一般人がレベル999並の破滅後世界に幻想入りしました 作:パパオ斉藤
「どこだここ…」
説明すると寝て起きたら屋根のない神社の中で寝ていた。
なるほどと理解していないのに頷けるこの説明に、頭が混乱している。san値もダダ下がり中だ。起きたら腐った世界にいるという意味がわからなすぎてやばい現状に何時間かは放心か現実逃避をしていた。
詳細に話すと、俺は屋根のないボロボロな神社の布団で寝ていた。懐かしい畳の匂い、ふすまの匂い、まるでおばあちゃんの家にいるような感覚。それもそのはず、この異世界は俺が想像している異世界とは違うようだ。洋風とは大きく離れ和風、明るいイメージとは打って変わり地獄のような場所だった。
空は赤く
周りの木は枯れ果てており
神社の中も爆発後のような煙で覆われていた
和風の怖さと言ったらアレだが、落武者でも出てきそうな雰囲気だった。異世界だとすぐ判断したのはこの赤い空のせいである。あまりにも非現実的で鳥肌がたった。
「機械的なものはあるのか」
キッチンには電子レンジらしきものもある。詳細な情報からNITORIという文字は見えた。ニトリ、異世界なのにあのニトリはあるのか。
調べれば調べるほどよくわからない。
つまりだ。俺は腐敗した世界に死にに来ちまったわけだ。
放り出された世界がこんなわけもわからん地獄なら足掻く気も失せる。その辺の腐った雑草でも天ぷらにして腹膨らすか、そこにある井戸の腐った水すくって飲むか、とにかく今はこの神社で生活するしかない。
というのもこの神社の外は禍々しいオーラを感じる。ここを出た途端すぐ化け物にでも殺されるだろう。
何もできずに死ぬぐらいなら、何かして死にたい。
とにかく今は、この生活圏内でできるだけのことしよう。延命できるならなんでもいい。そこらへんの水でも啜ってやる。
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幻想郷壊滅
それは昔の小さな異変がきっかけとなり起こった。幻想郷の歴史で最も最悪な厄災であった。幻想郷の創設者、境界の妖怪である『八雲紫』は、この異変が始まる50年ほど前に、博麗大結界に小さな亀裂を見つける。その亀裂はとてつもなく小さく、ミジンコ程度の大きさであった。しかし紫がそれを見逃すはずがなく、第12代博麗の巫女である『先代の巫女』に修正を頼むこととなる。
当時13歳であった先代の巫女はその亀裂を修正することに成功した。八雲紫からは完璧に修復された、これでもう幻想郷の無事は守られた。そう確信したはずであった。
しかしその確信は的を外れた。50年後、その亀裂が修復されずに、ミジンコよりも圧倒的に小さい、あるかないかもわからない程小さくなって残っているのを見つけてしまう。そしてその亀裂から正体不明の物質が溢れ出した。
そして八雲紫は察してしまったのだ。この世界が終わってしまうことを。
幻想郷では現在、そんな終焉が始まっていた。
煌びやかな景色は暗黒に染まり、人々は厄災だと嘆き、そして苦しみ出す。
黒く蔓延る謎の光たちは、理想郷を囲み、破壊していく。
まさに地獄そのものだった。
「これは…面倒事ってレベルじゃなさそうね。」
過去災厄の異変を目の当たりにした第13代博麗神社の巫女、博麗霊夢は赤く染まりゆく空を腰に手を当てて見上げる。そして面倒くさそうにため息混じりにそう呟いた。
「どうしてこうも毎回毎回厄介事ばかりなのかしら幻想郷って。ほんと、落ち着いて茶も啜れやしないわ」
いつもツンケンしている彼女は災厄な状況を目の前にしている今でも健在である。
( 謎一、何故博麗大結界が不安定になっているのか
謎二、この黒い光の粒は一体何なのか
謎三、こんな大事態に八雲紫がここへ真っ先に来ないのは一体何故か)
