もしも35話の決戦でマジアベーゼが死亡していたら   作:黄鶯

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少しだけ特殊タグの練習も兼ねています


新手

「!?」

 

ルベルの振り下ろしたクナイは、突如2人の間に割り込んだ何かの刃先によって受け止められる。

それは巨大な鎌であった。そのまま掬うようにして振り上げられた鎌によって、ルベルはクナイごと後方に押し戻される。

 

「うっ……!誰だ!!」

「うふふ……誰と言われましても、貴女達エノルミータに応戦でき、なおかつ敵対する存在と言えばひとつしかありません事よ?」

「まさか……新しい魔法少女!?」

「えへ」

 

ルベルは一度距離を取り、周囲を見回す。

敵はマゼンタと2人以外居ない事を確かめた後、その姿を確認する。

 

「ごきげんよう。私、パンタノペスカ、と申します」

 

その人物はお嬢様口調で(うやうや)しくお辞儀をする。

おさげの緑髪に角帽を被っており、左目にモノクルを装着している。タートルネックと丈の長いスカートを着用しており、手には先端に本を括りつけた特徴的な杖が握られている。

 

「むぐ……ベルゼルガ……」

 

右手に鎌、左手に漫画の様な骨付き肉を持っている方は、頭と手足にハロウィンの仮装のような包帯が巻かれており、ロリータ風のスカートを身に着けている。

肉を噛み千切るその口からは、キラリとピアスが光っていた。

 

その容姿を見たルベルとロコは、同時にひとつの記憶を思い起こした。

 

「おいロコ、あいつ……」

「ええ、恐らく……」

 

「「魔法少女狩りの生き残り……!!」」

 

魔法少女狩り。

かつてのロードエノルメ率いる旧エノルミータによる、全国の魔法少女の殲滅。ロード達の圧倒的な力の前にあらゆる魔法少女は成す術もなくやられていった。

ロードは征服の証として魔法少女の変身アイテムを奪っていたが、その中で一人、余りにも弱すぎたため歯牙にもかけられず、見逃された魔法少女が居た。

それが彼女、ベルゼルガ、当時の名前で言えばマジアブランであった。

 

(まぁ生き残りってか存在自体無視されてただけだが……アタシらが言うのも何だが、ロードもめんどくせぇ事してくれやがったな……チッ)

 

内心悪態をつくルベル。しかしそれも仕方がなかった。

目の前にいる彼女は真化も既に完了しており、あの時とは比べ物にならない程の魔力が感じ取れたからだ。

 

ヴェナリータは、エノルミータの力の源は"想い"の強さだと言った。

何らかの出来事によってその想いが溢れると次の段階、即ち真化に到達すると。

 

そしてマジアサルファの例を見る限り、魔法少女側も同じ事が言えると考えられる。

 

(つまりあいつに、この短い期間で何かに対する想いがオーバーフローするほどの出来事があったってことか……一体何が……)

 

と、そこまで考えたところで、肉を食べ終えたベルゼルガが動きを見せる。

 

「来るわよ!」

「分かってる!」

 

ベルゼルガが振るう鎌を、二人は左右に分かれるようにして躱す。そこからルベルはベルゼルガの背後に回り込み、影に潜む。

 

「影繰り!!」

しかしベルゼルガとルベルの魔力量の差は歴然で、足止めにもならなかった。

ルベルの影繰りは、魔力が自分より大きい相手にはほとんど効果が無いのである。

 

「やめて、うざい」

 

ベルゼルガは鬱陶しそうに背後に鎌を振るう。影繰りでの足止めの隙にクナイを突き刺そうと試みていたルベルは、影への回避が一瞬遅れてしまった。

刃先が左腕を掠める。

 

「い˝っっっ……」

「ルベル!!このっ……ヴォワ・フォルテ!!」

 

倒れたルベルをフォローすべく、ベルゼルガに向かって音符攻撃を放つロコ。

しかしペスカが杖を一振りすると、巨大な土壁が出来上がりロコの攻撃を阻む。

 

