もしも35話の決戦でマジアベーゼが死亡していたら   作:黄鶯

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やや残酷な描写あり


意地と矜持と

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!!」

 

打撃音と破砕音が次々と鳴り響く。工事現場のドリルやランマーを数段うるさくしたようなそれは、2人の少女が発生源であった。

マジアサルファとレオパルトの戦いは市街地のど真ん中で繰り広げられていた。幸い、付近の住人は既に避難が完了しており、巻き込まれる心配はほぼないと言って良かった。

 

「さっさと堪忍せんかいゴルァ!!!」

「テメーがくたばりやがれオラァ!!!」

 

銃弾と、リングから生成された拳。無数の弾幕が衝突し合う。

その隙間を縫うように片方が近接攻撃を仕掛ければ、もう片方がそれを往なし反撃を試みる。

拮抗しているかのように見えたそれは、しかし少しずつ片方の勢力が勢いを増していった。

また一つ、銃弾が弾き飛ばされ、そのまま銃身を貫通し爆発する。

 

「ぐっ……いちいち銃ごとぶっ壊しやがって!!」

「あら~褒めてもらっても拳しか出ぇへんよ?」

 

弾幕勝負は、サルファの優勢に傾きつつあった。

 

物量差で言えばレオパルトがかなり優勢はあるものの、サルファは真化、電撃天使(ブリッツエンゼル)によって機動力で圧倒的な主導権を握っており、結果的に手数はほぼイーブンと言って良かった。

更に特筆すべきは、変幻自在な軌道で迫る6つのリング。攻撃だけではなく、それを踏み台にすることで本人の動作を更に速く、変則的にすることも可能であるそれは、サルファの元々の格闘センスと組み合わさり非常に高いシナジーを生んでいた。

 

しかしサルファが優勢である理由はそれだけではなかった。

 

「そこや」

「ぐえっ……!!」

 

弾幕の隙間を縫うようにして飛来したリングのひとつが、レオパルトの鳩尾に叩き込まれる。そのまま吹き飛ばされそうになるところを、生成した銃器を足場に踏みとどまった。

 

「あ~ウゼ~……ゲホッ」

「そない気に入ったならあと百発はお見舞いしたる」

 

サルファは首をコキコキと鳴らしながら、次の攻撃の体勢を整える。

しかしレオパルトが再び銃口を構えるのを見て、サルファは怪訝な顔で尋ねた。

 

「ウチの立場で言うのも何やけど、何で真化せぇへんの。ウチらこの期に及んで舐められとるんかいな?」

「あ?その通りだが?テメー如きアタシが本気出すまでもね~んだよ」

「ほー、こら言われてもうたなぁ。ま、その方がこっちとしてもやりやすくて助かるさかい、おおきに……なっ!!」

 

リングの拳が、レオパルト目掛けて飛来する。間一髪で飛び上がりそれを避けたレオパルトは、そのまま近くの建物に窓から飛び込む。音を立ててガラスの破片が飛び散った。

 

「あっ、待たんかい!!」

 

それを追って建物に飛び込んだサルファを待ち受けたのは、オフィスのような部屋。

そしてその全面に展開され、そのすべてが自分を狙っている銃口であった。

 

先刻マゼンタとアズールに指摘したミスを自分が犯してしまったと悔やむ。

 

「チッ……」

 

サルファは舌打ちをひとつ零すと、銃撃を近くのデスク等に隠れてやり過ごしつつ、拳を縦横無尽に動かし銃器を撃破していく。

 

(しばらくこっから動かれへんか……?)

 

サルファがそう思案する最中

 

 

ピン

 

カラン

カラン

カラン

 

銃声に紛れた別の音を耳が拾う。

 

複数の何かが転がる音。

 

それほど大きくない。

恐らく掌サイズで円形かそれに近い形の何か…………!?

 

「まずっ……!」

 

 

間もなく、爆発音が響き渡った。

 

 

□ ■ □ ■ □

 

 

「へへ……直撃~」

 

ビルの一角が消し飛ぶと共に、爆発の煙が舞い上がる様子を観察しながら呟く。

サルファの煽りに乗りやすい性格と戦闘における嗅覚から、追ってくるかどうかは半ば賭けだったが、上手くいった。

 

レオパルトは魔力の扱いに慣れていない。

派手な戦闘スタイルも相まって、あまり長期戦が得意ではなく、特にサルファ相手には毎回そこを突かれてやられていた。

 

