騒動が終わり、監査の人間を改めて調査する旨を伝えて照さんは帰って行った。それを見送った安室は居なくなった事を確認してから深く、それはもう深ーいため息を吐いた。
「はぁ……」
なんかもう、膝から崩れ落ちそう。次から次へと問題起こしやがって讃頌会。ふつふつとした怒りが湧いてきたが、今はそれよりも疲れた。やーっと終わったと思った。なのに次は現れた化け物こと、サクリファイスについて調査が始まるだろうと照さんは言っていた。次の予定が決まってしまった。休みはいつ来るのだろうか。あれ?原作でもこんなデスマーチしてなかったよね安室透さん?
「お疲れ様でした、社長」
そんな俺に声を掛けたのは、スーツの上着を肩にかけた七海だ。彼も恐らく事後処理をしていたのだろう。その視線には哀れみと同情があった。それでいて、何かを言い淀むような、躊躇いも。
「……君もね、七海。それで?君がわざわざそんな風に言ってくるって事は……」
もうやだ、聞きたくない。でも聞かないといけないジレンマ。なんだ、この怒りはどこにぶつければ良いんだ。讃頌会か、そうかアイツらか。一回全力でグーパンしても許される筈だ。なんならマウントポジション取って滅多打ちまである。
「その、とても言いにくいことなんですが」
「……聞こうか」
「奴らの狙いが分かりました。束博士の研究内容が目的だったようで」
その言葉に、パチンと額を叩く。我が社というか、転生者で随一の厄ネタ持ちの彼女の研究内容?もう嫌な予感が止まらない。
「盗られた内容については、束博士曰くホワイトスター学会にいた頃残した研究の続きだったそうで」
あぁあれ?もう興味もなかったし大丈夫でしょ、とはそれを知った束の言葉である。ダッシュで殴りたい。
「それで、内容は?」
「……エーテルをホロウ外で保存し運用するもの、らしいのですが……」
「それだけ?他には」
思ったよりありきたりというか、拍子抜けする内容だった。なぜ讃頌会はそんなものを?
「ここからが本題です。実は……彼女、どうやら虚無虚無姉さんの力について研究してたらしくて」
その言葉に、社長として見栄の為つけていた伊達メガネを取る。プルプルと手が震えている。その震えは恐怖などというものではない。
「それで?」
「……サンプルも含め、盗られたそうで」
「──あのアンポンタン!!!」
ちくしょーめ!!!ともはやキャラ崩壊し眼鏡をぶん投げ叫ぶ。これは軍法会議ならぬ、転生者会議である。掲示板で対策を考える必要がある。
工作員によるサクリファイスの襲撃はあまりに短絡的で、後を考えていないような行動だった。その目的はこれか。騒動を起こし、その隙を狙い撃ちにした、と。
「社長?」
「ん?なんでもないよ?別にこの後休みができたら六分街でコーヒー片手に散策でもしようかなぁとか思ってたとか無いよ?」
「……お疲れ様です、本当に」
もはや、こうなると讃頌会の動きが読めなくなってくる。白祇重工のアレも、何処まで通用するかわかったものではない。ブリンガーを野放しにする訳にも行かないから予定通り進めるが、きっと解決にはならないだろう。
860:zzzを救いたい転生者
ええ……
861:天才兎
えーっと、ごめんね?
862:白い悪魔
今回ばかりは真面目に怒りますが、盗られたものは仕方ない。それを怒っても無益なので
863:zzzを救いたい転生者
文句は沢山あるけどな!セキュリティどうなってんだとか
864:zzzを救いたい転生者
まぁまぁ、フォローしてやるなら皆サクリファイスに集中してたから……
865:電脳少女
すいません……讃頌会と言えばサクリファイスみたいなとこあるんで、完全にノーマークでした
866:zzzを救いたい転生者
元々裏工作というか、こういう事する奴らだったね
867:固形蛇
で、どうする。態々盗みに入ってまで取りたいものだったんだろう。奴ら何をする気だ
868:zzzを救いたい転生者
……うーん、利用方法が思いつかないんだよね
869:天才兎
それについてだけど、凡そ読めたよ。私の推測混じりの予想なんだけどさ
870:ドクター
これは私と彼女の共通見解だな
871:電脳少女
この2人が同じ意見ってもうヤバいのでは?主にフラグ的な意味で
872:zzzを救いたい転生者
聞きたくないけど聞こうか
873:天才兎
そもそも、なんで虚無虚無姉さんの残したものを研究してたのかって話から始まるんだけど
874:ドクター
きっかけは、かの者が残した虚空区だ。あれから取れたサンプルをエーテルに反応させてみたところ、エーテルが消失する現象が起きた
875:天才兎
そこから私が、じゃあそれ利用してホロウもどうにかできるんじゃないかなーって予想して研究してたんだよね
876:zzzを救いたい転生者
うんうん、ここまでは分かる
877:zzzを救いたい転生者
理由も理解できるものだしな
878:天才兎
で、多分讃頌会はそのエーテルをどうにかできる技術を欲しがったんだと思うんだよね。古巣に残した私の研究、ほぼそれ関係だったし
879:白い悪魔
つまり、アナハイムで研究を重ねた束博士のデータなら、奴らにとって有益なものがあるはすだ、と予想をつけて盗みに来た、と?
