ハッピーエンドを目指して   作:上条@そぉい!

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書いててこいつは好き嫌い分かれそうだなぁと思いました、まる


深淵を歩く岩と狩人

 ハベルは追い詰められていた。鎧に亀裂が入ってから普段の動きがまるで出来ずにいたのだ。ノロノロとした、あまりに遅いローリングで今も間一髪攻撃を回避できた。しかし

 

──そもそも、回避をするということ自体が想定外。このままでは……

 

 ハベルの戦闘スタイルにおいて回避は最初から思考の外。その選択肢を取る、取らされているという状況は自身の窮地をそのまま表すのだ。なにより。

 

「攻撃の……!密度が……ッ!?」

 

 巨体から繰り出される爪の乱打。それは次第に頻度を増していき、最初は避けられたものが次第に掠るようになっていく。息も切らさず放たれる連打。こちらも攻撃して行動を阻むなりする必要があるが、攻撃を差し込む余裕がなかった。

 

「踊り子を思い出すな……!」

 

 ただの単調な攻撃ではない。フェイントを混ぜ込んだ嫌らしいもの。しかも、時々こちらの行動を見てから予測して攻撃もしている。

 再びローリングで距離を取るハベルは、背中に当たるものを感じ、何かと見れば、そこは壁。背後に逃げ場はもう無かった。目の前には鋭い爪がそこまで迫っていた。咄嗟に、武器を前面に構え、両手でガードする。

 

──ズドッッッッッ!!

 

 その爪の一撃はガードを容易く貫き、ハベルに直撃。後ろの壁を突き破り、地面を数度バウンドしながら転がった。バキバキ……ッ!とハベルの耳は自身の内から聞こえる鎧の砕ける音と、その内部の肉が潰れる鈍い音を聞いていた。ダメージはある。食いしばる歯の隙間から血がぼたぼたと垂れる。

 

「む……」

 

 幾つか重要な臓器にもダメージが入った事を頭の何処かで冷静に思考しながら、立ち上がる。ハベルが何よりも危機感を覚えていたのはダメージなどではない。彼にとってそれはさしたる問題ではない。では何か。

 カラカラ、と砕けた鎧の破片が地面へと散らばる。ハベルが何より恐れていたのは、鎧が壊れる事。

 

「……ふぅー……」

 

 鎧の内に抑え込んでいた狂気が、漏れる。肉が裂け骨が見えた左腕をダラリと吊り下げる。先ほどの攻撃でガードに使った武器は柄を残し、外装が砕けた。

 棍棒だったそれを右手で肩に担ぎながら、腰を少し落とす。それは、大剣。棍棒のうちに隠されていた剣。剣の表面には狼を模る模様が入っていた。

 

『まだ足掻くか……楽にしてやろう』

 

 サクリファイスとなった化け物から、声が聞こえる。先ほどの男のものだ。なるほど、もはやサクリファイスにあった理性が消えるという弱点は消えていたのか。先ほどの攻撃があれほど執拗だった理由をハベルは理解した。

 再び攻撃が迫る。それを前に、跳んだ。先程までの鈍重な動きが嘘のように俊敏に。

 

「ガァッ!!」

 

 空中でくるりと前転しながら、その勢いのまま剣ごとサクリファイスの頭上から叩きつけたのだ。着地して一回、二回と同じように叩きつける。反撃にサクリファイスが怯んで地面を揺らしながら後方へと後退する。

 

『馬鹿な……既に瀕死のはずだ!』

 

 間違いなく手応えはあった。爪の先端がハベルの命に届いたという感触があった。しかし、現実はまるで嘲笑うようにハベルの生存を許している。いや、それよりも。

 

(何故だ……何故奴の圧が増している!?)

