THE iDOLM@STER BLUE ARCHIVE 作:モモフレンズの新メンバー共
佑芽が先生にタックルしようものなら、絶対力加減誤って粉砕するよな⋯⋯なぜか先生が何も言わなくなって、身体を揺さぶっても起きなくて⋯⋯
なるほど、これがブルーアーカイブ⋯⋯?
藤田コトネは貧乏学生である。
初星学園に中等部から通い始めたものの、アイドル業は軌道に乗らず、学費で借金は嵩み、弟妹達の生活費を稼ぐので精一杯だった。
「お疲れ様でぇ〜っす♪ お先に失礼しまっす!」
ハンバーガーチェーンの店から出ると、スマホのカレンダーとにらめっこ。
シフトを確認し、それと学校のレッスン受付時刻と照らし合わせて⋯⋯
「⋯⋯よっし、レッスン行けそう!」
ルンルン気分で駆け出そうとすると、不意に声を掛けられた。
「"えっと、良いかな"」
「はい?」
「"君の名前は、コトネで合ってるよね"」
「あ、はい。そですけど⋯⋯あなたは?」
ぶら下げた名札を見せられ、いかにも優男風の大人が自己紹介をした。
「連邦捜査部シャーレって⋯⋯えっ、シャーレの先生!?」
噂には聞いたことがあった。何か色々とんでもないとか。
キヴォトス七不思議の一つにも、全裸の先生がタブレット片手に走り回っていた、なんてものがある。コトネは流石に嘘だとは思っているものの、胡散臭い事には変わりなかった。
「そ、それでぇ⋯⋯シャーレの先生が、あたしなんかにどんなご要件なんです⋯⋯?」
「"君をプロデュースさせてほしい"」
「はぁ、プロデュース⋯⋯えっ? 先生が、あたしを、プロデュース⋯⋯!?」
意味不明だ、とコトネの頭がぐるぐると混乱する。ふ
外部からのスカウトというのも、有り得なくはない。初星学園の敷地内には、学園長の息子が経営する100プロに加え、学園の共同出資者であり、初星学園をアイドル養成所として活用している765プロ、346プロ、283プロの存在もある。
他にも、広い自治区のある極月学園を擁する、大手の961プロは特に有名だ。
しかし、目の前の先生が、シャーレという組織がアイドルプロダクションだったとは少なくとも記憶していない。
その疑問に答えるように、先生は説明した。
「えーと、つまり、少なくなったプロデューサー科の生徒の代わりに、先生が来た⋯⋯?」
「"それで、名簿で君を見つけてね"」
ますます疑問が湧いた。
自分が落ちこぼれだという自負はある。中等部時代も成績不振で、ライブだって一度も出れたこともない。
「────なら、どうしてあたしなんかを選んだんですか。書いてある通り、ダメダメで、バイトばっかで、何の実績も無いのに」
怪しい、というのもあった。プロデューサー科の成績は、アイドルの活躍で決まると聞いたことがある。
なのに、わざわざ自分を選ぶ理由が⋯⋯
「"私は、プロデューサーである前に先生だから"」
「"もし、コトネが何かに困っているのなら"」
「"解決に手を尽くすつもりだよ"」
なるほど。そういうスタンスらしい。どこまでも、生徒想いな先生なのだろう。
だがしかし、コトネは少しムカッとした。ぽんっと突然現れたくせに、何を上から偉そうに、という、ちょっとした反抗心だった。
「じゃあ! 私の借金! 全部返済して下さいよ! あたし、ずぅ〜っとお金に困ってたんです! 先生が払ってくれたら、悩みなんて、も〜これっぽっちも無くなっちゃいますから!!」
「"それで困り事が解決するのなら、そうするよ"」
すちゃ、と先生が胸元から取り出したのは、一つのクレジットカードだった。
「⋯⋯エッ」
「"これで足りそうかな?"」
「アー⋯⋯や、その、さっきのはでまかせっていうか、カッチーンて来て、つい口をついて出たっていうかァー⋯⋯」
どうせできもしないのに、人の事情に口を挟まないでほしいと。そう言いたかったはずなのに。
「"そうする事が、コトネにとっての最善なら"」
「"私は、このカードを使って肩代わりするよ"」
一度、うん、と頷けば、先生はこのカードを使って支払ってくれてしまうのだろう。今にも、そうすると思わせる気迫を感じた。
意地悪だ、と思わず笑ってしまう。コトネ自身が、何よりもそれを望まないことを、分かっていて言っているのだ。
「⋯⋯先生さァ〜、あたしのコト好き過ぎでしょ?」
「"もちろん、大切な生徒だからね"」
「もぉ誤魔化しちゃってぇ〜!」
(ちょぉ〜っと優しくしてもらっただけなのに、我ながらあまりにチョロ過ぎるナー⋯⋯でも嬉しぃ〜っ♡ 大切とか、人に言われたらテンション爆上げするしかないでしょぉ〜も〜!)
