TSしたセフレとドロドロでぐちゃぐちゃな関係になっていくお話   作:きむちーず

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独白

 

 

 母は、私の世界そのものだった。

 父は私が小さな頃に亡くなり、残された母は「あなたのため」それが口癖だった。

 でもその言葉は甘いものじゃない。

 「あなたは私の思い通りに動いてくれなきゃ困る」という、檻みたいな言葉だった。

 

 服も、勉強も、付き合う友達も、全部監視されていた。

 

 私は笑って従うしかなかった。だって、従えば褒められるから。逆らえば愛されないから。私のことを愛してくれるのは母しかいなかったから。

 

 それでも私は、外では明るく振る舞った。

 世渡りは得意だった。誰にでも合わせて、求められれば応えた。

 告白されれば笑ってうなずいた。

 でも心の底から嬉しいとは思わなかった。

 

 

 ……はずだった。

 

 高校のとき、初めて心を奪われた。

 彼女は特別な人じゃなかった。ただの同級生。

 彼女の困っている顔が好きだった。つい助けたくなるような、愛おしいとすら感じた。

 笑うときの声も、机に向かって真剣な横顔も、全部が欲しくてたまらなかった。

 

 最初はただ話すだけでよかった。

 でもすぐに、それじゃ足りなくなった。

 もっと一緒にいたい

 私のことだけを見てほしい

 誰にも渡したくない

 

 気づいたら、私は彼女の行動を縛っていた。

 連絡を何度も入れて、予定を詰めて、逃げ道をなくした。

 それが「愛」だと思っていた。

 だって母は、いつだってそうやって私を縛ったから。

 愛するって、そういうことだと思い込んでいた。

 

 でも——彼女は泣きそうな顔で言った。

 

 「やめて……もう、怖い」

 

 あの言葉が、胸を焼き尽くした。

 私は彼女を愛していたのに。

 でも彼女にとって、私はただの恐怖でしかなかった。

 

 その日を境に、私は自分の心を抑えつけることを決めた。

 誰にでも笑って、ほどほどに付き合って、すぐに離れる。

 そうすれば、もう怖がられることも、拒絶されることもない。

 本当の気持ちは、二度と出さないと誓った。

 

 ……そのはずだったのに。

 

 大学に入って一人暮らしを始めた。最初の頃はやっと母の手から逃れられると思い、意気揚々としていた。だが、それは長くは続かなかった。

 

 私の心は退屈で、乾いていた。

 

 そんなとき、アパートの隣に住む高校生の女の子が私を慕ってくれた。見た目が随分と派手で一瞬戸惑ったが、彼女はとてもいい子でそんな心配はすぐに消えた。

 

 でもそれは私の欲していたものとは違かった。もっと深く、心からの関係を作りたいと思った。

 

 性行為が好きだ。行為自体、元々気持ちがいいのもあるけれど、一番は行為をしているときは私だけを見てくれているという満足感に浸れた。

 

 そして彼に出会った。彼とは体の相性が抜群に良かった。最初はただそれだけだった。ただの体を重ねるだけの相手、セフレだった。

 

 彼とは気が合うというか、気を遣わなくていいような軽い関係が好きだった。きっとお互いに。

 

 

 でも私は律に出逢ってしまった。

 なぜだろう、女になった彼が愛おしく感じるのは。……きっと、彼女に似ていたからだろう。

 見ていると胸が苦しい。

 見たい。触れたい。感じたい。愛したい。愛されたい。泣かしたい。慰めたい。抱きたい。そばに置いておきたい。

 もし彼が私から離れたら……私はまた、あのときみたいに空っぽになる。

 そんなのは嫌。絶対に嫌。

 

 私の人生に律は必要不可欠。

 彼が望もうと望むまいと、私は彼を離さない。

 もし律が他の誰かを選ぶなら、その相手ごと壊してでも取り戻す。

 だって律は、私の唯一だから。

 

 そうだよね、お母さん。

 私はちゃんと学んだんだ。

 愛っていうのは、縛ること。逃がさないこと。

 失わないためなら、なんだってしていいって。

 

 

 

 

 

———

 朝、陽光が差し込む。寝ぼけ眼でベットから起き上がる。隣に律はいなかった。シーツを触ってみると生温かさが残っていた。

 

「あ、おはよー麗奈」

 

 リビングに律がいた。元気そうだ。

 

「ん、おはよ」

「珍しーな、俺より遅く起きるなんて……大丈夫か?目が腫れてるぞ」

「え、なんでだろう……悪い夢でも見たのかな……」

「……麗奈?」

 律が少し戸惑った声を漏らす。

 

 私は迷わずリビングに歩み寄り、律の背後から腕を回す。

「ん……好き、大好き」

 

 律は一瞬固まるが、すぐに少しだけ笑った。

「どうした?やっぱ悪い夢でも見たか?恥ずかしいからやめ……?」

 

 私はそのまま、律をぎゅっと抱きしめる。腕の中で小さく体を寄せる律の温もりに、胸の奥が高鳴る。

「……麗奈、ちょっと……」

 抵抗の声を上げながらも、律は力を抜き、私に身を任せる。

 

小さな悪戯心で、首筋に唇を軽く押し当て、かすかに噛む。

「……んっ、んん……!」

律は驚きと恥ずかしさで小さく声を漏らす。

 

「……おいしい」

 そう囁くと、律は顔を赤くして目を逸らした。

でも、逃げようとはしない。逃げられないことを、どこかで自覚しているのだろう。

 

私はその首筋の温もりを確かめるように、少しだけ噛む角度を変え、律の体をさらに抱き寄せる。

「……麗奈……」

その声に、私の胸の奥で小さな満足感が芽生える。

 

「……律、逃げないでね」

 

 





 これにて第一章完結です。拙い文章で分かりにくかったり、つまらないところが多かったと思いますが、高評価等をくださり嬉しい限りです。
 まだまだ物語は続きます。応援してくださると幸いです。

 では最後に、高評価をしてくださった、
Rsakuaさん、江戸苔さん、よもぎ!さん、ありがとうございます!!

 



 
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