もしも35話の決戦でマジアベーゼが死亡していたら   作:黄鶯

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話によって視点が一人称だったり三人称だったりします。不慣れなのでお許しください


レオパルトの追憶

ん……

どこだここ……

知らない間に寝ちまってたか?

 

 

 

「レオパルト…」

 

 

 

あ?誰だアタシの名を気安く呼んでくれるやつはよ。レオパルトちゃんはそんな安い女じゃねぇぜ~

というか全身が痛ぇな……特に頭がズキズキしやがる

よく見りゃ服もボロボロじゃねえか。さてはまたサルファの野郎にでも吹っ飛ばされちまったか?だったら今すぐにでも起き上がってあのクソ女をボコボコに……

 

 

「いえ、キウィちゃん……」

 

 

ん?アタシの名前を知ってるだと?アタシの正体を知ってるやつなんて……

 

 

 

 

 

 

っっっっってうぉぉぉぉぉぉぉぉベーゼちゃん!!!!????近い!近い近いやわらかい良い匂いベーゼちゃんベーゼちゃん待って落ち着いてまだ心の準備が

 

「今のあなたは、世界一可愛いですよ…」

 

???あれ、これって……

 

あぁ、アタシがベーゼちゃんと初めて会った時だ。

 

 

……いや~、あん時はビビったぜ~

なーんかナヨナヨした新入りが入ったらしいからちょっと先輩としての威厳を見せてやろうと思ったら、とんでもね~クソヤバ女だったんだからよ~

でもこん時のおかげで今のアタシがあるっつーか?

何と無しに入ったエノルミータで、突然仲間と友達と恋人を一辺に手に入れちまったようなもんだからな~

ま、今までキウィちゃんのお眼鏡に適うやつがいなかったってだけの話なんだが

 

 

っつーかまた頭がズキズキしてんな…痛ぇ……

あれ……何か目の前が真っ暗に……

 

□ ■ □ ■ □

 

……

 

…………

 

…………ぶぶぶぶぶ!!!

がぼがあああががあぼあほぼぼがぼ!!!???

 

「ちょ、ちょっとキウィちゃん!!大丈夫!?」

 

っぷはー!!あっぶね!!危うく溺れかけるとこだった……

ってここは……風呂?

 

「大丈夫そうで良かった…のぼせちゃう前にちゃんと言ってね?」

 

あ、うてなちゃんすき。結婚しよ

というか泡に包まれしうてなちゃんもかわいいな~♡

国宝級のお顔は当然、ほんのり染まった頬から耳そこから首筋にかけてのラインがセクシーどころの騒ぎじゃねえぜ〜今すぐ抱きしめてぇ……

 

「そ、それで、さっきの続きなんだけどね…。その…ちょっとだけ早めに来たの…キウィちゃんとの、や、約束…絶対…守らなきゃって思って…」

 

……思い出した。

ここはナハトベース、ホテルエノルミティ。アタシがヴェナに頼んで作ってもらった、所謂ラブホテルだ。

そんでこれは……うてなちゃんとの、しょ、初夜(未遂)前の…

 

 

「……うん」

「真珠さんたちに聞いたんだ…シスタさんとの戦い…。キウィちゃんがすごく頑張ってくれたって…。だから…わ…わたしもそれに応えなきゃって」

 

ッカ~~~~~!!!良い子過ぎんか???ぶっちゃけあん時は、半分ぐらいベーゼちゃんを勇気づけるためのいつものノリだったんだが、ベーゼちゃんの方はいつもと違って真面目な表情でOKしてくれたんだよな~

おかげでキウィちゃんのテンションはかつてない程ブチ上がりMAXで、あのクソデカシスターをぶっ飛ばせたってわけだ

いやもちろんアタシはいつでも本気と書いてマジでうてなちゃんとイチャイチャしたいと思ってるけどな!!ビビってねぇし!!

 

「そっか…そか…うれしいな…」

 

しかしそんなラブコールも、口から出てくる頃には弱々しい事この上ない返答になってしまう。

 

 

普段威勢の良い事を言っておきながら、結局アタシは、どこかうてなちゃんと真正面から向き合う事を避けていたのかもしれない、とふと思ってしまった。

 

うてなちゃんに一方的に想いをぶつける事は出来ても、うてなちゃんの想いを理解し、受け止める覚悟が出来てなかったのかも。何なら、自分が常日頃伝えていた想いさえ、どこか誤魔化したものだったんじゃないか。

湯船に揺られながら、まるで他人事のようにそう考えてしまう。

 

意識するほど、遠ざけたい。

近いから、触れられない。

そんな自分に薄々感づいてはいたが、今はそれをはっきりと確信できていた。

 

 

 

自分を客観視することは苦手だ。

だからこの時のアタシは、せめてそれが少しでも理解できる時まで。

 

「アタシ、うてなちゃんのためなら何でもできるんだ…。うてなちゃんのために…」

 

常に退屈で、どこか満たされなかったアタシに。

 

「もっと…つよくなりたいな…」

 

愛と、生きる意味を与えてくれた人のために。

もっと、もっと強くなって、何があってもうてなちゃんを守れるようになると、そして…うてなちゃんの想いに真正面から応えられるようになると、そう心に誓ったのだ。

 

うてなちゃんと一緒に風呂を上がろうとした時、再び頭痛がアタシを襲った。

 

 

□ ■ □ ■ □

 

 

アタシなりの答えを出すのに、意外と時間はかからなかった。元々あれこれ悩むのなんて得意じゃないし、アタシの性にも合ってない。

 

