THE iDOLM@STER BLUE ARCHIVE 作:モモフレンズの新メンバー共
「こーんにっちは〜!」
「"こんにちは、コトネ"」
今朝から、コトネはウキウキで登校してきていた。
先生によるプロデュースが始まると思うと、居ても立っても居られず、授業終わりに思わず走ってきたほどである。
「それでそれで、何しますか〜? レッスン、それとも何かのお仕事とか……!?」
興奮のあまりか。コトネがガンガンと詰め寄っていると、先生は頬を掻いて、首を振った。
「……歌とダンスを見せてほしい?」
「"知っておきたい事が、色々ある気がしてね"」
「は、はあ。まあ、いいんですケド……あたしの実力見て、見捨てたりとか、その……」
「"しないよ、絶対"」
「う……本当ですよ? 言質、取りましたからねぇっ!」
レッスン室に移動してから、コトネは自分の実力を披露した。
へなへなな歌声、足が縺れているダンス……周囲の誰が見ても、これは駄目だとはっきり判ってしまうレベルの酷さだった。
「はぁ、はぁ……ど、どうでしたか?」
「"う、うん、その……"」
「デスヨネー……私が下手っぴな事くらい、自覚は────」
「"間違いなく過労だね"」
コトネはしばらく、その単語の意味が理解できなかった。
かろー、かろー……あたし、かわいかろ〜?
『あ〜っ、もうレッスンば始まる時間ばい!』
『ちょっと話してたらもうこんな時間だ!? こがたん、急ご急ご!』
二人ともに黙っていたからか、廊下のざわめきがレッスン室に響いてくる。
今の声は恋鐘ちゃんと結華ちゃんだろうナー……と軽く現実逃避するも、先生が困ったように眉尻を下げた。
「"そんな疲れてたら、できるものもできないよ"」
「や〜⋯⋯バイトは辞めちゃうとちょっと困るんでぇ〜⋯⋯あ、でも先生のお蔭で、ちょっとはバイト減らしてもいい気はしますけど」
「"辞める気は無いんだ⋯⋯"」
「これっぽっちもありません!」
コトネの自信満々の宣言に、先生はがっくりと肩を落とした。
しかし、コトネにも譲れない
よし、とスマホを仕舞うと、先生はとんでもない事を言い出した。
「"ちょっとシャーレまで来てくれるかな?"」
「⋯⋯えっ!? 今からですかぁ!?」
シャーレのオフィスは、初星学園の生徒の間でもそこそこ有名だ。オフィスのあるD.U.外郭地区までは、学園最寄りの駅から電車一本で行ける。
とはいえ、シャーレ当番の募集はすぐに埋まってしまう為、初星の生徒でもオフィスに入れる人はかなり限られている。
「"この後バイトは無かったよね"」
「まぁ、はい」
「"頼れる子をシャーレに呼んでいて⋯⋯あっ"」
すると、先生は急に背筋をピンッと伸ばして、慌てて辺りを見渡した。
そして、コトネに視線を戻し苦笑いを浮かべる。
「"⋯⋯し、紹介するね。こちら、トリニティ救護騎士団のセリナだよ"」
そうして、先生が視線を向けた先、ホワイトボードの後ろから、ピンク髪のナースがこちらを覗き込んでいた。
さささ、とやって来たその白衣の少女が、ぺこりとお辞儀をした。
「初めまして、鷲見セリナです。あなたが患者さんですね? 過労でお具合が悪いと先生からお聞きしましたので、急いで駆け付けました!」
「ど、どうも、藤田コトネでっす!」
威勢よく返したものの、コトネの脳内には疑念しか湧き上がってこなかった。
(⋯⋯あれ? この子いつの間に? ずっとレッスン室の入口の方向見てたし、入ってきたら気付くよなぁ⋯⋯? てか、さっき先生が連絡したばっかじゃね? トリニティからここって早くても三時間はかかんじゃ────はいっ、この話やめ!)