880:ドクター
私も今回の件で試さなくては分からなかったが……サクリファイスの残存サンプルに例の虚空区のものを合わせてみたところ……まぁ、大当たりというべきか。サクリファイス細胞に変化がみられた。
881:天才兎
わかりやすく言うと、サクリファイスの欠点であった自我の消失や、ホロウ外で安定しなかった不完全さが克服できちゃう、みたいでね?
882:白い悪魔
…………
883:zzzを救いたい転生者
あぁ!?社長!?
884:瓦落瓦落
大丈夫、気絶しただけです
885:zzzを救いたい転生者
おいたわしや社長……
886:zzzを救いたい転生者
白目剥いてるぅ……
887:zzzを救いたい転生者
原作だと、虚狩りの残した妖刀のエーテルエネルギーを回収する事で完成させてたやつを?
888:zzzを救いたい転生者
えー、別チャートで完成させてしまった可能性が微レ存……ということです、か。
889:zzzを救いたい転生者
こうなると、奴らが隠れる理由も薄くなるのか?選挙は……
890:瓦落瓦落
そこは押さえます。讃頌会の息が掛かったブリンガーがずっと治安側に居るのは不味いので。
891:zzzを救いたい転生者
じゃあ目的自体は変わらないのか?
892:龍を背負う男
俺たちがやれる事は大体同じだ。助けるだけ多く助ける。それ以外にできる事があるか?
893:zzzを救いたい転生者
ないなぁ
894:zzzを救いたい転生者
讃頌会を止める。これが最優先だからな。
895:瓦落瓦落
今起こってる事件以外では、特に讃頌会の動きも見られませんし。現状維持で。
896:zzzを救いたい転生者
うぃー
897:zzzを救いたい転生者
解散解散ー
898:実力派エリート
それはそれとして、君らサクリファイスに対しての動きが甘いので後で訓練室に来るよーに
899:ドクター
私も電脳少女が纏めた戦闘データを見て感じていた。サクリファイスに対する装備が不十分だ。今後頻繁に出てくる可能性がある以上アップデートは必須だろう。
900:天才兎
ふふん、そこは任せて。新薬も出来たしそれを折り込んだ兵器を開発するよ。浪漫たっぷり!
901:zzzを救いたい転生者
ロマンより実利を重視して欲しいっす……
902:zzzを救いたい転生者
それで生き死決まるんだからねぇ……
903:天才兎
分かってないなぁ、つまらないものは、それだけで良い武器ではあり得ないんだよ?
904:zzzを救いたい転生者
今火薬庫の話した?
