Muv-Luv Alternative ーthe guardian of universeー   作:天秤座の暗黒聖闘士

26 / 43
 今回の話では登場キャラの背景で一部捏造……、というか想像して書いたものがあります。
 実際は違うかもしれませんがもし違ったらどうかご指摘をお願いします。


第24話 祖国復興

 H13ボパールハイヴ上空、BETAの本拠地のほぼ真上をガメラはマッハの速度で飛行している。

 既に光線属種のレーザー照射圏内に侵入している。いつレーザーが来ても可笑しくない状況だ。最もガメラにとってはレーザーごときもはや恐れるに足りないのだが。

 目的地点へと到達したガメラは雲海を、その真下にあるであろうハイヴを見据えながら降下を開始する。と、何の前触れもなく幾筋もの閃光が雲海を切り裂いて次々とガメラへと突き刺さる。

 光線属種のレーザー照射、マッハで飛行する物体すらも閃光の速度で確実に貫く必中の光の槍が次々とガメラの巨体へと照射される。だが、どのレーザーもガメラを貫くどころか傷一つつけることすらかなわず、ガメラの降下は止まらない。

 6000メートル、5000メートル、4000メートル…。地上へ近づけば近づくほどレーザー照射の数は増していく。それに構わずガメラはジェットの出力を上げ、降下の速度をさらに上げる。

 やがて、地上から3000メートルの地点を過ぎ、ついに雲の壁を突き破って地上の光景が姿を現す。それは先程のマンダレーでも、否、今の今まで殲滅しつづけてきたハイヴの存在していた地域で否が応でも見ることとなった光景…。一面に広がる草木も生えぬ凹凸一つ存在せぬ荒野とそこに建つハイヴモニュメント、そして、平坦な大地を覆い尽くすBETAの軍勢……。

 

 『グルアアアアアアアアアアアアオオオオオオオオオオンンンンンンン!!!!』

 

 生命一つ存在せぬ完全なる死の世界へ、その光景を作り出した異形共へとガメラは怒りの咆哮を張り上げると、頭部と両腕を甲羅へと引き込み、両腕からもジェットを噴射してUFOの如く回転しながら地面めがけて落下していく。地上から放たれるレーザーもモノともせず、瞬時に地上へと到達したガメラは低空で回転飛行をしたままBETAの群れめがけて突進する。

 地上すれすれを独楽かネズミ花火のように縦横無尽に這い回るガメラ。ただ飛びまわるだけ、ガメラからすれば、あるいはこの戦闘を見ているものからすれば唯それだけであろうが、当のBETAにとっては竜巻や台風にすらも勝る最悪の天災に他ならない。

 高速で回転し、マッハの速度で飛行する一万トンを超える重量の物体、そんなものが地上を、BETAの軍勢のど真ん中を飛びまわればどうなるか…、その結果は見るまでもなく明らかだ。

 飛行する巨体に触れようものならたとえ大型種であったとしても粉微塵の肉片と化し、音速の壁を突破して飛行する為にガメラの周囲にはその影響で暴風と衝撃波が発生し、それに高温のジェット噴射の火炎、熱風も混じり合った結果、ガメラそのものが灼熱の竜巻と化して無数のBETAを薙ぎ払っていく。その結果BETAはガメラに接近することも遠ざかることもできずにただ焼かれ、砕かれ、薙ぎ払われてその数を減らしていくことしかできない。ガメラがただ通過するだけで数百数千のBETAが塵となる、まさに天災としか称しようのない現象が今この大地で繰り広げられているのだ。

 そして、ガメラが地上を低空飛行し続けること三分足らず…、地上に存在していたBETAは尽く消え去っていた。地上に残されているのは焼け焦げた肉片のみ、それもまた荒野に吹きすさぶ風に運ばれ、ハイヴ周辺の大地は何も存在しない荒野へと様変わりする。

 BETAの姿が消えた荒野へと舞い降りるガメラ。その巨体が地に着いた瞬間、地面がわずかに陥没し、大地が地震でも起きたかのように大きく揺れる。

 ガメラは無人の荒野にただ一つ屹立する巨塔、ボパールハイヴモニュメントへと眼光を向けながら唸り声を上げる。一見すると完全に無防備、孤立無援に見えるモニュメント。地上でハイヴを守るはずのBETAは一掃され、あとはただ殲滅されるのを待つ状態にしか見えないだろう。

 だが、それは大きな間違いだ。この静寂は、この無人の荒野は一時的なもの。直ぐにハイヴから湧き出る何千何万ものBETAによって再び埋め尽くされることだろうということを、ガメラは理解していた。

 既にハイヴの出入り口である門からは大型、中型、小型…、もはや数えることすら億劫なレベルの量のBETAがこちらへと押し寄せてきている。相も変らぬ数に任せた物量作戦、あまりにも単純かつ原始的な戦法ではある。だが、それゆえに隙がなく対処法が無い。

