今も爆発音があちこちから響くコックピット。その中で2人は計器類が示す針の動きに注視していた。
「右翼エンジン喪失!」
「燃料カット!あとは左だけでなんとかする!」
報告は端的に。しかし、次々と挙がる報告はどれも悪い兆しを示すものばかり。操縦桿を握る手にも嫌な汗がじわりと滲む。
「くそっ、良いニュースの一つくらい聞きたいぞ」
「幸いなのは、繭が目覚めていない事でしょうね。これで運転中に出てこられたらお手上げです」
一応、艦内を監視できるようライカンさんの仲間、リナと言ったメイド服の彼女がいる。しかし、サクリファイスが目覚めてしまえば1人で持ち堪えるのは無理だ。
「現在地」
「ルミナスクエアを抜けています、燃料も半分切りました」
何処か無線で繋がれないか、と通信機をいじり、ヘッドホンを耳に当てる。ジジ……とノイズ塗れでとても繋がるようには思えない。
「チッ」
苛立ち混じりに舌打ち。ヘッドホンをぶん投げ、思案する。最初は順調だった。するすると傭兵達を鎮圧し、後は飛行船を確保するだけ。しかし、向こうは万が一を考えていたようだった。というのも、傭兵が隠し持っていたスイッチによって、飛行船内部に仕掛けられた爆弾が作動。飛行船に乗っていたライカンさんと俺はその余波をモロに受けた。
不幸中の幸いなのは、一部の爆弾が不発だった事だ。破壊が不完全だったから飛行を続けることができた。逆にサクリファイスがそのまま残ったという悪い部分もあるが。
──現場に到着、部隊を展開する。
──助かる!座標を教えてくれ、そっちにできるだけ誘導する!
脳内で仲間と会話しながら目一杯操縦桿を上へとあげる。必死さとは裏腹に、飛行船はゆるゆると緩やかな滑空を続ける。その時だ、再び艦内で大きな爆発が起こる。ビー!ビー!と警報が五月蝿い。
「ライカン!サクリファイスが!」
操縦室へと飛び込んできたリナの一言で、2人は凍りつく。
「……泣けるぜ」
「……」
投げやりに呟く。悪い予想が当たってしまった。こうなると、抑えに行かなきゃならない。危険な仕事だ。暴れるサクリファイスを抑えつつ周りへの被害を抑える。迷ってる暇はなかった。
「俺が行く……ライカン、ここを頼む」
「承りました……レオン様!」
操縦席を立ち上がり、ライカンと席を変わり操縦室を出ようとするレオンを、ライカンは呼び止める。
「なんだ?」
顔だけを覗かせるレオンに、ライカンは力強い視線を向ける。
「──ご武運を」
「……鳥になってこい、って言われるかと思ったよ」
軽口で応え、今度こそレオンは走る。後ろにはリナも付いてくる。2人で暴れるサクリファイスを抑えなきゃならない状況に嘆きたくなる気持ちをグッと抑え、ボロボロの艦内を走っていく。既に向かう先からは爆発音と破壊音のオンパレードである。
音を辿って熱と爆発によって歪んだ扉を蹴破り、中に入る。そこには既にサクリファイスがいた。ギョロリと、肥大化した歪んだ瞳でレオンを見る。
『gyagya!』
玩具を見つけた子供の如く悦びの感情を漏らすサクリファイスは、四肢に生えた触手を鋭い槍のようにこちらへと勢いよく伸ばしてくる。それを横に転がり回避。爆発はまだ続いている。視界が悪い。それでも、レオンは鼻を鳴らし立ち上がる。
「レオン様!」
運良く先ほどの攻撃に当たらなかったリナが心配の声を残すが、今そちらに目を向ける訳にもいかない。
「大丈夫だ!援護を頼む!」
ジャケットの下、ホルスターから愛用の拳銃を取り出して構える。
「また化け物か……少々飽きたが付き合ってやるさ」
爆発音が鳴り響く中で、レオンは化け物と対峙する。
