便利屋68:3 テラーズ・オブ・ザ・スペクトル   作:まーろう

25 / 31
25 新たな人生

 五メートル以上の垂直落下は想像より長かった。一秒にも満たない自由落下が、何十秒にも引き伸ばされて感じられた。徐々に迫り来る地面がスローモーションのように見えて、絡み合うゲンゲツの体を下に向けようとしたが命令の伝達が極端に遅くなっていた。間もなく荷箱に落ちる。カヨコは身を固くするのが限界だった。

 

 二人は同時に荷箱に叩きつけられた。体をぎりぎりで丸めて衝撃を和らげたが、激痛は免れなかった。神秘の抜け落ちた身体は中身がないみたいに軽くて、簡単に芯まで衝撃が届く。覚悟していたよりも、はるかに痛い。掴み合っていた二人の手が離れて、カヨコは荷箱の下に転がり落ちた。

 

「社長、行って!早く!」無我夢中で叫んだ。

 

 エルトセプスに撃ち抜かれた右肩がずきずきと痛み、右腕を少し動かすだけでびりっと激しい電流が流れる。地面に倒れたまま、全身が麻痺するのに耐えて、嘔吐感を堪えた。やがて自分が戦闘の最中という事を思い出すと、荷箱に寄りかかって体を持ち上げる。荷箱の向こう側から音はしなかった。

 

 カヨコは血の気が引いた。背後の気配を直感で気取ると、尋常でない殺意を向けられていることに気づく。カヨコが振り向くと、ゲンゲツは短機関銃を握りしめてすでに間合いを詰めていた。床に落ちた拳銃を取ろうとしたが、ゲンゲツの白い靴が遠くへと蹴り飛ばした。カヨコは丸腰にされた。

 

 ゲンゲツが声を荒げながら、右足を突き出してきた。両手を前に組んで防御したが、仰向けに倒されてしまう。起き上がる隙も与えられず、カヨコは連続で襲い来る蹴りを必死に防御するしかできない。

 

 咄嗟にゲンゲツの足を掴むと、思い切り捩じり上げた。ゲンゲツが手を振り払おうとしたが、とうとうバランスを崩して転倒すると、カヨコはその上に飛び乗った。短機関銃をひったくると、できるだけ遠くに投げ飛ばす。それから背後からゲンゲツの首に腕を絡ませて、絞め技の態勢を取った。ゲンゲツはじたばたともがいたが、すでに技は深く入っている。

 

 カヨコは生まれて初めて凶暴になった。良心や道徳心、生命への愛情といったものをかなぐり捨てて、ただ目前の敵の息の根を止めることに全神経を傾ける。銃をお互いになくしても、神秘のあるなしで力の差は歴然だった。カヨコが腕力に自信があるなら、ゲンゲツが失神するまで絞め続ければいい。だが既に深手を負っていたカヨコが、神秘を保持したままのゲンゲツを気絶するまで拘束することはできない。現にカヨコの右肩は火がついたように悲鳴を上げていた。

 

 カヨコはもっと効率の良いやり方を習得していた。梃子の原理を利用して、背後から捕まえたまま敵の顎を引き上げて頸椎を折る。これなら力の差など関係なく、ゲンゲツを仕留めることができる。カヨコはそれを行おうとして、ふと上階にいるアルの事を考えた。敵の命をこんなやり方で奪ったところを見られたら、アルは私をどう思うだろうか。非常事態だからといって、この場は触れずにいてくれるだろう。だがその後の長い付き合いで、アルは人殺しというフィルター越しに自分を見るようになるのではないか。もう今まで通り無邪気な笑顔で接してくれなくなるのではないか。ふとカヨコの脳を不安が横切った。

 

 ゲンゲツの手に鈍い銀色のものが見えると、カヨコははっとして飛び退いた。服の袖が切り裂かれると、ゲンゲツは勝ち誇ったような顔で立ち上がった。グリップのついた鋭利なコンバットナイフだった。

 