だから今回は、彼女なりに策を二つ考えた。

そのうち一つは単純で、狭い部屋に誘いこんで外側から爆破し押し潰すというものだ。

レオパルトは大声で叫びながら、銃口を粉塵渦巻くビルへと向ける。

 

「さぁ出てこいよサルファ~!!来た瞬間最大火力でハチの巣にしてやんよォ!!それとももう死んじまったかぁ!?」

 

 

呼びかけに呼応するように、ビル内から何が飛び出してきた。

煙に紛れて実体は見えないが、移動する風圧で煙が舞っておりどこにいるのかは一目でわかる。

サルファに間違いない。

煙の動きが大きい方向に狙いを定め、こちらに軌道を変えたそれに銃口を向ける。

 

「そこかァッ!!食らいやが……れ?」

 

 

しかし、そこから飛び出してきたのは、サルファの周りを飛び回っていた拳のひとつであった。

 

 

「やっぱあんたは、やりやすくて助かるわ」

「……ぐっ!!」

 

 

背後で声が聞こえると同時に脇腹に衝撃が走る。

振り返る間もなく追撃が加えられ、空中で景色が回る。次にレオパルトの視界に映ったのは、アスファルトの地面だった。

地面でバウンドし尚も吹き飛ばされた身体は、街路樹の幹によって受け止められる。

 

形勢が傾いた。

 

「がっ……!!く……そ……」

 

口に血の味が滲んだ。

先程までの攻防でところどころ破れた戦闘服は更に擦り切れ、かなりきわどい格好になっている。何より―――

 

「痛っ!」

 

右脚を動かそうとすると激痛が走った。身体自体はなんとか動かせるが、このままではサルファの電撃天使を相手にはとても戦えそうになかった。

 

「クソッ……!」

 

レオパルトは怪我をした身体に鞭打ち、匍匐前進をするようにして移動する。

地面を這いずりながら動く彼女の前に、黄色のブーツが立ち塞がった。

サルファも決して万全とは言えない。スーツは爆発で焦げて傷だらけ、何より魔力がかなり弱まってきている。しかし、その目は未だに敵を真っ直ぐに捉えていた。

 

「ハァ……ハァ……もう動かんとき。いい加減年貢の納め時や」

「…………」

 

ズリ…

 

「ぎぃっ!!」

 

それでも前に進もうとすると、背中に靴底が押し当てられ悲鳴が漏れた。

肺から空気が押し出されるのを感じる。

 

「動くな言うとるやろ。こんな何もおもんない戦い、ちゃっちゃと終わらせようや」

 

サルファの声が低く響く。心底、つまらなさそうな声だった。

 

「うるせぇ……テメーはぶっ殺す。ベーゼちゃんを殺したテメーらは……!!それが今、アタシが……アタシを愛してくれたベーゼちゃんに出来る唯一の弔いなんだよ!!」

「ベーゼちゃんベーゼちゃんやかましいわ。そもそも何やねん愛や弔いやって。その気持ち少しでもこの街の人らに向けた事あるんか?」

「んだと……ぐっ……!!」

 

思わず起き上がろうとすると、すかさず踏みつけられ、無力化される。

 

「アンタが、マジアベーゼがこの街を少しでも思う気持ちがあれば、こうはならんかったと思わへんのって言うてんのや。アンタら自身がどう思っとるか知らんけどな、少なくともウチらからしたらアンタら、自己満の為に人々を脅かして魔法少女虐めて回ってる、ただそれだけの組織やで」

「それ以上ベーゼちゃんバカにしたらマジでぶっ殺すぞ!!テメーにベーゼちゃんの何がわかるってんだよ!!」

「わからへんよ。わかりたいとも思えん。でもな、ウチかてただ伊達とか酔狂とかでやっとるわけやない。ウチらが正義の魔法少女で、あんたらが悪の組織で、魔法少女は悪を打ち倒すのが使命。それに……」

 

冷淡なサルファと対照的に、レオパルトは激昂しながら起き上がろうとする。

しかしサルファはそれを許さず、しっかりと足に体重を掛けながら、リングの拳で殴りつける。

 

「元々魔法少女なんて全く興味もあらへんかったけど、はるかが、小夜が誘ってくれた。大切な秘密を明かしてまで、ウチと一緒に正義を守りたいって言ってくれた。それが何より嬉しくて、絶対守りたいと思った。この2人と、この2人が守ってきた街の人々の平和をな」

 

全身が苦しくてどうしようもない。意識がほんの少し霞んでくる。

レオパルトは文字通り絶体絶命であった。

 

(それでも……)

 

「だから、ウチらが守るもんを傷付けたお前らは許せへん。ウチの友達の為に、そしてこの街の為に、落とし前つけてもらうで」

 

(それでもやらなきゃ……!)

