THE iDOLM@STER BLUE ARCHIVE 作:モモフレンズの新メンバー共
でもブルアカにアイマスのストーリーが入るなら、メインストーリー『Vol.i これから始まる私達の伝説』とかになるような⋯⋯(以下略)
初星学園。今まで一度も名前を聞いたことがないその学校の校門で、私は目を見開いていた。
広い、という程ではない。トリニティはおろか、アリウスよりも敷地は広くないように思う。
だというのに、学園の見映えは三大校にも匹敵していた。常に整備されているようで、どこにも銃弾の跡一つ残っていない。
「あら、浅倉先輩じゃない! こんにちは! 今日も重役出勤ね!」
「おー、サキ後輩。ちーす」
横から走り抜けようとした体操着姿の少女が、トオルの姿を見つけて立ち止まる。
サキと呼ばれていたその少女は、服の上からでも分かるほど引き締まった肉体を持っていた。
多分、リーダーにも引けを取らないだろう。とても均整の取れた身体だ。
「ちょ、まっ、サキぃ〜! 幾らなんでもハイペースが過ぎるんだっつうの〜! ぜぇ、ぜぇ……!」
その後ろから、なんだか苦労性っぽさそうな金髪の少女が現れた。
「まったく、コトネは体力無さ過ぎ。こんなのでへばってたら、アイドルなんて無理だから」
「テマリもさっきまでサキにぶつくさ文句垂れてただろ〜!?」
更にもう一人、鋭利な刃物のような気配を露わにしている少女が、金髪の少女を小馬鹿にしたように笑った。
そんな二人も、トオルの姿を認めると、頭を下げて挨拶をした。
「あっ、トオルせんぱ〜い♡ お疲れさまで〜す♪」
「げ、浅倉先輩…………ど、どうも」
「あー、おつかれ〜。偉いね、走り込みとか」
「アイドルなんですから、これぐらい当然です。……浅倉先輩こそ、アイドルの自覚、足りてないんじゃないですか?」
「言うねー、テマリ後輩」
……アイドルというものに興味を抱いた事はなかったけど、走り込みもするなんて、中々に過酷そうな仕事だ。
確か、広いステージに立って、歌と踊りを披露するとか。
リーダーがDJをしていたあのステージとは、また別物なんだろう。
「ところでトオル先輩、その隣の人は誰ですか? 他校の生徒さんみたいですけど……」
「え? あー……」
「……戒野ミサキ。トオルとは、そんな大した関係じゃないから、気にしないでいい」
すると、コトネとテマリとかいう子が、軽く目を見開いた。
「……え、えっと、樋口先輩、じゃないよね?」
「いや、マドカ先輩はふゆ先輩とかと違ってマスクとかしねーし。まぁ、雰囲気とか声とか、滅茶苦茶似てるけどナー……」
そんなにも似ていると言われると、その樋口マドカという人が少し気になってくる。
私も、自分が少し捻くれている自覚はあるから、尚更だった。
「でしょ。ミサキと樋口、良いと思うんだよね、相性」
「いやそれ、同族嫌悪的なのになりません……? マドカ先輩、言っちゃアレですけど同年代以上の人にはそこそこ塩対応ですよ?」
「うん、絶対にそう……!」
さっきから紺色の髪の子が、彼女の名前が出る度にビクビクとしている。そこまで、マドカは恐ろしい人物なんだろうか。
「マドカ先輩、この前も酷かったわね。シャーレの先生に向かって、『こんな時間から生徒の観察なんて、暇なんですね、ミスター・昼行灯』とか、ずっと前には『ゲヘナ生の脚を舐めたって……ミスター・足舐め太郎とミスター・淫行教師、どちらで呼ばれたいか選んでから帰ってください。それと気持ち悪いので、一週間は顔を見せないで』とか、確かそんな事言ってたわ。舌鋒鋭いとは正にこの事よね」
「…………」
早速、少し気が合わないような気がしてきた。
足を舐めたという噂は……まぁ、知ってるけど、あのお人好しが過ぎる先生の事だ。何か訳あっての事なのだろう。
「マドカ先輩には、近付かない方が良いよ。忠告しとく」
