ハッピーエンドを目指して   作:上条@そぉい!

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本番目前。一方その頃。

 ホロウに突入し、見たのは天を衝くエーテリアスだった。目の前で消滅していく様子を見た。それを成したのは、その足元にいた人々だ。

 

「治安局です!」

「御用改め、と言いたいところであるが」

 

 どう見ても、いつも見るホロウレイダーのそれではなく、なんなら一部始終を見る限りあのまま放置していればホロウ内外を問わず危機に陥っていただろうエーテリアスを討伐した人達である。犯罪者として接するべきか、青衣は迷っていた。なので。

 

「説明をしてもらいたい、何があったのか。そしてあのエーテリアスは何なのか」

「誰が来たのかと思ったら、君達か」

 

 腹を抑え、シリオンの執事に肩を貸されながらこちらに歩み寄るのは私達がよく知る人物だった。

 

「レオン!?」

「……ふむ、お主だったか」

 

 思いもよらない人物の登場に驚く朱鳶と、なんとなく今回の件がどういうものなのかを何となく察した青衣。

 

「説明はもちろんさせていただきますが……このままだと、この場にいる皆口封じされる可能性が高いと思いますよ」

 

 そんな私達、いやその場にいる人たちにそう言ったのは、スーツ姿の男。片手に鉈を持ったメガネの男性だ。

 

「この街の、根深い所が起因する事件ですので、治安局に報告したところで恐らく揉み消されるでしょうし、この場を目撃した貴女達も例外ではないでしょう」

 

「脅迫……ではないのだろうな」

 

 青衣はあり得ない話ではないと感じ、朱鳶は信じられないまでも、今まで見たこともないエーテリアスを見て、そうなのではないか、と思い始めていた。

 

「そうですね……この際です。皆纏めてご招待しましょう、我が社に」

「我が社とな……?」

「ええ、私は会社アナハイムの秘書を務めている、七海と申します」

 

 アナハイム、その名前を聞いてTOPS企業入りを果たしたとニュースになっていた事を思い出す。そんな会社の名前を出し、そしてそこの秘書がこの事件に関わっている事。全てが線で繋がっているような気がしてならない青衣。

 

「お断りします」

 

 思案に耽る青衣を他所に、はっきりと断るのは朱鳶だった。今話したことに確証はなく、全て事実である保証はないのだ。公平に、治安官として判断するのではあれば先ずはこの場にいる者達を確保し、この場を調査し、裏取りをしてから初めて話を聞くだろう。模範とも言われる朱鳶らしい判断だった。

 

「朱鳶」

「なんですか」

 

 あちゃー、と表情に出さぬまま困る青衣を置いて朱鳶に声を掛けたのはこの場にいる誰よりも酷い怪我しているレオンだった。

 

「頼む」

「……」

 

 その言葉に黙る。レオンとは知らない仲ではない。その性格と正義感を知っている。その彼が頼んでいる。その意味と想いを知る朱鳶は、言いたい事を飲み込んで、溜め息を吐く。普段の彼女ならしない選択だ。どんな事情であれ、それはそれ、これはこれ。それが朱鳶という女性だ。

 

「……今回だけですよ、レオン」

「すまない」

「というより、貴方そんな怪我で大丈夫なんですか?」

「いつもの事さ、気に──」

「お言葉ですが、レオン様。どう見ても重傷です。素人ながら私の目から見て、恐らく骨が折れているかと」

 

 強がるレオンに水を刺すよう、ライカンはそう進言する。

 

「やっぱり重傷じゃないですか!」

「いや、これはだな」

 

 詰められるレオンは、今ばかりは優秀な執事を恨みたくなった。

 


 

 

223:超余裕瀕死

と、言うわけで事件は収束した

 

224:zzzを救いたい転生者

お疲れ様ー。何とかなってよかったよ

 

225:zzzを救いたい転生者

読んで字の如く瀕死とは恐れ入った

 

226:瓦落瓦落

間違いなく、今回一番体を張ったのは彼ですからね

 

227:実力派エリート

後は俺らの仕事だね。フライトレコーダーは回収した?

 

228:zzzを救いたい転生者

したよー、サクリファイスの残存物質やら飛行船内の残った証拠は全部回収済み

 

229:白い悪魔

ふっふっふ、最初は事後処理の事で頭一杯だったけど現場にいち早く着いたお陰で余計な横槍も証拠もない。これならお咎めはない、はず。

 

230:zzzを救いたい転生者

そこで言い切れない辺りが社長だよな

 

231:瓦落瓦落

まぁ、社長にはこれから説明会をしてもらうので負担で言えばイーブンってところでしょう

 

232:白い悪魔

あー!聞きたくないー!

 

233:zzzを救いたい転生者

実際、見た人の口を物理的に塞ぐ可能性ってあるの?

