ハッピーエンドを目指して   作:上条@そぉい!

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いつも感想ありがとうございます。返信はしてませんが何回も読み直すくらい嬉しいです。引き続きお楽しみください。


動き出した作戦

 白祇重工とアキラ達により未確認侵食体。かつて白祇重工前社長がその命を賭け封印したサクリファイスを撃破し、完全沈黙へと至った。

 

「……まだか?」

 

 その裏で、もし何かあれば介入するつもりで気配を消しその様子を見守っていた蛇がいた。

 

『今じゃないです。この後治安局へ通報が行くはず。そして、その情報を聞いたブリンガーは間違いなく動きます』

「ならもう暫く静観するとしよう」

『そうですね……あの、スネークさん?』

「なんだ」

 

 話の中、通信先のエネがまるで歯にモノが詰まったような口ぶりで恐る恐る尋ねる。

 

『なんで、猿のお面とサンタ服なんです?』

 

 そう、今の彼は隠密とは裏腹に赤白のサンタ服を改造した服に、祭りの屋台で売られるような安っぽいデフォルメされた猿のお面をしていたのだ。

 

「今回、乱入することを考えた変装だ」

 

 スネークが今回の任務にあたり真っ先に思いついたものだ。今の自分は指名手配だ。バレる事のないよう変装をする必要があった。

 

「お前もやってみれば良い、そうすればわかる」

『いや、分かりたくないんで良いです……』

「…………もう既に周りには連絡したか」

『なんで残念そうにするんです……?あ、近くでシーザーさんが待機してますよ』

「ならいい……恐らく全力で追われる事になる。ここから休みはないものと思った方がいい」

 

 そして、治安官達が到着し、撃破され結晶化した未確認……もといサクリファイスを調べていく。その中で、ドタバタと子分を引き連れ大名行列のように現れたのはターゲットのブリンガー長官だ。

 

「報告を聞いて来たぞ!おぉ、現場担当は朱鳶に青衣か!流石我が署捜査課きってのエリートだ」

 

 現れた長官にビシッと綺麗に敬礼する朱鳶だったが、その目は以前のような尊敬の眼差しではなかった。疑念、疑惑。そう言ったモノを混ぜ込んだ目だ。

 

「それで、犯人は?」

「いえ、長官。犯人は居ません。通報者を襲ったのはエーテル活性の高い、未知の個体でした」

「つまり、ただのエーテリアスということか」

「通報者の証言では、機械を尋常ではない速度で吸収、成長したとの事で。前例のない性質です。何か新たな犯罪の産物である可能性が高いと思われます」

 

 報告しながら心の中で間違いであってほしいと願う。だが、そんな朱鳶の懇願にも似た祈りは。

 

「なに……?そうか……まずは精査せなくてはな。軽率に情報を発表すれば誤解も生まれよう」

「既にH.A.N.Dに依頼しています。専門的な分析を掛ければすぐに──」

「なに!?H.A.N.Dだと!?……ごほん、何もそこまでする必要もあるまい、鑑識課で問題ないだろう」

 

 普段であればあり得ない判断。朱鳶も長官には考えがあってのことだと引き下がっただろう。

 治安局はあくまで治安維持を目的とした組織。ホロウに対する対応もできるが専門家ではない。より確実性を求めるならH.A.N.Dの人員を派遣するべきである。

 疑念が疑問へ。そして疑いは強くなっていく。

 

「ですが長官!」

「おぉ!そうだった。君たちには重要な任務を──!」

 

 言葉を荒げた朱鳶に、長官は遮るように大声で仕事を振ろうとした。しかし、その声は途中で大きな爆発音によって遮られた。

 

「何事だ!?」

 

 彼らが爆発音に振り返った時、結晶化していたサクリファイスが粉々になり、その中から一層煌びやかに光を受けてキラキラと反射する宝石のようなものがあった。

 

「──あれは!」

 

 長官が声を上げ走り寄る。その前に。

 

「──これは私が貰う」

 

 横から突如現れた男がそれをキャッチした。顔がわからないよう猿のお面がされ、紅白の目立つ服装だ。

 

「貴様は!?」

「……闇を暴く者とでも言っておこうか。これがあれば讃頌会の企みは白日に晒される」

 

 讃頌会。その言葉にぴくりと長官としての仮面が剥がれ掛ける。その脳内を占めていたのはここで阻止しなくては自分の、引いては計画に支障が出る可能性もある。

 予め話を聞いていた朱鳶はその様子に悔しそうに顔を俯かせ。青衣は現れた男の姿に腹を抱えて笑っていた。

 

「捕えろ!」

 

 その一言で周囲の治安官が男を取り囲み一斉に飛び掛かる。その寸前に空から土煙を巻き上げながら現れるバイク。

 

「乗れ!」

 

 差し出された手を掴み、その後ろへ飛び乗るとすぐにバイクを走らせ逃走。呆気に取られる治安官だったが、慌てる長官の怒鳴り声でその後を急いで追いかけて行った。

 

「──いい写真、ゲットだ」

 

 その背後、誰にも気が付かれないよう隠れて一眼レフのカメラを構えた男がいた。

 


 

 

「はー、また仕事ですか?課長」

「任務ですよ、シャキッとしてください。浅羽隊員」

「ご飯は出るー!?」

「後で出してくれるそうですよ」

 

 突如飛び込んできた出動依頼。しかも珍しい六課全員を指名したものだ。その裏の意図を読みかねていた柳に至っていつも通りな2人。浅羽悠真と蒼角を嗜めつつ目的地へと向かう。場所は黒雁街跡の共生ホロウ。