正直、先生を貶める発言をする人に、良い気がしないのは確かだった。
このまま、会わない方が賢明かもしれない。
「あー、あれだね、あれ。燻製には近寄るな、だっけ。格言だよ、何かの」
「いやそれを言うなら、君子危うきに近寄らずですよね? どこをどうしたら燻製になるんですか」
「え? うーん……ほら、臭うじゃん、燻製」
「燻製はフツーに美味しいでしょうが〜!!」
……騒がしい。
桜が散っていて、いつ鼻がやられるとも分からない状況で立ち止まっていたくもないし、そろそろこの場を離れたい。
「……もう行く所が無いなら、帰るけど」
「あー……じゃあ、行こうよ。学校」
「……は?」
「じゃあ、またー」
私の手を取ると、三人組を置き去りにして、トオルはずんずんと先に進んでいった。
道中にも、沢山のアイドルの候補生らしき人が、それぞれ思い思いの会話を繰り広げていた。
「シスターフッドが? ……ナギサさん、私、確信しました。彼女達は、ティーパーティーが主催するこのイベントで反旗を翻し、ティーパーティーそのものを乗っ取るつもりなのです。中立と謳ってはいるものの、あのきな臭さはずっと引っ掛かっていました」
『……やはり、ツムギさんもそう思いますか?』
「ええ。今度こそ、サクラコさんにはお手製の恵方巻きを贈らなければなりませんね……」
『では、私は尋問用ロールケーキの用意と派閥の皆様を……』
『ち、ちょっとナギちゃん!? またツムツムと大暴走しちゃってない!?』
「ミカさん、どうかお願いします。手遅れになる前に、行動しなくては」
『も、も〜! 私、自粛中だって言ってるじゃん!!』
「ヒカリは何も照らしませんが、私はなんと衝撃の機能付きナギです。常に凪いでいます。ナギってます。今ならお買い得のイチキュッパ。⋯⋯むむ、ここで、いよいよ始まる鉄道爆走事件をキャッチ。名探偵ナギの華麗なる解決劇を、どうぞお楽しみください」
「いやヒカリちゃんに失礼だよね!? って、なー! どこ行くの〜!!」
「えっ……な、なーちゃん、テンカ置いてった……?」
「テンカちゃん、こっちこっち! レッスン遅れちゃうよ!」
「ひ、ひぃん……レッスンは嫌……ユズちゃんと、ゲームしたい……」
「ふふ……ヒマリは凄い、ね。…………うん。戻る気はない、よ。毎日が、辛くて苦しくて、ままならなくて…………好き」
「し、篠澤さーん! たた、大変ですわー! 花海さんが、花海さんが、『伝説のスケバンなんかより、お姉ちゃんの方が何百倍も強いもん!!』などと、スケバンさん方を蹂躙……ではなくて、喧嘩しておりますわーー!!」
「……そういう訳だから、もう切る、よ。うん。また。チヒロと、あとリオにも、よろしく言っておいて、ね」
『は、はぁ!? チヒロはともかくリオに……!? 天才儚げ美少女ハッカーたるこの私が、どうしてあんな下水を煮詰めたような────』
「じゃあ切る、ね」
「ぐっ、マコトからの大量の推し活写真が送られてくるなんて……こうなったら、私も秘蔵の写真を増やさないと────あら奇遇ね、コトネ!」
「うおえっ!? せ、セナ会長!?」
「今からゲヘナに行くわよ! 万魔殿のチアキに貴女のとっておきの写真を撮ってもらう必要が出てきたの。もちろん、了承してくれるわよね? コトネ」
「こっ、これからバイトなんでぇ、失礼しまーーーーす!!」
「ま、まっ……! ……くっ、今回も逃げられてしまったわ……どうしてなの……?」
「えーっと、今日はトリニティ自警団のとこだったよな」
「そうなんです! だから、久し振りにレイサちゃんに会えるんです!! 早く行きましょう!」
「善は、急げとも……早く行くに越した事は、無いでしょう」
「でも、ウチからトリニティって、ちょこーっと時間掛かるよね?」
「電車でも結構掛かるよなぁ……着いたら夕方ぐらいにはなってるんじゃねーか?」