ニュース速報が報道され、既に街はその話題で持ちきりだ。なにしろ、現物が街の上空にあるのだから。それをみる視線の色は半分が興味、そしてもう半分は危機感だろう。既にあちこちから爆発と共に炎を巻き上げ浮かんでいるのだ。誰がどう見ても墜落するのが目に見えている。飛行機と違い、飛行船な分ふわふわと速度があまり無い為、その一部始終がハッキリと分かってしまうのだから。
「参ったな……」
たまたまルミナスクエアに来ていたアキラもその様子を目で見ていた。あれが街に落ちたら大惨事は間違いないだろう。何かできることはないか、そんな風に考えた。そうして悩んで出した結論は
──フィランソロピーを頼ろう。
まだ自分達がどうするのか、身の振り方をあちらに伝えていなかったが……今それを気にする余裕もない。とにかく動かなくてはならない。連絡窓口は前に教えてもらった。極秘で動く彼らは、通信などの連絡手段を嫌う。特定の場所に行く必要があった。ちょうどそれは、ルミナスクエアの一角にあった。
「ここだ!ええっと……アギ、Ω?」
読み方のわからない店の看板に困惑するが、言われた場所はここで間違いない。普段ならまず入ることがない高級な飲食店のようだが、人気はなかった。扉を開けて入れば、呼び鈴の音が響く。
「いらっしゃい」
奥から現れたのは、洋、といった感じ全開の料理服に身を包む男性だ。人の良さそうな笑みを浮かべこちらを見ている。確か、確認の為の合言葉があった筈だ。
「……ステーキを、焼き加減は弱火でじっくり」
「あぁ、君か。さ、奥に来て」
そう言って男性に案内されて、着いたのはポツンと真ん中に机だけが置かれた殺風景な部屋だ。その机の上には、古風な黒電話が一つだけ。
「いやぁ、今大変なことになってるね」
「……貴方も、彼らの?」
「そ、俺もフィランソロピーのメンバーだよ。津上翔一です、どうぞよろしく」
そう言って手を差し出してくるので、手を握り返し、言葉を返す。
「アキラです……今、外は飛行船の事で持ちきりです。僕たちも、何か出来ないですか」
「うーん……」
翔一さんはその言葉に腕を組み悩む。そうして数秒の沈黙の後、こう言った。
「その件で、僕たちも動いてるよ。あの飛行船には僕たちの仲間も乗ってる」
「そうなんですか!?」
「あぁ、あれには化け物が沢山積まれてる。街に落ちれば大惨事は間違いない」
その言葉に、顔からサーっと血の気が引く思いだった。彼らが指す化け物とは、あの悍ましいエーテリアスの事だ。それが大量に?ホロウ外で活動できるエーテリアスなど、大混乱だろう。
「ッ……僕たちも何か!」
「うん、分かってる。今こちらも飛行船のルートを絞っていてね。おそらく郊外のホロウに堕ちる」
「郊外……」
行ったことがない場所だ。しかし、fairyがいる今なら何処でもホロウの事なら一定の仕事ができるだろう。
「フィランソロピーで部隊を編成して向かおうとしてるところなんだ、君がプロキシとして先導してくれるなら安心できる、合流はエネの案内がある筈だ」
「任せてください」
力強く、頷きを返す。その様子に翔一さんはにっこりと笑うと、自分の肩をバシバシと叩く。
「気負わないで、なんて言っても君は気負うだろう。だから、僕から言えるのは一つだ」
──君たちは1人じゃない。同じ目的、同じ目線で共に走る人達がいる。忘れちゃダメだぞ。
そう言って、彼は太陽のように笑うのだ。
「……はい!」
アキラは店を出てH.D.Dがある我が家へと走った。
ファンファンと、警告を告げるサイレンが鳴り響く。車の屋根に取り付けられたスピードからノイズ混じりに周囲に避難と道ゆく車に退避を命じる声が響く。
『緊急です!避けてください!』
止まった車の合間をパトカーがすり抜ける。その車内では、ハンドルを握る女性と、助手席の窓から身を乗り出し空を見上げる童女のようなツインテールの彼女。
