TS聖女様は破滅エンドを回避したい~※なお、攻撃力はカンストしているものとする~   作:ねくしあ

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第11話:聖女VS◯◯

 ……どうしよう。

 

 王子の策略による襲撃から2日。

 

 俺は今、再びとんでもない危機に瀕している。

 

「では、魔導具の種類について……アトラさん」

「剣、大剣、槍、弓、法器の五種類です」

「正解です。これらは世界共通であり——」

 

 授業が簡単すぎて、めっちゃ眠いっ……!

 しかも俺は聖女。威厳を保つためにも、ここで居眠りなんて論外!

 

 けど、こんなのプレイヤーランク10くらいの時に覚えたぞ!

 時間で言えば5年前! 同期が何人か生きてた頃だ!

 

 ——というのも、これには事情がある。

 

 俺たちは臨時クラスなのだが、学院は全生徒に“仕込み直し”をするつもりらしい。

 内容は初歩の初歩。聞くだけで眠気が襲ってくるのに、延々と聞かれているのだ。

 

 一問一答形式だからテンポはいいが、上級プレイヤーなら暗記していて当然のことでしかない。そもそもこの世界の住人の中の常識でもある。

 

 ……うおっ、やべ。頭がカクンってなった。

 

 金色の髪がだらりと下がり、視界を埋め尽くしている。

 これは……机に落ちた髪の毛の数でも数えてたほうがマシかも……

 

「次の問題に移ります。スロングス王国で最も強いとされている魔法師は誰か」

「はい!!!!!」

 

 うつらうつらとしていた俺の鼓膜を破壊しかけたのは、横に座るレキだった。

 

 クラス中の視線を集め、先生すら瞠目するほどの声量と覇気。

 元気がありあまりすぎているのではないだろうか。

 

「で、ではレキさん」

「アトラちゃんです!!!!!!!!!!!」

 

 自信満々、ひまわりどころか太陽のような笑顔でレキは答えた。

 

 だが、その答えが違うことだけは俺でも分かる。

 

 他の国の強力な魔法師は知っているが、生憎とスロングス王国の強者は忘れてしまったんだよな。

 

 なぜならここ、あまり「誰が強い」とか主張するような国じゃないのだ。

 

「不正解です。他に分かる人は?」

 

 そこで悠然と手を上げたのは、憎き金髪貴族野郎だった。

 

「先生、私ならば分かりますとも」

「では、ライナルトくん」

「王国騎士団直属魔法師団団長、マレウス・ノスフェルン伯爵閣下です」

「正解です。彼は6年前に魔法師団の団長に就任して以来、数多の戦場で多大な功績を上げてきました。その地位と戦績から、王国最強の魔法師と呼び声高く評価されています」

 

 先生が解説を始めた直後、ライナルトはこっちを見てドヤァと口角を上げた顔を披露してくださった。

 

 いずれ、聖女の名において必ずボコボコにしてやろうと、心に固く誓った瞬間だった。

 

「次の問題です。リノヴァルト帝国において、皇帝の代理で政治を行う権限を持った7人の魔法師たちはなんと呼ばれている?」

「はい」

「では、アトラさん」

 

 眠気を覚ますため、なんとか手を上げて脳を回転させる。

 この問題は流石に分かるからありがたい。プレイヤーたちの常識だ。

 

七空法(セプタ=エフェリオン)です」

「正解です。それぞれが強大な魔法を操り、戦力としても世界屈指の力量を誇るとされる、7人の魔法師であり、皇帝代理。議会よりも権限は強く、勅命に等しい発言力を持っています」

 

 これも当然知っている。

 なにせ、七空法(セプタ=エフェリオン)のうち数人はプレイアブルキャラ——つまり、操作できたのだ。

 

 俺もガチャを引き、超絶可愛い美少女な子を使って敵を蹂躙していた。

 性能的にも強かったので、印象によく残っている。

 

「次の問題です。大日(だいにち)公国を治める主は、誰か」

「はいっ!」「はい」「ここは私が——」

 

 俺と同時に声を上げたのは、またしてもライナルトだった。

 しかし、俺たちよりも先に手を上げた人物がいた。

 

「では、ミリアさん」

虚禍津命(うつろまがつのみこと)です!」

「正解です。虚禍津命(うつろまがつのみこと)は、大日公国を500年に渡り収めている存在です。光の神ハシースとほぼ同格の“神”である、という風に国際的には扱われています」

 

 ミリア・フェイリス。

 人形襲撃の時には風魔法を使っていた少女だ。

 明るい緑色の髪の毛は可愛らしく肩口で切り揃えられており、快活な印象を与える。

 

「……そろそろ終わりですね。5秒後にチャイムが鳴るでしょうから、それを合図に解散してください」

 

 キーンコーンカーンコーン……

 

 学生時代に聞き慣れたどころか聞き飽きたチャイムが、先生が口を閉じてすぐに鳴った。

 やっぱりこの人、予知能力でもあるんじゃないか? さすがにタイミングが正確すぎる。それこそベテランでないとそんな芸当——

 

 ……あれ、あの人何歳なんだ?