 

レオパルトは必死に藻掻きながら、手に渾身の魔力を籠め始める。

 

「るせぇよ……アタシは……この先に行くんだよ……こんなとこで死なねぇ…………死んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「!!!」

 

ドォォォォォン………

 

蓄積された魔力はその場で暴発し、レオパルトとサルファは別々の方向に吹き飛んだ。

レオパルトがこの方法(自爆)を使うのは三度目だ。

一度目はシスタギガントに捕まった時。

二度目はマジアベーゼとの一対一の時。

 

「ケホッ……最後の最後までやってくれるやん。逃がさへんで……!」

 

直撃したかのように見えたサルファは、間一髪の所で回避していたらしく、すぐにレオパルトとの距離を詰めにくる

しかしレオパルトが吹き飛ばされた先は、行き止まりの脇道。

ちょうど()()()()()()()()()()()だった。

 

「もうちょっと……!」

「待てや……コラァ……!」

 

サルファはすぐさま後を追うが、思うように身体が動かなかった。

レオパルトと同じく、サルファも満身創痍であったのだ。

 

サルファはまだ、アズール以上に真化(ラヴェリタ)の扱いに慣れていない。溢れる魔力をうまくコントロール出来ないため、真化形態では長く戦えない。

それに加え、ビルでの爆破、そして先程の爆破を防ぎきれず、所々から血を流している。

それでも、彼女は倒れるわけには行かなかった。

 

(まだや……まだ倒れたらあかん……!ウチが倒れたら、マゼンタとアズールが危ない……!それにレオパルトは間違いなく追い詰められとる。今が千載一遇のチャンス!)

 

サルファは、努めて疲労と痛みを態度には出さないようにし、拳に魔力を集中させる。

何やら懸命に移動していたレオパルトは、脇道に入った先の行き止まりで一件の雑居ビルを背に逃げる事をやめていた。

サルファはその姿を認め、とどめの一発を叩き込まんと走り出す。

 

「これで仕舞いや!!雷霆掌・重!!」

 

リングが幾重にも重なった巨大な拳が、レオパルトの脳天に振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ドンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな音が響いた。

しかしこの音は、サルファの必殺の一撃によるものではなかった。

 

「!?あ、あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝っ!?」

 

直後に、サルファが右腕を抑えて蹲る。

肩に近い部分を抑えている左手の隙間から、夥しい量の血が漏れだした。

 

「ハハッ…………」

 

向かい合う相手の笑う声が聞こえた。

サルファは何とか首だけを持ち上げ、相対する者の姿を捉える。

 

「ギャハハハハハハハハハッ!!!ざまぁね~なぁサルファ!!!」

 

 

レオパルトが建物に上半身を預けたまま、狂ったように笑い始めた。その右手の銃口は真っ直ぐにサルファの方を向いていた。

 

「撃た……れた……!?どこから……」

「お前らと戦う前から準備してたんだよ。とどめ用のやつをよ~……」

 

レオパルトは、壁に寄りかかりながら何とか立ち上がる。

逆にサルファは、痛みを堪え切れず地面に倒れ伏す。

 

すると、目の前の()()()弾痕があるのが目に入った。

 

レオパルトの右手の銃は実銃ではなく、あくまで能力で発生させた火器を放つためのトリガーに過ぎない。

つまりこの弾丸の発射位置は、レオパルトがいる方向ではなく―――

 

「ウチを……消耗させながら、追い詰められたフリしてここまでおびき出したっちゅうわけかい……クソが……!」

正解(せ~かい)。ゲホッ……戦い始めてすぐ撃っちまったら、防がれたり避けられたりするかもしんねーし、バトルの最中に武器を出すと()()が出ちまうからな」

 

レオパルトは壁に寄りかかったまま、身体を壁に預けなが無理やり立ち上がる。

 

「自分もボロボロにやられた状態で追い詰められたアタシに注目してれば、()()()の攻撃に注意なんてしねーだろ。そこで、このビルの最上階に仕掛けたスナイパーライフルから、アタシの魔力をありったけ込めた1発をブチ込んだ」

 

これがレオパルトの2つ目の策であった。

サルファはレオパルトのセリフを聞きながら歯噛みする。

とっさの策でハメたつもりが、いつの間にかこのようなチープな策にのうのうとハマってしまった事に、内心で屈辱を感じていた。

 

サルファの目の前に立ったレオパルトは変身アイテムを握り込む。

 