土煙の立ち込める中、今にも崩れ落ちそうな自分の身体を奮い立たせ、無理矢理叩き起こす。

 

「ハイ!!生きてます!!」

 

全身の傷は気にしなければ痛くも痒くもない。

ほぼ全裸なことや魔力が切れかけていることなんてどうでもいい。

今、伝えなければならない。

アタシはボロボロのまま仁王立ちで、目の前の最愛の人に向かって高らかに宣言する。

 

「アタシはいくよ!!この先に!!」

 

正面から、堂々と気持ちをぶつける。

 

「だから!!死なない!!!!」

 

不器用なアタシにとっては、これが最善にして唯一の方法だった。

そもそも、ベーゼちゃんとの対話の為に決闘なんて方法を選んだのも、ホテルの時のような雰囲気での会話が著しく苦手だったからである。

目の前で膝を付くベーゼちゃんに、勢いのまま問いかける。

 

()()()()()()は!!どうなの!?」

「………!!」

 

ベーゼちゃんは面食らったような表情でこちらを見つめ返す。気まずい沈黙が数秒流れたのち、ベーゼちゃんは少し俯いて口を開いた。

 

「……わたしは…幸せ…者だね…」

 

俯いているので表情はわからないが、その目尻がキラキラと光っているのを、当時のアタシも見逃さなかった。

 

「こんなに…想ってもらえて…。

キウィちゃんは初めてできた友達だから、先に行けるか分からなくて…あの時、言葉に詰まってしまった…。

正直に言うと、未だ答えは見つからない」

 

それは全部、全部アタシも同じだよ。

出かかった言葉を飲み込む。

何だかつられてアタシまで泣きだしてしまいそうになる。

この時になって、ようやくアタシは理解できたと思った。

迷っていたのは、うてなちゃんも同じだった。

想って、悩んで、葛藤して、その気持ちをアタシにぶつけること、そしてアタシの想いを受け取ることを。

 

 

「だから」

 

「もっと…キウィちゃんを見せて」

 

「もっと…夢中にさせて」

 

ホテルの時、あれほど苦悩していた事が嘘のようだった。

あの時言えなかった言葉は、驚くほどするりと口から発せられた。

 

「わかった…

きて、うてなちゃん」

 

□ ■ □ ■ □

 

「めっちゃ疲れた…」

「キウィちゃ…うぁ…私も限界だ…」

 

互いの本音で文字通り殴り合ったアタシとうてなちゃんは、変身が解け、並んで地面に倒れ伏していた。

ナハトベース内で観戦していたこりす、真珠、ネモが駆け寄ってくる。

何だか、肩の荷が下りたというか、心のもやが晴れたような気分だった。

 

「……キウィちゃん」

「いつか必ず、答えを見つけるから」

「だから…待ってて」

 

うてなちゃんの言葉に、アタシは軽く頷く。

今日までうてなちゃんと出会ったどの日よりも、アタシの想いをぶつけられた。

今日までうてなちゃんと出会ったどの日よりも、うてなちゃんの想いを感じられた。

 

告白の返事こそ聞けなかったが、アタシは十分に満たされていた。

 

アタシ、うてなちゃんに愛されてる。

 

わかってたはずなのに改めてその気持ちを伝えられると、それだけで嬉しくて、はずかしくて、心がくすぐったくなってくる。

照れを隠す為に、疲れた体を無理矢理動かし、うてなちゃんに抱き着く。

 

「やった~~♡楽しみ~~!!!!」

「あ˝いだだだだだだだ!!!」

 

いつまでも、待ってるから。

 

三度、頭痛が走った。

 

□ ■ □ ■ □

 

頭痛が止むと、またしても場面が切り替わる。

これにももうすっかりと慣れたものだ。

そう思い、周りを見渡す。

が、周りは一切の暗闇であった。当然記憶にもない。

 

「あ~?どこだここ。ナハトベースか?」

 

暗闇の中をしばらく進んでみる。

しかし、暗闇は一向に晴れる気配もなく、思い出すこともできない。

 

「というかさっきまでのあれは何だったんだ~?まぁうてなちゃんといっぱい触れあえたからなんでも良いんだけうぉっ!?」

 

と、突然足元に何かの感覚がした。重く、柔らかい感触だった。

 

視線を下げると、そこには誰かが血を流しうつ伏せで倒れているのが見えた。

白いパレオは血と泥でボロボロになっている。

黒いタイツは片方が破れ、素足が露わになっていた。

 

(あ……)

 

頭には悪魔のような角が上向きに伸びており、内一本は折れていた。綺麗な黒髪が、頭から背中全体を覆っている

 

(だめ……)

 

触れてはいけない。

その気持ちとは裏腹に、身体は勝手に動いていた。

髪をかき分けると、中に隠されていた背中は素肌が露わになっており、いくつも傷が付いていた。

特に中心、心臓があるであろう部分からはひと際大きな傷跡が残されていた。

 

(だめなのに……)

 

その身体を労るように、そっと仰向けにする。

やめろと叫ぶ本能は、しかし無意識に動く己の身体のストッパーにはなってくれなかった。

 

全身傷だらけの顔と身体。目元にはいくつもの四芒星が折り重なり、蜘蛛の巣のようになっている。

胸の中心には大きな傷が開いており、顔はまったく生気が感じられなかった。

 

(ああ、あああ)

 

それはまごう事なき、マジアベーゼの亡骸であった。

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

□ ■ □ ■ □

 

悲しい。苦しい。

 

 

うてなちゃんが死んだこと

 

 

魔法少女に殺されたこと

 

 

でもそれ以上に

 

 

答えを聞けなかったこと

 

 

そして―――

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