霊夢は瞬時にこの3つの謎について頭を回らせるが、一向に答えが浮かばないので時間の無駄かと頭を掻く。
『ごめんなさい。霊夢』
宴会で会った時に紫が発していた言葉を思い出す。その瞬間、巫女の感が身の毛もよだつようなことを予測してしまう。まさか。まさかそんなはずはない。それでも今まで外したことのない感が、自分自身に警報を鳴らし続ける。
いつも通りに、真っ赤な空に向けて体を伸ばす。
「ん〜…ま、わからないことを考えていても仕方ないわね。博麗大結界は歪むわ変な光が降ってくるわ紫が来ないわで色々謎だらけだけど…犯人をぶっ潰さない限り、この異変が終わらない事には変わりないわ」
準備運動している途中、頬に一筋の汗が垂れる。
ザッザッ。石垣を蹴る音、聞き馴染みがあるも、全く別の音であった。
「あら魔理沙」
煙臭い。
「どうし…た……」
彼女の意識は、そこで途絶えた。
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男はサバイバルを舐めていた。
「だめだこりゃ。何もない」
神社の中、机の上には無惨に置かれたゴミのような草と毒の入った蜘蛛の巣だらけの桶があった。
「まともな食材がない」
こんな腐敗した世界に何も望んじゃいないが、望んでない通りにことが進むとなんとも言えない気持ちになる。焦りもない。いや焦らなければ命が危ない。何かしら行動せねばならぬ。
「探索でもするか…?」
ここから外に出て、食材を探すほかあるまい。
外に出向いてこの階段を下って仕舞えば、そこには腐った草が生えた平原が続いている。そして、階段を下ったすぐそこに宝箱のようなものがあった。
宝箱だけ持って帰ろう。
「なんだこの宝箱は」
神社の中、階段まで探索した報酬が宝箱であった。宝箱ごと神社に持って帰ってきてしまったが、中身が全く予想できない。金でも入ってるのかと思っだが、揺らしてもチャリンチャリンと聞こえず、固形の物がゴツゴツと中で暴れるだけであった。恐る恐る宝箱を開ける。
「これは…旗?」
それは旗であった。赤く人と書かれた旗であり、その周りは真っ白な白旗であった。持ってみればなかなかの重さ、ゴツゴツと音が鳴るのも納得の重さだった。
片手で持つと、頭の中で声が聞こえる。
『この神社を、浄化しますか』
【▶︎はい いいえ】
選択肢だ。
この魔王城の背景の如く禍々しいこの神社を浄化できるというのだろうか。この不思議な感覚はなんなのだろう。ゲームでありそうなフォントが思い浮かび、はいかいいえを選べる。
【はい ▶︎いいえ】
浄化しますかと聞かれていいえと答えるはずもない。とにかく、ハイを選んでみよう。
【▶︎はい いいえ】
『承知いたしました。浄化を開始致します』
「うぉ!?…なんだ!?」
旗はピカッと光り、突然消えてしまった。
その途端。円形のサークルが自分を囲み、広がっていく。ビリビリと青い雷のようなものが上からドカドカと降り注ぎ、廃れていた神社は本来の姿を取り戻していく。
机の上の草は緑色、桶の中身は透明の水になり、キッチンから廊下までピカピカな新品のようになり、外の枯れた花は咲き始め、下を向いていた木々も姿勢を正し、緑を取り戻していく。そして空は円形に晴れ、神社には陽の光が当たる。赤い空、黒い生物だらけの地獄で、神社の周りだけ神聖に輝く。
そこには神秘的な門と神社があった。
「…もしかしたら、俺すごいことしたんじゃないか」
神聖な土地と化した神社を見て、男はそう呟いた。
そんな彼の名は『宮本みやもと 五郎ごろう』。この地獄とかしてしまった幻想郷に、一筋の光を差したただの一般男性である。
これはそんなたかが人間がこの異変を解決するまでの物語である。
完