ハッピーエンドを目指して   作:上条@そぉい!

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毎回戦闘描写だけは自信がないです。伝わるといいのですが。


biohazard zzz

 鋭い刺突。触手が襲いかかる。それを横に走り避けていく。それを追いかけていくように幾つもの触手が走る自分の背後を突き刺していく。ドドドッ!と耳に入る音がやけに生々しく、背中に冷たい汗が伝うのを実感した。

 

「──ッ!」

 

 走りながら片手で発砲。あまり狙いを付けず飛んでいく弾丸は幾つかサクリファイスにバララッ!と着弾する。しかし、煩わしそうに震えるばかりでダメージらしい反応がない。

 

「9mmじゃ無理か!」

 

 隣の部屋へ繋がる扉に体当たりしながら転がり出る。身を低くした自分の上を触手が通過していくのを肌で感じながら思案する。

 

──こっちの攻撃が余り効果的じゃないな

 

 そこらのエーテリアスならこれでも怯むなり反応が返ってくるが、相手はその域にはいないと言うことだろう。と、なれば相手に有効な攻撃手段を探す必要がある。リナのお付きボンプの電撃なら自分より攻撃力はある筈。しかし、サクリファイスに正面からというのは無理だろう。自分が気を引く必要がある。

 

「っと!」

 

 走る自分に向けて、壁を突き破りこちらに迫ったサクリファイスは、肥大化し原型のない触手の手で瓦礫を投擲してきた。それをスライディングで避けて、地面を滑りながら姿勢を変えて更に発砲。それに応じるように、化け物の背を電撃が貫く。

 

「いい援護だ」

 

 その隙に銃の再装填を済ませ、再び走る。的確にこちらを狙う相手に対して足を止めるのは悪手だ。的を絞らせないよう走り続ける必要がある。艦内は金属を多用した構造だが、相手の触手はまるで紙細工のように易々と破っている。一撃でも貰うのは不味いと理解できた。

 

「さぁどう出る……!?」

 

 このまま時間を稼ぎながら戦闘を続ければ、飛行船は安全に不時着できる。そうすれば郊外に待機している部隊とサクリファイスを処理できる筈だ。だが、レオンは知っている。往々にして予定調和で進んだ試しなどない事を。ズズン……と低く響く、一際大きい爆発がどこかで起きた。酷く揺れ、レオンの体は振り回される。

 

『GYAA!!』

 

 そして、その隙を見逃すサクリファイスではない。当然姿勢を崩すレオン目掛けて体ごと飛び込んでくる。咄嗟に両腕を前に交差させ、防御体勢へ。しかし、それよりも先に部屋そのものが崩壊、レオンの立つ床ごと下へと崩落する。

 

「な」

 

 言葉は続かなかった。ゴウンゴウン!と派手な破壊音と共に落下。まるで洗濯機の中に体ごと突っ込んだみたいに、四肢をあちこちにぶつけながら落ちていく。そうして背中から派手に何処かの床へと衝突し、ようやく止まった。運がいいのか悪いのか、瓦礫が彼の頭上を落ちることはなかった。しかし

 

「くそったれ……」

 

 落下の衝撃で酷く痛む体を無理やり起こす彼は、自分の右肩を見る。刺さっていた。決して小さくはない金属片が深々と。炎の匂い混じる空間で、顰めっ面のまま悪態を吐く。

 痛みを堪え、恐る恐る金属片を片手で掴む。それだけでズキリと酷く痛むが、歯を食いしばり一気に引き抜いて投げ捨てる。

 

「ぐうッ……!!」

 

 出血する事も考えると不用意に引き抜くのは危険だが、そうも言っていられない。今動くのに邪魔だ。

 

(ここは……)

 

 周囲に目を向ける。狭い部屋の多い艦内では珍しい広々とした空間だ。天井が崩れ大小様々な瓦礫が散乱しているが、それでも十分広い。恐らく貨物を積み下ろす為のエリアだろう。確か、最下層に位置していた筈。随分と上から落ちたらしい。

 

『GYA!』

 

 金属の床を陥没させながら上から降ってきたサクリファイスは、此方を既に見つけている。

 

「来いよ。ハンデには丁度いい」

 

 ゆらりと立ち上がり、血の垂れた両手で銃を構え直す。どんな状況だろうと余裕を失ったら負けだ。緊迫した状況でこそいつも通りであれ。

 

『GYA……』

 

 サクリファイスには、人間のような表情を形作るものは存在しない。こちらを視認するため肥大化した瞳だけだ。それ以外は全て他者を、或いは物を壊す為だけに存在している。そんな化け物。だが、レオンの目には確かに今、悪辣な笑みを浮かべたように見えた。自分の直感に身を任せ後先を考えず横に跳ぶ。

 

 轟ッ!!と。

 炎が渦巻く触手が頭上から降り注ぐ。まるで意思を持ったような炎の動き。よく見ればサクリファイスの触手が炎を纏い向かってきている。少しでも跳ぶのが遅れていれば串刺しだ。

 

(こいつ……学習してるのか!?)