 これに対処する方法は二つ、BETAの軍勢を超える物量で押しつぶすか、あるいは物量すらもモノともしない圧倒的な力をもって叩き潰すか…。

 ガメラが取るのは後者、己の持ちうる力でもって、群れをなす蟲共をすり潰し、焼き払っていくのみ…。ガメラは己に向かい来るBETAの軍勢へ向けて高らかな咆哮を上げた。

 それからはただ一方的な展開が続いた。押し寄せるBETAの軍勢へとガメラは火球を放ち、踏みつぶし、引き裂き、殺す。地上のBETAが減れば再びハイヴから増援が押し寄せるもののそれもまた返り討ちにする、これが幾度も続けられる。

 やがて、ハイヴからのBETAの増援が途絶え始める。無限に、永遠に続くかと思われたBETAの波が段々と弱まり始める。理由はただ一つ、ハイヴに収納されているBETAが枯渇し始めたからに他ならない。

ハイヴに収納されているBETAの量は無限ではない。いかにボパールハイヴがフェイズ5手前の規模を誇り、フェイズ2、3をはるかに上回るBETAを格納していたとしてもこうも立て続けに潰されれば何時かは底をつく。

それでもBETAはガメラへ向かう、同胞の死体を乗り越え、最後の一匹になろうとも目の前の“天災”を除かんと立ち向かう。だが、直ぐにただの肉片に、消し炭へとなり果てる。星の守護神は生命を食い荒らす蟲共を無慈悲に屠り、その躯を踏み躙る。

やがてハイヴからBETAの増援は完全に途絶え、屍と硝煙の漂う荒野には静寂が訪れる。この瞬間、ハイヴから完全にBETAが根絶されるこの瞬間を、ガメラは待っていた。

 

『グルオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

 

ガメラは脚部からジェットを噴射して空へと舞い上がり、プラズマ火球でもってモニュメントを粉砕、地下へと続く縦坑へと身を投じる。

そして、ハイヴ最下層大広間、ハイヴの心臓部である反応炉の下へと降下したガメラは反応炉へ向けて最大出力までチャージされたハイ・プラズマを発射、反応炉は爆発四散し大広間は灼熱の炎で包まれた…。

 

 

1998年12月10日、H17マンダレーハイヴ、H13ボパールハイヴ陥落。ボパールハイヴ殲滅後ガメラはインド洋西に向けて飛行、海洋へ落下して消息を絶った。

 

 

 国連軍SIDE

 

 「…………」

 

同じ頃、横浜基地モニタールームでは司令、副司令含めた幾人もの基地スタッフが戦いの一部始終を見守っていた。その中には当然武と純夏の姿もある。

モニターに映された炎上するハイヴモニュメント、大地から立ち上がる炎と煙…、これまでも何度も見たであろう光景であったが、それでも圧巻であることに変わりはない。

 インドに唯一存在するBETAの居城、ボパールハイヴ。H1カシュガルオリジナルハイヴ、H2マシュハドハイヴと言ったBETA大戦初期に建設されたハイヴに比べれば規模は劣るものの、それでもフェイズ4という規模は並ではなく、少なくとも今までガメラが殲滅してきたハイヴに比べれば段違いの規模と言えるだろう。

 過去、ハイヴを攻略するための作戦は行われた。だが完成直後のハイヴであったとしても尽くが失敗、人類は敗走を繰り返すこととなった。フェイズ1、2のハイヴでさえこれなのだ。フェイズ4のハイヴの攻略など夢のまた夢と言うのが現在の人類の総意ともいえた。

 それをガメラは容易く攻略した。数の暴力を、光線属種による対空防御を難なく打ち破り…。此処にいる武と純夏以外の人間にとっては幾度も見た光景…。それでもなお到底信じられない空想じみた、さながらおとぎ話のような光景に思えてならないのだ。ましてやはじめてこの光景を目撃した武と純夏は衝撃のあまりぽかんと口を開けたまま棒立ちしている。

 

 「……H13ボパールハイヴ反応炉破壊を確認、ボパールハイヴ、陥落」

 

 「………」

 

 「司令…?」

 

 いつもならすぐさま返ってくるラダビノッド司令からの返事が来ないことにいぶかしげな表情を浮かべながら、オペレーターはラダビノッド司令の方へと振り向く。が、次の瞬間彼女は驚愕のあまり唖然とすることとなった。

 ラダビノッド司令は、泣いていた。嗚咽は漏らしていなかったものの、その双眸からは一筋の涙が頬を伝い落ちている。彫りの深い顔は震え、まるで泣き叫びたいのを我慢しているかのようにも見える。その場にいた誰もが今の今まで目にすることのなかった司令の表情に、涙に驚愕している。ラダビノッド司令とそこそこ付き合いのある夕呼ですらもこれには驚きを隠せずにいる。