「つーわけで……!!」

 

 

真化(ラ・ヴェリタ)

 

 

レオパルトの胸の中心が大量の四芒星で光り輝く、その光は強大な魔力と共に身体中を覆うように広がっていく。

所々破れていた軍服モデルのスーツは、両脇が露出した濃緑色の衣装に一新される。

頭には新たに猫耳付きの軍帽が装着され、ノースリーブの左腕とは対照的に、長い袖の付いた右腕からは鋭い鉤爪が覗いている。

 

 

『レオパルト くそつよステイト』

 

 

正真正銘のレオパルトの最強フォームであった。

 

「お前がよぉ……お前らの正義と仲間の為に戦って、アタシのベーゼちゃんを殺すってんなら~……」

 

真化してなおも傷だらけの身体は、しかし不思議と動かすのに苦労はしなかった。

 

「その小っせぇモンと引き換えに、今度はお前が……アタシの大事な人のために」

 

 

「死ね」

 

 

魔力を迸らせたレオパルトが地面を蹴り、起き上がろうとするサルファの顔面に対して右脚を振り抜いた。

身体を支える事が出来なくなっても、魔力を纏い無理やり振り回して棒代わりにすることは出来る。

同時にサルファが張った防御魔法は、薄皮一枚ほどの意味も成さなかった。

 

「がっは……!!」

「どーしたよサルファ!!アタシを殺すんじゃなかったのかァ!?じゃなきゃテメーが死ねェ!!」

 

レオパルトは叫びながら、サルファをひたすら蹴り飛ばす。

 

ようやく訪れた復讐の機会に、脳が、全身が興奮していくのを感じる。

 

魔法少女に対して溜まり続けた怨嗟が、この一撃ごとに解消されていく気がした。

 

失ったものが、ほんの僅かでも取り戻せた気がした。

 

「死ねよ死ね死ね死ね!アタシのベーゼちゃんを死なせたテメーらは全員死んじまえェーーーー!!」

「こん……キチガイが……!」

 

サルファは、真化したレオパルトの一撃一撃を防ぐので精いっぱいだった。

リングの手で自身を無理やり動かし、防御魔法と残りのリングで攻撃を凌ぐ。

レオパルトの右手からは変幻自在の光線のようなものが発射され、ほとんど動かない右手を抱えた状態では、まともに応戦することは出来なかった。

 

(アカン、こっから反撃する方法が……!)

 

「オラァッ!!」

「っ!?」

 

いつの間にか間近に迫っていたレオパルトの右ストレートに、反射的に右ストレートで合わせようとするが、右腕は脳の命令を聞く代わりにズキリとした痛みで応えるのみであった。

レオパルトの右手の鉤爪が、ザクリと、サルファの右肩を深々と抉る。

 

形容し難いほどの痛みがサルファを襲った。

 

「いぎッッッ!」

「ハハ、アハハハハハッ!!どうよサルファ、痛ぇかよ!苦しいかよ!ベーゼちゃんとアタシの痛みに比べたらちっぽけな事だろうがなァ!」

 

レオパルトは半狂乱状態でサルファに向かって叫び続ける。

サルファには、もはやレオパルトの目に自分すら映っていないようにも見えた。

ただ目の前の物体を痛めつければ快感を得られる、その本能だけで動いていると、そう思えた。

 

「……ふ、ざっ……けんなや!アンタらエノルミータの好き勝手のせいで、どんだけの人が、どんだけの魔法少女が傷ついた思ってんねん……!!」

 

それでもサルファは闘志を失ってはいなかった。

自分が倒れれば、2人に迷惑が掛かる。人々が危険に晒される。それだけは許してはならない。

 

リングの手を支えに膝をつきながら立ち上がる。その瞳は尚も真っ直ぐ前を向いている。

それは、かつてマジアベーゼと1対1で圧倒された際に見せた、あるいはそれ以上の覚悟で貫き通す、自分の中で絶対に曲げられない矜持であった。

怒りの感情が激しく鼓動する。サルファの中にある、正義への"想い"が、もう一度立ち上がる力を彼女に与えた。

 

「自分らで……無関係の人さんざん傷付けといて、自分らがやられたら痛い苦しいやと!?馬鹿言うんも大概にせえや!!人々も魔法少女も、アンタらのおもちゃでも何でも……!!」

 

ドシュッ!!!