 

 以前のサクリファイスにはない動きと発想だ。避けられ続け、意味がない事を悟り学習したのだろう。驚嘆するべきはその速度だ。知能が低かった今までとは一線を画すもの。そして、変化はそれだけではない。

 ボコボコと体表を泡立てさせ変形していくサクリファイス。今まで見せていた生物的な肉塊の姿から、つるりとした白い生物装甲がちらつく細い翼の生えた姿へと変化した。まるで天の使いのような姿だ。

 

「こいつは……」

 

 レオンは覚悟した。コイツをここで倒す覚悟を。この化け物を外に解き放ってはならない。

 

『GYAAAAA!!!』

 

 ビリビリと空気が震える咆哮をあげ、翼の先端にエネルギーを溜め始めた。銃弾をありったけ喰らわせても怯みもしない。

 

「クソ!」

 

 走る。もはや銃ではどうしようもない。リナも、すぐには援護には来れないだろう。自分がどうにかするしかない。万事休すと思われる状況でも、レオンには考えがあった。

 

(ここは貨物用のエリア!だったらある筈だ!)

 

 そうして走るレオンの目には予想通り、目的のものがあった。壁に備え付けられた、先端にフックのついたワイヤーだ。恐らくは積み込んだ貨物を固定する為に使われるものだろう。リールで巻取り式になっているワイヤーを掴み取り、引き出しながらあのサクリファイスに向かって走る。

 

「これなら──」

 

 どうだ!とワイヤーを掴んだままサクリファイスの周囲を走り回り、十分だと思ったところで、近場の壁の取っ掛かりにフックをガチン!と嵌め込む。

 

「お前も積荷なら、大人しくするんだな!」

 

 壁と壁を繋がるワイヤーの根本、電動巻取り式のスイッチ目掛けて残り残弾僅かの拳銃で狙い撃つ。

 

 バチン!!と火花を散らし起動する巻取り。それは強烈に引っ張り、ワイヤーに絡め取られたサクリファイスをキツくキツく、締め付ける。それはバキバキと白い装甲を砕きながらじわじわとその身に食い込ませていく。

 

『HOOOOO!!!』

 

 しかし、相手だって馬鹿ではない。締め付けられ痛みで叫ぶが、溜められたエネルギーは十分だ。指向性を持たずその場で炸裂するエネルギーは衝撃波となってこちらに殺到した。防御体勢を取ったところで無意味。大の大人がまるで紙のように吹き飛び、強かに壁へと激突する。

 

──

 

 呼吸が止まる。意識がまるで粘土みたいにぐちゃぐちゃだ。脳震盪でも起こしたかもしれない。だが、これでサクリファイスの足止めはできた。いや、このまま締め付ける勢いを維持できたならワイヤーで四肢の切断も出来るかもしれない。そんな希望を多分に含んだ予想は、ドロドロの視界で裏切られる。

 

 ビビ……と。

 じわりじわりとワイヤーの繊維が少しずつ千切れていくのが見えた。鋼鉄製のワイヤーが、である。

 

(くそ……ここを逃したら、もう)

 

 焦りとは裏腹に、ゆっくりとした動きしかできないレオンは何か無いかと周囲を探す。そして、見つけた。炎と煙の中、赤いランプに照らされ鎮座する消防斧を。これしかない。そう直感した。

 

「間に……合え……!」

 

 這いずるように、手を伸ばす。透明なガラスで保護されているそれを、肘を叩きつけて割り、消防斧を手に取った。もう時間がない。奴を抑えていられる時間は僅かだ。

 

「喰らえ……!」

 

 一歩一歩、早く動けと命令しても鈍い足でサクリファイスに近寄り、斧を振り上げる。狙うは一つ。サクリファイスもエーテリアスも弱点は存在する。エーテルによって生まれた化け物には共通して、コアがある。それを壊せば存在を保っていられなくなる。つまり消滅だ。体内にあるであろうそれを狙い、全身全霊で斧を振り下ろした。

 結果がどうなったのかを見届けるより先に、今までで一番激しい爆発音と大きな揺れが起こる。最後にレオンが感じた一瞬の浮遊感の後、意識が消えた。

 

 

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