 

 「し、司令…?い、いかが、なされて…」

 

 「…む、う、うむ、す、すまない。見苦しいところ見せてしまったな…」

 

 オペレーターに恐る恐るといった様子で声を掛けられ、ラダビノッド司令は我に返った様子で服の袖で瞳からこぼれる涙を拭う。どうやらラダビノッド司令は無意識のうちに涙を流していたらしい。涙を拭いとったラダビノッド司令は再び視線をモニターに戻す。その表情には先程の涙は無いものの憧憬と歓喜の念が見て取れる。

 一方夕呼はラダビノッド司令の横顔を目を丸くして眺めている。先程のラダビノッド司令の涙はそれほどまでに彼女にとって珍しいものだったのだろう。

 

 「…意外でしたわ、司令も涙を流されることがあるのですね。鬼の目にも涙、以上でしたわ」

 

 「む、心外だな香月博士。私だって人の子だ、笑いもすれば泣きもする。だが部下の手前で泣くような姿を見せるわけにはいかないからな。……今回は少々、なんだ、感情が高ぶってな…」

 

 「……成程、ま、気持はよくわかりますわ、司令」

 

 夕呼にまるで涙一つ流さない男と思われていたことが不満なのかラダビノッド司令はぶぜんとした表情で顔を背ける。一方の夕呼は彼の言葉から何かを察したらしく一人納得したように頷いている。一方武と純夏はラダビノッド司令へと呆けた表情で視線を送っていた。

 

 「はあ…、ですけど司令さんって基地で一番偉い人なんですよね?そんな人が泣いちゃうって少し意外です…」

 

 「…まあ、君の言葉も一理ある。…だが、此処は少々特別な場所だからな。つい感傷に浸ってしまった」

 

 純夏の無邪気な言葉に苦笑しながら、ラダビノッド司令は何かを懐かしむかのようにモニターに映された焦土と化した大地を眺める。荒れ果てた荒野、そこは立ち上がる煙と炎、そして焼け焦げたBETAの死体以外何もない。かつて人が住んでいた地とは思えない光景…。だが、ラダビノッド司令はその焼跡を見ながらある光景を思い返していた。

 

 「…此処、ボパールは私の故郷でな…」

 

 「「……!!」」

 

 ラダビノッド司令の口から出た言葉、まるで独り言でも呟くかのようにポツリと漏れ出たそれを聞きとった武と純夏はハッとした表情で息をのむ。ラダビノッド司令は二人の反応に構わず話を続ける。

 

 「私はこの街で、かつてこの地にあった街に生まれ、育った。故に此処をBETAに占領され、挙句奴らの巣を作られ、故郷から去らざるを得なかった時には心から誓ったものだ。……必ず取り返す。私の、否、我らの故郷を、と…。結局果たせなかったがね」

 

 そう自嘲気味に笑うラダビノッド司令。かつて、彼が国連軍に所属する以前、彼はインド軍に所属しヒマラヤから南進するBETAを迎え撃っていた。だが、その物量の前に敗退を繰り返し、ついには己の故郷からほうほうの体で逃げ延びる憂き目にあうこととなった。

 その後、1992年7月に行われたインド亜大陸の勢力回復の為、ボパールハイヴを攻略する作戦、通称『スワラージ作戦』が実施され、ラダビノッド司令も己の同胞、戦友達と共に作戦に参加した。

 しかし、航空宇宙兵力まで導入したこの作戦はあえなく失敗、ラダビノッド司令と共に戦った多くの戦友達は戦場に散り、自身はこうしてむざむざと生き延びる羽目になってしまった。

 今はこうして国連軍の准将、横浜基地の司令などという肩書を得ているものの、己にとってそんなものは何の意味も無い。故郷を取り戻せず、多くの戦友を失った己にそんな地位など不相応、そんなものより一刻も早くBETAを駆逐せねばという思いばかりが募っていた。

 だが、ハイヴ攻略どころか逆に各地に次々とハイヴを建設されている今の状況に、心の中では半分諦めの気持ちがあった。もう故郷には帰れない、このまま人類はBETAと不毛な消耗戦を続ける以外にはないのだ、と…。

 その絶望の象徴が、ボパールハイヴが燃えている。BETAの尽くが塵と消え、歪なオブジェの如き建造物は神の裁きを受けてバベルの塔の如くに崩れ落ちている。

 夢ではない、現実であるとは分かっていてもこれは夢ではないのだろうかという疑念が心の底から浮かんでくる。だがそれ以上に心に満ちるのは歓喜、そして希望…。

 一度は諦めた故郷への凱旋と祖国の復興、それが叶うかもしれないという希望であった。

 

