ハッピーエンドを目指して   作:上条@そぉい!

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今回は少し短めです。私は今首無しに苦戦中です。神ふぶき周回面倒なんですよねぇ。


ここからがハイライト

 拳がサクリファイスの顔面を捉え、一撃で吹き飛んでいく。一つ一つがとてつもなく重く、まるでスイカが弾ける様な生々しい音。そこに派手さはなく、一つ一つ命を摘み取るもの。

 

「ハァッ!」

 

 まるで、舞うかのように清廉。サクリファイスの攻撃を避けた動きがそのまま、次の攻撃の準備になる。無駄なく攻撃を捌き反撃の拳や蹴り一つで沈黙させる。そういった類の強さ。

 

「──!」

 

 沈黙していた男が再び動き出す。その身に受けた傷を顧みず赤いマフラーを靡かせて。泥臭く荒々しい拳と蹴りで周囲を囲むサクリファイスを殺していく。

 

「君は……」

 

 助けに来た男。津上翔一は物言わぬまま隣で同じように戦う男を見た。エネを通して事情は聞いている。今も戦う理由も。

 止めるべきだ。彼はもう、戦わなくていい。だが──

 

「俺も、負けられないな!」

 

 腰についたベルト状の器官、その横のスイッチを片手で押し込む。するとそれまで金色だった装甲の色は赤へ。胸と右腕を赤く染め、肥大化させ、ベルトの中央から飛び出した剣を掴み取る。

 

「ハッ!」

 

 飛び込んできたサクリファイスを、超越した感覚で察知。下へと潜り込み、頭上目掛けて剣を突き刺し、そのまま引き裂く。

 

──それは、俺の役目じゃない。

 

 横目でこちらを見つめる少女を一瞥しながら向かってくるサクリファイスの面々を迎撃していく。翔一はこの場を収める事だけに専念する。

 敵は多い。だがこの場には仮面ライダーが2人ダブルライダーいる。そして、守るべき人がいる。だったら負ける道理などない。

 

「なんなんだ貴様は!?新しい生物兵器か!?」

 

 スーツの男は吠える。動揺を誤魔化すように。あれだけいたサクリファイスも在庫は底が見えている。このままでは自身も危ない。そう考えて、一歩後退した。

 

「かまちー!」

 

 少女の呼び声に反応して、彼女の相棒、狸のかまちーが隙を見て横からスーツの男の顔面へと飛びつき、爪で引っ掻いていく。

 

「ぐっ!やめろ!畜生が!」

「今更逃す訳がないでしょ!貴方の罪を数える時だよ!」

 

 前が見えなくなり、痛みから逃げるように蹈鞴を踏むスーツの男はそのまま尻餅をつき少しでも逃げようと暴れる。そこへ、柚葉がサクリファイスの攻撃を避けながら傘で男の頭を殴打。昏倒して地面に倒れ伏す男。ようやく大人しくなった。

 その裏では、サクリファイス達の鎮圧も区切りを見せていた。制御していた男を抑えられたのだ。もはやコントロールなど出来るわけもなく烏合の衆となった化け物に勝ち目は無かったのだ。

 

「……終わりかな」

 

 翔一は、敵の増援が途切れたことを悟り、構えを解かないままそう呟いた。周囲には、サクリファイスの肉片が転がり、足の踏み場もなかった。

 だが、赤いマフラーの男が止まることはなく、ツカツカとスーツの男へと向かう。その血塗られた手は既に握られている。後は振り下ろすだけ。

 

「ま──」

「止まって!」

 

 翔一が止めに入るより早く、柚葉が間に入り赤いマフラーの男を止めた。振り下ろされていた拳が、柚葉の眼前でピタリと止まる。ポタポタと赤い雫が落ちる拳を、少女は両手で包み、手を下ろさせた。

 

「もういいの」

 

 戦わなくていいのだと、柚葉は赤いマフラーの男の目を見て告げる。ゆっくりと、拳を解いていく。

 

「私ね、今幸せだよ」

 

 彼を解放する為、柚葉は言葉を続ける。辿々しく、自らの記憶を辿って一つ一つ丁寧に。

 

「友達ができたよ、不器用でガサツだけど、とても優しい友達。シンメトリーが好きな、幼馴染みたいな友達も。今度ネット友達も集めてグループを作ろうとしてるんだ」

 

 ただの近況報告。その言葉に赤いマフラーの男は静かに聞き入る。

 

「私、幸せだよ。毎日が、いっぱいいっぱい、楽しいよ」

 

 死ぬ直前、青年が願ったものは恨みつらみでもやり残したことでも無かった。

 

──あの子が、毎日幸せでありますように。あの子が、もう苦しまなくていい世界でありますように。優しい友達に囲まれて、笑顔でありますように。

 

 その願いは、ミアズマを通し『夢縋り』として形を成した。物言わぬ夢の残り香。

 

「──そうか」

 

 一言だけ。赤いマフラーの男は最初で最後の言葉を呟いた。血で濡れた手を柚葉の頭に乗せる、その直前で止めて。躊躇う彼の手を柚葉は掴み取り、強引に頭に乗せて微笑んだ。

 ほろほろと、赤いマフラーの男の体が崩れて輪郭を失っていく。エーテルが解けていく。願いの成就を見届けて。

 

「──」

 

 雫を目尻に溜めながら、柚葉は笑った。本当は感謝も言いたかったし、もっと色々話したかった。でも、別れがすぐ側にあるなら笑いたかった。だって、助けてくれた彼が最後に見るならそれは笑顔の方がいいと思ったから。

 それを前に、自らの赤いマフラーを柚葉の首元に巻いて男は静かに消滅した。

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