「防がれた!?」

「ごめんあそばせ。攻撃はさせませんわ」

「クソッ、ロコォ!!」

 

ルベルがロコに向かって叫ぶ。その意図を、ロコは言われずとも理解する。

再びルベルがロコのスカートの影に入り込む。二人の相乗効果により、ロコの魔力が増大する。

ルベルを追って迫ってくるベルゼルガと、その背後で清ましているペスカに、ロコはマイクに魔力を込めて必殺の一撃を放った。

 

「「フォルティシモ・カノン!!」」

 

「あ~~れ~~ですわ~~!!!」

「っ……」

 

ペスカは再び土壁を作り防ごうと試みるが、ルベルとの合体で強化されたロコの攻撃は土壁ごとペスカを吹き飛ばした。

一方ベルゼルガは、鎌を廃ビルの壁に突き立てる事で、無理やりその場に自分を留める。

その身体は、ロコの攻撃を直に食らい傷ついていた。

 

「このまま畳み掛けるわよ!!」

 

ロコは片膝をついたベルゼルガに向かって音符型の魔力弾を撃ち出す。

その攻撃は命中したかに見えた。

 

「えへ」

 

ベルゼルガが不気味な笑みを浮かべる。

直後、斬撃音と共に音符の攻撃が全て撃墜され、同時にロコの悲鳴が聞こえた。

 

「きゃああああっ!!!」

 

何が起きたのかを考える暇もなく、ベルゼルガが鎌を振り被る。

影を解除しロコを庇おうとしたルベルの目の前で、ロコの腹部から鮮血が迸った。

ザクリ、という音が響く。

 

「ロコ――ッ!!!」

 

ルベルの絶叫がこだました。

 

「うるさ」

「ぐふっ……!!」

 

倒れるロコを抱きとめたルベル。

それを、二人まとめてベルゼルガが蹴り飛ばした。

 

「めんどくさい。さっさと終わらせてシオちゃんに褒めてもらわなきゃ。というかペスカはまだ起きないんだ。後で叱ってもらわなきゃ」

 

(どうする……!ロコを見捨てるのは論外、だがアタシが抱えて逃げ出せる隙もねぇ……)

 

ルベルは必死に思考を巡らせる。しかしこのピンチを脱する方法は思いつかない。

 

(ルベル……)

 

ゆっくりと迫りくるベルゼルガを前に、懸命に策を考えるルベルの耳にロコの声が聞こえた。

 

「……!?ロコ!大丈夫か!?」

(全然動けないけどね……)

 

ルベルはロコの意識がある事に安堵するが、同時により強く焦り始める。

 

「クソッ、早くここから逃げねぇと……!」

(……作戦なら、一個あるわよ)

(……一応言っとくがお前が犠牲になるとかはダメだぞ。絶対)

(当たり前じゃない。良いから耳貸しなさい)

 

ルベルはロコに顔を近付ける為に抱き寄せる。

こんな時だというのに、お互いの頬が少し赤らんだ。

 

(……………これでどう?)

(……でもお前、そんな事したら傷が……!)

(大丈夫よ。レオもアリスもあんたも命張って戦ってるんだもの。もちろん、ベーゼだってそうだった。ならロコ一人だけ楽なんて出来ないわよ)

 

心配するルベルに、ロコはやや弱々しくも笑って応える。

ルベルはその場にそっとロコを横たえて、立ち上がった。

 

(……そうか……)

 

 

「ならアタシだって、覚悟決めなきゃだよなァ!!」

 

自分を鼓舞するように叫びながらクナイを両手に構え、ベルゼルガに向かって走り出す。

 

「逃げないんだ」

 

ベルゼルガはゆっくりと鎌を持ち上げる。

ルベルはクナイを前方に投射すると同時に、陰に潜みベルゼルガの一撃を躱す。

投げられたクナイは鎌によって弾かれるが、鎌を振った直後の隙を突いてルベルの新たに持ち替えたクナイが、ベルゼルガの胴を十字に切り裂く。

そしてその直後、ルベルは目撃する。

傷口から染み出した血が、鋭い刃のような形を成し自身に迫りくる瞬間を。

 

血の舞踏(ブルートタンツ)……」

「ぐあっ……!」

 

しかし、見えたところで躱すには時間が短すぎた。咄嗟にガードするも、やはり身体に刃物で切られたような傷が付いた。

 

(ぐっ……だが能力は見当がついた……恐らくベルゼルガの能力は、自らの血液を操り攻撃するもの……!)