 「だからだろうな、この光景を見た瞬間に心にわき上がるものがあった…。それで思わず、な…。フフ、まだまだ私も未熟ということか」

 

 そう言いながら穏やかな表情でモニターを見るラダビノッド司令。その表情に武と純夏だけではなく、夕呼もまた何も言えずにいる。

 そして、火山の噴火口の如く煙を噴き上げるハイヴモニュメントから、一つの影が煙を切り裂いて飛び出してくる。その影の正体はガメラ。マンダレー、そしてボパール、それ以外にも8のハイヴを焼き払った大怪獣…。その姿を見た瞬間、ラダビノッド司令は無意識に敬礼をしていた。そして彼に釣られるかのように武、純夏、夕呼、そしてモニタールームにいた全てのスタッフが立ち上がり、姿勢を正して敬礼する。

 

 目の前の“絶望”を打ち砕いてくれた守護神への敬意をこめて、己が故郷を取り戻してくれた感謝を込めて……。

 

 

 

 

 

 

 「そ、それじゃあ俺達はこれで…」

 

 「し、失礼します司令さん、副司令さん」

 

 「ハイハイ、また用があったら呼ぶから、ああそれと明日の朝食は楽しみにしておきなさいね♪」

 

 「…香月博士、また君は激辛カレーなどをメニューに載せる気か?流石に故郷の料理をいじられるのは私も我慢がならないのだが…」

 

 その後ガメラがボパールハイヴからインド洋沖に向けて飛行、その後海底深くに没して消息を絶った為、本日のガメラ監視任務はひとまず終了となった。無論ガメラが沈んだ近辺の海域、そして今後ガメラが攻め入る可能性のあるハイヴへの監視は続けてはいるが。

 ハイヴでの戦闘が終了したときには、もう既に時刻は正午を回っていた。武と純夏はラダビノッド司令と夕呼に2、3挨拶をしたのちに食事を摂るためにモニタールームを後にし、室内にいたスタッフも昼食、休憩の為に一時その場を離れているため、結果的にモニタールームにいるのは夕呼とラダビノッド司令、そして夕呼専属のオペレーターであるピアティフ臨時中尉のみとなった。

 

 「フフ、あの二人には結構刺激になったでしょうね今回のイベントは♪観せた甲斐がありましたわ♪」

 

 「やれやれ……、本当は一般人は入室禁止なのだがね…。まあ彼らを君の研究室に入れている時点で今更だろうが…」

 

 ご機嫌な様子の夕呼にラダビノッド司令は呆れた表情をしている。実質オルタネイティヴ第四計画の最高責任者でありこの基地では司令以上の権威をもっているためにある程度は彼女の好き勝手にさせてはいるが、ある程度はモラルというものを守ってもらいたいものだと今更ながら心の中で愚痴を呟く。最も彼女の事だから直接言ってもどこ吹く風であろう。それが分かっているからこそ司令は何も言わないのだが。

 そんなラダビノッド司令の考えを察したのか夕呼はその悪戯が成功した子供のような笑顔を司令へと向けてくる。

 

 「あら、司令も大分興奮しておられるようでしたけれど?最後には感極まって涙を流されておられましたし……」

 

 「あ、あれは………む、あれに関してはあまりからかわないで頂けると嬉しいのだが…」

 

 「フフッ、もうからかいませんわ。これっきりですよ。司令の気持ちは私もよく理解できますしね」

 

 クスクスと笑う夕呼にラダビノッド司令はわずかに頬を赤く染めながら目を背ける。いかに相手がこの基地のナンバー2であるとはいえ仮にも女性に己の涙を見られたことは少なからず気恥ずかしかったようである。

 

 「…まあそれはそれとして…、問題はこれからですわね…」

 

 夕呼は笑みを引っ込めると先程とは打って変わった真剣な表情でモニターへと視線を向ける。そこに映されているのはガメラが沈んだ海域と、ガメラの次なる攻撃目標と考えられるH2スワラージハイヴ、地球上で二番目に建設されたハイヴの映像…。

 彼女の言葉に隠された真意を悟ったラダビノッド司令も、表情を引き締めてモニターへと視線を向ける。

 

 「…どうやらアメリカの第五計画推進派が妙な動きをしているらしい。原因は間違いなく……」

 

 「ガメラ、というわけですか…。私の数式に関しては未だにアメリカに漏れていないと仮定して、ですが…。大方例の新兵器の実験場がこれ以上減ることに難色を示しているだけなのでしょうけれど…」

 

 「それ以上に世界を救うのはガメラではなくアメリカでなくてはならない、という自尊心もあるのだろう…。……己が国土をBETAに侵略されたことも無く、国を追われたことも無いからこそそんなものを抱けるんだろうが、な…」

 