「怖いかくそったれ」ゲンゲツが吐き捨てるように言った。「また躊躇ったな。その甘さが命取りだ」

 

「すっかり人が変わったね」カヨコは冷静さを保っていた。「一応聞くけど、あなたもエルトセプスに洗脳されてるの?それとも自分から裏切ってた?」

 

「冥途の土産に教えてやる。答えは後者だ。私も元RAXAの人間だよ。ゴルゴダ事変で生き残ってから、戸籍や名前をすっかり変えて連邦生徒会の内側に潜んでいたんだ。だがアスの理想郷が実現されれば、もう素性を偽る必要もなくなる。アスの造る新しい世界で、オアのRAXAは再び世界に名を轟かせるんだからな」

 

 カヨコは口元を歪めてみせた。「それが亡霊に加担した理由?歪んだ愛情だね」

 

「むかつく野郎だ!」ゲンゲツは猛然と挑みかかってきた。カヨコは切り傷など気にせず、ゲンゲツの襟首を掴んで別の荷箱に投げつけた。だがすぐに体勢を立て直すと、ナイフの猛攻が襲い掛かる。ゲンゲツはかなり冷静さを欠いていたが、それでも武器を持っている脅威は変わらない。カヨコは手ごろな木の棒を拾い上げて、ゲンゲツのナイフに抗戦した。棒を巧みに操って、手首のみを集中的にいなし続ける。カヨコにとってこの木刀の長さだけが頼りだったし、ナイフの刃にあってはマッチ棒のように切られてしまう。ゲンゲツは急に膝を曲げて、俊敏な身のこなしで突きをいれてきた。カヨコは右に躱そうとしたが、数センチ遅れたために、刃の先が左のあばらに当たり血を流した。しかしゲンゲツが身を引く前に、木の棒を両手で横に振って顔面に当てた。少しひるんだが、ゲンゲツはすぐにまた前進してきた。カヨコはただ攻撃をいなしたり躱したり、たまに素早い一振りや突きで相手を悩ますのに精いっぱいだった。カヨコは次第に廃墟の壁へ追い詰められていく。

 

 勝利を気取ったゲンゲツは調子づいて、攻勢を強めた。カヨコは隙をみて棒を振って、ゲンゲツの左手を強打した。悪態を吐かせると、カヨコは図に乗って何度も突きを出し、相手の体に当てたが、ゲンゲツがナイフを急に振るうと、木の棒の肝心な三分の一が蠟燭みたいに切られてしまった。ゲンゲツは優勢に気が付くと、さらに猛攻に転じる。カヨコはぎりぎりで刃先を躱すのが精いっぱいだった。元々丈夫でもない木の棒は、もうすぐ簡単に折られてしまうかもしれない。カヨコの体を悪寒が駆け巡った。

 

 ゲンゲツがそれを感じ取ると、カヨコの防御の下に潜り込み、素早い一突きを見舞ってきた。カヨコは迷わず大きく飛びのいたが、背が壁にぶつかり、刃は腹に間一髪届かなかった。カヨコは木の棒をゲンゲツの顔面へ投げ捨てると、捨て身でナイフに飛び掛かり、両手でナイフを掴んだ。一瞬、二人の歯を食いしばった顔がぶつかりそうなくらい近づいた。ゲンゲツの固い頭突きがカヨコを襲ったが、意地でもナイフから手を離さなかった。

 

 ここまでカヨコが意思の力を発揮できたのは、命の危険を遠ざけようとする動物的な本能によるものだった。火事場の馬鹿力というものだが、それ以上にゲンゲツの白状がカヨコの戦闘意識を後押しした。こいつは味方でも何でもない邪悪な裏切者と決定した事で、”もし彼女も洗脳されていたら”といった仮定のブレーキを踏む余地はなくなった。

 

 二人の体に挟まれて、銀刃の押し付け合いが続いた。グリップを掴む手に限界まで握力を込めて、相手に鋭利な先端を一度でも深く向けようとする。だが純粋な握力で、カヨコは押されつつあった。