 

ベルゼルガによる鎌の追撃を、陰に潜み躱したルベルは、素早く背後に回り込む。

同時にルベルの足元から影が伸び、真っ直ぐに伸びていく。

 

「影繰り!!」

「だから、うざいだけだって」

 

しかし、ベルゼルガは意にも介さない。

一瞬も動きを阻害されるような素振りはなく、再び鎌を振り被る。

迫りくる刃先を、ルベルはクナイを十字に交差させて受け止める。

 

「いい加減諦めなよ。あなたたちじゃあたしに勝てない」

「悪ぃな……諦めるわけには行かなくなったよ。ロコにあんな堂々と啖呵切っちまったからな……!」

 

競り合う刃越しに、両者の視線がぶつかり合う。

片や魔法少女、片や悪の組織の幹部。

しかしこの場に置いては、もはや正義と悪という単純な構図では無くなっていた。

 

「あっそ」

 

ベルゼルガは鎌に力を入れたまま右足で軽く地面を蹴る。

するとそこを中心に赤い液体が広がり、ルベルの足元にまで伸びる。

ルベルが避ける間もなく、そこから鋭い刃が生え、ルベルの全身を切り刻んだ。

 

「う˝あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝っ!!」

「じゃあ、今度こそ終わり」

 

ルベルにトドメを刺そうとするベルゼルガ。

しかし今度はルベルが嗤う番だった。

 

「……今だ!!()()()()()()()()!!!」

 

ルベルが叫ぶと同時、背後でも同じ文言が聴こえ、直後凄まじい衝撃が響き渡る。

ベルゼルガが何事かと振り返ると、そこには倒れていたはずのロコがマイクを構えている姿があった。

 

―――そして、彼女は全裸であった。

 

「………は?」

 

ベルゼルガは目の前の出来事に脳の処理が追い付かず、絶句する。しかし衝撃はこれだけでは終わらなかった。

突如、轟音と共に横の廃ビルが振動する。

 

「なにこれ……まさか、ビルの地盤を……」

 

廃ビルの足元に、抉り取られたような巨大な穴が開いている。

先程のロコの攻撃によるものである事は明白だった。

 

それに伴い、既に傾いていた廃ビルがバランスを崩し倒壊を始めた。

ベルゼルガが混乱している隙に、ロコがルベルの元に走り出す。

 

「ルベル!!」

「ロコッ!!」

 

ルベルは、自身の元に駆け寄りジャンプしたロコを、しっかりとキャッチし、即座に逃げ出した。

 

「やば……」

 

ベルゼルガは何とか倒壊する廃ビルを回避したが、二人を見失ってしまった。

 

「なんなの、あいつら……追わなきゃ……シオちゃんに怒られちゃう……!!ペスカ!!さっさと起き……?」

「あらベルゼルガ、私既に元気ピンピンでしてよ」(パシャシャシャシャシャ

 

ペスカに声を掛けたベルゼルガは、スマホの連写モードをフル稼働させる彼女に再び絶句する。

 

「じゃあ、なにを……してたの」

「いえ、せっかくのロコ様の一糸まとわぬ姿、ここで撮らずしていつ撮るかという話ですわ。見てくださいまし~~!!!このロコ様のあられもない姿ッ!!ボロボロになりながらも自らの服を脱ぎ、そしてルベル様と人目を気にせず熱い抱擁を交わし走り去るまさにランデぶげぇっ!!!!」

「もういい。うるさい。だまって」

 