 

234:実力派エリート

あると思うよ、割と。原作でも罪をでっち上げて虚狩りを拘束した事あるし

 

235:zzzを救いたい転生者

何の後ろ盾のない一般人じゃそのまま……って流れか

 

236:zzzを救いたい転生者

だからその前にこちらで保護するって事だな

 

237:白い悪魔

どうせなら、巻き込んで今度の作戦に協力してもらうよ。間違いなく奴らは動くからね。

 

238:zzzを救いたい転生者

今回のサクリファイス密輸事件も何が目的だったのか不明だしな

 

239:電脳少女

ポーセルメックスのサーバーに侵入してみましたが、どうも証拠の残るやり取りは口頭でのみしてるみたいです

 

240:zzzを救いたい転生者

警戒度たっかくない?

 

241:zzzを救いたい転生者

どう見ても何かやらかす前の準備です、本当にありがとうごさいました

 

242:zzzを救いたい転生者

そりゃ、今回を含めたらあいつらの企み何回阻止した?相手だって馬鹿じゃない

 

243:超余裕瀕死

どうにかして諦めさせる方法があればな……

 

244:zzzを救いたい転生者

その前にお前ははよ休め!大怪我してんでしょうが!

 

245:黒男

火傷数十箇所、骨折数箇所に、数針縫う大傷。後ちょっと激しい動きがあれば肋骨が肺に刺さってたぞお前さん

 

246:zzzを救いたい転生者

瀕死じゃねーか!

 

247:超余裕瀕死

今わかりました、宇宙の心は彼だったんですね

 

248:zzzを救いたい転生者

カトってる場合か!寝ろ!

 

249:超余裕瀕死

いやまぁ、こうでもしないとすぐに気を失いそうなんで……空元気だよ

 

250:ドクター

Mon3trの世話になりたくなければ今すぐ寝る事を勧める。

 

251:超余裕瀕死

ういっす

 

252:zzzを救いたい転生者

流石姉御だぜ!

 

253:白い悪魔

さて、そろそろ本題、というかマジな話をしようか。今回の件を超えて、遂に我々が待ち望んだ、選挙の時が来る。必ず波乱が起こる。というか起こす。その為にパールマンも確保して不祥事の証拠は掴んでる。

 

254:固形蛇

そろそろ、作戦について話してもいいんじゃないか

 

255:zzzを救いたい転生者

お、ついに来たか。ずっと秘密が漏れる事を警戒して話さなかったもんな

 

256:瓦落瓦落

仕方ないとは思いますがね。あまり早くに準備のため動くと察知される可能性がありますから

 

257:zzzを救いたい転生者

では、その内容を聞こうか

 

258:白い悪魔

我々は白祇重工の先代が残した未確認侵食体、サクリファイスを確保する。それも、多くの人間が見ている前で

 

259:zzzを救いたい転生者

原作だと、揉み消されたんだっけ

 

260:zzzを救いたい転生者

なんやかんやで証拠が行方不明になりました、ってオチだったな

 

261:白い悪魔

それはさせない。だからメディアの前で公然と奪う。そうすればブリンガーは選挙のことも踏まえ無視はできない

 

262:zzzを救いたい転生者

公然と行われた犯罪を前に、無視したらブリンガーがどうなるかって話ね

 

263:電脳少女

間違いなく票は落ちるでしょうねー。

 

264:白い悪魔

あいつはアピールのため、市民に見える形で来るだろうその場を利用する。有耶無耶にはさせない

 

265:瓦落瓦落

そして、時期を見て我々アナハイムがそれを取り返した事にし、公表する訳です。オマケで今まで集めた讃頌会のデータも含めて

 

266:zzzを救いたい転生者

メディアは揉み消すんじゃないのか?報道しないとか

 

267:白い悪魔

そこでパールマンが残した不祥事の証拠。あれを一緒に出せばいい。市民はともかく、企業は無視できない。

内心がどうであれ調査しなくては自分が疑われる立場になる。ちょうど最近、クランプスの黒枝がいる前でやった奴がいるしね

 

268:固形蛇

だが、相手だって本気でくるぞ。適当にでっち上げて治安官やらを出すだろう。

 

269:白い悪魔

わかってる。だから君たちに協力してもらう必要がある。きっと最大戦力も出すだろうからね

 

270:zzzを救いたい転生者

最大戦力……?

 

271:zzzを救いたい転生者

えー……もしかして?

 

272:zzzを救いたい転生者

虚狩り、だったりします?治安側にちょうどいますよね??

