ハッピーエンドを目指して   作:上条@そぉい!

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あけましておめでとうございます。思いつきを形にしたかっただけの行き当たりばったりなこの作品も何故かここまで続きました。
途中で折れるかもしれませんが、今後ともどうぞよろしくお願い致します。


君をつれて行こう、争いのない未来まで

 ハベルは1人歩いていた。ガシャンガシャンと音を立てて歩く。たまに地面に固着したエーテルを触り、その感触を確かめながら、何処かを目指しているように見えた。

 

『何してるんです?』

「これは、私の習慣のようなものだ。私は一族の中でも特殊でな」

 

 夜守り人。代々ホロウと関わり続ける一族。体質なのかエーテリアスからも積極的に襲われない。言い伝えでは、かつてホロウに潜む者と契約を交わした結果だとかなんとか言われていた。ハベルは過去の事故によりエーテル侵食の後遺症を患い、その副産物としてある能力を獲得していた。

 

「夜守り人は夢を見ない。その代わり、ホロウに関わる夢を見るらしい。私はそれを限定的にしたものを見る。一種の明晰夢のようなものだ」

 

 ホロウに残されたエーテル残留物の中、ミアズマのような、その地に残る記憶を夢という形で見るのだ。

 しかし、それは決していいものではない。ホロウに残る記憶とは、多くの場合悲惨な末路を迎えた人々の最後だからだ。悪夢と言って差し支えないそれを、ハベルは数え切れないくらい見てきた。

 

「悪夢は巡り、終わらないモノとはよく言ったものだ」

『誰の言葉です、それ?』

 

 独り言を呟くハベルに聞き返すエネの表情はなんのこっちゃ、と困惑である。

 

「さて、夢を諦めなかった檻の男といったところだろう」

 

 そんな事を言うハベルは、その時一瞬意識が何処かへと飛んだのを自覚した。濃密で、数年は飛んだんじゃないかと錯覚するほどの一瞬。

 

「──なるほど」

 

 彼の目には、過去にこの場所を通った誰かの影が見えていた。鎧の中、瞳が細められる。無意識に棍棒を握る手を強くする。

 

『何か、わかったんです?』

「いや……かつてラマニアンホロウ内で人体実験をしていた連中がいたようだ」

 

 軽く見ても数年は経過しているだろう。既に首謀者も消えた過去の出来事。しかし、ハベルには今見てたものが、無関係のようには思えなかった。

 

「む……」

 

 進む先で、人影を見つけた。即座に腰を落とし姿勢を低くしゆっくりと進んでいく。こちらに背を向け立つ人影。近くで見れば、フードを被ったガタイのいい男だ。両腕を大きくエーテルに、植物のような根が侵食している。

 

『讃頌会の奴ですよ!仲間を引き連れてますし、ここはやり過ご──』

 

 エネが言い終わるよりも早く、ハベルは動いていた。その鎧でどうやっているのか分からない忍び足で背後まで近づくと、大きく振り上げた棍棒で一度頭を殴りつけ、膝をついた所をもう一度その圧倒的質量で上から叩き潰した。大男は、地面に倒れ伏したままピクピクと痙攣していた。

 

『何やってやがるんですかーッ!?話最後まで聞いてました!?』

「む、すまんなエネ殿。こう、背中を見るとつい致命を取りたくなってだな」

 

 当然、周りもその蛮族のような行いを目撃しこちらを見る。

 

「こ、こいつ何処から!?」

「やっちまえッ!」

 

 その手に握られた、花のような毒々しい桃色のコアを取り付けられた杖を翳せば、地面からズズズ……ッ!とエーテリアスがいくつも現れてくる。

 

『だーっ!どうするんです!?』

「当然、殲滅である」

 

 エーテリアスの牙が、爪が、ハベルを喰らわんと肉薄するも、その頑強な鎧に阻まれる。しかし、それでもダメージはあるはずだ。だがハベルには攻撃に対し怯む様子もなく、ただ己の武器を振るう。一回、二回と振るう度に決して少なくない数のエーテリアスが宙を舞う。讃頌会の信者に対しては、攻撃を受けながらも無視し、その背後に立ち殴打致命していく。数分もしない内に、争いの音は止んだ。

 

「一掃、完了である」

 