 ラダビノッド司令は皮肉気な笑みを浮かべながらそう毒づく。その横では夕呼もまたラダビノッド司令と似たような表情を浮かべている。両者共にアメリカに関してはよい感情を抱いては居ない。日本人である夕呼は特にそうである。

 元々日本とアメリカとの間には安保条約が結ばれていたが、BETAによる佐渡島ハイヴ建設、それに伴う長野県にてBETAが活動を一時停滞させている間にアメリカは帝国軍の度重なる命令不服従を理由として日米安保条約を破棄、在日米軍を即時撤退させた。

 確かに帝国国防省は米軍から要請された核、あるいは最新開発された高性能爆弾、五次元効果爆弾通称『G弾』の使用に猛烈に反発していたものの、本音はもはや国内にハイヴを建設させられた日本はもうお終いだ、と判断したが故であろうと夕呼は、否、この国に生きる大半の人間は確信していた。

 G弾の情報に関しては大まかながら夕呼は入手している。BETA由来の元素であるグレイ・イレブン。それを燃料として稼働する抗重力機関ムアコック・レヒテ機関。それを利用して製造されたのがG弾である。その威力は折り紙つきであり、しかも普通にムアコック・レヒテ機関を製造するよりもはるかに安価かつ省資源、そして運用も核と比べて容易であるがゆえにアメリカはG弾によるBETAおよびハイヴ殲滅を提案、進めようとしているのだ。

 最も連中からすればBETAとハイヴの殲滅はついで、本当の目的はハイヴ殲滅後に手に入るBETA由来の資源、そしてBETA戦後の世界の覇権だろう。

 それ故に自分達の都合など知った事かとばかりにハイヴを蹴散らし続けるガメラは邪魔な存在…。ガメラを排除するために何らかの手段に訴えてくる可能性もあるだろう。

 

 「とはいってもまだ何をするかも分かりませんし様子を見るしかありませんが…。万が一ガメラに何かあったとしてもこちらが表立って動くわけにはいきませんし」

 

 「うむ……。……歯痒いものだ。我が国を、わが故郷を救ってくれた恩人に報いることができないということは…」

 

 「心中お察しいたしますわ、司令」

 

 悔しげに唇をかみしめるラダビノッド司令。それに冷静な反応を返す夕呼。極東の防衛拠点の司令、副司令という立場上、ガメラとBETAの戦いに介入できないという悔しさ、恩を受けた相手へと返礼できないことへの無念さがラダビノッド司令の心に宿る。

 今はただ、海で眠りについている守護神に無事でいてほしいと、何事も無くあってほしいと祈るしかない…。ラダビノッド司令はモニターに映される一面の大海原を眺めながら心の中でつぶやいた。

 

 

 武SIDE

 

 

 その夜、武は再び夢を見た。あの、今いる時代から三年後の未来と思われる世界の夢を…。

 夢の中で武は、今まで住んでいた世界とは全く違う、地球外生命体とのいつ終わるともしれない戦争を繰り広げる世界の中で第207衛士訓練部隊の仲間達と共に衛士となるために教練に明け暮れる日々…。その間に様々な出来事があった。

 

 仲間達とどうにか乗り越えた総戦技評価演習、横浜基地への国連事務次官来訪時に起きたHSST落下事件、噴火寸前の天元山の麓に不法滞在する老婆を救助したこと…。どれもかつての世界では体験することも無かった事であり、武は少なからず元の世界とのギャップを覚えざるを得なかった。だが、それらの体験を得るごとに、己が段々とこの世界へと、この世界で共に過ごす少女達と馴染んでいくのが分かった。

 かつての世界の彼女達とはどこか違い、だが芯の部分は元の世界の彼女達とそのままな少女達との絆を深めていく日々…。

 

 だが、そんな日常が嵐の前の静けさだということを、これから始まる終焉の序章だということを、武は嫌というほど思い知ることとなった。

 

 12月25日、突如武達衛士訓練部隊はラダビノッド司令より呼び出しを受けた。

 …それは、横浜基地主導で行われていたオルタネイティヴ第四計画、通称オルタネイティヴ4の停止、そしてそれに代わるオルタネイティヴ第五計画、通称オルタネイティヴ5への計画移行の伝達。当初訳が分からなかった武はラダビノッド司令へと食いかかった、が、結局“訓練兵であり正規の軍人ではない”“軍隊とはそういうものだ”という理由で詳しく知らされることは無かった。

 

 そして、ようやく正式に国連軍の衛士として任官、少尉の地位に就いた時、ようやくオルタネイティヴ第五計画、その全貌を知ることとなった。

 オルタネイティヴ5、それは横浜ハイヴを殲滅した五次元効果爆弾、通称G弾の集中投下による世界中のハイヴ殲滅と、全人類から選抜された10万人を地球から脱出させ、他星系へと移住させるという計画…。事実上の人類の敗北宣言ともとれる計画であった。