目が覚めても参戦しないどころか、敵の全裸姿を撮影していたと自供したパンタノペスカ(エロメガネ)を、鎌の刃と逆側の部分で割と本気で殴り倒した。

 

「さっさと追いかけないと」

「え、ええ……そうですわね……トホホですわ~」

 

そして二人は、逃走したルベル達を追いかけるべく飛び去った。

 

「…………あれ……あたし、忘れられてる……?」

 

残されたマゼンタは、半泣きで一人そう呟いた。

 

 

□ ■ □ ■ □

 

 

ただひたすらに、走って、飛んで逃げ続ける。

幸い、ここら一帯は住人の避難が済んでいるようで、全裸のロコを見られる心配は無かった。

 

「ロコ!!大丈夫か!?」

「ええ……何とか……ね……」

 

口ではそういうものの、ロコの状態は酷いものだった。

無理やり動いた、もとい()()()()()事により、傷の状態が悪化し、腹部に血が滲んでいる。

 

「もうちょい我慢してくれよ……アリスのとこに行けば治せるからな……!!」

「あ、あんたこそ……大丈夫なの。ベルゼルガと戦いながらロコを操って、限界に近いんじゃないの……左腕も……」

 

 

□ ■ □ ■ □

 

 

ロコはルベルに耳打ちする。

 

(あんたがベルゼルガの注意を引きつけてる間に……ロコが服を脱ぐ)

(は!?お前こんな時に何を……)

 

突拍子もない作戦を提案されたルベルは困惑する。

 

(黙って聞いて。ロコはもう動けないけど……あんたが影で操って動かしなさい。それでビルを壊して、その隙にロコを抱えて逃げるの。

ビルはマゼンタとの戦いもあってすぐ崩れそうだわ。

後はレオかアリスと合流して、逃げるか戦うか……まぁ逃げる事になると思うけど。どうかしら?)

 

(……でもお前、そんな事したら傷が……!)

 

 

□ ■ □ ■ □

 

 

「……平気だよこれぐらい。それより、お前があんな作戦思いつくなんてな」

「ふふん……ロコだってたまには役に立つでしょ?」

「ああ、たまにはな」

「ちょっ……何よその言い方……」

「……」

 

いつものやりとりでも、ロコからは元気が感じられなかった。

 

「冗談だよ。……ありがとう、ロコ」

「………………別に。こっちこそ……」

 

 

「待ちなさ~い!!!」「逃がさない……」

「「!!」」

 

 

 

二人のムードに入ろうとしたところで、遠くから第三者の声が割って入る。

言うまでも無く、パンタノペスカ、ベルゼルガのものであった。

 

「来やがったな……!」

 

 

□ ■ □ ■ □

 

 

マントと長髪が激しく翻る。

相対する二人を遮ったのは、巨大な剣を携えた小柄な少女であった。

 

「な、んだ……テメーは……」

「キャハッ☆どーしたの?レオパルト。顔色が悪いの♡」

「うるせぇ!さっさと答えやがれ!!」

 

その少女は、軍服のような恰好であったが、きっちりした上半身に比べて下半身はかなり露出が激しく、更に背中のマントはボロボロであった。

そしてボサボサした銀の長髪の間から覗いたその顔は、半分が仮面で隠れており、幼さと不気味さが同居したような容姿をしている。

だがそれよりもまずレオパルトの目に入ったのは―――

 

(強ぇ……魔力量がベーゼちゃんやアリス並、下手すりゃそれ以上……!)

