いつか、善き人として生まれ変われる様に   作:万年赤字一般傭兵

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虚偽の糸

 

 第一競技が終わって更なる熱狂を齎されたスタジアムに対し、その中央にいるは開幕よりも遥かに少ない数の生徒達。

 ヒーロー科全員に加えて普通科とサポート科が1人ずつ入った総勢43人の彼らは、今かいまかと次の本選となる競技の発表を待っていた。

 

 ミッドナイトの煽り文句と共に伝えられる第二種目は…

 

 

「これよ!!!!」

 

[騎馬戦]

 

 

 先の競技とは打って変わって、個では無く他者の協力とシナジーを考えなければならないこの競技。

 足並み揃えれば並外れた身体能力の優位を活かせない蜘蛛蠍にとって、少々不利とも言えるものだろう。

 

 

「基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、一つ違うのが…」

(騎馬…誰と組みましょうか)

 

 

 蜘蛛蠍だけに限らず誰もが似た様な思考を巡らす。

 先の障害物競走の順位に準じて各々に割り振られた点数をハチマキとして奪い合う騎馬戦なのだから、単なる相性以前に考える事はたくさんあるのだろう。

 

 だが、そんな考えに大きな一石が投じられる。

 ここは雄英、当然ただの騎馬戦ではないのだから。

 

 

「予選通過1位の緑谷くん!!」

 

「持ちP1000万!!!!」

 

(…一位が罠とは、やはり雄英は凄い事を考えますね)

 

 

 7位の蜘蛛蠍が185Pなのに対し、緑谷に渡されたのは一つだけ飛び抜けた1000万P。

 持てばそれだけで一位通過が確定するが、それ故に最も狙われやすくなる諸刃の剣である。

 

 まるで餌を前にした狂犬の様な視線の数々が緑谷へと突き刺さる中、ミッドナイトがチーム決めの交渉タイムのスタートを宣言した。

 

 時間は15分、蜘蛛蠍はチームを組めない最悪のケースだけは避けようとして仲が良い友達に声をかけようとする。

 

 

「なあ、あんた。ちょっといいか?」

 

 

 その時、誰かに声をかけられた。

 彼には聞き覚えがない声、しかし彼が誰かの声を無視する事は当然できないためゆっくり振り返り…

 

 

「はい、なん………」

 

 

 後ろにいた紫髪の生徒に、返事をしてしまった。

 

 瞬間、彼の意識が遠のく。

 

 

 


 

 

 遠のいた意識の先、彼は知らない場所にいた。

 だが立っている訳ではない、目が霞んでよく見えないものの何か細い物に掴まっている状態だ。

 

 

(さっきまで体育祭を…ここ、どこですか?)

 

 

 どこに来てしまったのか、どうしてこんな場所にいるのか、一体何が起きたのか。

 色々な疑問が彼の脳内に浮かんできたが、モヤが無くなった目に映ったものを見た瞬間に全ての意識はそちらへと向けられた。

 

 彼が掴んでいたのは細い蜘蛛の糸、だが彼より上を登って行く者達がいる。

 

 

(あの人達は…!)

 

 

 そこにいたのはKUNIEDA、ギャシュリー、ディクテイター…有名無名関係なく、かつて母児村が巫子によって罪を償わせた敵の数々だ。

 そうして受容できない痛みと共に巫子の中へと堕とされた彼らは、黄金の光がさす糸の天辺を目指していた。

 

 哀れにも炎に向かう蛾のように、黄金の麓から伸びるこの糸こそが救いなのだと信じてひたすらに登り続けていた。

 

 

 蜘蛛蠍の直感が、彼らを外に出しては行けないと警告する。

 ここは打ち捨てられるべきものが集う地獄だが、こんな場所にいる彼らでさえも糸の先に行くべきではないと。

 

 だから、彼もまた糸を登り始めた。

 

 

「行っては…行ってはいけません……」

「貴方達は、ここで善き人になるべきなのですから…」

 