 

 結果、武はこの世界で共に戦い、愛し合った一人の女性を宇宙へと送り出し、己は地球へと残る…。最後まで、命尽きるまで戦うために…。

 たとえその先が滅亡と言う救いようのない地獄が待っていようとも、己が永劫の輪廻へと囚われることになったとしても……。

 

 

 

 

 

 「……」

 

 夢が終わった瞬間、武は眼を覚まし、上体を起こす。起きたばかりだというのにやけに眼が冴えている。

 …やはりあの夢、己の今いる時代から少し先の未来…、によく似た世界の夢を見たせいだろうか。あの夢の光景は未だに己の脳裏にこびりついて残っている。

 

 「オルタネイティヴ、計画……」

 

 武は夢に出てきたその言葉を呟いた。夢に出てきたのは第四計画、第五計画とのことだったが、それならば第一、第二、第三もあるのだろうか…。いや、それ以前に……。

 

 「もしかして、香月副司令のしている研究って……」

 

 脳裏に浮かぶのはあの12月25日の時、自棄酒を呷りながら呟いていた愚痴…『戦術機のようなデカブツを作れるのに何で半導体150億個を手のひらサイズにできないのよ』、『それでも世界は繋がっている』……夢の中では全く意味が分からなかった言葉、いや、実際は今でも全然意味が分からないのだがこれがもしかしたら…。

 

 「……」

 

 ベッドの上で思い悩む武。そんな彼をしり目に、隣のベッドで純夏が安らかな寝息を立てていた。

 

 

 

 

 武が起きてから数分後、純夏はようやく起床し、二人は日課のトレーニングを終え、案の定迎えに来たまりもに連れられてPXで朝食を摂ることとなった。朝食の内容はやはりというべきかなんというべきかカレー一色であった。それも洋風ではなくインド風の…。

 どうやら今日のカレーはラダビノッド司令及び基地内のインド出身の職員、衛士からあれこれ要望が出されて作られたものらしい。なんでもこの食堂の料理長だけでは手が回らないために一部職員、衛士もまた調理場に入っているのだとか。「だって普通のカレーはともかくインドカレーなんておばちゃん専門外だしねぇ」と夕呼は笑いながら語っていた。

 ちなみにカレーに関してだが、夕呼の事だからとんでもない地獄レベルの辛さのものを出してくるんじゃあないだろうかと誰もが予想して身構えていたが、出てきたのはいたって普通の辛さのカレー。確かに辛くはあるが十分おいしく食べられるレベルであり、武と純夏、そして辛いものが苦手のまりもは拍子抜けしてしまった。これも夕呼曰く、「ラダビノッド司令に念を押されちゃってねぇ…、絶対に激辛カレー作るなって」とのことだ。3人とも心の中で司令に感謝の言葉を述べたのは言うまでも無い。

 その後四人は談笑しながら朝食を楽しんでいた。が、ただ一人武だけは時折目を彷徨わせたり食事の手を止めてボーっとしたりしていた。何やら様子のおかしい武に純夏は心配そうな表情を浮かべている。

 

 「ね、ねえ武ちゃん、なんか様子おかしいよ?今日のトレーニングもたまに何だか上の空だったし…」

 

 「ん、あ、ああ…。まあ、なんつうか、少々夢見が悪くて、な。ハハ…」

 

 「ん?何?また変な夢見たの?折角だからお姉さんがカウンセリングしてあげようかしら?ん?」

 

 武の言葉に反応したのか夕呼が興味深々と言った表情で身を乗り出してくる。その横ではまりもが夕呼をじと目で睨んでいるが。「アンタ本来の仕事どうした」とでも言いたいのだろうか。

 突然話に割り込んできた夕呼に武も少しばかり引いてしまうが、やがておずおずと頷いた。

 

 「は、はい…、それに、個人的に副司令にお伺いしたいこともありますので…、できれば二人だけで内密に……」

 

 「……フーン?彼女がいるけどお姉さんがあんまりにも綺麗だからこっそり誘惑して摘み食いしちゃおうってわけ?んもう駄目よ浮気は♪」

 

 「!?た、武ちゃん!!それどういうこと!!!」

 

 「!?ご、誤解だ純夏!!本当に香月副司令と話をするだけなんだ!!つーか副司令も純夏が誤解するような変なこと言わないでくださいマジで!!」

 

 夕呼の余計な一言に激昂して殴りかかろうとする純夏を武は必死で宥めながら当事者である夕呼に文句を述べる。そんな二人の様子に夕呼は実に楽しそうに大笑いしながら眺めていた。まりもはどうしたものかと困った表情をしているが…。

 