 

恐ろしいほどの魔力量であった。さらにその魔力は、魔法少女のそれとは思えないほど、禍々しいオーラを放っていた。

 

 

「焦らないの♡ほら、みんな集まってきたの」

 

目の前の少女が上空を指差すと、複数の影がこちらに向かってきているのが見える。

その先頭はルベルのものであると判った。

しかし、ルベルの後ろに見える姿は、レオパルトにとって見覚えのないものだった。

 

「ハァ……ハァ……レオ!ロコがアタシを庇ってやられちまった!アリスはまだ来てねえのか!?サルファもいねぇし……って薫子!?マジでどうなってんだ……?」

「ロコが……!?テメーらの仕業か!」

「せ~かい♡」

 

少女は、ルベルの背後の二人の方を見やる。

 

「ってか二人とも、何取り逃がしてるの?役立たずなの!」

「も、申し訳ありませんわ~。しかしイミタシオ様?魔法少女並びにエノルミータにどエロい事し放題という事でしたのに、何だかそんな雰囲気じゃ「黙れなの」

「はい」

 

「役立たず……ごめんね……えへへ……」

「全くしょうがないの。もういいの☆ ほら、みんなに自己紹介の時間なの♡」

 

少女がそういうと二人はルベルを追うのをやめ、少女の傍に降り立つ。

ルベルはレオパルトの傍に着地すると、抱えているロコを心配そうな顔で見つめている。

ロコには左肩から斜めに大きな傷跡が残されていた。

 

「じゃあ、 私たちが揃ったところで自己紹介なの。私はイミタシオ♡」

「改めまして、パンタノペスカですわ」

「ベルゼルガ……」

「私たちはエノルミータ壊滅を目的として結成された魔法少女組織『シオちゃんズ』!よろしくなの♡ま、一番の目当てはもう居ないから残党処理なんだけどね☆」

 

シオちゃんズの三人がポーズを決める。

満身創痍のレオパルトは、すぐに状況を理解しきれず呆気に取られてしまう。

 

「エノルミータの殲滅……だと……」

「さ、始めるの。エノルミータは一人残らずおしおきしちゃうの!!」

 

イミタシオと名乗る少女の合図で、パンタノペスカとベルゼルガが同時に飛び出す。

 

「おいレオ!!何で薫子がここに……いや今はいい、退くぞ!!ロコ背負ったアタシと今のお前で勝てる相手じゃねえ!!」

「……」

「何やってんだレオ早くしろ!!傷だらけじゃねえか!!」

 

しかし、レオパルトは動かなかった。

 

「ここまで来て、また退かなきゃいけねぇってのかよ……アタシは復讐するんだ。トレスマジアに復讐するんだよ……!」

 

レオパルトが一歩踏み出す。その袖をルベルが掴む。

 

「おいバカ冷静になれ!!」

「放せルベル!!」

「あらあら、喧嘩はいけませんわよ?」

 

二人が揉み合っている所にペスカの声が割り込んでくる。

杖を一振りすると、サルファとレオパルトの戦いで割れた道路の下から土塊が現れ、二人に向かって発射される。

 

「チッ……」

「やべっ……!!」

 

レオパルトは咄嗟に後方へ回避するが、ロコを背負ったままのルベルは対応が遅れ、土塊が命中する。それは粘土のように中途半端に柔らかく、命中したルベルとロコの身体を包み込むと地面に固定してしまった。

レオパルトはその攻撃の当たらない位置から、再び倒れている薫子を狙いに走る。しかしその間にはベルゼルガが立ち塞がる。

 

「邪魔すんじゃねェ!!!」

「え……やだ」

 

レオパルトは咆哮を上げながら突進する。

 

 

ギィン!!

 

 

ベルゼルガは大鎌で、レオパルトの鉤爪をガードする。

両者は数秒間拮抗していたが、連戦による傷と疲れからか、徐々にレオパルトが押され始めた。

 

「クッソ……なら……滅殺光線シュトラール!!」

 

その様子を見ていたルベルが叫ぶ。

 

「やめろレオ!そいつは自分の血を刃に変化して飛ばせるんだ!」

 

しかしレオパルトはそれを無視し、競り合いの状態で至近距離から光線を発射する。

当然、ベルゼルガは避ける間もなく身体の至る所が貫かれ、ロコによって既に付けられていた傷が深くなった。

 

「ど~~~よ痛い目見たくなかったらとっととどきやがれ!」

「無理……シオちゃんの命令だし……」

 

そして次の瞬間、レオパルトの全身が切り刻まれていた。

 

「ぐあああっ!!んだコレ……!?」

 

レオパルトが片膝をつく。

 

「畜生……傷が……」

(サルファの後じゃなきゃこんな奴ら……!)

