

 美咲はスプーンを持ったまま、少し身を乗り出した。

「律さん、これめっちゃ美味しい! 食べてみて!」

 

 その無邪気な笑顔に、思わず目を奪われた。

 子どもみたいな表情――けど、それが妙に心に響く。

 なんでだろう。麗奈とはまるで違う種類の明るさ。

 見ているだけで、どこか息が楽になる。

 

「……ほんとだ。甘いけど、やさしい味だな」

「ねっ。おいしいですね!」

 

 そう言って美咲はカップを両手で包み込み、ほっと息をついた。

 その仕草が、不思議と綺麗に見えた。

 秋の光が彼女の髪に当たって、琥珀色に輝いている。

 

(……あれ、何考えてんだ俺)

 自嘲するように視線を逸らす。

 けれど、胸の奥が微かに疼くのを誤魔化せなかった。

 

「律さんって……結構ボーイッシュな格好をするんですね」

「え?」

「律さん小柄で可愛いですから、もっと女性らしい、甘い格好の方が似合うと思うんですよねぇ…あ!もちろん今のままでもめっちゃ可愛いですけどね!!」

「いや、俺は……」 

 

 思わず自分でもハッとする。

 

「え? 俺……?」

美咲が首をかしげ、きょとんと聞き返す。その声に俺はますます顔が赤くなる。

 

「……あ、いや、その……」

 慌てて言い換える。

 

「わ、……いや、わ、私ですよ!」

美咲ちゃんはくすくすと笑い、俺の動揺を楽しんでいるかのようだった。

 

「ふふ、律さんって、やっぱり面白い人ですね」

 

 その無邪気な笑顔に、俺は軽く肩をすくめて目を逸らす。

 

 プリンを食べ終え、街のざわめきが静かに耳に入る。俺は少し疑問に思ってたことを美咲ちゃんに尋ねた。

 

「ねぇ、美咲ちゃん……その、見た目って……ギャルっていうか、派手っていうか……どうしてそういう格好してるの?」

 

 美咲はスプーンを止め、少し黙ったあと、やわらかく笑った。

「え? これですか……うーん、実はちょっと理由があるんです」

「理由?」

 

美咲は小さく息をついて、目を伏せながら言った。

「昔……クラスメイトに、変なことされそうになったことがあって。それ以来、男の人と距離を置きたくなったんです」

 

「……そ、そんなことが……」

律は思わず言葉を飲み込む。声を荒げることもなく、ただ静かに聞く。

 

「でね、それで考えたんです。見た目を派手にすれば、男の人は近づきにくくなるって。髪色とかネイルとか、派手めにして、ちょっと強そうに見せて……」

 

「だから、私、こういう格好してるだけなんです。別に軽く見られたいわけじゃなくて、自分を守るために……」

 

律は視線を落とし、そっと頷いた。

「……そっか…ごめんね、言いにくいこと聞いちゃって……」

 

 美咲は少し笑い、肩をすくめる。

「そんなことないですよ。私、今の私が結構好きなんです。あれがなきゃ今の私はないですから」

 

 眩しい。彼女の笑顔は眩しすぎる。

 

俺は咳払いして視線をそらす。心臓が少し高鳴っているのを感じた。

 

美咲はにこっと笑い、スプーンでプリンをひとすくいして口に運ぶ。

その仕草が、どこか柔らかく、律の胸に小さな違和感を残した。

(……なんでだろう、……この子……)

 

 店を出たあとも、美咲はよく笑ってよく喋った。

 雑貨屋では猫の置物を手に取って、「これ律さんに似てない?」と茶化してくる。

 その無邪気さに、少しだけ心が軽くなっていくのがわかった。

 

 気づけば、ずっと笑っていた。

 麗奈と過ごしていた時とは違う、なんだか言葉には表しづらい。

 

「……ありがとう、美咲ちゃん」

 ふいに口から出た言葉に、美咲が首をかしげる。

「いや……なんか、少し救われた気がした」

「……大袈裟ですよ」

 笑いながらも、彼女はほんの少しだけ照れたように目を伏せた。

 

 その表情が――妙に、心に残った。

 麗奈のいない空白を、埋めるように。

 いや、違う。そんなことを思うのは間違いだ。

 でも、それでも……。

 

 夕陽が差し込む駅のホームで、彼女と別れ際に手を振る。

 その指先の白さと、光に透ける笑顔を見て、胸の奥で何かが小さく音を立てた。

 

(……俺、どうかしてるな)

 

 そう思いながらも、

 帰り道、頭の中から美咲ちゃんの笑顔が離れなかった。

 





 高評価をしてくださった、
富岡工房さん、わらび餅4649さん、イズモ様さん、玖重さん、
 ありがとうございます!!
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