 「クックック、まあいいじゃないのよ。あんまりに不景気な顔をしているものだからつい、ね。分かったわ。じゃあ食事の後に、ね」

 

 「は、はい……、ありがとうございます副司令」

 

 ニヤニヤと猫のような笑みを浮かべる夕呼に若干不安を感じながらも武は礼を言って食事を再開した。合成食材で作られたカレーではあるが、その味は普通のカレーと大差ない。此処までの味へと仕上げてくれた厨房の人達に心の中で感謝しながら武は口にカレーを運ぶのだった。

 隣で此方を睨みつける純夏の冷たい視線が非常に恐ろしかったが…。

 

 

 

 食後、どうやってもついてこようとする純夏をどうにかして説き伏せ、武は夕呼と共に彼女の研究室に向かった。

 

 「さて、と…、じゃあ早速話してもらおうかしら?あなたがどんな夢を見たのか、を」

 

 いつも腰かけている椅子に座った夕呼は向かい合わせに此方を見る武へとそう促す。夕呼に促された武は話すべきかどうか迷うように視線を彷徨わせていたが、やがて覚悟を決めた様子でゆっくりと口を開く。

 

 「はい…、実は、昨日見た夢なんですけれども…」

 

 そして武は全てを話した。例の平穏な世界で過ごしていた“自分”が別の世界に転移したこと、その世界は今のこの世界と同じ、BETAとの戦いを繰り広げている世界であり、現在から3年後の2001年の未来であること。

 その世界の香月夕呼と出会い、彼女の便宜で訓練兵へと就任した事。

 訓練兵の仲間にはかつての世界で共に学んだクラスメイト達が居た事、だが、その中には鑑純夏の姿だけが無かった事。

 

 

 …そして、己が行き着いた結末も…。

 

 「…その後、オルタネイティヴ4って計画が破棄されて、地球から一〇〇〇〇〇人の人類を逃がしてG弾でBETAとハイヴを殲滅するっていうオルタネイティヴ5って計画に移行されて……。俺は、地球に残ってBETAと戦うことになったんです……」

 

 「……」

 

 そこまで話した武は疲れたように軽く息を吐きだした。自分の覚えている限りの事は全て話した。後は夕呼がどう判断するかである。武はじっと夕呼の反応をうかがう。

 一方夕呼は最初の微笑みが嘘だったかのように現在は真剣な表情を浮かべて何事かを考えているが、その表情からは何を考えているのかは全く読み取ることはできない。

 両者の間に流れる沈黙、やがて武はその沈黙に耐えきれなくなり口を開く。

 

 「…副司令、あの、もしかしてあれって俺の、この世界の未来の話なんじゃあ…。三年後にオルタネイティヴ5とか言うのが発動されて宇宙に逃がした10万人の人類以外全滅するっていうのがこの世界の未来なんじゃあって……、アハハハハハんなわけ無いっすよね!予知なんてバカバカしい……」

 

 心の中にわき上がる不安と焦燥、それをごまかすために馬鹿笑いする武だったが、途中で夕呼がそれを押しとどめるようにぴんと立てた人差し指をつきだしてくる。夕呼の有無を言わさない視線に武は思わず口を閉じてしまう。武が口を閉じるや否や夕呼は呆れた様子で溜息をついた。

 

 「…全く、まさかこんな早くにオルタネイティヴ計画について知っちゃうなんてね…。少々予想外だったわ。ま、いずれは勘付くとは思っちゃあいたけど……まあいいわ」

 

 「ふ、副司令…?」

 

 まるで頭痛を抑えるように額に手を当てながらブツブツと何やら呟く夕呼。武は恐る恐ると夕呼に声をかける。と、夕呼は直ぐに視線を武に寄越してくる。

 

 「白銀、アンタはあの夢がこの世界の未来、とか言ったわよね?それは何故?」

 

 「はあ?いや、そんなの部屋にあったカレンダーに書かれた年が2001年だったから…」

 

 「それだけ?」

 

 「……それだけ、です」

 

 武の返答に対して夕呼は何も答えない。ただ無言で武の顔をジッと見ているだけであった。何も言わずに此方を見る夕呼に、武も流石に不安を覚えてくる。

 武は思い切って、あの夢を見てから覚えていた疑問を夕呼へとぶつける。

 

 「…副司令、教えてください…!!オルタネイティヴ4って一体何なんですか!?俺の夢に出てきた数式と、何か関係があるんですか!?」

 

 恐らくは夢の世界の夕呼が研究していたであろう計画、『オルタネイティヴ4』。いくら夢を思い返したとしても名前以外はさっぱり分からない。ただ、それが夕呼の研究しているものであり、あの数式はそのために必要なものであった事だけは理解できる。

 決死の覚悟で夕呼に質問をぶつける武、だが、その質問に対する夕呼の返答はそっけないものであった。

 