「だったら、私のプライベートジェットを使いましょう! 丁度近くに駐めてるし、あっちには発着場もあるから大丈夫よ!」
「えーっ!! ナツハさん、良いんですか!?」
「ええ、勿論! 放課後クライマックスガールズ、出動よ!」
「「「おー!!」」」
「おー、でございます……」
通りすがった人々を数えても、この数は中々のものだと思う。アリウスと同じくらいの規模感はあるかもしれない。
二十分ほど校舎を歩き回り、挙句トオルが迷った為に、自分が学園の見取り図を眺めて、ようやく283プロダクションに着いた。
……長かった。本当に、長かった。
「……着いたね。やっと」
「……逆にこれまでどうやって行ってたの?」
「あー。大体、皆いるから、流れで」
情けないというか、なんというか。
「あれ、浅倉さん。おはようございます」
隣の部屋、765プロダクションと書かれた教室から、やけにトオルと雰囲気の似ている少女が挨拶してくる。
「お、ミズキちゃんだ。えーと、おそよーございます」
「……? 私はお早いですよ」
「え? ……あー。私、偉い人だって。遅くてさ、学校来るの」
「偉い人……なるほど。これが噂の、宣戦布告ですね。負けないぞ」
「いいね、それ。バトっちゃおっか、二人で」
「受けて立ちます。いざ、プロダクションの社長を目指して」
「おー……え? 社長?」
「あれ? 偉い人を目指す頂上決戦なのかと……もしや、違いました?」
「あー……アリだね、それ。アリ寄りの、アリ」
うんうん、と頷き合う二人に、思わずいやいやと話に割って入った。
「何も話噛み合ってなくない?」
「「……そうかな?」」
「そうでしょ」
少なくとも、私には何が何やら分からなかった。コミュニケーションが成立していないのに、そのまま話が進んでいく様は恐怖しか覚えない。
「では、これで失礼します。さらば、また会う日まで……!」
「おー、またー」
どういう思考回路で話しているのだろうか。それを分かる気には到底なれなかった。
トオルが教室の引き戸を開いて入って行ったので、その後に続く。
引き戸の先には、アパートらしき玄関が広がっていた。
「……あれ? 入らないの?」
「いや、ビックリして……」
普通に考えて、校舎の引き戸を開いて教室が無い、という状況はまず考えられない。
「あー、んーと、なんか、古い建物を作り変えたとか。いいよね、秘密基地感。バッチグー」
……どうりで、校舎にしては何かおかしい気がしていた。構内図が学校とは懸け離れている。どちらかと言うと、集合住宅に近しいものを感じていた。
そもそも、こんな学園の離れにあるのだから、寮のような住宅があっても不思議ではないか⋯⋯
「あ、もういるっぽいよ、樋口」
「……そう」
靴を脱いで上がり、開いた奥の戸で、目が合った。
「…………どうも」
「どうも」
「双子じゃん。樋口とミサキ」
「いや、浅倉……ちゃんと説明して」
「え? あー。友達。シャーレで会ってたんだ、めっちゃ」
「また先生の所行ってたの……?」
思っていた反応と、少し違う。
先生を蛇蝎のように嫌っているのかと思ったけど、それよりトオルの奔放さに呆れている。
「まぁ、別にいいけど。……それで、この人は」
「ミサキ。樋口と雰囲気似てると思って、連れてきた」
再び目が合う。
トオルの純白の両翼とは違って、マドカは灰がかった右の片翼が生えている。
自分と雰囲気が似ているというのは、自分ではあまりよく分からなかった。
「樋口マドカです。浅倉がご迷惑をお掛けしたようで。彼女に代わってお詫びします」
「大丈夫。連れ回されたのは本当だけど、あくまで私の意志で付いて行ったから」
「……そうですか」
ぱたり、と話が止まった。それもそうだろう。話す事なんて特に無い。
そもそも、どうして私はここに来たのだろう。
ここに来て、私に何の意味があるのだろう⋯⋯