コトネは、目の前のニコニコした少女について深く考えない事にした。これ以上考えると、何かの深淵を見てしまいそうだった。
「"セリナ、コトネにいつものをお願いできるかな"」
「はい、お任せ下さい! ⋯⋯それではコトネさん、こちらのマットに俯せになって寝転がって下さいね?」
「"じゃあ、私は外に出ているね"」
「えっとぉ〜⋯⋯何が始まるんです?」
「では、お背中失礼します」
「あ、あのぉ⋯⋯!?」
何がなんだか分からないまま寝転がらされると、マッサージの施術が始まった。
トリニティの救護騎士団と言えば、暴力の象徴。救護の為なら躊躇わず暴力を振るい、なんでも暴力で解決する脳筋集団だと聞いていた。
そんな所からやってきたとあっては、内心落ち着かずにはいられない。それで何が始まるかと思い切きや、単なるマッサージだ。
コトネはこの少女の怪奇性に正気度を減らしていたので、やばい人体実験でもさせられるのかとずっとビクビクしていた。
「筋肉がとても凝ってますね⋯⋯働き詰めの先生ぐらい疲労が溜まってます」
「あー⋯⋯結構、バイトが忙しくて⋯⋯」
「何かご事情が?」
「まァ⋯⋯うちのちびどもに、お腹一杯ご飯食べさせなくちゃいけないんで。⋯⋯あっ、コレ先生にはオフレコでお願いなー?」
「どうしてですか? 弟妹さんの為を想った、立派な行いですよ! 私も、子供が大好きで⋯⋯そんなコトネさんを尊敬します」
コトネの自己肯定感カウンターが微増しつつも、瞼の裏にあの優しげな大人の人が思い浮かぶ。
「あの人さぁ⋯⋯聖人君子かな? ってくらい良い人そうなんだけど、良い人過ぎて、ちょ〜っとでも、あたしが弱み見せたら、ポンポン抱え込みそうなんだよ。シャーレって滅茶苦茶忙しいらしーじゃん? あんまり迷惑掛けたくないなぁ〜、って」
先生はプロデューサーになるとは言っていたけれども、それもずっとは続かない事を、コトネは理解していた。
なぜなら、先生はシャーレの先生だからだ。ずっと構ってもらえるはずもない。
「先生は、お優しいですからね……生徒が困っていたら、自分が傷つくのも厭わず、どこまでも手を差し伸べます。それが先生の良いところで、悪いところなんです。エデン条約の時なんて、一時はどうなるかと思いましたから……」
やっぱりナー……と重苦しく溜息を吐き出す。先生はそういう人間なんだ。だから、自分だけなんて、はなっから高望みな願いなのである。
だからもう、すっぱり諦めよう。先生には、昨日で十分にお世話になった。これ以上迷惑を掛けても仕方がない。
「あああぁ……なんか、くっそ眠くなってきたぁ〜……」
「マッサージが効いている証拠ですね。身体が疲労に慣れきって、休みどころが分からなくなっちゃうんです。なのでこうして、疲れているんだというメッセージを送ってあげれば、あとは自然と……」
「…………ぐぅ」
なんだか色々とスッキリすると、コトネはあっという間に眠りに落ちた。
タオルなどをもろもろ交換してやり、セリナはフフッと笑いかけた。
「先生が、そう簡単に諦めてくれるでしょうか」
多分、あの人はどこまでも首を突っ込んでいくのだろう。
眼の前の生徒が、本当の笑顔を取り戻すまでは。
「先生、コトネさんの施術が終わりましたよ」
「"うわっ!? い、いつからそこに?"」
「今さっきですよ?」
セリナの救護は続く。怪我をする人々がいる限り……先生の無茶が続く限り。
どこまでも、いつまでもついて行って、ただ救護し続けるのだ。
※※※
「クククッ……遂にやって来たな、この時が。あの忌々しき初星を蹂躙するときが!!」
「ええ、黒井社長……私達、孤高のアウトロー同士が組めば、不可能なんてありはしない」
「やはり、お前に頼んで正解だったようだな……便利屋68、陸八魔アル社長」
極月学園。
D.U.と近接した立地に広大な自治区を抱えるその場所に、二人のポンコツ共がいた。
方や、びっくりするほどお人好しな自称孤高のアウトロー。
方や、大抵あっさりやられるが不屈の精神で計画を立て続ける憎めないヤツ。
そんな者同士が悪巧みをしようものなら、破綻は目に見えているが⋯⋯
「メンバーは厳選しておいたわ。……もちろん、この私に依頼する以上、報酬は高くつくわよ?」
「金に糸目をつけるつもりは無い。成功の暁には、大金を約束しようじゃないか!」
黒井社長のタブレットには、三人分のデータが記されていた。
「ほう⋯⋯確かなポテンシャルを感じる。しかし、グループとして成立させるには
「そうかしら?」
「そう、絶対的なリーダーが……ふむ」
チラリ、と黒井はアルをみやる。長年のプロデューサーとしての経験と勘が囁いていた。
この社長の名乗る少女が持つ、非凡なるポテンシャルに。
「陸八魔社長、君もアイドルになりたまえ」
「は……え、ええっ?」
「なあに、報酬は弾もう。このグループのリーダーとなって彼女らを牽引し、来月に迫るT.I.C……トリニティ・アイドル・コンテストで見事優勝してみせるのだ!!」
「なななな……なっ……なんですって──────!!!???」
予定外の依頼。大きくなる責任。
こんなはずじゃなかったのに⋯⋯と内心頭を抱えながら、アウトローとして依頼を断る訳にもいかず。
かくして、伝説的アイドルユニット⋯⋯『イタズラ☆ストレート』はここに爆誕したのである。
TS以外書くのが下手過ぎて、自給自足すらできてないの辛たん
まぁ、需要が無いなら畳まれるが世の情けですな⋯⋯