905:zzzを救いたい転生者
してねーよ帰れ狂人
906:zzzを救いたい転生者
ヒドゥイ……
907:zzzを救いたい転生者
妥当なんだよなぁ
「ほらほら、動くなー」
パイプ椅子に座り、片手にはぽんち揚げと書かれた菓子袋。ポリポリと食いつまみながらだらけた様子で指示を飛ばす。それに対して返ってくる返事は死屍累々、まるでゾンビの呼び声のようだった。
「こ、これ!俺知ってるって!」
「あれだろこれ……」
だだっ広い室内で、多くの人たちが等間隔に並び、両足を大きく広げた状態で立っている。それだけなのに、彼らは苦悶の表情だ。
「大文字焼きだったっけこれ?まぁいい訓練になると思うよ?」
ただ同じ姿勢をキープするだけ。しかし、キープし続ける必要がある。それも、教官として今お菓子を食っている男、迅悠一が終わりと言うまでである。
「まぁ方法は真似だけども。理屈はあるんだよ?」
ノリでやってるだろ、と言う非難の目を受け、ヘラっとしながら迅は説明する。
「サクリファイスとの戦闘で、一番重要なのは足を止めない事。もちろん観察とか必要だけど」
そもそも、ネームドでもない彼らには何もかも足りていない。その中で生存を勝ち取るならば、何にせよ足が必要だ。とにかく動けるだけの瞬発力と持久力。それをまずは鍛える。観察やらはその次のステップだ。
「あ、慣れてきたらバーベル担いでやってもらうからそのつもりで」
あとは、メンタルだろうか。今更時代遅れになった根性論を話すつもりもないが、戦鬪だけが全てではない。ホロウ内で活動するなら、瀕死の極限状況に置かれる事もある。そんな時に心が折れないよう、鍛えるのは必須だ。そんな思惑があってこの訓練をしている。彼らに言うつもりはないが。
(──少しでも生存率を上げる、これが最優先だな。戦えるようにするのは二の次にした方がいい)
その後も悲鳴にも似た苦悶の声が、訓練室からしばらく聞こえていたと言う。
訓練を終え、へとへととなった転生者の彼らは、とにかくその場で倒れ眠りたい欲求でいっぱいだったが、それよりも強烈だったのは空腹である。ゾロゾロと、ゾンビの行列のような有様で向かうのは食堂。アナハイムが運営する食堂である。元々、転生者に対する受け皿として始まったアナハイムでは衣食住を揃えている。食堂もその一環で、なんと食費はタダだ。しかも──
「おう、来たか」
「腹ァ空いてるやつは並べ!」
「ニャ!」
白い手拭いを額に巻いたTシャツの少年に、タバコを咥えたぐるぐる眉毛のスーツの男に、二足歩行する猫。統一感がないが、彼らはこの食堂を切り盛りするネームド達である。そして、その食事は死ぬほど美味いのだ。
「うめ……うめ……」
「酒が欲しい」
「オフにしろよ」
各々が机で向き合い、お盆に乗ったおかずを突っつきながら会話する。よくある食堂の活気がそこにあった。
「おい、さっきMon3trが廊下走り抜けてったんだけど」
「あぁ、さっき束主任が追いかけ回されてた」
「なんかやらかしたんだろいつもの事だ」
「笑いながら走ってたけど、笑い声にドップラー効果ついてたぜあの人」
「マジかよ人間じゃねぇや」
怒涛の1日だった。食事を終え、彼らは寮へと戻っていく。監査から始まり、サクリファイスとの戦闘、そして訓練と、お世辞にも平和とは言えないものだったが、充実したものであるのは間違いない。そして、願わくば平和な1日が毎日続く事を願いながら、彼らは就寝するのだろう。
テレビ番組の収録を終え、楽屋に向かった男は、扉を開けた先に待っていた人物を見てそれまで繕っていた人の良さそうな雰囲気を捨て、澱んだ目で楽屋へと入る。
「選挙に向けて順調のようね、ブリンガー長官?」
「何の用だ、サラ」
失礼するわね、と楽屋に置かれた椅子に座るサラにブリンガーは話を続けろ、と言わんばかりの表情だ。この女が現れる時、それは何かしら起きた時か、それとも──
「例のモノが完成したのよ、貴方が齎した情報のおかげでね」
「そうか……」
アナハイムの警備状況に穴ができる、治安局に流れてきた情報を、讃頌会へと横流ししたブリンガーはその結果に満足した様子だ。
「アナハイムだったか、首尾は?」
「順調、とまでは言えないわね。目的は果たしたけど、幾つか手駒は失った」
強引にした結果、証拠も残す形になり追及は免れない。しかし、それでも敢行したのには訳がある。はっきり言えば、讃頌会の祭司を含め上層部は焦っていた。思った以上に事がうまく運ばず、空振りばかり。『始まりの主』の顕現が遠のく事に焦りを感じ、今回の件に発展している。だが、それもチャラに出来るほど、成果はあった。
「既に情報を元に量産化体制に入ったわ、ラマニアンホロウでね」
「ならいい……このまま行けば俺も更なる権力を得られる。全ては再創の為にな」
「ええ、その時は近いわ」
ふふふ、と人によっては魅惑的な、しかし破滅的にも思わせる笑みでサラはそう告げる。
【ルール】
・自分の転生キャラになりきること(解釈違いを恐れるなかれ!)
・キャラ達の原作でやらない行動はできるだけ避けること
今回は紹介なし。ただ食堂のネームド達は皆食事に関係した作品のキャラ達である。分かるかな?お粗末!