 

 カヨコは後ろの壁までの間合いを計って、握力をさらに込める。指の関節は白くなっているだろう。ゲンゲツはカヨコが背後の壁を気にしているのを嗅ぎ取って、軽い足さばきで一気に壁へ押し込む。壁にぶつかった反動でカヨコの体が押し返されると、鉄のナイフの先端が腹の肉を強烈に抉った。

 

 

 

 戦闘が収束しつつある平原で、レイは躊躇いがちに話した。「アル、便利屋68を襲ったERTCEPSは死者をDAで蘇らせた部隊。そう話したね」

 

「ええ」アルは頷いた。

 

「でも蘇らせたとしても、当人たちを従わせる事までできるわけじゃない。エルトセプスはDAの改造をさせるだけじゃなく、亡霊部隊を安定して運用するために私を攫ったの」

 

 レイの専門分野は医学と機械工学だったはず。「でもどうしてあなたなの、レイ。亡霊部隊の二人を使うために、何故あなたが選ばれたの」

 

「……偶然じゃなく、必然だったの。私は孤児だった。この身体的な特徴のせいで、私はどこにも居場所はなかった。自分が何者で、どこで生まれたのかも分からなかった。家族がいるのかさえも」

 

「そんな」

 

 レイは落ち着いた声で続けた。「ゲヘナのあちこちを彷徨って、私は行き倒れる寸前だった。でもそこで、あの人──姉に助けられたの」

 

「お姉さんに?」

 

「ええ──名前は上我オル」

 

 名前を聞いて、アルの思考が止まった。浮世離れした言葉に思えたのは、無意識のうちに理解を拒絶したからかもしれない。ハルカも固まってしまっていた。

 

「何ですって?」

 

「姉は身寄りのない私を保護して、居場所だった工場に匿ってくれた。他の子達も姉が間を取り持ってくれたおかげで、次第に馴染めるようになったの」

 

「あの人が?」ハルカがつぶやいた。真っ青な顔になっていた。

 

「お金はなかったけど、それでも自分を認めてくれて、それがたまらなく嬉しかった。あの人のおかげで今の私がある」

 

 ムツキが疑問符を浮かべた。「でも確かオルは、妹は工場火災で死んだって言ってたけど」

 

「違うの、本当は一命を取り留めていた……でも今考えれば、あの時から私はエルトセプスに利用され始めてたんだと思う。目が覚めた時、姉はどこかへ消えていた。私はそれまでの生活で学んだ知恵を使って、即席の武器を売って日銭を稼いで、少しずつ知識を蓄えていったの。私が医学と機械工学を修めたのも、いつか疾患をかかえた姉を助けるためだった。でも一人で各地を歩き回れるようになった時には、姉はもう……」レイは言い淀んでしまった。

 

 アルは何も言えなかった。ただ彼女の告白する事実を黙って受け入れるしかなかった。

 

「九ヶ月ほど前にアスが私を訪ねてきて、そこでネオ・チャレンジャー基地占拠事件の真相を聞かされた。私は復讐を誓った。姉を亡き者にしたあなた達──便利屋68を同じ目に遭わせようと決意したの」

 

「それがエルトセプスに協力した理由なの?」

 

「そう、そして私は飛行機の事故で行方をくらました。そしてアスのいたネオ・チャレンジャー基地に連れていかれて、そこで数年ぶりに姉と対面した。久しぶりに見た姉は怖くて、冷たかった。そこでアスから話をされたの。姉を蘇らせる方法がある、ただし条件は姉妹で服従すること。アスは蘇った後の姉を従わせる材料として、私を使おうとしていた」

 

 アルは不快感で顔を歪めた。エルトセプスの手口は、ネオ・チャレンジャー基地でソウを従わせるためにゲッコウを人質に取ったのと同じものだ。

 

「でも私は、姉にもう一度会えるという甘言に逆らえなかった。私は条件を飲んで、亡霊部隊の管理を命じられた。二人がまた戦えるようにするための準備をしたの。そこでアスに従うふりをして、立場を利用してオルとソウの二人にこっそり細工をした」