 

 

 


 

 

 命辛々で、危機を脱した上条は安堵する。何処かも分からない所でエーテリアスに出会ってしまったのだ。なんとか倒す事には成功したが……

 

「ここ、何処なんだ……?」

 

 特殊なホロウとは聞いた。だがやけに気持ちの悪いエーテルの他に変わった様子はない。問題があるのは、キャロットと呼ばれる地図もなくホロウを抜け出すのは至難である事だろう。運が良ければそれでも脱出は出来るだろうが、上条には望むべくもない。そんな時だ。まるで街中で、交差点ですれ違う人みたいに、バッタリと出会った。

 

「うおっ」

「?」

 

 まるで恋愛マンガみたいに、建物の角でばったりと。突然の人に驚く上条をよそに、出会った彼女は不思議そうな顔をするばかりである。

 

「あー……」

 

 白い服だ。袖もスカートの丈も短く、少し動けば見えてしまうかもしれない。思春期の男の子には少々刺激が強い見た目に、顔を逸らしながら居心地の悪さに声が漏れる。どうしたものかと。

 

「えっと、多分邪兎屋の人だよな?」

「……?」

 

 その言葉に怪訝な顔で返されてしまう。どうやら違うらしい。と、なると上条に挙げられる候補など居らず今度こそお手上げである。

 

「俺は、上条当麻。お前、でいいのか。名前は?」

 

 年は見た目からして自分と大して離れてるようには見えなかったので、なんとなくタメ口で聞いてみる。

 

「○○○○」

「え?」

「──○○○○」

 

 まるで文字化けを言語化したみたいな、言葉にならない声で彼女はそう言った。聞き返しても同じ返答が返ってくるから、彼女の名前がそれなのだろう。しかし、名前がわからないのも困る。ここは、便宜上の名前を呼んでみることにする。

 

「俺には分からないし……そうだな、シルバーって呼ぼう」

 

 彼女の白い髪と、その服から連想してそう呼ぶことにした。安直かもしれないが、結局のところ困った時は身体的特徴をそのまま名前にするのが分かりやすい。困ったのは彼女の体は機械仕掛けの義手と義足が誤魔化す事なく付けられており、それを名前にするのは憚られた。なのでシルバーとした。

 

「それで、俺、ここから出たいんだけど……出口、知ってたりするか?」

「……」

 

 でくち、と分かりやすいよう、単語として言ってみれば、どうやら理解できたようでコクコクと首を上下に振る。

 

「おおう!良かった!頼む!案内してくれないか!」

「──!」

 

 任せて!と言わんばかりにグッと表情を締める。そうして歩き出すので上条もその後ろをついていく。

 

「いやー良かった!シルバーが居なきゃまだ迷子になってたかも」

 

 まぁ、キャロットも無しにホロウに投げ出されるなんて日常茶飯事だけどな、と諦めたように笑う上条。返ってくる返事はないが、どうやら聞いているようで、表情を変えている。彼女は言葉が話せないのだろうか。手足の義手義足と言い、大変な身の上なのかもしれない。

 

「──ッ!」

 

 じゃあ色々話しかけてあげよう、そんな風に考える上条とシルバーの前に、再び地面から湧くようにエーテリアスが出現する。一歩後ずさる彼女の前に出て、上条は構える。

 

「下がってろ、俺がなんとかする」

 

 拳を構える。上条の戦闘力はそこらの一般人に比べ多少マシな程度である。一対一なら何とかできる。そこらのヤンキーと変わらない。そんな彼がエーテリアスとの戦闘を潜り抜けてこられたのは、その右手の特異性所以である。どんな時であれ触れた瞬間にエーテリアスは消滅する。

 

「ふん!」

 

 踏み込み、殴る。その右手で殴ればエーテリアスは消滅する。そうして時に相手の攻撃を紙一重で躱し、その右手で触れていく。しかし、今日の彼には守るべき彼女がいた。そして、そんな彼女の背後から忍び寄るエーテリアスが居た。

 

「危ねぇ!」

「──!」

 

 気がついた時には、すでにエーテリアスは彼女へ飛び掛からんと跳躍している。上条から見て距離は数歩。されど数歩。その拳が届くよりも早く、牙が彼女に到達する。

 

「──とぅ!!」

 

 その更に背後、高所から飛び降りてエーテリアスをその得物で叩き潰した。中世から飛び出したのかと見誤る鎧、岩みたいなゴツい甲冑を身にまとい、肩で担ぐのは身の丈は超えそうなほどでかい木の棍棒である。先ほどエーテリアスを叩き潰したのも、それだろう。

 

「貴公、大丈夫か」

「──」

 

 喋れない彼女は、その威容に少々引いている。誰なのかと上条が彼女を背中に庇い向かい立つ。

 

「誰だお前は?」

「む、そうであったな。我が名は……そうさな、今の格好ならこういうべきだろう。ハベルと」

 

 ハベルと名乗った、声からして男だろう彼は上条の肩をバシバシと叩き豪快に笑う。

 

「安心するといい、私が来たからにはもう問題はない。助けに来た」

「……?お前みたいな奴とは初めて、だよな?」

 

 まるで初対面ではないような気やすさに、上条が怪訝な顔をすれば、彼は耳元に口を寄せる。

 

「ヤーナム野郎、とは私だよ」

「──お前かよっ!」

 

 鎧を着た男に喋れない少女、一般人高校生の上条。まるでチグハグな冒険者パーティとなった御一行に、上条は幸先の悪さを疑うのであった

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