 

 その目に宿る力強さが増している。先程よりも確実に。そして、動きも先程とは別物。まるで地を這う狼のような俊敏さと、鋭さをもってこちらの肉体を削りにかかっている。

 

「……」

 

 ハベルに上条達といた時の陽気さは無い。代わりに、周りの空気を歪めんとばかりに殺意の籠った瞳だけが爛々と輝いていた。

 

 

 ハベルは讃頌会を恨んで、いやそんな陳腐な言葉では表せないほど憎んでいる。

 この世界に転生者として生まれた彼はしかし、何の力も持たず生まれた。それに不満もなく、平穏に暮らしていた。今世の両親と仲睦まじく生活していたのだ。そんな時だ。彼が幼少期の終わりを迎える直前、両親が亡くなった。涙は流さなかった。彼も自身の死を経験している。悲しみも哀しみもあった。しかし、なるべくしてなる事だと理解していた。

 誰もが通る道。そう思っていた。それから彼は日銭を稼ぐ為、ホロウ内での仕事に従事していた。その時に起こった事故により、彼はエーテル侵食を受け、その後遺症によって記憶を夢の形で見るようになった。

 そして、両親が亡くなった時の記憶を見た。叫んでいた。手足を動けないよう固定され、何かの注射をされていた。苦しみ、もがいていた。

 

「○○、愛している」

 

 もはや最後を悟った両親は、最後の言葉を残してエーテリアスへと変貌した。

 

「──」

 

 嗚咽した。爪が割れ、血が出るほどに拳を握り締め、何度も何度も地面を叩いた。

 

「ふざけるな……!」

 

 死ぬ事に悲しみもしよう。怒りもしよう。だが、これは何だ?こんな死に方があっていいのか?こんな、こんな──

 ごちゃ混ぜになった感情の中でぐるぐると考えが巡る。こんなこと知らなければ、彼は仕方なかったと諦められた。心に蓋ができた。だがもう無理だ。

 

「こんな、こんな尊厳もない死があってたまるか──!」

 

 それから彼は、ホロウをひたすら潜った。記憶を見た。見て、見て、見た。そんな尊厳のない死を迎えた、成れの果てを潰して潰して、潰した。せめてもの慰めとして、弔った。しかし、彼の心が晴れることはなかった。むしろ、弔うほどに喉から這い出ようとする怨嗟の声は増していくばかりだった。それをどうにかしたいと考えた時、彼の脳裏に過ったのは、前世で好きだったゲーム達。

 

 狂気に嵌るならば、形を整えよう。見た目を繕え。内に狂気を抑えろ。そうして、彼の纏う鎧は彼を正気へと押し戻すものとなった。

 

 

「──!!」

 

 抑えられない狂気のまま、獣のような唸り声で再び跳躍。握られた大剣を再び振り下ろす。しかし。

 

『この狂犬がぁ!!!』

 

 サクリファイス、いや男は恐怖した。まとわりつく様な殺意を一度も感じたことのなかった彼は言い知れない恐怖があった。その感情のまま巨体を活かした薙ぎ払い。それは呆気なく、ハベルを吹き飛ばした。既に形だけしか残っていなかった鎧が完全に破壊され、中身を晒す。まるで投げ捨てられた玩具のように地面に叩きつけられたハベルは、無言のまま仰向けに倒れ、動かない。

 

『や、やったのか……?』

 

 恐怖から解放されたのか、と安堵の混じる声を漏らす男。しかし、眼前で音もなくぬらりと立ち上がるハベルに、今度こそ言葉にならない悲鳴をあげた。

 中身を晒したハベルの姿は、思いの外シンプルだった。黒いコートに、手足をガードするように取り付けられた金属製のガード。帽子と口元を覆い隠すマスク。より目立つのは、右腕が義手であることか。

 

「──行儀のいい真似は、やめだ」

 

 ハベルは、そう誰に言うでもなく呟き折れてしまった大剣を投げ捨てる。そうして、義手を横に持ち上げると、ガシャガシャ!と喧しい音を立て義手の一部が変形した。手の先から、まるでノコギリのようなギザ歯を持った刀剣が飛び出していた。もはや使い物にならない左腕で、ポケットから注射を取り出し、太ももに突き刺す。

 すると先程までノロノロとして動かなかった左腕がまるで新品のように動く様になっていた。その視線は、狂気に染まった狩人の様だった。




【ルール】
・自分の転生キャラになりきること(解釈違いを恐れるなかれ!)
・キャラ達の原作でやらない行動はできるだけ避けること


転生者その16
掲示板ネームヤーナム野郎。登場作品は… フロムソフトウェアゲーム全般。改めて紹介。簡単に言えばニンジャスレイヤーと変わらない。対象が讃頌会に向いてるだけで。第一形態とか第二形態、第三に第四と。まだ彼には戦闘スタイルがいくつもある。なんで主人公側なのにまるでボスみたいな形態変化仕様があるんでしょうねこの人。
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