 

「それがエルトセプスが言っていた”呪い”なの?」

 

「その通りだよ。二人の意識を私と同調させて、私の意思で動くようにした。私がアスに従うふりをすれば、二人もそれに倣うから問題はなかった。姉をあんな奴に従わせたくなかった。でもその細工のせいで、蘇った姉は姉じゃなくなってしまった」

 

「……高速道路で私たちを襲ったのは、あなたの意思だったのね」

 

「その時の私は報復心しかなかった。あなた達を自分の手で倒すために、アスに申し入れてスワン空港のお膳立てをしてもらった。後は人を巻き込まないところで、あなた達に復讐をすれば完璧だった」

 

「へえ、それで気は晴れた?ハヤテちゃんを傷つけて」ムツキが冷静に問いただした。

 

「……よく分からない。話に聞いていた便利屋68は四人だったのに、なぜか知らない二人まで一緒に居て、でも計画は変えられないから犠牲には目をつむろうと思ったの。それなのにハヤテは命がけで私を守って、ゲッコウはソウを止めた。どうしてそこまで出来るのか分からなかったし、それにオルとソウが私の意思に反して戦いを止めたのも理解できなかった。でも今なら分かる」

 

 レイはアルを見た。「アスから便利屋68がどんなひどい悪党連中かを吹き込まれて、半ば洗脳されかけていた。その時の私は、それがそのまま真実だと思い込んでいたの。でも連邦生徒会で話した時のあなた達は、想像してたよりもずっと優しくて暖かくて、自分は騙されていたんじゃないかって思った。あなた達に関して、誤解してた……ハルカと姉のやり取りを聞いて、改めてそう思う」

 

「レイ、さん」ハルカが静かに言った。

 

「姉は多分、あなたを私と混同しているんだと思う。何か似た所があるのかもしれない」

 

 アルはオルの話を思い出した。拾われた者同士で、多大な恩を受けている。自分はただそうしたいからしただけだが、それでもハルカは私を慕ってくれている。オルとレイも、きっとそうだったのだろう。

 

「レイ、もう一つ教えて欲しい事があるの」

 

「神秘のことね」レイはこちらの聞きたいことを把握していた。

 

「テラーズ・オブ・ザ・スペクトルは、あなた達のような生徒の神秘を奪う事で戦闘を忌避させて、銃器社会を崩壊させる計画だった。神秘の無力化に使用しているのは、ガリバーの胸部に搭載されたDAレイ。あそこから完全なDAを放つことで、アスはキヴォトス中の神秘を無力化するつもりなの」

 

「解除方法はある?」

 

 レイは躊躇っていたが、少しずつ話した。「……DAレイを破壊するしかない。皆の神秘は細かく切断されただけだから、今ならまだ修復はできる。まだガリバーの近く──だいたいゴルゴダの平原全土くらいかも──しか効果はないけど、DAレイが放たれれば今度こそ完全に世界中の神秘は破壊されてなくなってしまう。その前に破壊すれば、DAは解除される」

 

 アルはガリバーを見上げた。胴体に組み込まれた大砲の口の中から、紫色の光が少しもれている。あれに違いない。

 

「ありがとう、感謝するわ。あなたも連邦生徒会に保護してもらいましょう。それから戦車を使えば──」

 

「ちょっと待って」ムツキが口を挟んだ。「レイちゃんもDAの力で生きてるんだよね。ガリバーを破壊しても大丈夫なの?」

 

 レイは言葉に詰まった。返事はないが、沈黙はすなわち肯定だ。

 

「私は……大丈夫。私がいなくなっても、悲しむ人はいないから」

 

 アルは拒絶した。「そうはいかないわ。さっきも言った通り、誰かを犠牲にするのは主義じゃないの」

 