 

次の瞬間、サルファの左脚を黒い閃光が貫いていた。

サルファは啖呵の代わりに、声にならない悲鳴を上げる。

 

「うるせぇよ。つーかベーゼちゃんもアタシもその辺の一般人になんか興味もねーわ」

 

レオパルトは右手をサルファへと向けたまま、滔々と語り始める。

 

「むしろベーゼちゃんは……テメーが言う様な方針のメンバーと敵対して、一般人を守ってた時もあったぐらいだ。

いや一般人だけじゃねぇ。テメーらと戦う時も、どんだけアタシらが勝っててもとどめを刺す事さえ許さなかった……」

「な、にを……」

「誰よりも魔法少女を愛して、暇さえあれば魔法少女の事話してて、魔法少女が強くなれば喜んで、そうじゃなきゃ目に見えてがっかりして……」

 

 

 

「……ベーゼちゃんの気まぐれで生かされてたトレスマジア(テメーら)に……殺されたんだ……!」

 

 

(……?ウチらが……生かされとったやと……!?)

 

サルファには、レオパルトの話は荒唐無稽そのものだった。

 

そのはずだった。

しかし。

 

カラオケでのロコムジカ・ルベルブルーメとの対決。マジアマゼンタの誘拐。自身とマジアベーゼの1vs1(タイマン)

 

サルファの脳内に浮かんだのは、トレスマジアを壊滅に追い込める場面がありながら、あえてそれをしていないとも取れるような出来事の数々。

 

(んなわけ、あるかい……あってたまるか……!)

 

『負けを認めれば帰して差し上げますが』

『新フォームの初お披露目を邪魔するなど以ての外でしょう』

『ズルいですよひとりだけ!!わたしだって愉しみたいのにっ!!』

 

そして次に浮かんだのは、自らの手で葬った宿敵、マジアベーゼのセリフだった。

 

(マジアベーゼ……)

 

(単に戦いを楽しんどる、どこかウチと似たようなタイプかと思っとったが……)

 

全く違う、と今なら分かった。

 

彼女にとっての「戦い」は、自分達のそれとは大きくかけ離れるものだった。

根本的に自分達と見ているものが違っていた。

勝利も敗北も、どこか自分達とは違う所から俯瞰していた。

 

まるで画面の向こうのキャラクターを応援するように。

子供が自分の手に入れたおもちゃを戦わせて遊ぶように。

自身の命さえその道具にして。

無邪気に。残酷に。

 

(……ウチらが、魔法少女が命を賭して守ってきた正義、それと対立するようにアンタが身を窶していた悪という立場でさえ、ただの遊びやったとでも言うんか……!!)

 

サルファは固く拳を握ろうとし、しかし、その身体は動かなかった。

血と汗でぐちゃぐちゃになった顔に、それらとは違うものが流れた。

 

(どこまで、どこまで人をバカにしくされば……!!)

 

身体の痛み以上に、己の信念の侮辱、そして現状の不甲斐無さに心を蝕まれる。

悔しくてたまらなかった。

 

「聞いてんのか?まぁいいや。アタシはもう、テメーらに復讐出来りゃ何でもいい。アリスにもロコにもルベルにも、殺せとまでは言ってねー。背負うのはアタシ一人だ」

 

サルファの耳に、レオパルトの声が届く。しかしもはや、内容を正しく理解する事さえ難しかった。

全身から力が抜けていく。

 

「アタシが一人ずつ殺してやる。マジアサルファ、お前が一人目だ」

 

残りの魔力が霧散していく。魔力が切れかけているのがわかった。

それに伴って変身が解除されていく感覚。

 

「滅殺光線……」

 

そして、マジアサルファは完全に生身の状態に戻った。

認識阻害魔法が解かれ、レオパルトにその正体が正しく認識される。

 

「……なっ!?薫子……」

(……?なんや……ウチの……名前……?)

 

「この野郎……テメーだったのかよ……!!つーことはあの二人は……」

 

レオパルトがブツブツと何かを呟くが、薫子にはもはや聞こえなかった。

 

「そーかそーか……全部わかったよ」

 

レオパルトは改めて薫子に狙いを定める。しかし、先程よりもその手は小刻みに震えていた。

 

「まずはテメーから死にやがれェ!!滅殺光線シュトラール!!」

 

レオパルトの右手から黒い光線が放たれ―――

 

 

 

(ここまで……か……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガキンッ

 

 

―――薫子に当たる事は無かった。

一瞬にして、二人の間に割り込む影があった。

 

「!?」

(……?)

 

 

 

 

「そこまでなの、エノルミータ☆」




ややキャラ崩壊。
ストックが尽きたので次回からかなり投稿が遅くなると思います。
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