 「それに関しては今は教える事が出来ないわ。……まあ、教えなくてもそっちの夢で何時かは掴んじゃうかもしれないけれど、今は教える事が出来ない」

 

 「そう、ですか……」

 

 夕呼の反応に武はそれだけ呟いた。元より教えてもらえるとは期待していない。幾ら色々とこの基地での便宜を図ってもらっているとはいえ所詮自分は一般人、軍の、それも上層部の人間しか知り得ないような機密をそうホイホイ教えて貰えるはずがないのだ。

 それでも少しばかり落胆を覚えて肩を落とす武に、夕呼はジッと視線を送っている。

 

 「話は分かったわ。でも、少しスケールが大きすぎるわね…。とりあえず此方で色々と分析してみるから悪いけどアンタは部屋に戻っててもらえるかしら?結果が出たら教えるから」

 

 「は、ハイ……」

 

 夕呼の言葉に武は黙って従う。何であれ彼女はこの基地のナンバー2、ただの居候である己がこうやって話ができるだけでもかなりラッキーなことなのだ。そんな彼女の機嫌を損ねるような事をしようものなら本格的にこの基地から純夏共々叩きだされかねない。

 元より機密事項であればそう簡単に教えて貰えるとは思っていない。ならばここは大人しく引き下がるしかないだろう。武は椅子から立ち上がると失礼します、と頭を下げてそのまま出入り口のドアまで歩いていく。

 

 「白銀」

 

 

 と、突然背後から夕呼に声を掛けられ武は後ろを振り向く。そこにはいつになく神妙な顔をした夕呼が此方を見ている。一体何なんだと身構える武に向かって、夕呼は口を開いた。

 

 「今回の夢、特にオルタネイティヴ計画については、鑑には黙っておきなさい。本来ならアンタみたいな一般人が知っていること自体が異常な事なんだから。もしも鑑の身を守りたいなら、そうしなさい」

 

 「……はい」

 

 武は夕呼の言葉に黙ってうなずくと、そのまま自動ドアを通りぬけて外へと出る。

 

 「……結局、分からずじまい、か…」

 

 薄暗い廊下を歩きながら武は呟く。夕呼は結局オルタネイティヴ4について語ってくれなかった。予想していたとはいえ今回はほぼ収穫なしと言っていい。

 夢でラダビノッド司令は言っていた。『諸君らはまだ訓練生、だからこれ以上知らせることはできない』と。もしもこれ以上知りたければ国連軍の衛士となる以外にはないかもしれない。だが夕呼は、『その内夢で掴む』とも言っていたが……。

 

 「はあ……ったく分からねえなあ…」

 

 重々しく溜息を吐きだしながら、武はとぼとぼと己と純夏の部屋である病室へと歩くのであった。

 

 

 夕呼SIDE

 

 

 「……オルタネイティヴ5、10万人を地球から脱出させてのちにG弾使用して最終決戦、か…。あながちただの夢、と馬鹿に出来ないわね…」

 

 武が居なくなった研究室で夕呼は一人ポツリと呟いた。

 オルタネイティヴ計画は基本的に極秘裏のものとされており、国連軍でも上層部、あるいはオルタネイティヴ計画に関わる人間以外が知ることはあり得ない。

 だが白銀武はそれを知っていた。それも“夢”等と言う他の人間が聞けばまず確実に信じないであろうもので。

 だが夕呼には武の語った言葉が真実であると知っている。それを明かせる“証人”もいる。

 

 「予知夢、ではないわね…。だとするなら白銀の観ている夢と言うのは、やっぱり……」

 

 武は己の観た夢がこの世界の未来ではないのか、と不安がってはいたが夕呼はそれは違うのでは、という確信を抱いている。

 白銀の夢の内容を考察する限り、未だに攻略されていないハイヴ、そもそも“存在しないことになっていた”鑑純夏、そして何より既に理論に辿り着いているはずの香月夕呼が未だに理論へと辿り着けていないという事実…。

 無論3年の時間の開きで世界も変化するだろう。夢であるために大分整合性が取れていない部分もあるだろう。しかしそれでも相当な矛盾があるのは確かだ。ならば武の観た“夢”の世界はこの世界の未来ではなく……。

 

 「……フフ、これは意外なところで理論が実証されちゃうかもしれないわね。本当にいい拾いモノをしたものだわ」

 

 クスクスと心なしか笑みを浮かべる夕呼。その笑みの意味を理解できる者は、隣の寝室から研究室を覗く一人の少女のみであろうか…。

 




 お分かりかもしれませんがラダビノッド司令がボパール出身だとかスワラージ作戦に参戦したというのは、自分が妄想したものです…。いやまあ司令は確かインド出身でしたからその縁で…。…違ったらごめんなさい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。