 

 一人、一人、また一人、彼は救いを求めて登り続ける罪人達を引き摺り落として行く。

 

 彼の体を動かすのは、巫子として刻まれた責務。

 罪深い悪人を善き人にする為に全ての罪を背負い、輪廻の時を迎えるまで魂を留め続ける、そんな責務であり呪いだ。

 

 やがて最後の一人を蹴落として糸の天辺に着くと、彼の意識は段々と現実へと引っ張られ始める。

 薄れる意識の中、落ちて行く罪人達に向けて彼は微かな意識で言葉を届けた。

 

 

「心配せずとも、大丈夫ですよ」

 

「どんな人でも、死ねるのなら生まれ変われる」

「だから耐えてください。そして、こう祈ってください…」

 

 

「"いつか、善き人として生まれ変われます様に"……と」

 

 

 それは、あらゆる者に与えられる救いだった。

 

 

 

 ただ一人、彼だけを除いて。

 

 


 

 

(…!危ない、意識が急に途切れていた…)

 

(さっきの人は無事、どうにか中の"蟲"に乗っ取られなかった様ですね)

 

 

 意識が現実に戻り、先ほど最も近くにいた紫髪の生徒 "心操"が無事であった事に安心する蜘蛛蠍であったが、しかしすぐに考え直した。

 

 先の記憶は曖昧であるものの、自身の意識が失われる前の記憶はハッキリ覚えているからだ。

 

 つまり、目の前の生徒の行動をしっかり覚えていた。

 

 

(この人が犯人ですか)

(個性としては、気絶に近い?)

 

(発動条件…触れられてはいない、ならば目を合わせるか言葉がトリガー…?)

 

「…おま…!!」

 

 

 故に彼が最初に取った行動は言葉ではなく、心操の背後を取って口に指を突っ込みながら拘束する事だった。

 周りの生徒にギョッとされる事も気にせず、彼は一方的な問いかけを始めた。

 

 

「個性の発動条件は言葉?それとも目?」

「言葉なら左手を、目なら右手を握って」

 

「嘘ついたら絞め落とす、ここで落ちたくはないですよね?」

 

 

 彼の言葉に込められていたのは、命を奪う事さえ躊躇しなさそうな冷たい敵意。

 一学生が浴びせられるには少々度が強いものであり、拘束されている心操の心臓はバクバクとなり始めた。

 

 

「…黙り?なら「んー!!んー!!!!!」

 

 

 少しだけの間であろうとも、蜘蛛蠍が待ちはしない。完全に冷え切った声を聞いた彼は、嘘をつく考えさえ出来ずに左手を握りしめた。

 

 それを見た蜘蛛蠍はにっこりとした顔で、更なる脅しをかける。

 

 

「なら、その個性を誰かに使ってみてください」

「当然、目は閉じた状態でですよ?」

 

 

 激しく首を縦に振ろうとする心操を見て、蜘蛛蠍は拘束を解いた。

 

 拘束なき今ならば逃げる事もできるが、彼の中にそんな考えは湧かない。

 そのまま適当な一人に声をかけ、返事をさせる事で個性"洗脳"を発動させた彼はそのまま蜘蛛蠍の元へと戻っていく。

 

「なるほど、返事ですな」

「厄介、厄介ですね…やはり」

「ここで絞め落とした方が…」

 

 

 だがそんな心操の行動に対して、蜘蛛蠍の反応は冷たかった。

 初手で脱落させてこようとした相手と仲間になれる筈が無く、敵に回せば非常に厄介だと判断したのだ。

 

 このままではやられる、そう感じた心操は一か八か交渉を仕掛ける事にした。

 

 

「待て!!…俺は、あんたと組みたい」

「俺の手の内は割れた。なら分かるだろ?この先の競技で、俺がお前に勝てる可能性はほぼ無い」

 

「だが仲間としてなら、どうだ?」

 

 