「先輩!顔出しすぎです!怪我しますよ!」
「あいや、待たれよ朱鳶。今方角を計算しておる」
そのパトカーに乗っていたのは、青衣と朱鳶だ。彼女らは市民に避難を促しながら飛行船を追っていた。本来、それは他の治安官の仕事だったが朱鳶が名乗り出たのだ。しかし、それを受けて責任者であるブリンガー長官はいい顔をしなかった。曰く、危険だと。
「どうしてですか!?あれを野放しにしては街がどうなるか……!」
「そ、その通りだが、君らには別の任務が──」
「市民の危機ですよ!?そんな事よりもあれをどうにかしなくては……!」
「……安心したまえ。す、既に別の部署に頼んでいる、市民を危険な目には合わせないとも」
そう言うブリンガー長官の目は泳いでいた。今起きている事態に冷静ではないのが一目瞭然だった。しかし、いくら朱鳶が主張しても、ダメの一言。暖簾に腕押しだ。
「──良いんじゃないですか?長官」
そんな2人のやりとりを見兼ねたのか、1人の男が部屋に入ってくる。朱鳶が振り返れば、そこにいたのは朱鳶や青衣の上司に当たる人間。
「リンドウさん!?」
「よ、朱鳶。相変わらず元気だねぇ」
緊急事態の中で、リンドウの様子はいつもと変わらない。袖の短いコートに身を包み、片腕を義手にした男。禁煙にも関わらず署内でタバコ片手に歩いている姿はいつも通りだ。
「それはどう言う意味だ、リンドウ」
長官が、発言の意図を問いただす。彼は柳のようにヘラっと笑う。
「いやぁ、我らが長官様の思慮には頭が下がりますがね。今こそ治安局の立場を盤石にする絶好の機会だと具申しますよ」
「……ほう」
「今こうしてる間にも、危険が迫ってるんだ。本人がそう言うなら行かせてやるべきでしょう。ほら、あとでキツーく部下には言っとくんで、今はどうかお目溢しお願いしますよ、長官」
朱鳶の横を通り過ぎ、長官の前へ出るリンドウ。朱鳶には周りにバレないよう、一瞬だけ彼女にウィンクする。その意図は。
──ほら、早く行けって。
言葉なく伝えられたそれに、朱鳶は遅れながら気付き、失礼します。とお辞儀一つして部屋を出た。そうして先輩を連れて外へ出たのだ。彼はきっと、最初から時間稼ぎが目的だったのだろう。長官の気を引いてるうちに出てしまえ、と。
朱鳶は彼のことがあまり好きではない。いつも自堕落で、タバコだって処構わず吸っていたし、書類仕事から逃げる所を朱鳶が怒っていた。だが、こうした事態になった時、いつも彼は責任を1人負って部下の背中を押す人だった。
「朱鳶?」
青衣の言葉にハッと、思い出していた記憶から抜け出す。まだ飛行船は空を飛んでいる。
「計算してみたが、どうも飛行船は郊外へ向かっておる」
「郊外……」
まず治安局の管轄外だ。しかし、だから何もしないという選択肢など朱鳶には無かった。
「行きますよ、先輩」
【ルール】
・自分の転生キャラになりきること(解釈違いを恐れるなかれ!)
・キャラ達の原作でやらない行動はできるだけ避けること
転生者その17
掲示板ネーム正義の系譜。登場作品は仮面ライダーアギトより津上翔一。この世界ではVIPから市民まで、様々なお客様が来るフレンチレストランを経営している。個室などもあるのでお偉いさんの会談にも使われることがある有名店。
守秘義務は守っているが、それはそれとして掲示板で情報を横流ししている。
転生者その18
掲示板ネームフェンリル。登場作品はゴッドイーターより雨宮リンドウ。オラクル細胞を持ってるのでこの世界でもし暴走でもしたら更なる地獄が確定する。意地でも死なないつもり。エーテルでも捕食してバレット生成とか出来る。好きな弾は脳天直撃弾。