今すぐはしゃいで飛び回りたい気分だった。それほどまでに、コトネが追い詰められていたという事でもあるのだが。
喜びに喜んで、いったん心を落ち着かせてから、改めてコトネは先生の言葉の真意を尋ねることにした。
「先生から対価もなくお金貰うのは、私の信条的にナシです。ちゃんと働いて、それに見合ったお金を受け取る。それがお仕事だと思うんです」
「"しっかりして偉いね"」
「そ、それほどでもぉ〜⋯⋯」
はっ、と緩んだ顔を戻した。褒められるとすぐこうなってしまう。表情を固めて、再度本筋に戻る。
「でですね。あたしの悩みは知ってのとおり、おカネが無いことです。バイト掛け持ちしても、学費を稼ぐのって大変でぇ⋯⋯」
「"じゃあ、こういうのはどうかな?"」
ずっと先生が抱えていた書類を手渡されると、その中身は、プロデューサーが付くことによる優遇措置についてと、奨学金の申請書だった。
「プロデューサーが付くと、奨学金の条件が緩くなって? しかも、学園が出してるお仕事が斡旋される⋯⋯う、うひゃ〜! お給金も凄く良い! しかも危険じゃないしぃ〜!」
最近、手入れもままなっていない愛銃に触れる。コトネは掛け持っていた様々なバイト経験を通じて、荒事にはそこそこ慣れていた。
しかし、アイドルが傷でも残そうものなら一大事だ。売れるものも売れなくなる。できれば遠慮したいのが実情ではあるが、そう選り好みもできない。
「"お金の問題は、解決しそうかな?"」
「うーん⋯⋯お金のコトは、たぶん⋯⋯なんとか?」
ざっくりと見ても、今している仕事よりも割の良い仕事ばかりだった。奨学金もあるとすれば、格段に仕事量を減らせるだろう。
しかし⋯⋯それだけでは叶えられない〝夢〟があった。
「"不満そうだね"」
「や、不満ってゆーか⋯⋯こうポンポン解決しちゃいそうだと、もうちょっと高望みしても良いかなぁ〜、なんてぇ⋯⋯」
思い切って、話してみようか。
そう思っていた時に、にわかに周囲が騒がしくなった。
そして⋯⋯銃声とガラスが割れる音が響いた。
「オラオラオラ! ガタガタヘルメット団様のお通りだぁ! 撃たれたくなきゃ出すもん出しな!」
チンピラ集団のヘルメット団。それが、コトネのバイト先であるハンバーガーチェーンのお店を狙っていた。
「ああっ!? あたしの大事なバイト先がぁぁぁ!!」
こういうのは、キヴォトスでは日常茶飯事だ。とはいえ、見知った店が襲われれば悲しみもするし、腹も立つ。
何よりコトネにとっては、ここが唯一の優良なバイト先だった。
「⋯⋯なぁなぁ、やっぱガタガタってのやめね?」
「あ、あぁ!? どうしてだよ!」
「いや、なんかウチらがガタガタみたいじゃん。もっとこう、カタカタとか、パタパタとか、そういうのにしない?」
「は、はぁ!? 相手をガタガタ震えさせるようなビッグな団にしたいから、ガタガタヘルメット団なんだぞ!」
「ガタガタな団は嫌だよなあ⋯⋯」
「ちょ、お前ら! 変な事言ってんじゃねえ!」
「先生⋯⋯あたし、ちょっと行ってきます」
「"待って"」
「引き留めたってムダですからね〜♪ せめて、雇ってくれた恩ぐらいは返したいんで!」
見れば、ヘルメット団は仲間割れしかけている最中だった。そこを攻め込めば、一人でも勝機はあるとコトネは見ていた。
しかし、コトネは先生からインカムを渡された。
タブレットを片手に持ち、強く頷いた。
「"それなら、私が戦闘を指揮するよ"」
「⋯⋯えと、指揮、ですか? うーん⋯⋯イマイチよーく分かんないですけど、サポートお願いしま〜っす!」
※※※
「な、なんだとォ⋯⋯!? オレ様たちが、一方的に⋯⋯」
「や〜りぃ〜! あたし、ほぼ無傷で勝っちゃいましたぁ〜! 先生最っ高! 愛してるぅ〜♡」
「"お疲れ様。コトネも良い射撃の腕だったよ"」
「んふふ〜、自己肯定感爆上がりですよぉ〜♪」
とは言いつつも、こんなにもあっさりと勝利してしまった事実に、コトネは内心驚かざるを得なかった。
誰から狙えばいいのか、自分の立ち回り、敵の攻撃の予測⋯⋯やりやすかった理由を挙げてもキリがない程に、先生の指揮は完璧だった。
(これが⋯⋯シャーレの先生の力⋯⋯もしかしなくても、トンデモない人と関わっちゃったかなァ)
でも、その規格外さが、今のコトネに多大な安心をもたらしてくれた。
この人なら、どうしようもないこんな自分にも、チャンスをくれるのかもしれないと。
「あの⋯⋯先生」
「"うん?"」
だから、今度は自分の手で伝えなければ。
先生の手を取って、ガバっと頭を下げた。
「こんなあたしだけど、是非プロデュースして下さい⋯⋯っ!」
「"こちらこそ、よろしくね"」
(待ってろよぉ〜! ぜ〜ったい、成り上がってやっからなー!!)
それが、シャーレの先生の初プロデュースであり⋯⋯
これから始まる、伝説への第一歩は今、踏み出された。
アイマスシリーズとブルアカ履修済みの方からすれば、どんなキャラの絡みが見てみたいんでしょうかね