 レイは苦い顔になった。「……だから言いたくなかった。アルは優しいから、きっと私の事も助けようとする。でもそれで本当に勝ち目がなくなったら、私はどうすればいいの?それに私はとっくに死んでるんだから、今更何も変わらない」

 

「あなたは二度目の人生を受けた。私の前にいるのは上永レイ、生きているあなたなの。それに悲しむ人もいるわ、あなたのお姉さんはどうなるの」

 

 レイは辛そうに声を震わせた。「姉さんはもういない!姉さんは、もう私の事を覚えてない。それに姉さんを復讐のための道具にした私は、もう人生を生きる資格がない」声が喉に絡んでくると、アルの肩を掴んだ手は震えていた。嗚咽をもらすと、しゃくりあげるような呼吸になる。「私には……誰もいない……」

 

 アルは無言でレイの手を優しく取ると、そっと抱きしめた。頭一つ小さい彼女の頭をなでてやると、レイは力なく顔をうずめた。

 

「ネオ・チャレンジャー基地で、オルがあなたの事を話してたわ。妹と仲が良かったと」

 

 レイは静かに頷いた。

 

「昔に別れたあなたを、今でも家族だと思ってる」アルは肩を落としている少女を支えていた。

 

「でも……そんな姉さんを、私は」瞳に涙が膨れ上がると、間もなく雫が頬を流れ落ちた。

 

 レイは死んだ。工場であれ、飛行機の中であれ、死んだことに変わりはない。だが今は生きている。憑き物のような復讐心が取れて、元の心優しい少女へと回帰している。

 

 昔とある本で読んだ言葉を、アルは記憶をなぞるように口にした。「人生は二度しかない(You only live twice) 生まれたときと(Once when you are born) 死に直面したときと(and once when you look death in the face)

 

「……どういう意味?」

 

「多分、レイは新しい人生を得たのよ。死に直面して、あなたは私たちに告白してくれた。私が言うのもなんだけど、報復心に駆られて姉を利用したあなたはもういないわ。私たちの前にいるのは、新しいレイ。だから新しい人生もきっと歩めるはずよ」

 

 泣き腫らした目を拭うと、レイはアルを見上げた。「私にも新しい人生があるの?」

 

 アルは胸を張った。「当然よ!私たちはそうやって成長するんだから」

 

 レイはくしゃくしゃな微笑を見せた。「……ありがとう、気持ちが楽になった」そう言うと草原に倒れたままのオルの方を見た。レイはふらふらと姉の下へと歩くが、調子が悪いようで足元がおぼつかない。アルは手を貸した。

 

「悪いけど……姉の元まで連れてってくれない?」

 

 アルは黙って、レイに肩を貸した。ハルカも二人についていく。

 

「実はガリバーのDAレイに寄らなくても、もともと私の命はアスに握られてるの」レイは歩きながら言った。「私に時間がないと言ったのはそのため。アスは裏切者の私が余計な事をする前に、DAを再活性化させた。DAレイを破壊せずとも、どっちにしろ私はもうすぐ死ぬ」

 

「そんな……」ハルカがこぼした。

 

「だから遠慮しないでって伝えたかったの。ガリバーを倒して、エルトセプスも倒して。皆なら必ずできるから」

 

「レイ」

 

「私は姉さんといる。二度目の人生はずっと良いものだよ」

 

 仰向けに倒れたままのオルは、まだ動く様子はなかった。処理が追いついてないのだろうか。ソウもオルの隣に横たわっている。レイはアルの支えから離れると、オルの側に膝をついた。右手を両手で握って、大事そうに顔の近くへと持っていくと祈るように目をつむった。ソウの手も取ると、同じように顔へと近づける。それが終わるとオルの近くにぴったりと身を寄せた。昔そうしたかのように、自分を守ってくれる姉の近くで安心した表情を浮かべた。二人なら大丈夫と、そう心の中で繰り返しているようだ。

 

 どれくらいそうしていただろうか。レイはオルの側で手を握って座っていた。やがて頭が少し深く垂れると、ヘイローが静かに霧散して、そよ風に乗って運ばれていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。