 冷たい視線を浴びながらも、彼は必死に言葉を紡ぐ。

 元の目的である蜘蛛蠍と組む為に、この競技を突破する為に。

 

 

「あんたの糸ならハチマキは簡単に取れるだろうが、万が一があるだろ」

「俺の個性は初見殺しではあるが、その万が一をカバーできる」

 

「もうあんたに個性は使わない、それに無計画だという訳でも無い…だから、頼む」

 

「俺と組んでくれ…!」

 

(嘘では、無さそうなのですが)

 

 

 恐怖に震えて逆襲を望まず、しかし最善手を求めようとする思いが心操の目にはこもっていた。

 その全てが伝わらずとも蜘蛛蠍の見立てでは、目の前の彼は嘘をついていない。

 

 だが"返事"というごく普通の動作が起点となる個性故に、安易な信用はできなかった。

 

 

(個性はかなり強い、万一の保険になるのは実際魅力的だ)

(時間は大して経ってない、けれど瀬呂君達は既に別の人と組んでますか)

 

(……この先の事を考えれば…)

 

 

 葛藤の中、遂に彼は結論を出した。

 

 

「…分かりました、組みましょう」

 

「本当か…!」

 

 

 実利も考えた上で出されたのは、肯定の返答。

 しかし先とは違って意識は遠のかない。

 

 それは即ち心操の交渉成立を、蜘蛛蠍の決断が合っていたことを示していた。

 

 

「協力するなら互いの事を知るべきですよね?」

「僕は蜘蛛蠍と言います、あなたは?」

 

「…心操だ」

 

「なら心操君、これからの作戦を練りましょうか」

「お互いに、碌でもない手段でこの競技を乗り切りましょう」

 

(勝つ為には手を汚す事も躊躇しない人、どうにも良い関係を築けそうです)

 

(コイツ、本当にヒーロー科かよ…)

 

 

 ヒーローらしからぬ不意打ちと、ヒーローらしからぬ脅し。

 先まで一触即発だった彼らだったが、今や含みがある笑みを浮かべて握手をしながらヒソヒソと話し始めた。

 

 

 

 色んな意味での交渉タイムは終わり、プレゼントマイクが試合の開始を告げんと高らかに声を張り上げる。

 

 

 [準備はいいかなんて聞かねえぞ!!]

 

 [いくぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!]

 

 

 蜘蛛蠍と心操が作り上げたチームの人数は4人。

 青山 尾白 心操が騎馬となり、蜘蛛蠍が騎手として合計430Pのハチマキを首にかけたチームである。

 

 

「じゃあ心操君、作戦通り行きましょうね」

 

「もちろんだ…しっかし、お前も良い性格してるな」

「コイツら、お前のクラスメイトだろ?」

 

 

 もっとも青山と尾白の二人は開幕で騎馬を組めなかったが為に、心操の個性で無理やり取り込まれた被害者だが。

 されど、蜘蛛蠍の頭に罪悪感が湧く事はない。

 

 

「?…僕らが勝てばこの人達も勝てますよね?」

「WIN WINじゃないですか」

 

 

 チームとして絶対に勝つと信じている彼にとって、彼らを引き入れたのは紛れも無い善意なのだから。

 そんな彼の言葉に、心操は何か思うところがあったようだが…

 

 

「……俺もお前みたいに…」

 

[START!!!]

 

「さあ、行きましょう!!」

 

 

 漏れ出た呟きは、プレゼントマイクの爆音でかき消される。

 蜘蛛蠍と同様に心操も無駄な思いは切り捨て、勝利に向かって騎馬を進め始めた。

 

 

 開始の合図と共に,多くのチームは持つ緑谷のチームへと殺到した。彼らの目的はただ一つ、1000万Pのハチマキ。

 

 

「祭りの中心は緑谷君達」

「作戦通り、彼らを避ける様に外周を回りましょう」

 

「…そうすれば、小賢しいやつが狙いにきますからね」

 

 