 

蓄積されたダメージによって、一撃でその場に倒れ伏してしまう。

それを、何の興味も無いような目で見下ろすベルゼルガは、処刑人の様に上段に鎌を持ち上げる。

 

「じゃあね」

 

 

ベルゼルガが振り下ろした鎌は、しかし飛んできた矢によって弾かれる。

矢の主は、おもちゃの弓矢を片手にチェシャ猫のぬいぐるみに乗ったネロアリスだった。

 

「……」

「アリス!!」

 

アリスは即座に猫の爪でルベルの拘束を解くとともに、自分が乗っているものより一回り小さいサイズのぬいぐるみをばら撒く。

それらは一斉に自立すると一体はレオパルトを、一体はロコとルベルを小脇に抱え、残りがシオちゃんズの前に立ち塞がった。

 

「アリス……放せ……!」

「…………」

「アタシがやんなきゃダメなんだよ……!」

「…………」

「放してくれ……アリス……!!」

「…………」

 

レオパルトの弱々しい訴えはアリスの耳に届くが、アリスはぬいぐるみを動かすのを止めなかった。

 

「ちょ、アタシは自分で動けるから!」

「……」

「聞けよ!」

 

ぬいぐるみに担がれ尻が丸見え状態のルベルも抗議するが、こちらはガン無視された。

 

「逃げられるとでも思ってるの?ベルゼルガ、ペスカ、早くその人形を片付けろなの」

「了解ですわ~」

「えへ……わかった」

 

イミタシオに命令を受けた二人が、それぞれの得物を振り上げる。

 

「パンタノドール!!」

 

土塊が流動し、女性型の人形に変形する。それら一つ一つがアリスのぬいぐるみにまとわりつき、動きを制限する。

そこにベルゼルガが横薙ぎに振り回した鎌によって、ペスカの土人形ごとアリスの人形の首が刎ねられ、地面を転がった。

 

「あれじゃ足止めにも……いや、そうか!!」

 

ルベルは咄嗟に目を塞いだ。ばら撒かれたぬいぐるみが、見覚えのあるフォルムであったからだ。

同時に、衝撃を与えられたぬいぐるみが一斉に発光する。

シオちゃんズの足を止めるには十分だった。

 

「…………!!」

 

アリスが合図を送ると、ワープゲートを開いてヴェナリータが現れる。

 

「ああ、早いとこ退散するとしよう」

「ヴェナ!!テメェ今まで何してやがった!!」

「君達、ご苦労だったね。でもこれ以上は危険だ。今は退こうじゃないか」

 

ルベルの抗議には応えず、ヴェナはエノルミータ全員にそう告げる。

アリスが最初にワープゲートをくぐり、レオパルトを担いだぬいぐるみがぴょんと飛び上がり後に続く。

 

 

 

逃がさないの

 

 

最後にルベル達を担いだぬいぐるみが通ろうとしたところで、いつの間にか背後からイミタシオが迫ってきていた。

 

「なっ……!?」

「ペインフル……「ヴォワ・フォルテッ!!!ゲホッ……」

 

イミタシオが右手を翳し技を放とうとしたところに、ぬいぐるみに担がれたロコの妨害が炸裂する。

しかし、怪我の状態で技を使った反動で吐血しそのまま気絶してしまった。

 

「貴様……」

 

ゲートの向こうに消える直前、ルベルにはイミタシオの酷く淀んだ声が聞こえた。

そして、先程までの天真爛漫な様子と打って変わって憎々しげにこちらを睨むその瞳に、ルベルは何かを想起させるような感覚を覚えたのだった。




原作ロコは敵の時からまぁまぁナーフされている気がします
音波でその辺のビル破壊してたし
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総合評価:18668/評価:8.28/連載:31話/更新日時:2026年05月16日(土) 21:00 小説情報


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