魔法工略 ~魔法世界に召喚されたけど才能がないと捨てられたので持ってる知識と工業の力で攻略します~   作:雨(あめ)

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干し肉とステータス。

一行はその後、焚き火を囲んで食事をとることとなった。

 

メニューは干し肉と芋のスープ。

それと硬いパンが2切れ。

 

タツキはひどい空腹に襲われていたこともあり、この世界で初めて食べる料理を素直においしいと感じた。

 

唯一、この干し肉を除いて、。

 

「んぐっ、、、。」

 

口に入れるたびに声が漏れるほどのしょっぱさ。

カリアが『軍干し』と呼ぶこの干し肉。

入れるだけでスープの味付けが完了するという代物で、料理に余計な時間を割かなくて良くなる戦場の知恵らしい。

 

タツキは「これじゃあスープにしないと食べられないではないか」と思ったが、そのまま食べる用の干し肉はまた別にあるそうだ。

まあスープにしたところで喜んで食べたい味になるわけでもないが。

 

「だからレベルが上がったらまずは、、、。タツキの旦那?あっしの話聞いてやす?」

 

「あ、ああ、、、聞いてるよ。」

 

タツキは干し肉との闘いで一瞬それた意識をカリアの話に戻す。

 

カリアはタツキが別の世界から来た人間であるということをすでに兵士たちから聞いているようだった。

そのため、食事の時間を使ってこの世界で生き抜くための知恵を教えてくれている。

 

「(勇者の召喚なんて重要な情報だろうに、広まるの早すぎないか。)」

 

娯楽の少ない田舎などでは人の噂話が一種の娯楽になり、信じられない速度で広まると聞いたことがある。

その最たるものがこれかとタツキはなんとなく納得した。

 

「まあつまり、レベルが上がったらまずスキルポイントを振る!これが大事!スキルは旦那の世界にもありやしたよね?」

 

「いや、ないと思うけど、。」

 

「え!?魔法もなけりゃスキルもですかい、?まさかステータスまでないなんて言いやせんよね?」

 

「ない。」

 

「あちゃー、、、。思った以上に何もかも違うんですね。」

 

「そうみたいだな。」

 

「いいですか。ステータスってのは何をするにもついて回る。ただまあ、開くのはそんなに難しくない。心の中で叫ぶんす。開けぇ!って。」

 

「それだけ?」

 

「それだけです。」

 

「なるほど。」

 

カリアに促されるまま持っていた皿を地面に置く。

心の中で念じるという中二病のようなことを人に見られながらする。

日本生まれの成人男性として少々の気恥ずかしさも覚えたタツキだが、ここはカリアに言われた通りにやってみることにした。

 

「(、、、開け!)」

 

タツキが心の中で叫ぶ。

すると一瞬、火の粉のようなものが舞う。

それは瞬く間に集まって、文字となり、そして宙に文章を作り出す。

 

「まじかよ、、、。」

 

「出やした?」

 

本人にしか見えないのか、カリアは空中をきょろきょろと見回している。

 

「で、出た。」

 

「おお、おめでとうございます。」

 

カリアはニコニコと満足げに笑い、持っているスプーンで芋を一つ口に運んだ。

 

「すごいな、これ、、、。」

 

目を丸くしたタツキは浮かび上がった文章に触れようとしてみる。

しかしそれは手が近づくと、まるで生き物のように散り散りになってしまった。

そして手が通り過ぎると、また集まり文章になる。

宙に浮く文字が逃げ回るさまがなんとなく面白くて、タツキは意味もなくそんなことを繰り返す。

 

「(てかこれ、。)」

 

タツキの手が止まる。

あまりに自らの持つ常識とはかけ離れた出来事が起こったため、そこまで意識が回っていなかったが、タツキは改めて文章を読もうとしてあることに気づく。

 

「(全然知らない文字だ。)」

 

見たこともない文字。世界が違うのだから当たり前と言えば当たり前。

しかし不思議なのは、見たこともない文字であるはずなのに意味が分かってしまうことだ。

 

そこでタツキの脳裏に浮かぶのは忌々しき皇帝とラハトの会話。

 

「(たしか言葉がどうのこうのって言ってたな。召喚の時に何かされたんだろうか)」

 

二人の顔が浮かび、少しだけ腹が立ったが、冷静に考えてみるとこれ自体がタツキにとって不利益になることはない。

むしろありがたいくらいだと思い直す。

 

「いやー、よかったよかった!そこからスキルポイントの割り振りなんかもできるんですが、、、まあ、今日はここまでっ!」

 

ステータスの文字越しにパンッ!と自らの膝を叩いて勢いよく立ち上がるカリアの姿が見えた。

我に返ったタツキがあたりを見回すと、兵士たちもみな食事を終え片づけをはじめていた。

日は完全に落ち、焚き火の炎だけがあたりを照らしている。

 

「んぐっ、、、!」

 

タツキは自らの皿に残った干し肉を口へと放り込み、片づけに参加すべく歩き出したカリアの後を追う。

 

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