 蜘蛛蠍の欲としては、その中で取って取られての祭りを楽しみたいところだが、心操との約束である作戦を立てたのだからそうはしない。

 

 そして、そんな彼らを狙う影がある。

 

 

「…!B組、来るぞ」

 

「よし…作戦通り行きましょう」

 

 

 乱戦を避けて漁夫の利を取らんとするB組、その中でも物間率いるチームだ。

 それを前にした彼は騎馬全体で背を向けて、全力で逃げ始めた。

 

 

「おやおやあ!?A組にはとんだ臆病者もいたんだねぇ!」

 

「ひえぇ〜僕は争いが苦手なのですよ!勘弁してくださぁい!!」

 

「なら僕達にそのハチマキを渡すといい!そうすれば誰にも狙われないからねぇ!!」

 

 

 如何にも争いが苦手な弱者を演じながら、蜘蛛蠍達はひたすらに逃げる。だが心操自身の身体能力の低さ、それに他二人は個性で無理やり動かしている事もあいまって、すぐに追いつかれた。

 

 

「まずは一つ!」

「じゃあね!頂点を目指そうとしない君達の幸運を祈るよ!!」

 

 

 物間達に追いつかれても、蜘蛛蠍は大した抵抗をする事もなくあっさりと頭の真白いハチマキを奪われた。

 

 散々に煽り散らしながら、次のハチマキを取らんと物間達は爆豪のチームへと向かっていく。

 

 

「あんなので騙されるのか……」

 

「最初から舐めてかかるから、ああなるんですよ。僕らも気を引き締めませんとね?」

 

「…だな、ならさっさと次の奴にも"奪わせるぞ"」

 

 

 心操のジャージから"真白い鉢巻"が取り出され、受け取った蜘蛛蠍が再び頭に巻き付けた。

 

 蜘蛛蠍チーム 430P

 

 同様に次の標的へと向かって行った蜘蛛蠍チームと物間チームの間には、か細い糸が微かに煌めいていた。

 

 

 

 蜘蛛蠍の個性、"操糸"

 指先から糸を放って自在に操るそれは、戦闘における彼の動きから扱いに慣れていないと多くの人に考えられていた。

 

 その考えは半分合っている。

 確かに彼は、戦闘における"操糸"の扱いには慣れてないが…

 

 

「…しかし、驚いたよ」

「ダミーのハチマキを糸で作って、わざと盗ませる…そんな芸当が出来るだなんて思わなかった」

 

「昔から仕立てが得意なんです、争いに使う事はありませんでしたが」

 

(戦いに使うだなんて考えもしなかった…)

(瀬呂君達のアドバイスは、やはり斬新で素晴らしいですね)

 

 日常における扱い、とりわけ何かを仕立てる為に"操糸"を使う事に関しては非常に高い練度をもっているのだから。

 僅かな時間と彼の糸によって作られた偽ハチマキは、今や多くのチームが本物のハチマキと共に掛けていた。

 

 作戦として彼の糸は、勘のいい爆豪や轟そして特に激しく動くであろう緑谷のチームには敢えてつけられていない。

 

 故に、偽ハチマキの一つ一つに、蜘蛛蠍の指先から伸びる糸がついている事を知る者は誰一人いなかった。

 

 

「あとは、待つだけですよ」

「終わり際に全て回収しましょう」

 

 

 蜘蛛蠍の糸は指先からの繋がりを失うと制御できなくなるが、別の糸で繋げれば再び自在に操る事ができる。

 つまり直接放った糸と繋げられた今の偽ハチマキは、蜘蛛蠍の思うがままに操れる糸の一つとなっているのだ。

 

 

 試合時間は残り2分、誰もが得点表を見る暇も無く争い始める時間だ。

 最高に白熱し始めた試合の中、蜘蛛蠍は仕掛け始める。

 

 

「行きますよ」

 

 