「おー、やっぱり似てる」
「……そこまで似てるとは思わないけど」
「似てる似てる。⋯⋯じゃあ、はい、隣並んで」
並べられた。背は、意外にも私の方が高い。
トオルは下から上までまじまじと眺めて、うん、と頷いた。
「⋯⋯薄いねー、やっぱ」
「「は?」」
それは一体どこを見て言ったのか。いや、自分の乏しさは理解しているけど、ハッキリと言葉にされて何とも思わないほどじゃない。
「⋯⋯浅倉も私と3センチしか変わらないでしょ」
「え? 長さってあったっけ、雰囲気に」
「⋯⋯ぁ────⋯⋯」
マドカが額に手を当てた。言葉が足りな過ぎる。これだと、まるで私達の方が過剰に反応してるみたいだ。
「あー、でも、樋口とミサキって、雰囲気の長さが違うよね」
「⋯⋯分からない」
何も、分かりはしない。
出会ったばかりで、何を当たり前なとは思う。
彼女は、何を見ているのか。
「何ていうんだろ⋯⋯樋口は中々跳ねないじゃばらで。ミサキは、風に吹き飛ばされちゃう紙飛行機、みたいな。そういう感じ。ふふっ、分かんないや、自分でも」
「いや⋯⋯ここまで引き摺っておいて?」
⋯⋯風に吹き飛ばされる紙飛行機。
私を言い表すのに、これほど的確な表現があるだろうか。
身体は脆くて、意志も無くて、見える世界は広がっても、私は未だに不自由に縛られる。
すると、マドカは腕を組んで悩み出した。
「雰囲気は紙みたいに薄い⋯⋯でも、じゃばらと紙飛行機? 跳ねるか、空を飛ぶか⋯⋯なんで、じゃばらは跳ねないの」
「えーと、ほら、ずっと抑えつけてるじゃん、樋口って。でも、ぱーんって跳ねるから、先生といると」
「⋯⋯跳ねてなんかない。先生の奇行に付き合ってられないだけ」
思ったよりも、マドカは先生の事が嫌いではないらしい。
まあ、私も先生には呆れてるし、案外これが普通の反応なのかもしれない。
「まあ⋯⋯先生はいつも突拍子も無いし、無茶な事言うから」
「⋯⋯こんな所にもあの人の被害者が」
「被害者って⋯⋯いやでも、間違いじゃないか」
散々振り回されてきた。この前なんて、海で泳がせようとしたり、他にも砂遊びやら日光浴やら⋯⋯本当に何がしたかったんだか。
「それと、なんだっけ⋯⋯そう、紙飛行機。ビューンって飛んでくよ、紙飛行機も。先生なら。あーこれ、先生最強伝説が始まっちゃったわ」
マドカと目が合った。
聞いていたよりも、過激な人じゃないのは。寧ろ、ちょっと親近感を覚えるというか⋯⋯
トオルの言葉を介して、大して言葉も交わしてないのに、か細い繋がりが結ばれた気がした。
「あなたとは、なんだか、他人じゃない気がしてくる」
「他人でしょ。⋯⋯他称、私のそっくりさん」
「⋯⋯こんなに信用ならない他称、そうそう無いけど」
「まあ、浅倉だし。それに、似てる似てないなんて、比べるだけ無駄なことでしょ」
「確かに、何の意味も無い」
本当に、無意味だ。
「あれ、めっちゃ仲良くなってない、樋口とミサキ」
「「⋯⋯気のせいでしょ」」
「ほら、いいじゃん、仲。双子みたい」
まかり間違っても、絶対に双子ではないと思う。
でも、まあ。
また、ここに来てもいいかなと、少し思って⋯⋯
「あれ〜? なんか、円香先輩みたいな人がもう一人いる〜?」
「ぴゃっ!? し、知らない人⋯⋯!?」
騒がしくなりそうな予感がして、ほんの少し、溜息を吐いた。
もう残りなんてありません。
便利屋への復讐を誓う麺妖な貴音さまも、ナギサと一緒に恵方巻を担ぐ迷探偵紬も、レイと昴の野球日和も、淫獣棟方師匠とハナコの死刑レースも、Barシグレ常連の楓さんも、サツキとユッコのサイキック教室も、ゲーム開発部の甜花ちゃんも、ルカとカヨコの子猫探しも、レイサと果穂の音響制圧自警団も、元ミレニアムの広も、ことねとサオリのCampus労働も、絶対に泣いてはいけないキヴォトス24時手毬編も、全部ありません。
誰か書いて⋯⋯