 一仕事終えた、と棍棒を肩に担ぐ。棍棒の先端は赤く、今も雫がポタポタと垂れていた。

 

『うへぇ……』

 

 グロテスクな光景に呻くエネは、できるだけその惨状を見ないようにした。

 

『敵ながら、ちょっと同情しちゃいますね……』

「同情の余地はないだろう。奴らはこれでも足りないくらい……人の尊厳を踏み躙ってきたのだから」

 

 冷たく言い放つハベルの表情は鎧に阻まれ見えない。しかし、その言葉の裏には言い知れない憎悪と憤怒を沸々と感じさせた。

 

「では行くぞ」

『何処にです?』

「記憶を辿る。どうやらこの先に進んだようなのでな」

 

 ズカズカと、死体を踏み付け歩くハベルは先ほど見た記憶を思い返す。一部始終を見た。まだ続きがある。

 

 

──皆!今なら逃げられる!行って!

 

 

 1人の青年が、牢屋に閉じ込められた子供達を引き連れ、走る姿があった。騒動があった。どうやら、研究所で騒ぎがありその隙に逃げ出すことができたようだ。

 

──君は、どうするつもりなんだ!?

 

 子供達の中に、スーツ姿の男がいた。服は所々破れてるし、髪型も崩れて血も流しているようだった。

 

──俺が、奴らを足止めします。この先に行けば、海へとつながる排水路がある筈です。子供達をお願いします!

 

 そう告げて、子供たちとは反対の方向へと走る青年。それを止めようと手を伸ばす男性を、建物の崩壊に伴う瓦礫の雨が阻んだ。

 

──!

 

 子供達が、青年の名前を呼んだ。子供達だって馬鹿じゃない。それがどういう意味で、青年が何をしようとしているのか分かっていた。子供達の体には無機質なナンバーが刻まれている。恐らく、実験台になっていた子供達なのだろう。そこまでしか、ハベルには見えなかった。

 

「……」

 

 鎧の中で疼く感情に蓋をし、ハベルは先を急ぐ。そうして、彼が記憶を辿り着いたのは、一つの廃墟だった。そこは無造作に放置された廃墟と違い、瓦礫も比較的少なく、地面にはあの時と同じようにエーテルの植物が根を張り巡らしていた。

 

『うわぁ……いかにもって感じですね。まだ生きてる警報装置とかもありましたよ、解除しましたが』

「助かる」

 

 歩くにつれ、ハベルの口数は減っていく。そうして、再び記憶を見た。一瞬の夢。

 

──怖いなぁ

 

 走る青年は、そう呟いた。目の前には、今まで彼や子供達を実験していた大人達である。彼らも逃げ出した子供達を捕まえようと必死だ。ホロウに隠されていた実験が外に漏れたら、それだけで彼らは終わりだからだ。

 幼い頃、青年はヒーローを夢に見た。弱い人々を守りたいと。形は違えど、今彼はその夢を叶えたと言えただろう。何の力もない。実験された産物か、人よりも身体能力が高いとは言え、囲まれて袋叩きに遭えばそれだけで死んでしまう。しかし、それでも。99%の怯えと恐怖に1%の勇気を奮い立たせ、青年は立ち塞がった。

 

──テメェ!タダで済むと思うんじゃねぇぞ!お前ら!1人くらい減ろうが関係ねぇ、殺せ!

 

 そうして、結末の見えた争いが始まった。青年は、男達の持つ得物で体を串刺しにされながらも、喰らい付いた。1人、1人と倒して。傷のない所なんてない有様で、立っていた。

 

──ひぃぃ……!お、お前は、何なんだ!?何が目的なんだ!?た、頼む命だけは……!

 

 さっきまでの威勢が嘘のように、膝をつき手を合わせて命乞いをする男。幽霊のように立つ青年は言った。

 

──正義、仮面ライダー

 

 カッコつかないけど、ようやく言えた。と青年は力無く呟き、最後の男にトドメをさした。終わらせた青年は、ズルズルと、もはや目的もなく歩いた。行先はこの道の先だ。

 

「……貴公の行く先に、太陽が在らん事を」

 

 記憶はそこまでだった。その先を見たければこの先へ行かなくてはならない。これは過去だ。今更変わる事はなく、ハベルの呟きは叶う事はないとしても、彼の覚悟に、想いに行く先を願わずにはいられなかった。

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