 残り時間を見た彼は、各チームの偽ハチマキの糸を操って本物のハチマキへと結びつけたのだ。

 瞬間、チーム毎に持っていた全てのハチマキが宙へと釣り上げられる。

 

 

「な…なんだあっ」

 

「待って、私のハチマキ…ああっ!」

 

「誰の個性だよこれ!?」

 

 

 残り少ない制限時間に冷静さを奪われ、更には目まぐるしく情報が変わる乱戦の環境下に置かれている生徒達。

 そんな彼らの中に、突然飛んでいくハチマキを掴む事ができる者は一人もいなかった。

 

 

 [おおーっと!!最後の最後で一気に追い上げたのは、まさかの蜘蛛蠍チーム!!]

 

 [散らばってた点を総取りだぁ!!](/big》

 

 

 試合終了間近、蜘蛛蠍チーム2210P。

 現在二位である。

 だが、このままのんびりと試合の終わりを待つ訳にはいかない。

 

 

「ここまで上手くいくとは驚きですね?」

 

「手の内を晒さずに済むから、俺としてはありがたい限りだ…と、来るぞ」

 

 《big》[だが!ヘイトを買いすぎた!!]

 

 

 点を奪っていった犯人を見つけた他チームが、一斉に押し寄せてきたのだから。

 ピンチであると同時に、集約した点を奪えれば上位4チームに入れるチャンスを前に彼らは躊躇しない。

 

 

 [金鉱を掘り当てた"ゴールド・ラッシュ"ならぬ、蜘蛛蠍の点へと群がる"ポイント・ラッシュ"!!]

 

 [品行方正とは無縁のコイツらから、蜘蛛蠍チームは逃げ切れるのかぁ!?]

 

 

「「「多勢に無勢だ いっけぇ 」」」

 

 

 残り時間は一分、速度に劣る蜘蛛蠍チームでは逃げ切ることなどできない。

 しかし、そのための対策も蜘蛛蠍は用意していた。

 

 

(ここからは、僕のオリジナル)

(瀬呂君のテープみたいに、瞬間的な面制圧を目指した試作…!)

 

「…糸から布を作れるなら、当然逆もできますよね?」

 

 

 本物と同じく集めた偽ハチマキに彼の放った糸が突き刺さり、ハチマキを構成する糸が制御下に置かれる。

 瞬間ハチマキは一つ一つ解かれて手の上で大きな糸山を築き、彼はそれを周囲へとばら撒いた。

 

 

「…!足が、うごかねぇ…」

 

「これは、一体…」

 

 

 放たれた操り糸の大群が迫ってくる騎馬の足を絡め取り、地面に縛りつける。

 一気に動きを止められた彼らは個性を使って、何とか抜け出そうとするが突然の出来事である事も相まって中々糸から逃れられない。

 

 

「まずいです、上手く制御出来なくて…抜けられます」

 

「分かった。気は進まないが、ここで止めればアイツらは脱落確定だ」

「俺の個性を使おう」

 

 

 だが大量の操作を強いられた蜘蛛蠍の"操糸"が鈍りを見せ、幾つかのチームは緩くなった糸を抜けて彼の騎馬へと更に迫って来た。

 

 それを前にして、心操が個性発動の為に声を上げんと口を開き…

 

 

 [TIME UP!!]

 

「…良いとこなしか」

 

「大丈夫ですよ、どうであれ勝ちは勝ちです」

 

 

 時間切れが訪れた。

 蜘蛛蠍チーム 2210P。

 依然として順位は2位、即ち最終種目への進出が確定したのだ。

 

 だが両手を上げて喜ぶには少し疑問が残る勝利であり、何より彼らの本命はこの後の最終種目だ。

 

 

「それに、大事なのは次でしょう」

 

「…そうだな」

 

 

 故に彼らは、どちらからともなく軽く握り拳を作り…

 

 

「頑張ろうな」「互いに頑張りましょうね」

 

 

 微かな笑みと共に、それを突き合わせて今後の健闘を祈るだけだった。

 





ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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