 

「柳」

「はい」

 

 向かう中、特に何も言うことなくついて来た雅は柳に尋ねた。

 

「此度の件、何かあったか」

「それは──」

 

 その言葉に思い出される、出動のきっかけとなったブリンガー長官の姿。とても焦った様子だった。

 

──重要証拠となる物品を奪われた。何に変えても取り返してほしい、と。

 

 それも危険度は零号ホロウ級、とブリンガーは唾を飛ばしながら怒鳴っていた。故にフルメンバーでの出動となった訳だが……やはりきな臭さはあった。そう言った政治的な駆け引きは柳の担当であったが今回に関しては情報が無さすぎる。

 

「ええ、恐らく何かあったかと。油断せず行きましょう」

「分かった、ではいくとしよう」

 

 面々はホロウの中へと突入した。しかし、入った途端六課は散り散りの場所へと飛ばされた。

 

「──」

 

 鞘に納めていた自らの武器の柄に触れる。言葉はない。柳の目の前に居たのは──

 

「ようこそ、このような所で申し訳ありませんが……お相手いたしますわ」

 

 カツカツと、現れたのは少女だ。ホロウに似つかわしくない白を基調としたフリルのついたドレスにケープ状のジャケットを羽織った少女。白い髪のロングヘアの毛先がパキパキと光を受けて輝く宝石に変わっていく。

 モンテリファミリー財団令嬢。カルロッタがそこに居た。

 

 同時刻、別のエリアでは悠真は合流しようと走り出す足を止めていた。

 

「……何の用かな、おじさん?」

 

 腰につけられた二刀の得物に触れながら悠真が尋ねるも、気にした様子もなく、ジャケットの内ポケットからタバコを取り出し火をつける男。無精髭が目立つ、冴えないおっさん。それが悠真から見た第一印象だった。

 

「……ふぅ、悪いねあんちゃん。こんな時でもないと思い切りタバコが吸えなくてね」

 

 煙を嫌がる店が多いんだこれが、と続ける男はスパスパとタバコを吸う。

 

「こんな時に都合よく迷子、ってあり得ないよねぇ……」

 

 トン、と軽い音とは裏腹に力強く踏み込み男の懐に悠真が飛び込む。怪しいので捕らえてまずは話を聞こう、そう判断した悠真の即断即決による速攻であった。

 

「少し大人しくしてもらうよ!」

 

 斬らない。しかし確実に鎮圧しようと両手に持つ刀の峰で殴りつける。その寸前。男がした行動は手から投げるでもなくその場にポトリ、と何か球を落としたのだ。落ちた球は落下の勢いを受けて簡単に割れ

 ちゅどっっ!!と爆発と共に煙を撒き散らしたのだ。

 

「なっ──」

 

 それに驚くよりも早く悠真の眼球目掛けて煙の中から飛来するのは火がついたままのタバコの吸い殻。

 

「つっ……!?」

 

 ジュッ、と咄嗟に瞼を閉じたその上をタバコの火が焼いた。痛みに顔を逸らした瞬間を男は見逃さない。煙の中を突き破るようにドロップキック。悠真の顔面を捉え後方へと蹴り飛ばした。

 

「悪いねぇ、あんちゃん。俺と遊んでもらうよ」

 

 郊外に身を置き、道場を構えた元締め。本部以蔵が立ち塞がった。

 

 


 

「もっとスピードは出ないのか!?」

「もう最高速度だ!これ以上は出ねぇ!」

 

 バイクに乗った2人はホロウの中を爆走していた。既に目的のものは奪い取り、後は逃げるだけであったが2人の顔に余裕はない。何故なら──

 

『ひえぇ!時速200キロで追いかけてますよあの人!』

 

 崩れ残骸となった建物の間をまるで飛び石のように飛び移りながら走る姿が目視できる位置にまで確認できたからだ。虚狩り。その名に恥じない凄まじい圧力を持ってこちらに迫っていたのだ。

 

「くっそ、これじゃ追いつかれる──おい、おっさん!前に居るのは知り合いか!?」

 

 バイクを運転していたシーザーが走行ルートのど真ん中に立つ男を見て後ろに座るスネークに尋ねた。

 

「ん──!?ダンテじゃないのか!?」

 

 予定していたはずの男ではない。しかし、知り合いだ。キチッとしたスーツ。メガネに整った髪。片手に握られた鈍らの鉈。

 

「任せたぞ!」

「ええ、任せてください」

 

 多くは語らない。バイクですれ違う一瞬、2人は言葉を交わし、先へと進むスネーク。

 それを見届け、こちらに向かう虚狩りを見る男の脳裏に過ぎるのは作戦開始の前にした社長とした会話だ。

 

──この作戦。私にやらせてください

 

──だが、ダンテでなくては虚狩りは止められないだろう?

 

──ええ、ですがそれはベターであってベストな選択では無いはず。

 

──弱い駒が強い駒を止める。その戦略的価値はデカイ。分かるでしょう。

 

──覚悟は、あるんだね?

 

──ええ、ここが私が私であるために避けられない戦いなのです。

 

「ふんっ!」

 

 手に持った鉈で横の建物を一閃。音を立てて崩れていく建物が後ろの道を塞ぐ。ガラガラと音を立て瓦礫が散乱する中、立ち止まる星見雅が対峙したのは──

 

「ここから先には行かせませんよ」

 

 七海建人であった。




あ、蒼角は迷子です。
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