 

「アトラちゃん? なんか顔色悪いよ?」

「だ、大丈夫だよレキちゃん。ちょっと、この世の闇に辿り着いちゃっただけ……」

「全然大丈夫じゃないと思うんだけど!?」

 

 すると、大音量ツッコミを繰り出すレキの側に、人が立っていることに気がついた。ただし、少し隠れるように、だけど。

 

 それでも、緑色の髪、爽やかないい匂い……ふっ、誰か分かったぞ。

 

「ミリアさん、どうしたんですか?」

「あっ、気づかれちゃったか……邪魔、しちゃいました?」

「いえ、そんなことはありませんよ。それで、どうしたんですか?」

 

 そう声をかけてあげると、ほっとしたように破顔した。

 

 それも仕方ないだろう、幾度か話したとはいえ、まだ数日しか経っていない。その上聖女ともなれば、流石にビビる。

 

「その……さっき、アトラさんが手を上げた時、私が先に取ってしまったので、謝りたくて……っ」

 

 ……な、なんて素敵な心の持ち主だろうか。

 普通に聖女より何倍も優しい。

 

 俺なんか、クラスメイトの男子をどうやって病院送りにするか妄想していたというのに……!

 

「ふふっ、そんなことで謝罪なんて必要ないですよ。それに、それであればライナルトくんにも謝らないといけなくなってしまいますよ? それは不本意なはずです」

「え? あ、はいっ。そうですね……?」

 

 流石にあの野郎に頭を下げるなど、心苦しいにも程がある。

 

 俺自身がやるのも相当嫌だが、こんなに純粋な少女が頭を下げる光景なぞ見たくもない。そんな世界なら俺が壊す。今すぐに。

 

「アトラちゃん……! 今度は顔がすごく怖くなってるよ……!?」

「あ、本当だ。レキちゃん、教えてくれてありがと」

「えへへ、これくらいならお安い誤用だよぉ」

 

 再開された俺とレキのイチャイチャに、ミリアはまたも困惑し、所在なさげにしていた。

 

「ということで、ミリアさんは気にしなくて大丈夫です。それに、敬語も必要ないですよ」

「えっ!? いやそんな、畏れ多くて……!」

「なら、私から——ミリア」

「ひゃい!?」

 

 愛情たっぷりで名前を呼べば、照れたように顔を赤らめてくれた。

 

 いやはや、マジで可愛いな。

 俺は煌めく感じに可愛いんだが、彼女は透明感がすごい。女優になれそうだなとすら思う。

 

「じゃあ、え、えっと……アトラ……ちゃん……」

「くっ——!!!」

「アトラちゃん!?」

 

 なんてことだ、照れた顔で名前を呼ばれるとこんなにも破壊力がすごいとは……!

 

 心臓が痛いっ……はっ、まさか、これが恋!?

 

「ご、ごめんなさい。ともかく、よろしくね、ミリア」」

「あたしはレキ! よろしくねミリアちゃん!!!」

「お二人とも、よろしく……!」

 

 こうして俺は、学院で二人目となる友達を手にした。

 友達が減るばかりだった前世を思い出すと、たった一人増えただけでも万々歳と言える。

 

「そうだ、せっかくだし、みんなで放課後、慰霊に行かない? アトラちゃんが来れば、きっとみんな喜ぶと思うんだ」

 

 まるで「マックでも行かない?」のノリで提案されたそれは、心の中で鈍重に響いた。

 

 そうだよな、人が死んだなら、大抵慰霊や追悼がある。

 教会の管理する場所なら当然か。なんなら遅いくらいだ。

 

「分かった。行こう。レキちゃんも、それでいい?」

「あたしも行く!」

「なら、放課後に中庭で集合しようか」

 

 さてと……聖女として、墓参りをきちんとしていた日本人として、死者を弔ってやりますか。

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